養鶏場の殺人/火口箱 (創元推理文庫)

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488187118

作品紹介・あらすじ

英国で実際に起きた事件を基に執筆された表題作と、偏見がいかにして悲惨な出来事を招いたかを暴く「火口箱」を収録。現代英国ミステリの女王の魅力が詰まった傑作中編集。

感想・レビュー・書評

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  • 大好きなミネット・ウォルターズも本作入れて残り3作
    大事に読んでいきたい

    ミネット初めての中編集、制約のある中で書かれたものらしく、ミネットらしい朗らかさがあまり感じられなかったので残念

    『養鶏場の殺人』
    うわー、こんな女いるよなーというかなりめんどくさい女性が登場
    そりやそうよね実話がもとらしいので
    さすがの筆運びで、ほんとこの女性がイライラさせられる
    上手い
    上手いけど面白いかといったら、う〜ん

    『火口箱』
    偏見による思い込みが悲劇を生むのと同様にその逆も…という社会派ミステリー
    こちらはミネットらしい朗らかな女性が登場して少し好み

    あ、でもよく考えるとミネットらしさってとことん後ろ向きな女性ととことん前向きな女性の書き分けのような気がする
    そうか片方しか登場しない中編だとまさにミネットの魅力半減なのか

    • 1Q84O1さん
      魅力半減を分析する師匠さすがっす!
      自分なら、今回は面白くなかったなで終わらせちゃいます…w
      魅力半減を分析する師匠さすがっす!
      自分なら、今回は面白くなかったなで終わらせちゃいます…w
      2023/10/05
    • ひまわりめろんさん
      「今回は面白くなかった」も立派な感想やで!
      (「褒めて伸ばす」に方針変更)
      「今回は面白くなかった」も立派な感想やで!
      (「褒めて伸ばす」に方針変更)
      2023/10/05
    • 1Q84O1さん
      褒められて急激に成長した感じです!(単純w)
      褒められて急激に成長した感じです!(単純w)
      2023/10/05
  • 英国ミステリの女王ミネット・ウォルターズの新刊。
    趣向のある中編2本です。
    面白く読めました。

    「養鶏場の殺人」は実話をもとにした作品。
    クイック・リードという企画で、本をあまり読みつけていない人にも楽しんでもらえるような作品として書かれたもの。
    1924年に実際に起きた殺人事件で、裁判で主張がわかれ、あのコナン・ドイルが疑義を申し立てたこともあるという。

    エルシーという女性がノーマンという年下の若者に教会で出会い、声をかける。
    親しくなった二人だが、ノーマンが失職、二人の将来には暗雲がたれこめる。
    エルシーの性格にもかなり問題があったのだが‥
    実名のままに経緯を手さばきよく描き、鬼気迫るシーンへ。真相も推理しています。
    はたして、何が真実だったのか‥?

    「火口箱」のほうは、ブック・ウィークにオランダで無償配布された作品。
    読書好きの人に、普段は読まない分野のものを読んでもらう狙いだそう。

    とある住宅街で老婦人と看護師が殺され、出入りしていた無職の男性パトリックが逮捕された。
    その後、パトリックの両親は、村の誰かから嫌がらせを受け続ける。
    相談された女性シヴォーンは、見兼ねて警察に出向くが、取り合ってもらえない。
    パトリック一家はアイルランド系で貧しく、村の美観を乱すようなガラクタを庭に放置し、イングランド人のひんしゅくを買っていた。
    シヴォーンはアイルランド出身の女性だが裕福で、もしアイルランドにいるままだったら一家とは縁がないような関係。
    一筋縄ではいかない登場人物に、村に渦巻く偏見と誤解が、どう絡み合っていくか。
    緊張が高まっていくあたりはちょっと「遮断地区」を思わせます。

    感じのいい女性シヴォーンの善意と意志が貫かれるのは、いかにもウォルターズらしい。
    でも彼女にもすべてが見通せているわけではないんですね。
    意外な展開を楽しめます!
    初めてウォルターズを読むのにも良いかもしれません。

  •  二つの風変わりな中編作品を収録した新ミステリの女王ミネット・ウォルターズの初の中編集である。序文は作者本人によるもので、そこで証されていることにより、ぼくは「風変わりな」と称したのである。

     『火口箱』は1999年、オランダでのブック・ウィーク期間中、普段ミステリを読まない読書家を誘い込むために無償配布された掌編だそうである。

     『養鶏場の殺人』は2006年イギリスのワールドブックデイにクイックリード計画の一環として刊行されたとある。普段本を読まない人に平易な言葉で書かれた読みやすい本として提供されたものであるらしい。

     どちらも読書促進運動という目的をもって書かれた珍しい作品であり、そういえばミネット・ウォルターズはこれまで長篇以外は邦訳されていないので、こういうウォルターズはどうなのかと興味津々でページを開いた次第。

     さて『養鶏場の殺人』は、二人の男女の悲劇であるが、どちらが被害者か加害者かわからないほどの悲惨な関係が、養鶏場経営という悲惨な生活を背景に描かれることで、事件の背景にある真実を曝け出したものである。1924年という古い時代に実際に起きた事件のノベライズであるのだが、ウォルターズの筆力が、「読みやすいように平易な文章で書かれている」ゆえにこそ、際立って見える。

     どうして四年後にこの人がこの人を切り刻むことになるのかという、事件のあからさまな紹介から遡っての年月を追っての物語だけに、読む側の追い込まれ感がたまらない。そしてその皮肉な結末への雪崩れ込み方が、まさしくウォルターズ流なのである。

     『火口箱』はミステリーでありながら、やはりジャンル外読者向けのサービスに満ちており、とりわけアイリッシュの一家に襲いかかるソウアーブリッジ村という偏見に満ちた小さなコミュニティーの見えない恐ろしさが圧巻である。どこがミステリーなのかわからないうちに、導かれてゆくところに意外な真相が潜んでおり、なるほど、ミステリーとはこういうものでもあるのかと感じさせるようなサービス精神にあふれた書きっぷりである。もちろんこちらも筆力の素晴らしさが見えるウォルターズらしい作品。

     二作ともいつもの長篇の重厚感から解き放たれていながら、コンパクトにむしろ密度の高まるクライム小説となっている。中編の一気読みの快感を味わうには手頃な一冊と言えよう。

  • 行き遅れた女の結婚に対する執念怖~~~!(他人事じゃない)(笑)(えない/(^o^)\)な、【養鶏場の殺人】と、イングリッシュ・アイリッシュ間の偏見が交錯する【火口箱】の2編を収録した中編集です。

    私にとっての記念すべき初・ウォルターズ作品。既刊も何度か店頭で見ていたんですが、装丁とか説明文がいまいちそそらなかったのですよね(゜-゜)でも、今回の内容説明は面白そうだわ~!というわけで、一目惚れ買いでございます。

    まずは、適齢期を過ぎて焦り始めた女の執念が恐ろしい、【養鶏場の殺人】。
    実際に英国で起こった事件に題を取っているそうで、何とあのサー・ドイルもこの事件について言及しているんですね~(゜-゜)
    「完全にありえないことを取り除けば、残ったものは、いかにありそうにないことでも事実である」と彼の名探偵に語らせたサー・ドイルの目に、この事件の顛末はどのように映ったのでしょうか。そして、一つの可能性として提示された今作をもし彼が読んだら、どんな風な意見を持ったのでしょう。と、しみじみ思いを馳せてしまったのでした。

    が、今作の被害者であるエルシー。同性である私から見ても非常に身勝手で癇癪持ちな女性として描かれていて、読んでいてかなりゲンナリしました。
    「私は何も悪くない!私が不幸なのはあんた達のせい、悪いのはあんた達よ!」
    とヒステリックに周囲にまき散らしながら、盲目的に愛する男には媚び諂い、「ねえ、結婚いつしてくれるの?」と催促する女って…(震)。
    そんな年上女性に愛されてしまった青年にも同情の余地はありますが、本作を読む限りでは「どうにか逃げ切れたやろ~」が正直な感想。

    最後まで無実を訴えた彼が、絞首刑に処せられた瞬間、真実を知る者は誰もいなくなってしまったわけですが、仮に彼の言うとおり全てが彼女の自作自演だとしたら恐ろしいなあ(震)。私としては、「私を裏切った彼をちょいとビビらせてやるわー!」な動機であんなことをしでかして、結果事故死に至ってしまったってのがまだしも救いがあるのかなとも思いますが、どうでしょう。それはそれで報われないか…汗。でも、当てつけで自殺するよりは…う~ん…。

    続いては火口箱!
    強盗殺人事件に端を発した、人種差別的偏見が生んだ悲劇と、その後の関係者達の交流と闘争が描かれる中編です。
    イングリッシュとアイリッシュという分かりやすい対立軸が大前提にあり、容疑者とその周囲を取り巻く人々の分かりやすい対立図式があり、それによって読者に「ある偏見=思い込み」が刷り込まれることで意外なラストが演出される、フーダニット物です。うむ、見事に騙されました(笑)。よく考えたら、一番怪しい筈だけどな~(笑)。

    殺人事件発生直後、放火事件前後、そして語り手と担当警部のやり取り、これらが交互に描かれるカットバック構成も、物語に緩急を付けてリズム良く読めます。

    「ある人物」が、犯人の仕掛けたこの「偏見によって容疑者圏外に自分を置いた」ことを逆手に取って、自分に対する「偏見」を用いて逆襲に転じたことが明かされるラストは、中々の読みごたえがあるどんでん返しです。


    背表紙の説明文がいい感じだったので、そのまま引用~(^O^)
    1920年冬、エルシーは教会で純朴な青年に声をかけた。恋人となった彼が4年後に彼女を切り刻むなどと、だれに予想できただろう―。英国で実際に起きた殺人事件をもとにした「養鶏場の殺人」と、強盗殺害事件を通して、小さなコミュニティーにおける偏見がいかにして悲惨な出来事を招いたかを描く「火口箱」を収録。現代英国ミステリの女王が実力を遺憾なく発揮した傑作中編集。

  • 中篇を2篇収録。
    『養鶏場の殺人』は現実に起きた事件を小説化したもので、『火口箱』は長篇『遮断地区』でも描かれた『コミュニティの暴走』を主題にしたもの。
    どちらもウォルターズらしい濃厚な中篇だったが、『養鶏場の殺人』の方が比較的取っつきやすい。『火口箱』は長さの割に登場人物がやや多すぎるように思う。
    『はじめに』によると、『養鶏場の殺人』は『クイック・リード計画』のために書かれたもので、『火口箱』はオランダで無償配布されたものだとか。世の中には色々なイベントがあるようだ。

  • 人々を読書に誘うために書かれた二編。
    目的が何とも粋。

    その目的よろしく、さくさく、ぐいぐい物語は進んでいく。
    本格ミステリ的な謎を究明するような物語ではなく、人間の心理がもたらす事件性をサスペンスフルに描いたウォルターズらしい作品。

    個人的には『火口箱』の方が好き。偏見、思い込みをうまく仕立てた作品と思う。そういう終着点にするとは思わなかった。

  • 2編とも読みやすく1日で一気読みできた。「火口箱」は作者らしい人物描写の巧みさが際立っている。正義感の強い主人公に共感しつつ読み進めるうちに、180℃世界がひっくり返る展開に驚かされた。「養鶏場の殺人」はありふれた男女間のもつれからの事件だ。だが、彼らを批判的に見るのでなく、淡々と丁寧に心の変化を事実を描写することにより、普通の人が知らず知らずに転落していく恐ろしさがじわじわと感じられる。どちらも上手いの一言。

  • 150ページほどの中編2作。
    やはりこの作者はエピソードを積み重ねつつ、キャラクターの輪郭をガリガリと削り出して行くのがうまい。
    このての結末と言うか真相をはっきり書かない終わり方は読み手に考える余地を与えてくれるので結構好きだったりする。

  • ウォルターズ作品を読まず嫌いのアナタにぜひ!相変わらずエグいけど読みやすい中編集です。 ミネット・ウォルターズ『養鶏場の殺人/火口箱』【2014年3月】|今月の本の話題|Webミステリーズ!
    http://www.webmysteries.jp/topic/1403-04.html

    【今週はこれを読め! ミステリー編】女王ウォルターズの魅力が詰まった中篇集『養鶏場の殺人/火口箱』 - 杉江松恋|WEB本の雑誌
    http://www.webdoku.jp/newshz/sugie/2014/03/28/201025.html

    東京創元社のPR
    http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488187118

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