- Amazon.co.jp ・本 (118ページ)
- / ISBN・EAN: 9784560019757
作品紹介・あらすじ
スピノザ、ニーチェ、カフカ、ゴダール…。その線の上にサミュエル・ベケットがつらなるとき、という新しい哲学概念がかたちづくられる。本書をもって、ベケットのテレビ放送用シナリオ4作品とドゥルーズ待望のベケット論、すなわち演劇と思想の最先端がスリリングに邂逅する。
感想・レビュー・書評
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《目次》
・ 消尽したもの
・ クワッド
・ 幽霊トリオ
・ ……雲のように……
・ 夜と夢
・ イメージからイメージへ 宇野邦一
・ 訳者あとがき詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
晩年のドゥルーズによるベケット論に、幾つかのTV用作品を収録したもの。消尽したもの―それは単に使い果たされた状態を指すのではない。そこには存在しない、言葉の射程の可能性すら酷使し尽くし、言葉ごと周囲の空間や想像力を削り取る様な、ある種の真空地帯を作り出すことにある。全て奪いつくされたかの様な―それでも想像力は決して奪いつくされることはないのだと証明するかのような、最果ての表現は嫌が応にも私たちの想像力を飢餓状態に追い込むことで、逆説的に喚起させるのだ。言葉は消尽されても、想像力はこれ程までに残されている。
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この小論はたしかにベケットの仕事を尽くしており、芸術論としても掛け値なく美しい。だが、ドゥルーズの本にしては奇妙な閉塞感をおびていることもまたたしかである。何よりも、他の著作に感じられるような、あの伸びやかな喜びがない。それはおそらく、消尽が終わるための方途であるからにほかならない。ベケットを消尽することで、ドゥルーズ自身も消尽するのだが、本書の論理に従えば、またその逆も言えるのだろう。
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読書中