イノベーションの作法: リーダーに学ぶ革新の人間学

  • 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (369ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532195229

感想・レビュー・書評

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  • 野中郁次郎氏の著書「美徳の経営」で指名される「賢慮型リーダーシップ」の具体的事例を集めたような本。したがって、本書は「美徳の経営」と併せて読むほうが理解度が高まる。

    「美徳の経営」の「賢慮型リーダーシップ」の要点は以下の6つ。
     ・善悪の判断基準を持つ(共通善)
     ・場づくりの能力を持つ
     ・本質を直感的に掴む
     ・対話を通じて巧みに表現する
     ・清濁合わせのみ、あらゆる手段を使って実現する
     ・新たなる賢慮を育成する

    これらについて日本企業に置ける具体的な事例と要点が本書では整理されている。以下、解釈を含めて項目別にまとめる。

    《善悪の判断基準を持つ(共通善)》
    ○理想主義的な探求
     - 誰にとっても"よいこと”とは何か、明確にする
     - ”よいこと”を明確にすることで、直感力が身に付く
     - ”よいこと”を理想として追求することで、清濁あわせ飲むことができる
     - 本質を掴むことで、理想へのシナリオがが蹴る

    ○知的体育会計の追求
     - 不確実性が高い状況では、理想に向かう実践力が重要
     - 実践から入り、知識を得るのが知的体育会計
     - くるもの拒まずで文脈を太くしていく

    《場づくりの能力を持つ》
    ○場をつくる
     - 暗黙知が共鳴する場が必要
     - これからはモノではなく、コトを作る場が必要
    ○どうやって場をつくるか
     - 一体感によって場づくりを進める
     - 小さなコミュニティをつないでいく

    《本質を直感的に掴む》
    ○知のリンク
     - マクロとミクロをつないだ仮説生成力が求められる
     - 周囲を惹き付ける吸引力が水平展開を可能にする
     - 全体と個のバランスをとることが求められる
     - 二頂対立を越えた共通項を見いだす
    ○知のアライアンス
     - 本質をつかみ、知を水平に広げる
     - 知識が間接的に戦略上の力となる

    《対話を通じて巧みに表現する》
    ○感情知を力とする
     - 主観的な知識創造の仕組みが必要
     - 悲しみの共有が本質的な感情の共有
     - 感情の共有は巧みな言葉をもたらす

    《清濁合わせのみ、あらゆる手段を使って実現する》
    ○勝負師のカン
     - 分析からはイノベーションは生まれない
     - 主観と客観の双方のバランスをもって未来をみる
    ○コンセプトの重視
     - 共感を生み出すコンセプト設定が必要
     - 一皮むけることがイノベーターを生み出す
     - ミドルアップダウンが組織の要

    《新たなる賢慮を育成する》
    ○オープンに
     - オープン性が個別の善を共通善とする
     - オープンであるために、自らの生き方を確立する
     - 自らの生き方を確立することがイノベーションを引き起こす
     (まねをしているだけではイノベーションにはならない)
     - 守破離の精神を醸成する


    あとがきにあるQUESTの意味、というものも哲学的で面白い。
    ・Q:questing : 探求の心を持ち
    ・U : understanding ; 本質を理解し
    ・E : evaluating ; 価値を図り
    ・S:supporting : 他者を支え続け
    ・T : trusting : 事故と他者を信頼する
    これはイエズス会司祭のブルカ師の言葉だそうだ。イノベーターは「QUEST」を続けるべきだと改めて思い知らされる。

  • 貸出可能です!(2023/2/10現在)
    ※FAL所蔵品に変更(2022/10)

  • イノベーションを起こすポイントだけでなく、発案をビジネスとして実現するに至るまでのビジネスマンの作法を論じた一冊。13編の成功エピソードから共通する「知の作法」を抽出。著者の野中郁次郎は一橋大学の教授ということもあり、だいぶ”お勉強”サイドの書き方。専門用語やパターン化に持っていこうというきらいがあり、またその割に”勝負師のカン”が大事と言ってみたり、、実践をイメージしながら読むのは難しかったです。

    ポイントは
    ・顧客ベースの価値を信じ、実現するモデルを共同化し、
    ・その暗黙知を表出化させ、
    ・個々の知を連結化し、
    ・実現を共にするメンバーに内面化(落とし込み)をする。

    SECIモデル、というそう。

    実現にあたっては、手練手管を使い、最終的に勝ち組になればよし!(マキアベリズム)との考え方。

    そもそもイノベーションは千三の世界ですし、、個々の”当たり”のケーススタディよりも、社員が挑戦できる環境の醸成やヒット率の向上策が肝要と、改めて感じました。

    読むのであれば、目次〜はじめに、と終章をつまみ読みで良いかと思います。

  • 取り上げられた事例は、「イノベーション」?

  • 13の成功事例(マツダ・ロードスター、サントリー伊右衛門、帯広の北の屋台、近代マグロ、新横浜ラーメン博物館、 auデザインプロジェクト、シャープ・ヘルシオ、ソニー・フェリカ、ナチュラシステムズ、サッポロビール・ドラフトワン、トヨタ・二代目プリウス、はてな・インターネットサービス、Jリーグ・アルビレックス新潟)を取り上げて、イノベーターの条件を探った書。

    事例の全てに共通するのは、イノベーターの持つ、理想を追い求める執念の強さ。そして、現実に妥協せずに困難を克服していく、吸引力や政治力。確かに、とことんこだわり続け、頑張り抜く精神力と、現実に物事を動かす手練手管や政治力があれば、大抵のことは出来てしまうだろうなあ。

  • 2017.1.20
    細かい事例と解説がすごく参考になったが。読み返してみると終始同じことを言っている気が..。

  • 経営者のトップダウンではなく、また一研究者の発明でもない、組織としてのイノベーションにらついて書かれた本。大企業(特に日本企業)では、十分な裁量を与えられないままプロジェクトリーダーに任命されることがままあるが、そのような環境下でも周りを巻き込んでイノベーションを起こした人物たちを紹介する。
    リアリティに溢れ、大変おもしろい。

  • 事例から、要素のみを。

  • 作法。

  • サントリー伊右衛門のイノベーション。
    「従来の緑茶の製法では、茶葉から抽出したお茶を熱で殺菌するため、ペットボトルが耐えうる85度の高温にして充填し、30分ほど放置する過熱充填が行われている。しかし、85度では殺菌が充分でないため、茶葉にも抗筋力が強い渋み成分のカテキンを多く含むものを使わざるをえない。それに香料を入れたりして、旨みを補ったりしている。 これに対し、完全な無菌ルームで殺菌済みの容器に充填すれば、風味を損なわずに常温で充填できる。何より殺菌のことを考えなくてすむので、どんな茶葉でも自由に使えるという利点がある。ただ、この非加熱無菌充填方式には100億円規模の新たな設備投資が必要なため、どのメーカーもこの方法をとらない最大の理由になっている。
    サントリーは 伊右衛門の開発にあたって、この非加熱無菌充填方式以外に考えなかった。また900年に及ぶ日本のお茶の歴史と伝統を表現するため、京都福寿園との共同開発を提案した。 しかし毎年膨大な数の新商品が生まれ、そのうち僅かしか残らない千三の世界の清涼飲料のが世界。 寛政2年の創業以来200年にわたって茶葉にこだわりつづけた福寿園は、うちは事業ではなく家業です。次の代に引き継ぐのが使命で、そんなリスクの高い話には乗れまへん」とそっけなく断られた。」 

    - シャープ「ヘルシオ」のイノベーション

    ヘルシオのコア技術は、実はシャープ内にはなかった。社会に埋もれた知的資産と市場の潜在的ニーズをうまく結びつけたものだった。山口名産の海産物を干物にする乾燥システムが、その埋もれた宝だ。そのシステムは、「加熱水蒸気」を使って、ふぐの一夜干しを、外はこんがり、中はジューシーに焼き上げる。
    2000年頃、その焼き加減の素晴らしさに驚いたシャープの研究員が、加熱水蒸気の技術を家庭用の電子レンジサイズに小型化した、ヘルシオを開発する。

    加熱水蒸気の技術そのものは、100年前からあった。300度まで水を加熱して、食品に触れたときに水蒸気が冷えて液化するときに発生する凝固熱を利用して調理する。業務用では既に調理に使われていた技術だが、シャープは家庭用にコンパクト化することに成功し、ヒーターを使わず水で加熱する夢の調理器、としてヘルシオを発売した。

    ブラウン管の技術を持たなかったシャープが液晶テレビを開発した時と同じく、電子レンジの器官部品であるマグネトロンを外製で買っていたシャープが、マグネトロンを使わない電子レンジを開発する!という全く新しい発想の調理器を実現した。

    クレイトン・クリステンセンの「イノベーション」のジレンマによれば、大企業において、水蒸気加熱という”破壊的イノベーション”が生まれた場合、営業部門は、リスクの高い新製品企画を受け入れないことが多い。しかも、外から持ってきた技術である場合、自社技術へのプライドから、破壊的技術の採用には大きな抵抗がある。 大企業の力学を打ち破ってオンリーワンの技術を製品化する企業文化は、すごい。

    がんばれ、シャープ!

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著者プロフィール

野中郁次郎
一九三五(昭和一〇)年、東京に生まれる。早稲田大学政治経済学部卒業。富士電機製造株式会社勤務ののち、カリフォルニア大学経営大学院(バークレー校)にてPh.D.取得。南山大学経営学部教授、防衛大学校社会科学教室教授、北陸先端科学技術大学院大学教授、一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授などを歴任。一橋大学名誉教授。著書に『組織と市場』、『失敗の本質』(共著)『知識創造の経営』『アメリカ海兵隊』『戦略論の名著』(編著)などがある。

「2023年 『知的機動力の本質』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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