内なる宇宙〈上〉 (創元SF文庫) (創元SF文庫 ホ 1-17)
- 東京創元社 (1997年8月29日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488663179
感想・レビュー・書評
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三部作のはずだったのに、人気過ぎて出された<巨人たちの星>続編。
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巨大コンピュータの中に生じた宇宙とそこに発生した生命は生命か否か?
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『星を継ぐもの』シリーズ第4弾。
3作目、『巨人たちの星』で一旦は完結したシリーズだったはずなのに、何故か4作目です。作者自身も書いているとおり、SFファンタジーという趣の作品です。しかし、終わったシリーズがその後のファンやら編集者やらの都合で復活、というのはどうも好きになれません。そういう商業主義が、読者の想像力を失わせてしまうんではなかろうか…。
と、批判はしたものの、そして、前3作にはかなり劣るものの、エンターテイメントとしてはなお一流です。ゾラックのユーモアもガニメアンと地球人の友情もパワーアップして、心温まる感じがします。コンピュータ内部に立ち上がる新しい宇宙、という発想もおもしろいし。いずれ出てくるにしても、ここまで理論的可能性に熱弁をふるう小説も少ないんじゃないでしょうか。大部分、私にはちんぷんかんぷんです。何度読んでも。そういう意味では、もっとドラマの部分に紙幅を割いて欲しかったとも思うんだけれど、でも、あれだけの技術に関する記述がなければ、この小説はただの夢物語でしかなかったはず。結局、あれがいちばんバランスのいいところなのかもしれません。
あとは、3作目からの現実の時間経過に伴うソ連の崩壊を物語上、どう処理するか、が、やや失敗気味。せっかくソブロスキンという素敵なキャラを登場させていたのに、4作目ではなかったかのようになってしまったのが残念でした。好きだったのになぁ、ソブロスキン…。