赤朽葉家の伝説 (創元推理文庫)

著者 :
  • 東京創元社
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レビュー : 285
  • Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488472023

感想・レビュー・書評

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  • 歴史小説ではないけれどまるで大河ドラマの原作のような物語だ。
    朝に似合うかどうかはさて置いて、万葉を主人公にすれば朝ドラだっていけるかもしれない。
    赤朽葉家の女三代、万葉、毛毬、そして瞳子。
    彼女たちの波乱に満ちた人生が描かれている。
    あまり現実味のない内容も、桜庭さん独特の筆致となればまた違ってくる。
    見えるものを大切な人たちのため使い、それでも言ってはいけないと決めたことには沈黙を通す万葉。
    見えることを隠し、素知らぬ顔を通した毛毬。
    どちらも強い女性・・・といった印象が強く残る。
    赤朽葉家の、というよりも万葉の中に流れる血の特異性の成せるわざなのか。
    生半可ではない芯の強さと潔さが、赤朽葉家の女性たちを通して伝わってくる。
    タイトルにある「伝説」に十分頷けるような物語だった。

  • 三世代にまたがる話とだけあって本当に濃い内容で、その長きにわたって横たわる謎が解明される瞬間は、ああ遂にと言う具合でとても楽しめた。

  • この作者は作品によってかなり文体が変わるが、この作品では頭の空っぽな少女の一人称とは違いとても堅い文体で描かれていた。
    正直読んだのは確か高校生の頃だったので、またしっかりと読み直したい。
    ハードカバーの装丁がとても綺麗なのでおすすめ。

  • 年代記はいいなあ!なんで連作短編だと苦手で、これだといいんだろうな。長さかな。歴史かな。
    なんかの世代論で、三代目「わたし」の、322「行く手は茫洋として、(…)だからこそ、小舟にたまたま同乗した、級友たちに優しく接したかった。(…)漠とした重たい感情が心の奥深くでいつもうごめいていた。」のところが引用されてた。
    ぶくぷく茶ってほんとにあるのかな?…ぼてぼて茶http://furusato.sanin.jp/p/area/matsue/73/ うーむ。

  • 第一部は未来が見える千里眼奥様こと万葉、第二部が万葉の娘の毛鞠、第三部が毛鞠の娘の瞳子と三世代に渡る赤朽葉家の話。昭和史を織り交ぜながら、時折おどろおどろしい描写を挟みつつ語られる家族の歴史。二部まで読むと、この風変わりな家族が何だか愛しく思えてきた。そして、三部の謎解きで万葉が隠していた秘密を瞳子が解き明かし、あの設定はこのためにあったのかと、ちょっと切なくなった。自分にとっていい時間は止まっていて欲しいと願うけど、そうはいかず時間は流れ、世の中も変わっていく。浮き沈みがあったり、右往左往したりしながらも人の営みは続いていくんだなあと、しみじみ思った。

  • 山陰地方の名家、昭和から平成にかけての女三代の物語。最後の瞳子の章が、瞳子自身が何者でもない、と自分を評しているだけに、少し弱いかな…という気がしたが、一方で祖母の万葉、母の毛鞠の章が非常に濃厚で、読み応えがあった。
    万葉は自分に近しい人の死に際が視えている、ということか。夫よりも親愛の情を感じていた男性の未来、というのもそういうことなのか。
    個人的には毛毬の章が一番面白かった。なんといっても自分も同世代に、田舎町で育ったものだから。中学校は荒れていたし。橋脚とか必ず夜露四苦とかスプレー書きされていたものだ。そして私も、作者が毛毬をそう評したように「有能だが、地に足のついていない女」の一人なのかもしれない。

  • 女3世代。
    祖母・万葉は山の民の一族。製鉄の町に捨てられ、若夫婦に育てられる。やがて、地元の名士の家の奥様に息子の嫁にとなれと見初められ、嫁ぐ。そこで子どものころに霊視した飛行人間と出会う。見えないものを見る万葉は、やがて千里眼奥様と呼ばれることになる。
    母・毛鞠は乱暴で粗忽な女だ。やがてレディースの番長として君臨するも、親友の死によって抜け殻のようになり引退する。引退後は売れっ子漫画家として過酷なスケジュールで仕事をこなす。
    語り手・瞳子は、これといって語るべきことがない人生を送っている。祖母や母と比べるとあきれるほどに普通。だが、祖母がいまわのきわにもらした「私は人を殺した」という発言で、ほんのわずかに人生に向き合うことになる。

    するすると読めてしまった。
    世相や時事がわかりやすく盛り込まれていて、自分が生きてない時代なのに懐かしさすら感じた。

    2016.2再読。

  •  第一部が非常に面白かっただけに、第二部、第三部と、だんだんとわたしの好みからずれていくように思えて、少し残念だった。

     辺境の人である万葉の千里眼と、鳥取という地の持つ神秘さ、作者の表現描写や文体、どんどんと少し不思議な戦後の物語に魅了されていっただけに、蹴鞠が生まれ、なんだか不良漫画のような展開になっていき、瞳子に至っては、語るべきものが本当になかったのかと思われるようなだらだらした話。万葉の話で一冊通しても良かったのに、と思えてしまった。
     しかし、三世代の女を描くことで良かったことは、その戦後から現代という三世代分の価値観や世界観、世相や文化が縮図のように知れたことだ。男性の役割、女性の役割、地元と都会への意識、大切にすべきもの、憧れるもの、人は時代によって、生きていく中で触れるものへの認識や価値観がこのように変わってきたのか、と勉強になった。

     作者の立ち位置として、リアリティーを求めているのかファンタジーを描きたいのか、結局のところ何を描きたいのかはあまり明確には理解できなかった点で、少しもやもやは残るが、読んでいて実に面白く興味深い本ではあった。

  • 桜庭一樹初期代表作の全体小説。神話の名残の千里眼から迷える現代娘までの地方名家の女三代記。
    傑作です。

  •  面白かった!旧家である赤朽葉家の女三代記。一家の盛衰が各時代を反映した青春、労働、恋愛だけでなく、未来視能力、空飛ぶ男、長女にだけ見えない妹などなど、不思議なモチーフも通して描かれているので、楽しくてぐいぐい読んだ。女に求められる在り方はその時代によって変わるけど、赤朽葉家の女たちはいずれも強い。それは一家の濃い血の呪いのようでもあり、大きな家族愛のようでもあると感じた。私が共感したのは自由の幅が広くなった時代の中で何者にもなれない同世代の瞳子で、だからこそ万葉の貫禄と毛毬の青春が眩しかった。

著者プロフィール

桜庭 一樹(さくらば かずき)
1971年、島根県生まれの小説家。
1999年「夜空に、満点の星」で第1回ファミ通エンタテインメント大賞小説部門佳作を受賞しデビュー。
『赤朽葉家の伝説』で第60回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編部門)、『私の男』で直木賞を受賞。他の代表作に『GOSICK -ゴシック-』『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』『赤朽葉家の伝説』などがある。
ゲームのノベライズやライトノベル作品や、山田桜丸名義でゲームシナリオを手がけるなど幅広く活躍している。

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