九人と死で十人だ (創元推理文庫)

  • 東京創元社
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感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (301ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488118457

作品紹介・あらすじ

第二次大戦初期、エドワーディック号は英国の某港へ軍需品を輸送すべくニューヨークの埠頭に碇泊していた。危険きわまりないこの船に、乗客が九人。航海二日目の晩、妖艶な美女が船室で喉を掻き切られた。右肩に血染めの指紋、現場は海の上で容疑者は限られる。全員の指紋を採って調べたところが、なんと該当者なし。信じがたい展開に頭を抱えた船長は、乗り合わせた陸軍省の大立者に事態収拾を依頼する。そこへ轟く一発の銃声、続いて大きな水音! ヘンリ・メリヴェール卿シリーズ、初文庫化作品。

感想・レビュー・書評

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  • 本編とは関係ないところで「うわー」と思ったので引用しますと、“船長の合図で楽団が国家『ゴッド・セイブ・ザ・キング』を奏でると“とありまして。
    物語のラストセンテンスにある内容ですけど、まあネタバレではないでしょう。
    ついこの間まで、「キング」ではなく「クイーン」だったなぁ、などとしみじみ思ったものです。

    なんと言うか、とても正統派なトリックものだったので逆に目新しさを感じています。
    しかし、指紋が誰一人同じものがないとか、どうやって証明したんですかね。調べたらわかるのかしら。統計方向からかしら。面倒なので調べませんが。

    ミステリで、登場人物たちが暗礁に乗り上げている時に颯爽と現れる探偵役というのは、本当に光明なのだなあとしみじみ思いました。まあ、謎解きはラストなので、早く出れば出るほどそこまで頼りにならないのでは?みたいなことになるのですが。
    この話でのH.M.卿はとてもいいタイミングで出てきてるなぁと思いました。

  • 『娯楽』★★★★☆ 8
    【詩情】★★★☆☆ 9
    【整合】★★★☆☆ 9
    『意外』★★★★☆ 8
    「人物」★★★★☆ 4
    「可読」★★★☆☆ 3
    「作家」★★★★☆ 4
    【尖鋭】★★★★☆ 12
    『奥行』★★★★☆ 8
    『印象』★★★☆☆ 8

    《総合》71 B-

  • 犯人は予想外やった・・・ほんと。
    第二次世界大戦という歴史背景だからこそ、成立するミステリーだと思った。犯人を誤解させるような事情(鍵となる女性がドイツ系だったり・・・)、ナチスUボートが出現するというデマがあったり、フランス人将校だったり・・・

    後書きで本作も名作とされているが、確かにそうだと思う。

  • 戦時下の船中での殺人というクローズドサークル。犯行現場に残された指紋は船内に該当者がいないという状況に、興味がかきたてられます。

  • 「九人と死で十人だ」
    ヘンリ・メリヴェール卿シリーズ初文庫化。


    第二次大戦初期、エドワーディック号は英国の某港へ軍需品を輸送すべくニューヨークの埠頭に碇泊していた。危険きわまりないこの船に、乗客が九人。航海二日目の晩、妖艶な美女が船室で喉を掻き切られた。右肩に血染めの指紋、現場は海の上で容疑者は限られる。全員の指紋を採って調べたところが、なんと該当者なし。信じがたい展開に頭を抱えた船長は、乗り合わせた陸軍省の大立者に事態収拾を依頼する。そこへ轟く一発の銃声、続いて大きな水音が響く。


    本書は、カーター・ディクスンことジョン・ディクスン・カー名義による1934年 The Plague Court Murders「黒死荘の殺人(プレーグ・コートの殺人)」から続くヘンリ・メリヴェール卿(通称H・M卿)シリーズ11作目に当たります。


    カーの作風は時期によって4つに分けられます。アンリ・バンコランが探偵役を務める初期が第1期で、トリックが二重三重に絡まり合うプロットを構築する1930年代の作品が第2期。メイントリック一つのシンプルなストーリー構成で魅せる1940年代が第3期、そして歴史ミステリが中心となるのが第4期。本書は1940年発表であり、第3期となります。


    読んでみると、確かにトリックは1つであり、指紋が残っているのにその指紋が該当する人間がいないという不可解な1つの状況によって物語が進んでいきます。面白いのが、何故不可解な状況が作り出されたかということ。カーのホワイダニットな側面が活かされていて、その謎が解けていく流れも自然です。終わってみれば本当にトリックシンプルなんだけど、それが読んでいる間は複雑に見えるような仕掛けになっている。


    また、シンプルなストーリー構成で魅せる上で当然忘れていけないのがヘンリ・メリヴェール卿。私は、このシリーズ初めて読むので、ヘンリ・メリヴェール卿がどのような人物が知らずにいました。卿という位から、背が高く痩せ気味で、鮮やかな白い髭を蓄えた白髪のジェントルマン。丸メガネを掛け、パイプを咥え、優雅さと気品さに鋭い観察眼を持つ。そんなイメージとかけ離れたのがヘンリ・メリヴェール卿であります。


    身長177センチメートル、体重100キログラムの巨体で、大きなはげ頭、小さい鋭い眼、鼈甲の眼鏡がずり落ちるほどの低い鼻、苦虫をかみつぶしたようにゆがんでいる口、丸い仏陀のような顔を持つ。声もデカそうでいらちな性格っぽいし、でもニヒルでコミカルな面もある。勿論、優れた洞察力と推理力を持つ。それがH・M卿なのです。


    因みに、H・M卿の右腕っぽい感じになるのが、マックス(元新聞記者)なのですが、チャトフォードとの場外乱闘も注目。何故、マックスはチャトフォードをあんなに毛嫌いしたのかが結局ピンとこない。チャトフォードの性格も同様w

  • 大戦下、アメリカから英国へと軍需品を運ぶために航行するエドワードディック号。灯火管制に地雷原の海域など危険と隣り合わせの緊張感漂う航海の中、9人の「曰く付き」の客が乗船する。外部からの侵入者はありえない状況の中発生した殺人事件。現場に残された指紋は誰のモノとも一致せず――。

    派手さはありませんが、戦時下という状況設定だからこそできたこのネタ! って感じで大変面白かった。カーお約束のヒーローとヒロインも出てくるし。
    同じ作者で、豪華客船系の殺人事件を取り扱った作品に「盲目の理髪師」がありますが、あちらの楽しい航海の雰囲気と読み比べてみるのも面白いかも。

  • 2018/08/13読了

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著者プロフィール

Carter Dickson (1906-1977)
本名ジョン・ディクスン・カー。エラリー・クイーン、アガサ・クリスティーらとともにパズラー黄金時代を代表する作家のひとり。アメリカ合衆国のペンシルベニア州に生まれる。1930年、カー名義の『夜歩く』で彗星のようにデビュー。怪事件の連続と複雑な話を読ませる筆力で地歩を築く。1932年にイギリスに渡り、第二次世界大戦の勃発で一時帰国するも、再び渡英、その後空襲で家を失い、1947年にアメリカに帰国した。カー、ディクスンの二つの名義を使って、アンリ・バンコラン、ギデオン・フェル博士、ヘンリー・メリヴェール卿(H・M卿)らの名探偵を主人公に、密室、人間消失、足跡のない殺人など、不可能興味満点の本格ミステリを次々に発表、「不可能犯罪の巨匠」「密室のカー」と言われた。晩年には歴史ミステリの執筆も手掛け、このジャンルの先駆者ともされる。代表作に、「密室講義」でも知られる『三つの棺』(35)、『火刑法廷』(37)、『ユダの窓』(38)、『ビロードの悪魔』(51)などがある。

「2023年 『五つの箱の死』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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