赤朽葉家の伝説 (創元推理文庫)

著者 :
  • 東京創元社
4.00
  • (314)
  • (412)
  • (244)
  • (26)
  • (6)
本棚登録 : 3373
感想 : 324
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488472023

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 惜しいなー。最後、三代目のはなしは、残念ながら、蛇足っぽい気がしてならない。そこんとこよろしく、で終わってよかったんじゃないのかな。

    泪、孤独、鞄に毛鞠を産み育てた万葉の一代記、戦後日本の社会と世相を、平成世代の孫の口を借りて語るというのはうまいと思う。万葉を嫁にとったおんな恵比寿様をはじめ、魅力的なキャラクターがたくさん登場する。

    それが第三部になると、途端にスケールがちいさくなり、全てが色褪せてしまう。「自分はこの家に(或いは担うべき役回りに)ふさわしくないと悩む独白がくりかえしでてくるのだが、あまりにもドンピシャなため、そのとーりだよ、早くひっこめば?と思ってしまうのは否めない。

    伝説は伝説のままでよかった。スケールのでかい話だっただけに、終章のご都合主義的まとめ方がとても残念。

  • amazonでも評価がとても高いので図書館で借りてみた。なんという壮大なストーリー!あとがきにもあったが第一部は歴史小説、第二部は少女漫画、第三部は青春ミステリー‥どれも時代や世相を鏡のように忠実に写し取り主人公に反映させていく作者の筆致に圧倒される。私も赤朽葉家の一員となって大きな戦艦に乗って荒波を進むような読み心地だった。未来視ができる赤朽葉万葉、レディースの総長、赤朽葉毛鞠‥どの人物も惹かれ、ミステリーを終盤に持ってくる構成も良かった。

    日本推理作家協会賞受賞。

  • 女三代の話。
    朝ドラにもありましたね、そういうの。
    毛鞠と青春時代が重なり、懐かしく読みました。
    面白かったけど、結局万葉はなぜ、誰から捨てられたのか、そこが気になった。

  • 読み初めは、堅いタイトルに加えて時代小説っぽい感じで最後まで読めるか心配していましたが、不思議な世界観と登場人物に魅了され一気に読んでしまいました。
    明るい内容ばかりではないですがどことなく朝ドラのような雰囲気がします。

    どの時代にも栄枯盛衰があり、流れにのれる人と取り残される人がいる。その繰り返しで今があるんだなと思います。後半で急にミステリー感が出てきてちょっと驚きました。

  • 山陰の旧家に生まれた跡取り娘の瞳子。
    祖母は未来が見え、母は破天荒な生涯を送った。
    時代と共に村の勢いは衰え、特に秀でた能力があるわけでもなく、未来に希望があるわけでもない。
    そんな自分は、優秀な叔父が亡くなったために生まれた娘。
    祖母と母の人生を辿りながら何者でもない自分を受け入れていく先に、未来がある。
    祖母の話が中心だが、女三代の物語と家族の歴史がドラマチックで、読了後も物語の余韻に浸っていた。

  • 製鉄を生業とする赤朽葉家の万葉、毛鞠、瞳子の三代記。それぞれの章、3章からなり、最後の瞳子の章では万葉が「殺した」と言い残した死者をめぐるミステリ仕立てとなっている。戦後から高度成長期、そして、現代にわたる世相ともリンクさせ、かつ、サンカや千里がんなど民俗学的、伝奇的要素も加えて実にゴージャスでスケールの大きい物語となっていて読ませる。歴史もの、伝奇もの、青春小説、ミステリと色んなテイストが味わえる。


    赤朽葉瞳子 語り手、毛鞠の娘

    多田万葉 辺境の人が村に置いて行った女
    多田父、母 万葉の村での引き取り手、育ての親。
    万葉を引き取った後に万葉の弟、妹が生まれる。
    多田肇 万葉の異母弟。学生運動にはまる。

    赤朽葉タツ 万葉の姑
    赤朽葉康幸 タツの夫、製鉄所社長。1974に死ぬことを万葉に透視され、死後の曜司宛の伝言を万葉にことづける。
    赤朽葉曜司 万葉の夫。読書家。
    黒菱みどり 造船所の娘
    黒菱みどりの兄 おんなおとこ、自殺。
    穂積豊寿 一つ目。製鉄所の職工。万葉に右目の失明を予言される。
    赤朽葉泪 万葉の長男。万葉は彼が二十歳で死ぬことを出産時に透視。
    赤朽葉毛鞠 万葉の長女。レディース頭、漫画家。

    赤朽葉鞄 万葉の次女。アイドル志望
    赤朽葉孤独 万葉の次男。引きこもりがち。
    真砂 赤朽葉家の女中。曜司の子、百夜をうむ。
    百夜 真砂と曜司の娘。真砂の死後、赤朽葉家に引き取られる。毛鞠を慕う。
    穂積蝶子 豊寿の姪。毛鞠の親友。レディースのアイドル
    多田忍。元族の頭。武器屋の店長。万葉の異母弟
    野島武 中学時代の毛鞠の最初の彼氏
    蘇峰 毛鞠担当の編集者
    遠鐘 蘇峰の後任の担当編集者
    美夫 毛鞠の夫
    綿毛鞠の3番目の担当編集者
    多田ユタカ 瞳子の彼氏、万葉の甥にあたる。
    穂積安代 図書館司書、

  • 戦後から平成初期にかけた日本の歴史に沿ったある特殊な一家についての物語だった。学校の教科書で習ったような風習や当時の様子が描かれていて、懐かしい感じがした。またそこから十数年前の常識は今の非常識なのはいつの時代も同じだなと感じた。時の流れが早くりつつあるように思える現代では、世間の常識より自身の信念こそが最も大切なのかもしれない。

  • あまり好きな作風ではなかったが、読破して良かったと思える良作。
    祖母、母、娘三代にわたる、旧家の物語を、当時の社会情勢を交えて描いている。
    創作ながら、地に足がついており、登場人物たちの名前に違和感を残すのみだった。
    その時代の空気感や、社会の変遷から派生する登場人物たちの悩みなど、大きな視点と小さな視点のバランスがうまく取れていた。

  •  最初から特殊な能力を持った女の子が、空を飛ぶ男と遭遇するところから物語が始める。時代は大正の頃か昭和の初め頃か、日本海に面した田舎での物語。不思議な雰囲気で物語が進む。特別な殺人事件が起きるというわけではないが、雰囲気ならば江戸川乱歩か横溝正史のような感じ。3代にわたる女性の人生を描いてゆくが、祖母は超能力者、母は伝説のヤンキー、そして語り手の女性はそんな母や祖母の人生を振り返る特別な能力は持っていない女の子。三部構成の異次元の世界のような物語に引き込まれる。

  • 4+

著者プロフィール

1971年島根県生まれ。99年、ファミ通エンタテインメント大賞小説部門佳作を受賞しデビュー。2007年『赤朽葉家の伝説』で日本推理作家協会賞、08年『私の男』で直木賞を受賞。著書『少女を埋める』他多数

「2023年 『彼女が言わなかったすべてのこと』 で使われていた紹介文から引用しています。」

桜庭一樹の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×