- Amazon.co.jp ・本 (330ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488432027
作品紹介・あらすじ
同級生の謎めいた言葉に翻弄され、担任教師の不可解な態度に胸を痛める翠は、憂いを抱えて清海の森を訪れる。さわやかな風が渡るここには、心の機微を自然のままに見て取る森の護り人が住んでいる。一連の話を材料にその人が丁寧に織りあげた物語を聞いていると、頭上の黒雲にくっきり切れ目が入ったように感じられた。その向こうには、哀しくなるほど美しい青空が覗いていた……。ミステリ作家・光原百合のデビューを飾った心やさしい物語。著者あとがき=光原百合/解説=石黒達昌
感想・レビュー・書評
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畑をつくる、草むしりをする、そんな手作業にさえ、イマドキの「エコ」ではなく、人間の「エゴ」や「罪深さ」を感じながら森とともに生きるレンジャーの護さん。
ヒロイン翠の、彼へのひたむきなまなざしが愛おしい作品。
3つのエピソードにまつわるそれぞれの謎に目新しさはありませんが、舞台となる清海の森の描写が愛にあふれていて、読み終えたらすぐにでも森に出かけて深呼吸したくなることまちがいなしです!
私としては、すばらしくいい人に囲まれた中で、ひたすら偽悪的なふるまいをする工藤さんと、彼の書いた童話「裸の王様異聞」が、なぜかお気に入りだったりします。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
八ヶ岳の南麓に広がるシーク協会の土地。
引っ越してきたばかりの高校生・若杉翠は、高校の校外学習でその地を訪れた。
家がある清海にあまり近いので、つまらない気がしたのだが…
時計を落として探していたとき、レンジャー(自然解説指導員)の深森護(みもりまもる)に出会う。
20代後半で中肉中背、地見目だが感じのいい深森。
深森の親身な解説に共感した翠は、すっかり気に入って何かと通うことになり、ボランティアも始める。
高校のクラスでは、優秀な冴子、明るい恵利、恵利とケンカ友達の桂木君と仲良くなる。
ところがある日、恵利が先生に殴られた所に行き会い、冴子は教育委員会に訴えると言い出すが…?
一体どんな事情があったのか。
深森が解き明かしてくれるのです。
第2話は、シーク協会で結婚式を挙げるはずだったカップルに起きた悲劇。
思いがけない事情が隠れていた?
第3話は、ゆうゆう倶楽部という冬場のキャンプで知り合った女性が入院したと聞いて…?
1998年の作品。
清海て、清里がモデルなんでしょうね。
基本は高校生の視点で入りやすい。
自然についての話が多く、景色や植物、生き物たちと共に、そこを護ろうとしている人たちも、優しい生命力を感じさせます。 -
1998年刊と少し前の小説だが、時代の古さをあまり感じさせない作品。
森の美しい自然の中で、少しだけ謎をはらんだ出来事が起こり、主人公たちがその謎を解き明かしていく。創元推理文庫から出版されているだけに、どのようなミステリかと思うが、どちらかというと淡い色彩の優しいストーリーである。今現在、このような女子高生がいるのかと思ってしまうくらい初々しい高校生が主人公。全体に爽やかな印象を残す作品である。 -
ライトノベルとしては重い。
本格としては甘酸っぱい。
少女趣味のキャラや構成に共感できるかどうかで好き嫌いが分かれる。
面白いし、これもありだな、と思える作品ではあります。 -
「あたしが殺した」同級生の謎めいた言葉と担任教師の不可解な態度に悩む翠は、清海の森を訪れる。
校外学習で行った施設で、落とした腕時計を探し森をさまよっていたときに出逢った自然解説指導員・深森護さんは、温かい瞳と穏やかな声を持つ名探偵だ。
手触りの荒い事実という糸から美しい真実を織りあげる彼に話を聞いてもらうために―
三つのエピソードが彩る心やさしい物語。
日常の謎系、というにはちょっと人死にが多い(3話中2話)な-
あと、主人公・翠が私の好みではなかったです。
実際古い作品だけど、時代を感じる…
高校生・冴子さんが大人!
今も昔も大人な子(変な日本語だな…コレ)はいたけど、圧倒的に大人だ-
自己分析して、反省して、相手にも謝罪して、ってなかなか出来ないよね。
関西出身新人レンジャーこずえさんとの探偵ごっこコンビは読んでてヒヤヒヤしたよ-
ひとり行動ってそんなに不思議なものなのか?
まぁ婚約者にまで秘密、てのは引っかかっるかも…
前向きになって良かったな-
森の中のプログラムは面白そう。
現代は何かと忙しなくて繋がりっぱなしだから、自然と触れ合ってのんびりするのは癒やしだよね-
工藤さんの生き方は本人も周りも疲れそう…
貫く強さがあるんだろうけど。
森で数日、みたいな本格的なものでなくても、近場のちょっと景色の良い所なんかで自然を感じたくなる一冊でした- -
光原百合の、ミステリデビュー作。
豊かな森と優しい人々に囲まれた「シーク」。あたたかさな雰囲気が文章から存分に伝わってきて、読みながらほっと一息ついてしまいます。いずれの話も人の死が絡み、悲しく切ない気持ちにさせられますが、それでも読後感の実に爽やかなこと。翠や冴子と同様に、読者も護さんにどこか救われているのかもしれません。
ジャンルとしては安楽椅子探偵モノになるのかもしれませんが、トリック?そのものはシンプルすぎるきらいがあります。謎解きを楽しみたい時よりも、心がどうしようもなく乾いてしまった時に、是非読んでおきたい1冊です。 -
最初に読んだときはなにも思わなかったのに、今読み返すと青臭さを感じる、のは私も年をとったんだってことかな
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ライトミステリー。主人公のほんわかした感覚に包まれながら穏やかな気持ちで読むことが出来る。
作者らしいミステリーで、事件といえるほどのことではないというのも特徴的。 -
ほんわか甘酸っぱく、ちょっと切なく悲しい連作短編。
すっと、胸に落ちる小説です。
おおた慶文さんの表紙イラストも素敵。 -
探偵でなく語り部である護さん。これもまた、「謎解き」のひとつの形なんだろうと思いました。