イノベーションの作法: リーダーに学ぶ革新の人間学
- 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版 (2009年12月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (369ページ)
- / ISBN・EAN: 9784532195229
感想・レビュー・書評
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貸出可能です!(2023/2/10現在)
※FAL所蔵品に変更(2022/10) -
取り上げられた事例は、「イノベーション」?
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13の成功事例(マツダ・ロードスター、サントリー伊右衛門、帯広の北の屋台、近代マグロ、新横浜ラーメン博物館、 auデザインプロジェクト、シャープ・ヘルシオ、ソニー・フェリカ、ナチュラシステムズ、サッポロビール・ドラフトワン、トヨタ・二代目プリウス、はてな・インターネットサービス、Jリーグ・アルビレックス新潟)を取り上げて、イノベーターの条件を探った書。
事例の全てに共通するのは、イノベーターの持つ、理想を追い求める執念の強さ。そして、現実に妥協せずに困難を克服していく、吸引力や政治力。確かに、とことんこだわり続け、頑張り抜く精神力と、現実に物事を動かす手練手管や政治力があれば、大抵のことは出来てしまうだろうなあ。 -
2017.1.20
細かい事例と解説がすごく参考になったが。読み返してみると終始同じことを言っている気が..。 -
経営者のトップダウンではなく、また一研究者の発明でもない、組織としてのイノベーションにらついて書かれた本。大企業(特に日本企業)では、十分な裁量を与えられないままプロジェクトリーダーに任命されることがままあるが、そのような環境下でも周りを巻き込んでイノベーションを起こした人物たちを紹介する。
リアリティに溢れ、大変おもしろい。 -
事例から、要素のみを。
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作法。
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サントリー伊右衛門のイノベーション。
「従来の緑茶の製法では、茶葉から抽出したお茶を熱で殺菌するため、ペットボトルが耐えうる85度の高温にして充填し、30分ほど放置する過熱充填が行われている。しかし、85度では殺菌が充分でないため、茶葉にも抗筋力が強い渋み成分のカテキンを多く含むものを使わざるをえない。それに香料を入れたりして、旨みを補ったりしている。 これに対し、完全な無菌ルームで殺菌済みの容器に充填すれば、風味を損なわずに常温で充填できる。何より殺菌のことを考えなくてすむので、どんな茶葉でも自由に使えるという利点がある。ただ、この非加熱無菌充填方式には100億円規模の新たな設備投資が必要なため、どのメーカーもこの方法をとらない最大の理由になっている。
サントリーは 伊右衛門の開発にあたって、この非加熱無菌充填方式以外に考えなかった。また900年に及ぶ日本のお茶の歴史と伝統を表現するため、京都福寿園との共同開発を提案した。 しかし毎年膨大な数の新商品が生まれ、そのうち僅かしか残らない千三の世界の清涼飲料のが世界。 寛政2年の創業以来200年にわたって茶葉にこだわりつづけた福寿園は、うちは事業ではなく家業です。次の代に引き継ぐのが使命で、そんなリスクの高い話には乗れまへん」とそっけなく断られた。」
- シャープ「ヘルシオ」のイノベーション
ヘルシオのコア技術は、実はシャープ内にはなかった。社会に埋もれた知的資産と市場の潜在的ニーズをうまく結びつけたものだった。山口名産の海産物を干物にする乾燥システムが、その埋もれた宝だ。そのシステムは、「加熱水蒸気」を使って、ふぐの一夜干しを、外はこんがり、中はジューシーに焼き上げる。
2000年頃、その焼き加減の素晴らしさに驚いたシャープの研究員が、加熱水蒸気の技術を家庭用の電子レンジサイズに小型化した、ヘルシオを開発する。
加熱水蒸気の技術そのものは、100年前からあった。300度まで水を加熱して、食品に触れたときに水蒸気が冷えて液化するときに発生する凝固熱を利用して調理する。業務用では既に調理に使われていた技術だが、シャープは家庭用にコンパクト化することに成功し、ヒーターを使わず水で加熱する夢の調理器、としてヘルシオを発売した。
ブラウン管の技術を持たなかったシャープが液晶テレビを開発した時と同じく、電子レンジの器官部品であるマグネトロンを外製で買っていたシャープが、マグネトロンを使わない電子レンジを開発する!という全く新しい発想の調理器を実現した。
クレイトン・クリステンセンの「イノベーション」のジレンマによれば、大企業において、水蒸気加熱という”破壊的イノベーション”が生まれた場合、営業部門は、リスクの高い新製品企画を受け入れないことが多い。しかも、外から持ってきた技術である場合、自社技術へのプライドから、破壊的技術の採用には大きな抵抗がある。 大企業の力学を打ち破ってオンリーワンの技術を製品化する企業文化は、すごい。
がんばれ、シャープ!