結ぶ (創元推理文庫)

著者 :
  • 東京創元社
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本棚登録 : 613
感想 : 41
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  • Amazon.co.jp ・本 (358ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488441036

感想・レビュー・書評

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  • 「そこは縫わないでと頼んだのに、縫われてしまった」という奇妙な一文から始まる表題作ほか、不可思議でユーモラス、妖艶にして哀切、最後にどきり、ぞくり、じわりとさせられる名短編が並ぶ。
    日本の作家で、こういう独自の美学、筆力、想像力を持った幻想譚を書ける人はなかなかいないんじゃないかと思う。
    精緻な糸で丹念に織りあげられた、美しい奇想の世界。読み手である私たちは、生と死のあわいが限りなく曖昧な、地図にない街に迷い込んだような気分が味わえる。

  • 単行本が出てから長らく文庫化されずに残っていた、皆川博子の幻想短篇集。
    『鳥少年』も同じく創元から文庫化されたが、半ば伝説と化していただけあってこちらの存在感は圧倒的なものがある。古書価格が高騰していたのも頷ける。
    文庫版には4篇が追加で収録されているので、単行本を持っていても楽しめる。

  • どれも読み応えがあってなんとも贅沢な短編集でした。とにかく最初の「結ぶ」のインパクトは絶大。こういうのは何かの暗喩だとかいちいち考えずに、奇妙さもまるごといったん受け入れてしまうほうが個人的には面白い。

    同じ時間をループしているかのような「水族写真館」や、映画と現実がひとつながりになってやはりループする「川」は騙し絵のようで、老舗旅館の女同士のどろどろかと思いきや時空間を越えてくる「空の果て」は、SF的なニュアンスもあったり、捜神記に題材をとった「花の眉間尺」はグロテスクでエロティック、「薔薇密室」(※同名の長編とは無関係)は恋愛の狂気、かと思えば「蜘蛛時計」あたりは外国のホラーのようだったり・・・と次々色んなタイプの幻想が飛び出してくるので、全く飽きません。

    基本的にはハズレなしですが、お気に入りはやはり「結ぶ」と、死者目線の「水色の煙」、背景を想像させる「城館」、そして金魚や氷と同じように当たり前にやってくる「心臓売り」。作家の確かな文章力と独創的な想像力が合わさると、小説の可能性というのは無限だなあと思わされます。

    ※収録作品
    「結ぶ」「湖底」「水色の煙」「水の琴」「城館」「水族写真館」「レイミア」「花の眉間尺」「空の果て」「川」「蜘蛛時計」「火蟻」「U Bu Me」「心臓売り」「薔薇密室」「薔薇の骨」「メキシコのメロンパン」「天使の倉庫(アマンジヤコ)」

  • 祝文庫化

    東京創元社のPR
    「彼岸此岸もわからぬ場で「縫う―縫われる」行為を考察する独白が、異様な最後の一行で結ばれる表題作ほか、単行本未収録作四篇を加えた18編の幻想小説。」
    文藝春秋のPR(単行本)
    「子供の目にしか見えぬ女の人や聖画に糸を吐く蜘蛛、犯罪を見抜く南国の占い師──斬新な着想と美しい比喩が織り成す幻想短篇集」

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著者プロフィール

皆川博子(みながわ・ひろこ)
1930年旧朝鮮京城市生まれ。東京女子大学英文科中退。73年に「アルカディアの夏」で小説現代新人賞を受賞し、その後は、ミステリ、幻想小説、歴史小説、時代小説を主に創作を続ける。『壁 旅芝居殺人事件』で第38回日本推理作家協会賞を、『恋紅』で第95回直木賞を、『薔薇忌』で第3回柴田錬三郎賞を、『死の泉』で第32回吉川英治文学賞を、『開かせていただき光栄です―DILATED TO MEET YOU―』で第12回本格ミステリ大賞を受賞。2013年にはその功績を認められ、第16回日本ミステリー文学大賞に輝き、2015年には文化功労者に選出されるなど、第一線で活躍し続けている。

「2023年 『天涯図書館』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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