暗闇の終わり (創元推理文庫 267-1)

  • 東京創元社
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感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488267018

感想・レビュー・書評

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  •  結構世評の高い事件記者ジョン・ウェルズのシリーズもの。ぼくは初読。ただこの著者のアンドリュー・クラヴァン名義の真夜中の死線は前に読んで、ちょっとどうかなという評価だった。こちらは自身も同年代の娘を自殺で失ったウェルズが、三人のハイスクール生連続自殺事件を追う話。自身の悲劇の残影から立ち直れていないウェルズの揺れる心象と現実の事件がないまぜになった不安定な進行で、それが狙いのひとつなんだろうけれど物語的には繁雑な気がする。単なるミステリではなくウェルズに人間味をもたせたハードボイルドに仕上げたかったのだろうが、この一作ではあまり成功しているとはいえない感じ。連続事件というわりには結末の統一感も中途半端でいまひとつ。もう少し読んでみるかな。

  • タフで有能だが、決してスーパーマンではなく、見た目もうらぶれた中年男が、所謂「男の意地」的な理由で、四面楚歌な状況に飛び込んで、そこそこ意外な真相を暴き出す。良くできていると言うより、この手のお話の祖型のような感じかも知れない。そのそつのない感じが今となっては鼻についたりもするのだが、それはひねくれた見方と言うべきで、素直に職人芸を賛美しておけばいいと思う。

  • アメリカの作家キース・ピータースンの長篇ミステリ作品『暗闇の終わり(原題:The Trap Door)』を読みました。
    ここのところ、アメリカの作家の作品が続いています。

    -----story-------------
    晩秋のグラント郡で同じハイスクールの生徒が三人、相次いで自殺を遂げた。
    『ニューヨーク・スター』の記者ウェルズは単身取材に赴くが、一人娘をやはり自殺で喪っている彼には苦いインタヴューの連続となる。
    だがそんなウェルズの前に、事件は意外な真相を……。
    敏腕記者の苦汁に満ちた闘いを描く、話題のシリーズ第一弾! 
    -----------------------

    1988年(昭和63年)に刊行されたジョン・ウェルズ記者シリーズの第1作、、、

    ジョン・ウェルズは、45歳で『ニューヨーク・スター』紙の社会部記者、新聞社に押し寄せるOA化、ICT化の波に背を向け、いまだにタイプライターを愛用し、取材方法や記事の書き方にも自分流を貫くプロで若手記者からの信望は厚いが、上層部との折り合いが悪く、特に真実の報道よりもニュースの受けを優先させる編集長とは宿敵同士… なかなか魅力的な人物ですね。

    晩秋のグラント郡、ニューヨーク郊外に位置するこの田園地帯で、わずか六週間のあいだにティーン・エイジャーが三人、相次いで自殺を遂げるという事件が発生した… いずれも同じハイスクールの生徒たち――家庭環境、友人関係とも目立った共通項のない彼らが、なぜ次々と死を選んでいったのか? 取材を命じられた『ニューヨーク・スター』紙の記者ウェルズは、自ら15歳の娘に自殺された過去を背負いつつ、インタヴューを重ねていったが、、、

    田舎町に死の影を追う敏腕記者の苦渋に満ちた闘い… MWA賞候補となった話題のハードボイルド第一弾。

    面白かったです… ここのところ初めて読む作家の作品が当たり続きですね、、、

    一人娘を自殺で喪ったことや離婚した妻との結婚が心の傷となっている主人公・敏腕記者ジョン・ウェルズのキャラも良いし、信念をもって地道に捜査(取材)を進める姿勢にも共感… 娘や息子が自殺した親の描き方も巧いですねー 事件の真相も単純ではなく、ひと捻りあって愉しめました。

    本シリーズも書棚の在庫はここまでなんですよねー 

    もっと読みたいなぁ… キース・ピータースンの作品、古書店で辛抱強く探してみようと思います。

  • 90年代に濫読した時期がございまして。
    その中で輝いておりました。

  • 先に読んだ、伊坂幸太郎のエッセイ集『3652』。
    https://booklog.jp/users/makabe38/archives/1/4101250294

    伊坂自身が読んで「面白かった」と書かれていた書籍の中から、今回はこの翻訳ハードボイルド小説を、読んでみました。

    主人公は、ニューヨークで働く大衆紙記者。
    裁判を調査し真実を暴いていく彼は、ソリの合わない上司から担当替えを命じられます。
    あてがわれた仕事は、ニューヨーク近郊で発生した、高校生の連続自殺事件について。

    自らの娘を、自殺で失った経験を持つ主人公。
    上司による嫌がらせとわかりつつ、自分の過去と対峙するつもりで、この仕事に取り掛かります。

    現地で取材し、記事にしていく主人公。
    しかし上司の思わぬ行動に遭遇して・・・という展開。

    事件の真相とは何だったのか、その謎解きが、物語の大きな流れになっています。
    そしてその謎解きをしていく主人公の行動、そして心理を追っていくことによって、人はどのように過去の辛い出来事と向き合うのか、さらには辛いことが起きる人生というものをどのように理解し、生を貫いていくのかといったことを、読者に訴えるような内容になっています。

    発表されたのが1980年代の中頃ということで、時代設定もそのころかと思われます。
    旧式のタイプライターを使う主人公や、建機で切り開かれ宅地化されていく森林の姿が描かれています。
    そのような描写によって、時間・時代の変化へどのように対応していくのか?ということも、表現されているのだなあと感じました。

    改行が少なく、ページ数の割に文字量の多い作品ですが、展開が早いこともあり一気に、読み進めました。
    この主人公の作品は続編も翻訳されているようなので、文庫版を探して、読んでみることにします。
     
    『ぼくが愛したゴウスト』打海文三
    https://booklog.jp/users/makabe38/archives/1/412205060X
     
     .

  • 記者ウェルズシリーズの第1弾。

    ニューヨークのタブロイド紙の記者をつとめるジョン・ウェルズ、四十五歳が主人公。所属しているニュース紙の社会部ではトップ記者。粘り強い取材と、記者としての嗅覚で数々のスクープを飛ばしてきている。

    そんな彼とことごとく対立する編集長ケンブリッジが彼に言い渡したのは、ティーンエイジャーの自殺についての記事を書くことだった。

    実はウェルズは一人娘を自殺で亡くしているという過去を持っている。
    この作品は、ティーンエイジャーの自殺連鎖の真相を追うことで、ウェルズがいかにして自分の傷を克服していくか、ということが根底に流れるテーマとなっている。


    少しサイコ調のストーリー展開となっている上、その展開がものすごく強引で、たまに読者は置いていかれる感がする。
    だがその欠点を補って余りある、人物描写や都市描写のうまさ、ウェルズと彼を巡る女性との切ない恋の描写など、あっという間に読めてしまう。

    このシリーズに出てくるランシングという女性記者は、一時期信奉者がいたくらい、このシリーズは人気があった。
    確か5冊くらい出ていたような。
    例によって例の如く、うちの近所には2冊目までしかなかったのだが。そしてついでにいえば、シリーズが刊行されていた当時、リアルタイムで読んでいたにもかかわらずの、再読だったりする。
    でもどんな話だったかはこれっぽっちも覚えていなかった。便利な脳みそだと褒めておこう(笑)。

  • 可もなく不可もなく

  • 4.0

  •  田舎で高校生が続けて自殺する事件があって、記者ウェルズは取材に赴く。ウェルズは一人娘をやはり自殺で失っている。それが全編を通じてのトーンを色づけしてる。うーーん、ピーターソン上手い。彼は、アンドリュー・クラヴァン(本名)とマーガレット・トレーシー(弟との共著)名義での作品もあるが、どれも色合いが違い、違いながらも高いレベルの作品になってる。本当に実力があるんだなと、どれを読んでも思う。
     これは、最後の1行で泣いた。喪失が持っている2重の意味を思った。

  • 同じハイスクールの生徒3人が相次いで自殺した事件を取材に来た記者・ウェルズ。
    彼の書いた記事を上司が改組したため、取材対象地区の住民から反感を買った彼は、事件の真相を追求し始める。

    ティーンエイジの娘を自殺と言う形で失っているウェルズが、同じ立場の親たちや自殺願望に取り付かれた子供と関わっていく様と、3件の自殺が絡んだ話になっている。
    事件の謎自体はさほど凝ったものではなく、話の芯はウェルズの苦悩と、その昇華だろう。
    特に自殺予告電話をかけてきた少年を説得するシーンはいい。
    物語りも終盤になって、漸くウェルズは娘の残したものを受け取ることができたのだ。このシーンがあってこそ、ラストの一言が生きてくる。
    1人の男が苦痛と向き合うまでの話。
    それを暗喩している邦題もいい感じ。
    こういうハードボイルドは悪くない。

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