名探偵に薔薇を (創元推理文庫) (創元推理文庫 M し 1-1)
- 東京創元社 (1998年7月19日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488423018
感想・レビュー・書評
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最近重版され書店に平積みされていたところ、帯に惹かれ購入した。初読みの作家さんで予備知識ナシ。
2部構成をとっており、どんでん返し系のトリックが後半に用意されている。作品の構成としてはよく練られていると思う、また前半のグロ描写を含む文体にも、作家の個性を感じた。
作品の中心には「小人地獄」なる完全無欠の毒薬が据えられている、探偵役も、読者も、その推理はこの毒の個性からスタートされるのだろう。この個性は現実的ではないが非常に面白いと感じた。
どんでん返しが強調されてはいたが、そのトリックは個人的にはすでに経験済みのものであり、目新しくはなかった。そこまでの誇大広告には意義を唱えたいところだが、探偵の内面を抉り、彼の苦悩を(すなわち推理し真実を晒す!という行為)ここまで描いたものはかつて知らなかった。そこにこのタイトルを据えたのは、帯にあるとおりであった。(帯にはタイトルはこれしかない!のような文言がありました)
調べてみたら城平氏はアニメ、コミックの原作なども数多く手がけているようで、ちょっと追いかけてみたい作家さんとなった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
読みながら浮かぶのは江戸川乱歩のおどろおどろした作品の思い出だった。現実からちょっと浮き立ったような状況を思い描くところが似ているのではないだろうか。
二転三転のストーリーは複雑で推理小説の答えを探り出すのは難しかった、という意味では良い作品なのですがスッキリとした推理小説ではないと感じる人間の情としがらみの描写とそれらがストーリーへ絡みついているところが私からするとマイナスな所。ちょっと残念。 -
作風がちょっと古臭い感じでした。
でも私より年下の作家さんなんですよね。
謎はありがちですぐにわかってしまいましたが、そこからまた展開があって良かったです。 -
マスコミ各社に奇怪な創作童話「メルヘン小人地獄」が送りつけられた。
そして童話さながらの殺人事件が起こってしまった。
舞台になるのは藤田家。
藤田克人、恵子夫妻と、娘の鈴花、そして家庭教師の三橋。
第一の犠牲者になったのは恵子だった。
三橋は高校生の時から名探偵と言われていた瀬川を呼ぶ。
瀬川は即事件を解決してたところで一部は終わるのだが
その2年後に再び事件が起こり、瀬川が呼ばれる。
二部を読んだら、一部は序章だったのかって思うしかない。
これは苦しい。切ない。辛すぎる。正に苦悩する探偵。
面白かったんだけど、そう言ってしまうのが
いけないような読後感でした。 -
一部を読み終わったときはオーソドックスな探偵ものだと思ったけど、二部を読んで衝撃を受けた。とにかくめちゃくちゃ面白い。
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『小人地獄』。それは最も完全に近いとされた邪法の毒薬―。
始まりは、各種メディアに届いた「メルヘン小人地獄」だった。
それは途方もない毒薬をつくった博士と毒薬の材料にされた小人たちの因果を綴る童話であり、ハンナ、ニコラス、フローラの三人が標的とされ仇を討たれ、めでたしめでたし、と終わる。
やがてその童話をなぞるような事件が起き、床には「ハンナはつるそう」の血文字が・・・。
そしてさらなる犠牲者が。
混迷する捜査陣の前に、一人の名探偵・瀬川みゆきが現れる。
2部構成になっており、第1部は上記のような内容。
そして第2部はその2年後、小人地獄が使われた事件が起き、またもや名探偵が現れます。
どちらかといえば、長い第1部のほうが前置き的な感じ。
以前から気になっていた作品でしたが、ようやく読みました。
いや、凄かったです。
ちなみに作者は、パッと見「平城京」みたいですが、「しろだいら きょう」さんと読みます。
物語の核となる小人地獄は完全犯罪可能な毒薬なのですが、これを使った殺人がメインではないところがミソ。
あくまでも小道具です。
そのため途方もない毒薬ですが、すんなり受け入れることができました。
導入部は江戸川乱歩のようで、昭和の香りがしてとっても好みの世界でした。
真相の二転三転も凄いですが、なにより驚いたのは探偵のスタンス。
これまた(私の中では)新しい探偵像でした。
事件の謎がとけて、めでたしめでたし。ばかりじゃないですよね・・・。
いやぁ、これは久しぶりに手元に置いておきたくなった作品でした。
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どうしようもなく救いのないこの物語、この結末をどこか美しいと感じてしまうのは罪なのかもしれない。名探偵であることはここまで重い。ミステリとしてというよりも、ひとつの小説としての完成度が非常に高いです。
読み終えてまず思う。せめて。せめて、名探偵に薔薇を。 -
私は受け付けませんでした。
話を受け付けない、というわけではないのよ。最初に、「メルヘン小人地獄」というとんでもない毒薬がでてきて、それをふまえて(毒薬の存在が定義されている)…ということなんだけど、この毒薬が…受け入れられなかった。
この毒薬、出来る過程(というの?)を童話で書かれてるんだけど、いやもうこれが気持ち悪くてねえ。読んでてこんなに気持ち悪くなったのは『眼球奇譚』の『特別料理』以来ですよ。よく最後まで読めたと思います。永久封印してもおかしくなかった。
でも、この話って、トリックだとか謎だとかその毒薬だとかに焦点があるわけじゃないんですよね。
瀬川がなぜ「名探偵」なのか。「名探偵」であるがゆえの、彼女が「名探偵」であったから起きてしまった事件、それに対しての彼女の苦悩、影。
それが全てといってもいいかも知れない。それを中心に話が構築されてる。
評価や好き嫌いは分かれそうな気がするなあ。 -
ある毒物に関わる殺人事件、その真相とは。
二部構成となっており読後、なるほど、とは思えたものの今ひとつパンチが足りない。
構成は面白いし、リーダービリティーもよいと思えた。だが主人公の行動に今ひとつ納得ができず……残念。