- Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488187118
作品紹介・あらすじ
英国で実際に起きた事件を基に執筆された表題作と、偏見がいかにして悲惨な出来事を招いたかを暴く「火口箱」を収録。現代英国ミステリの女王の魅力が詰まった傑作中編集。
感想・レビュー・書評
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大好きなミネット・ウォルターズも本作入れて残り3作
大事に読んでいきたい
ミネット初めての中編集、制約のある中で書かれたものらしく、ミネットらしい朗らかさがあまり感じられなかったので残念
『養鶏場の殺人』
うわー、こんな女いるよなーというかなりめんどくさい女性が登場
そりやそうよね実話がもとらしいので
さすがの筆運びで、ほんとこの女性がイライラさせられる
上手い
上手いけど面白いかといったら、う〜ん
『火口箱』
偏見による思い込みが悲劇を生むのと同様にその逆も…という社会派ミステリー
こちらはミネットらしい朗らかな女性が登場して少し好み
あ、でもよく考えるとミネットらしさってとことん後ろ向きな女性ととことん前向きな女性の書き分けのような気がする
そうか片方しか登場しない中編だとまさにミネットの魅力半減なのか -
英国ミステリの女王ミネット・ウォルターズの新刊。
趣向のある中編2本です。
面白く読めました。
「養鶏場の殺人」は実話をもとにした作品。
クイック・リードという企画で、本をあまり読みつけていない人にも楽しんでもらえるような作品として書かれたもの。
1924年に実際に起きた殺人事件で、裁判で主張がわかれ、あのコナン・ドイルが疑義を申し立てたこともあるという。
エルシーという女性がノーマンという年下の若者に教会で出会い、声をかける。
親しくなった二人だが、ノーマンが失職、二人の将来には暗雲がたれこめる。
エルシーの性格にもかなり問題があったのだが‥
実名のままに経緯を手さばきよく描き、鬼気迫るシーンへ。真相も推理しています。
はたして、何が真実だったのか‥?
「火口箱」のほうは、ブック・ウィークにオランダで無償配布された作品。
読書好きの人に、普段は読まない分野のものを読んでもらう狙いだそう。
とある住宅街で老婦人と看護師が殺され、出入りしていた無職の男性パトリックが逮捕された。
その後、パトリックの両親は、村の誰かから嫌がらせを受け続ける。
相談された女性シヴォーンは、見兼ねて警察に出向くが、取り合ってもらえない。
パトリック一家はアイルランド系で貧しく、村の美観を乱すようなガラクタを庭に放置し、イングランド人のひんしゅくを買っていた。
シヴォーンはアイルランド出身の女性だが裕福で、もしアイルランドにいるままだったら一家とは縁がないような関係。
一筋縄ではいかない登場人物に、村に渦巻く偏見と誤解が、どう絡み合っていくか。
緊張が高まっていくあたりはちょっと「遮断地区」を思わせます。
感じのいい女性シヴォーンの善意と意志が貫かれるのは、いかにもウォルターズらしい。
でも彼女にもすべてが見通せているわけではないんですね。
意外な展開を楽しめます!
初めてウォルターズを読むのにも良いかもしれません。 -
二つの風変わりな中編作品を収録した新ミステリの女王ミネット・ウォルターズの初の中編集である。序文は作者本人によるもので、そこで証されていることにより、ぼくは「風変わりな」と称したのである。
『火口箱』は1999年、オランダでのブック・ウィーク期間中、普段ミステリを読まない読書家を誘い込むために無償配布された掌編だそうである。
『養鶏場の殺人』は2006年イギリスのワールドブックデイにクイックリード計画の一環として刊行されたとある。普段本を読まない人に平易な言葉で書かれた読みやすい本として提供されたものであるらしい。
どちらも読書促進運動という目的をもって書かれた珍しい作品であり、そういえばミネット・ウォルターズはこれまで長篇以外は邦訳されていないので、こういうウォルターズはどうなのかと興味津々でページを開いた次第。
さて『養鶏場の殺人』は、二人の男女の悲劇であるが、どちらが被害者か加害者かわからないほどの悲惨な関係が、養鶏場経営という悲惨な生活を背景に描かれることで、事件の背景にある真実を曝け出したものである。1924年という古い時代に実際に起きた事件のノベライズであるのだが、ウォルターズの筆力が、「読みやすいように平易な文章で書かれている」ゆえにこそ、際立って見える。
どうして四年後にこの人がこの人を切り刻むことになるのかという、事件のあからさまな紹介から遡っての年月を追っての物語だけに、読む側の追い込まれ感がたまらない。そしてその皮肉な結末への雪崩れ込み方が、まさしくウォルターズ流なのである。
『火口箱』はミステリーでありながら、やはりジャンル外読者向けのサービスに満ちており、とりわけアイリッシュの一家に襲いかかるソウアーブリッジ村という偏見に満ちた小さなコミュニティーの見えない恐ろしさが圧巻である。どこがミステリーなのかわからないうちに、導かれてゆくところに意外な真相が潜んでおり、なるほど、ミステリーとはこういうものでもあるのかと感じさせるようなサービス精神にあふれた書きっぷりである。もちろんこちらも筆力の素晴らしさが見えるウォルターズらしい作品。
二作ともいつもの長篇の重厚感から解き放たれていながら、コンパクトにむしろ密度の高まるクライム小説となっている。中編の一気読みの快感を味わうには手頃な一冊と言えよう。 -
中篇を2篇収録。
『養鶏場の殺人』は現実に起きた事件を小説化したもので、『火口箱』は長篇『遮断地区』でも描かれた『コミュニティの暴走』を主題にしたもの。
どちらもウォルターズらしい濃厚な中篇だったが、『養鶏場の殺人』の方が比較的取っつきやすい。『火口箱』は長さの割に登場人物がやや多すぎるように思う。
『はじめに』によると、『養鶏場の殺人』は『クイック・リード計画』のために書かれたもので、『火口箱』はオランダで無償配布されたものだとか。世の中には色々なイベントがあるようだ。 -
2編とも読みやすく1日で一気読みできた。「火口箱」は作者らしい人物描写の巧みさが際立っている。正義感の強い主人公に共感しつつ読み進めるうちに、180℃世界がひっくり返る展開に驚かされた。「養鶏場の殺人」はありふれた男女間のもつれからの事件だ。だが、彼らを批判的に見るのでなく、淡々と丁寧に心の変化を事実を描写することにより、普通の人が知らず知らずに転落していく恐ろしさがじわじわと感じられる。どちらも上手いの一言。
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150ページほどの中編2作。
やはりこの作者はエピソードを積み重ねつつ、キャラクターの輪郭をガリガリと削り出して行くのがうまい。
このての結末と言うか真相をはっきり書かない終わり方は読み手に考える余地を与えてくれるので結構好きだったりする。 -
↓利用状況はこちらから↓
https://mlib3.nit.ac.jp/webopac/BB00530907
自分なら、今回は面白くなかったなで終わらせちゃいます…w
自分なら、今回は面白くなかったなで終わらせちゃいます…w
(「褒めて伸ばす」に方針変更)
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