- Amazon.co.jp ・本 (294ページ)
- / ISBN・EAN: 9784492444719
作品紹介・あらすじ
フィナンシャル・タイムズ、タイムズなど欧米メディアで絶賛!イブニング・スタンダード紙のブックオブザイヤー受賞。「資本家」対「労働者」から「大都市エリート」対「土着の国民」へ。左右ではなく「上下」対立の時代を読み解くバイブル!ポピュリズムは病原ではなく症状だ。民主主義を滅ぼす病原は新自由主義にある
【欧米メディア&識者が絶賛】
◎これまでで最も優れたポピュリズム分析の書(「イブニング・スタンダード」紙)
◎力作だ。欧米の政治が簡潔ながらも繊細に分析されている。ポピュリズムは、大学を出ていない労働者たちから経済的交渉力、政治的影響力、文化的威厳を奪ってきたテクノクラート新自由主義に対する反動だとリンドは主張する(デイヴィッド・グッドハート、『The Road to Somewhere』著者)
【中野剛志氏】
ポピュリズムの原因は、新自由主義的な政策によって労働者階級を抑圧し、政治・経済・文化のいずれの領域においても労働者階級を疎外してきたエスタブリッシュメントの側にある。ポピュリズムは確かに健全ではないが、それは、エスタブリッシュメントの新自由主義的な支配という疾患に現れた症状に過ぎないのである。私は、リンドの思想に全面的に賛成である(巻頭解説より)
【施光恒氏】
本書は、戦後実現した「民主的多元主義」の安定した政治が、1970年代に始まった新自由主義に基づく「上からの革命」の影響を受けた結果、機能不全に陥り、米国の国民統合が現在までにいかに脅かされ、分断が進んだか、またどのように分断の解消を図っていくべきかについて考察したものである。民主的多元主義の再生を可能ならしめるために、現行の新自由主義に基づくグローバル化推進路線の転換が必要だと本書は論じる。新自由主義的な改革に明け暮れてきた欧米諸国や日本に新しい視点を与え、自由民主主義の意味や条件を考えさせる貴重な一冊だ(監訳者解説より)
【概要】
グローバル化の問題点は「新しい階級闘争」を生み出した。新自由主義改革のもたらした経済格差の拡大、政治的な国民の分断、ポリティカル・コレクトネスやキャンセルカルチャーの暴走である。各国でグローバル企業や投資家(オーバークラス)と庶民層の間で政治的影響力の差が生じてしまったことがその要因だ。著者は現代の「新しい階級闘争」の解決を考えるために、マルクスが問題にしたような資本家対労働者の「古い階級闘争」がどのように解決・穏健化に向かったかを探り、戦争が中間団体の調整の政治「民主的多元主義」を各国が編み出し、階級を越える国民の妥協と結束をもたらしたと指摘。戦後の欧米の福祉国家はすべて戦争の名残だ。しかし1970年代頃から「オーバークラス」が「上からの反革命」を起こして、庶民を裏切るに至ったと分析する。「新しい階級闘争」の解決のためには、同様に中間団体の再生やその間の調整の政治の復権、「民主的多元主義」が必要だと説く。そのためにはグローバル化に一定の歯止めをかけるしかなく、無理ならば自由民主主義も滅びることになると論じる
感想・レビュー・書評
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例示が多く少し長いが、良著。
何に苛かされているのか、の解像度を上げることができたように思う。
Politically correctness への不快感。
いろんな分析があると、面白かった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
東洋経済にて、新しい封建制がやってくると合わせて紹介されていたので入手。いわゆる「西側」諸国(ぶっちゃけ欧米)を今までリードしてきている新自由主義が何をもたらしているか、を解説する。基本思想が強者総取りのところに更にテクノロジーによる支配を加速させて、少数のテック貴族によって多数の下流層(中流層は下流層にに叩き落される)が支配され、民主主義が蔑ろにされていく現状が語られている。そのような状況だからこそ、トランプのようなデマゴーグがそういった層のニーズをすくい取って伸びていく、と解説される。筆者は多元民主主義(地方の有力者に率いられた集団が多数ひしめき合う状況)の復活を提示しているが、テックオリガリヒによる支配って、サイバーパンクのメガコーポによる支配と同じだなぁ、と思ってみたりする。
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新自由主義改革がもたらした経済格差の拡大。これはもう否定できない事実だろう。
格差がスゲーよ。
政治的な国民の分断。
この原因って、日本の場合、縁故資本主義じゃね?
アホノミクス以降、自民公明党の奴らは、もうやりたい放題やりまくってる。
日本がオワコン化したことを、全世界に発信したショボ過ぎる「東京オリンピック」では、電通や、関連企業が一丸となって利権に群がり、美味しい中抜きチューチューやって、私腹を肥やした。
オワコン化した新聞各社もそこにガッツリ絡んでるから、不正な利益誘導を批判するはずのジャーナリズムの側には、もはや、誰もいない。
2023年 今回のマイナンバーカードの一件でも、自民公明党から、政治的な利益誘導してもらえる大企業ばかりが、市場での公正な競争もないまま、莫大な利権を得て、これから後の運営においても、永遠にチューチューできる構造になってる。
これって縁故資本主義じゃね?
99ページに、ちょっとだけ、出てくるけど。
Wikipedia
縁故資本主義(crony capitalism)
官僚や政治家、役員、利益団体との「密接な関係」がビジネスの継続に決定的な要因となっている「資本主義経済」を指す批判的な用語である。法的許認可、政府認可、優遇税制措置、公共事業発注先の選定に不公平さが見られるときにこう呼ばれる。
縁故資本主義は資本主義の根幹となる市場経済による効率的な資源配分、競争力の向上、技術革新を阻害する一方、特定階層による経済支配を固定化することで経済的格差を助長する、政府官僚や政治家と大企業との癒着による経済支配といえる。
例として、1997年のアジア通貨危機前のアジア各国の経済が挙げられる。例えばIMFによる韓国救済の局面では、IMFが救済条件の一つして縁故資本主義を解消するために財閥解体を求めた。
統一教会と自民党のズブズブの関係だって、まだナニも解決していないのに。
旧統一教会のイベントで、韓鶴子総裁を「マザームーンさまさま」とか連呼してた、自民党のバカ議員、山本朋広衆議院議員を、次の衆議院選挙に向けた支部長の選任会議で、神奈川4区の支部長=事実上の公認候補に決めやがったぞ。
2023.8.5.現在、問題になってる、クソガキ木原誠二官房副長官の、妻の元夫の殺人事件疑惑だってそう。妻の実父の、元公安?のジジーが、やったんじゃないかと騒がれてる。
もー、上級国民さまは、やりたい放題だ。
何をやっても許される。逮捕されない。
一方で、就職氷河期の世代や、都市部のシングルマザーなど、持てざる階級は、もはや、後進国なみに貧しくなってる。
いや、後進国以下かも。
さて、この本だけど、もともとの文章か、または、翻訳された日本語が、そもそも、ヘンだぞ。
途中、意味の通らないところが何箇所かあった。
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11
昔は、労働者階級の声は、労働組合、市民団体などが、代弁できてたのに、今じゃサッパリ。
民主的多元主義が終わってる。
エスタブリッシュメントたちが、労働組合や市民団体を弱体化させてきた。
covid19への対応
16
トランプは、扇動的ポピュリストの典型
17
もとは、ヨーロッパの過激な反ファシスト集団のアンティファは、過去30年間、アメリカで勢力を拡大してきた。
アンティファは、白人至上主義者がスパイ行為をしてるという陰謀論を煽り立てた。
22
1789年
ルイ16世はバスティーユ陥落の報を聞いて
「それは反乱か」と尋ねた。
「いいえ、陛下、革命です」と、公爵は答えた。
2016年
ブレグジットの賛否を問う国民投票で
有権者の過半数が、EUからの離脱を指示した。
この政治的激震から数カ月後に、トランプが大統領に選出された。
2018年の夏
イタリアでは、右派ポピュリスト政党「同盟」と
反エスタブリッシュメント政党「5つ星運動」が連立政権を組んだ。
スウェーデン、ドイツ、スペインで、ポピュリスト政党が議席を獲得した。
41
ジェームズ・バーナムの経営者革命論は、アメリカの中道左派の間で復活している。
それを補完する、ガルブレイスの経済社会学は、すでに過去のものとされているが。
43
ジョージ・オーウェルは1946年の論考の中で、バーナムの主張を要約している。
45
バーナムの経営者革命論は、ガルブレイスの経済社会学に通じるものがある。
二人が描こうとしたのは、ヴェブレンが理想的な技術者の評議会として期待した、技術者支配ではなく
国内の大手企業や、多国籍企業、政府機関、非営利だんたいを運営する民間と公的機関の官僚。
98
ハイエクやフリードマンら新自由主義者は、毎年スイスのモンペルランに集まり、グローバルな自由主義のユートピアを築くことを夢見た。
99
1970年代に、上からの革命が始まった。
リバタリアンの経済学者らが、そうした制度を「縁故資本主義」と批判した。
102
新自由主義の経済改革は、1970年代の欧米を襲った、スタグフレーションへの対策として、当初は、正しいとされた。
109
多国籍企業のアービトラージ「裁定取引」戦略
アップルは、中国人労働者を不当に安く働かせている。
2013年
米上院国土安全保障・政府問題委員会の常設調査小委員会によると
アップルは、アイルランドに子会社を設立するなど
租税アービトラージのあらゆる汚い手段を駆使して、租税回避をしてきた。
2015年
アイルランドが税法を改正すると、アップルは、子会社の一部をひそかに、別の国際的な租税回避地であるジャージー島に移した。
アダム・スミスは『国富論』で述べている。
「資本の所有者は、実際には世界市民なのであり、一国から離れないとは限らない。厄介な税金を課す国を捨てて、もっと気楽に事業を行えるか富を使える国に資本を移したいと考えることも多い」
スミスは、現代のグローバル経済における労働力アービトラージの重要性に、驚かないだろう。
118
上流階級の勝利
ウォーレン・バフェット「階級闘争はある。それを仕掛けているのは、われわれ富裕層側だ。しかも、我々は勝利しつつある」
1960年代に、リバタリアン経済学者ジェームズ・ブキャナンが、モンペルランと、ヘイトアシュベリーの中間地点で、アレン・ギンズバーグと密談し、政治、経済、文化という三つの領域で、労働者階級から、上流階級に権力を移行させようと画策したわけではない。
大衆参加型政党、議会、労働組合、草の根運動の諸団体、市民団体は、弱体化するか、壊滅してしまった。
欧米諸国の非エリートたちは、怒りを喚き散らす以外に、公の場でいっさい発言することができなくなった。
122
ドイツでは
2015年から、突然、中東からの移民が流入し、物議を醸した。
フランスでは
逆進性の強い税金が労働者階級に重くのしかかった。
アメリカでは
何百万人もの不法移民が流入した。
2016年の
ブレグジット投票と
トランプの大統領当選
イタリアのアウトサイダーのポピュリスト連合政権誕生
フランスの黄色いベスト運動など
階級タイルtの炎が轟々と燃え盛った。
その火種は、半世紀も前からくすぶっていた。
127
上流階級の政治的スペクトルは、ミルトン・フリードマンが提唱した、過激な自由市場リバタリアニズムによって、右派と結びついている。
137
トランプが、ハッピー・ホリデーズではなく、メリー・クリスマスと挑戦的に使ったり
イタリアのサリヴィーニ内相が、イタリアの公共施設にカトリックの十字架を設置するように命じたりするのも
ポピュリズムの例。
204
人種や宗教の異なる大多数の労働者階級が必要としているのは、彼らがかつて持っていた力、今は失った力、
拮抗力(countervailing power)だ。
管理者、経営者エリートの不正をチェックする団結力を一般市民に与えることのできる、旧来の、草の根政党や、労働組合や、宗教団体に匹敵する、大衆参加型の組織がなければ、姑息な改革によって、人間の顔をした寡頭支配を生み出す。
233
フリードマンとは対極に位置するクルーグマンも
このフリードマンの政治的主張には賛同する
現代のアメリカは福祉国家であり
スキルの低い移民は、彼らが受ける便益の費用を賄うに足るだけの税金を納めていないから
低スキルの移民が福祉国家にもたらす政治的脅威は、より深刻だ。
と、クルーグマンも主張する。
252
権力をチェックできるのは、権力だけだ。 -
「右と左の対立」から「階級の上と下の対立」へと変化しているとするが、ポピュリズムは鎮圧される運命にあるとしている。この辺はやや楽観的かなという気がしないでもない。
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中野剛志の解説が蛇足気味なのが毎度。
【書誌情報】
『新しい階級闘争――大都市エリートから民主主義を守る』
著者:Michael Lind(1962-)
訳者:寺下 滝郎
監訳:施 光恒
解説:中野 剛志
東洋経済新報社
2022年11月18日 発売
ISBN:9784492444719
サイズ:四六/並/294
「資本家」対「労働者」から「大都市エリート」対「土着の国民」へ。左右ではなく「上下」対立の時代を読み解くバイブル。ポピュリズムは病原ではなく症状だ。民主主義を滅ぼす病原は新自由主義にある
https://str.toyokeizai.net/books/9784492444719/
【簡易目次】
巻頭解説 「啓発されたリベラル・ナショナリズム」という思想(中野剛志)
イントロダクション 反乱か、革命か
第1章 新しい階級闘争
第2章 「ハブ」と「ハートランド」:新しい階級闘争の戦場
第3章 世界大戦とニューディール
第4章 上からのネオリベラル革命
第5章 ポピュリスト――下からの反革命
第6章 ロシアの操り人形とナチス:ポピュリスト有権者を悪者扱いする管理者エリートの手口
第7章 労働者のいない楽園:姑息な新自由主義的改革
第8章 拮抗力:新しい民主的多元主義に向けて
第9章 民主的多元主義にとって安全な世界を
エピローグ 「新しい階級闘争」を終わらせる方法
【監訳者解説】新自由主義的改革に反省を迫り、民主的多元主義の再生を促す書(施光恒) -
1970年代から上流階級のエリート層が上からの改革により、新自由主義に基づくグローバル化推進策が徐々に取られることよって、庶民層との新しい階級闘争が生じた。それに対する庶民層からの反発として、ブレグジットやトランプ大統領の誕生など、下からのポピュリストの反革命が生じている。
ニュースを見て、世の中がおかしな方向に動いているとの実感があったが、ようやく構造が理解できた気がした。解決のためには、労働組合などの様々な中間単体を再生し、庶民層の利益や見解を代弁し、政治に反映させる拮抗力か必要とのこと。
様々な物事は、振り子のように動きバランスをとるものなので、今は振り子が元に戻ろうとしている過渡期という事だと思う。
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欧米での新自由主義的エリート層と非エリートのポピュリズムの対立と分断状況を語る。著者自身は、前者の支配と扇動的で破壊的な後者に対し、共に批判的だ。
戦時の労働者階級の地位向上などで、WWII期から戦後初期にかけて階級対立は緩和したが(「階級間の平和条約」)、1960〜70年代に「上からのネオリベラル革命」、それに対しポピュリストによる「下からの反革命」が起きたとする。
その上で著者は、労働組合など各種中間団体が形成され、それらを通じて庶民の声が政治に届く民主的多元主義が重要だと強調する。新自由主義が限定的なモデルとして、日韓台を肯定的に見ているのが面白い。 -
●「リアリズム」国家は自国の安全保障を第一に考えて行動するもの。国家の軍事行動は、自国の安全保障を確実なものにする上で必要最小限でなければならないと考える。
●「経済ナショナリズム」保護主義で国家が積極的に産業の育成やインフラの整備を行う。
●リンドはこのリアリズムと経済ナショナリズムから構成される思想を「啓発されたリベラルナショナリズム」と呼んでいる。
●アメリカは冷戦終結後、この伝統的な様式を放棄した。変わってグローバル覇権を目指す、しかしこれが失敗した。
●権力は上流階級のエリートたちに集中し、労働者階級は発言する場を失った。この分裂は右と左の対立ではなく、階級の上と下の対立である。
●未来の仕事はソフトウェアのコーディングのような知識経済の仕事になると言うのが常識になっているが本当なのか?求人の絶対数が多い職業で見ると、4位のソフトやアプリ開発者のみ。他は看護師や清掃員など。成長による利益は、投資家やストックオプションを持つ経営者など、資本から収入を得る人々に集中している。労働生産性は、実質賃金よりもはるかに急速な伸びを示しているのだが増加のほとんどは資本の利益になっている。