経済ってそういうことだったのか会議 (日経ビジネス人文庫)

  • 日本経済新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (409ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532191429

感想・レビュー・書評

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  • 少し読むには古すぎた。
    話題が大昔のことなので答え合わせをするにはいいかもしれないが、経済を勉強したいという思いに対しては役に立つ本ではなかった。

  • ・竹中:多くの国で、本格的な開拓や移住はかなり早い時期に終わっています。日本では封建時代の話ではないでしょうか。
    ところが、アメリカは19世紀の終わりまでずーっと開拓してたんです。開拓をしていたということは、そこに白地地域があったということです。つまりフロンティアがあったがゆえに、アメリカの中に独特のシステムが自然にできあがった。フロンティアを開拓していくのに、国はどうしたらいいかというと、頑張れば頑張るほど儲かるような仕組みを人為的に作っておいてやればいいんです。隣の人のことをかまうより、自分で開拓しろ。そうしたら、この広大な土地は全部自分のものになると。この辺は、すでに村ができあがっていて隣の人と仲良くやっていきましょうというようなヨーロッパや日本とは全然違います。

    ・佐藤:もし世界を同じ通貨で統一すると大変なことになりませんか。たとえば、ここにある弱小国があったとしますね。もし、この国が共通の通貨、ドルとしましょうか、それを使ったりすると、ろくな産業もないから、この国がもっているドルは全部外に出ていってしまいますよね。そうなると使いたくても使うお金がなくなってしまって、国民は、この国で作ったジャガイモも買えなくなっちゃう状態に陥るんじゃないかなと思うんです。
    竹中:そうなるとジャガイモを外国に売るんですね。
    佐藤:ええ、何もなくなってしまうんです。ところが、通貨の統一に参加していない国だったら、少なくとも自分の国でお金を発券して、自分のジャガイモは売り買いできますよね。
    竹中:金融緩和して、金融刺激すればいいですからね。
    佐藤:ええ。全部統一してしまうと弱いところは極端に弱くなるなと思ったんです。
    竹中:だから、さっき言ったように、物や人が動くしかなくなるから、まったく人が住まなくなるとか、そういうことが起こるわけです。

    佐藤:日本の過疎の問題なんかそれと似たようなものですよね。
    竹中:まったく同じです。

    ・竹中:その意味で、今挙げた三つの国には共通項があります。多元主義によるチェック・アンド・バランスが作用しなかったのです。経済における多元主義というのはマーケットメカニズムです。それがタイの場合は外国為替の市場で働かなかった(タイ政府がバーツを対ドルで実質より高い水準で維持しようとして失敗した)。韓国の場合は財閥という特殊に保護したものがあることによって歪められた(ロシアやインドネシアへ海外投資をしており、それが安易で失敗した)。インドネシアの場合はその多元主義が政治の面で働いていなかった(スハルト体制の崩壊)。そういうことだろうと思うんです。

    ・竹中:最初に外国からお金を借りて工場を造ろうという場合、何の工場を作るかということになりますね。
    ソ連が同じような問題に直面したとき、彼らがまず選んだものは鉄だったんです。なぜならば、鉄は産業のコメであるから。鉄を作っておけば、それによって自動車や機械産業もできるはずだ。だからまず鉄を作るべきであると考えたのです。これは一つの考え方です。産業には川上と川下があって、最初に作られるものが川上です。ですから素材は川上です。川上で鉄を作れば、川下で自動車ができるはずだと考える。だから産業というのは川上から前のほうに展開させていきたいということで、「前方連環」の考え方というんです。これを実際にいくつかの国がやってるんですが、歴史的に見て必ずしもうまくいっていない。そうなると、あとは一つしかないですね。
    佐藤:川下から始めるんですね。
    竹中:そうです。たとえば、消費財。これを作れということになりますね。先に消費財を作って、それを伸ばしてから徐々に川上に移っていく。これを「後方連関」というんです。後方連関の方がうまくいくんです。それで実際にアジアの国はこれをやるんです。
    なぜうまくいくかというと、鉄より、まず消費財のほうが必ず需要があるからなんです。需要があるということは必ず儲かるということです。必ず儲かるということは、この消費財を作るときに必要な、ものを供給する、何か中間的なものに対しても必ず需要が発生する。どんどん川上を産業がめざしてのぼるわけです。だからうまく行く。この後方連関のメリットを主張したのがハーシュマンという学者なんですが、現実にある程度の成功を収めました。では、消費財から作るのがいいとして、その中でもどんな消費財を作ればよいか。佐藤さんならどう考えますか。
    佐藤:当たり前かもしれないけど、まずは自分の国に不足しているものでしょうか。
    竹中:その通りなんです。消費財の中でも、特に今輸入しているものを作る。それで競争力をつけたら、今度はそれを輸出できるようにする。これを輸入代替から輸出代替と言うんです。

    ・佐藤:たとえば「任天堂のファミコンがなぜここまで大ヒットしたか」っていうと、あれ、僕はテレビが各家庭にあったからだと思うんです。僕、それ「コバンザメの法則」って呼んでるんですけど。もし巨大な市場のものがあったら、それに付随するものっていうのは、最低限大ヒットするんですよ。携帯電話がこんなになったから、携帯ストラップのようなモノでも大きな市場になるんですよ。

    竹中:それを経済学の用語で表すと、「補完材と代替材」という考え方になります。「補完材」というのは、「コーヒーが売れればクリープが売れる」という関係です。これに対して、代替材というのは、新幹線に乗れば飛行機には乗らない―。つまり、新幹線か飛行機かという関係です。さっきのゲームは両方の面があるのかもしれません。
    佐藤:ああそうですね。「放送の代替」と「テレビの補完」ですね。

    佐藤:労働って何だろうと考えると、えてして経済行為としての労働というより、働くことの意味とか、自己実現としての仕事とか、そういう人生的な方向にどうしてもいってしまいがちですね。確かに自分にとって働く意味とはなんだろうとか、どんな職業に就くのが幸せなのだろうかと悩んだりすることもいいと思うんです。
    だけど、僕はそれをあえて「贅沢な思い」と思ってるんです。本当はそこで迷うことは正しいんでしょうけど、何だか贅沢な感じがするんです。だってついこの前まで、日本人のほとんどが「生きるため」に働いていたわけですよね。
    …だから僕は、ここでは人は何のために働くべきかとか、労働は美しいとか、そういった形而上の解答じゃなくて、経済学的な解答を知りたいんです。税制が共同体のあり方を変えるように、労働や労働の制度が人間のあり方や社会のあり方を変えることも当然あるだろうし、もしそうであるなら、税に公平、中立、簡素という三つの原則があったように、労働とはこうあるべきだという理想論が経済学にはあるのか…。
    竹中:面白いですが、すごく難しい問題ですね。ケインズという学者がいました。20世紀を代表する偉大な経済学者ですが、彼は経済学者の仕事なんか全然大したことないと公言してたんです。経済学は要するに虫歯の治療みたいなもんだ。虫歯がなくなれば、歯医者の仕事はなくなる。だから、みんなが食べていけるようになれば、経済学者の仕事なんかなくなる。つまり食べていけるかどうかを問題にしているうちはそれなりに幸せで、そこから先、衣食住がある程度満ちて、自分はどう生きるか、自分の幸せとは何か考えはじめたら、こんな厄介なことはない。だから、経済学者の仕事が終わったときに、実は本当の人間の問題が始まる、という言い方をケインズはしているんです。

  • 12年前発売の本

    でも、経済原理は変わっていない。

    アクアラインがコンクリート業界と鉄骨業界の妥協の産物というのが、印象に残る。

  • 経済に興味がなかった自分には、少し入りづらい内容だった。でも、本当は生きていく上で大事な、考えながら生活しなければいけないことがあると感じた。特に、アジア諸国との距離感や関係性ってしっかり個人で考えなければ!と感じる今日この頃。

  • (~2004大学時代の本@202012棚卸)

  • 大学の生協で買った。当時は蛍光ペンでマーカーを引いていたりしたが、一切何も記憶が残っていない。2002年の発行だが、そこそこ長いこと読まれているようなので、普遍的な内容が記載されているのだろう。経済の初学者が導入に見るのはよさそう。

  • 経済の基本的な事を知る意味では良書。大学生から20題に勧めたい一冊。

    ※日本の株式会社はコーポレートガバナンスが効いていない(経営と所有の分離)よって配当しなくて良いから内部留保があり、設備投資ができた。
    ※良い税とは①簡素②公平③中立である事。そこで公平というものの捉え方。→垂直な税、水平な税。応能負担か王駅負担か。
    ※アメリカで経済を語る時、要素還元的に見る→本当は複雑系で見ないといけない。
    ※アメリカ→ニューワールド、フロンティア、多様性
    ※多元主義は間違いを防ぐシステム
    ※教育はコンセプトとしては投資であっても会計上、税法上消費である
    ※日本のサラリーマン経営者はデグジットストラテジーを考えていない

  • 日本が生きる道というのはプロフェッショナルを一人一人が身につけていくことしかない

  • 経済の勉強と読んだが、体系的な本ではなく、
    内容も後半は自分には難しかった。

    お金とは信用だという話は
    わかりやすかった。

  • 元電通マンと新自由主義の旗手、二人とも慶応の教授という、いけ好かない(笑)お二人の対談。
    経済の基本がとても分かりやすかったです。

    パソナの話も出て来て(現在竹中氏はそこの会長)、どういう考えであんな政策を推し進めてたのか、理屈はわかりました。

著者プロフィール

国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構

「2024年 『宇宙ビジネスのための宇宙法入門〔第3版〕』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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