- Amazon.co.jp ・本 (234ページ)
- / ISBN・EAN: 9784560071250
作品紹介・あらすじ
本書は、現代イタリア文学の旗手アントニオ・タブッキが、見事に「逆さまゲーム」でありながら、頭脳的なゲームにおわることなく、ふかい人間的な感動をともなう世界をノスタルジックに描く。
感想・レビュー・書評
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表題どおり、それまで見えていたものがくるっと反転して終わる短編が集められている。理に勝ちすぎず、静かな感動や驚きを残して終わる話が多いのが好ましい。最初の「逆さまゲーム」、「カサブランカからの手紙」、「芝居小屋」が特によい。また、最後の「オリュンピアの一日」に出てくる「《時間》についての話」はタブッキが生涯追求していた時間と記憶というテーマが端的に表れていて興味深かった。
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本屋さん店頭で「須賀敦子没後20年」フェアやってたので足を止め、そういえばタブッキのこれだけまだ読んでなかったっけと思い手に取る。どんでん返し・・・というほどではないけれど、おもにオチで読者の思い込みを裏切るささやかな「さかさま」が用意されている短編集。
表題作含め、前半三作「カサブランカからの手紙」「芝居小屋」が面白かった。というか、オチがわかりやすくて良かった。「土曜日の午後」あたりはちょっと謎解きが難しい。どう解釈すればいいんだろう。冒頭の自転車の人物がお父さんなのか???
「小さなギャツビイ」はフィッツジェラルドへのオマージュらしく、フィッツジェラルドを読んでいればもっと楽しめるのかも。「空色の楽園」はイケバナが趣味で浮世絵を買ったりするご婦人が出てくるので日本人むき。
「行き先のない旅」は実在の詩人ディーノ・カンパーナが主人公。精神病院を出たり入ったりしていたというこの詩人の、無垢で無邪気な感性が短い中にぎゅっとエピソードとしてまとめられていて、彼が夕焼けの色彩を音楽に例える冒頭からしてとても美しい。
「オリュンピアの一日」はこちらも実在の詩人、古代ギリシャのピンダロスが体験するオリュンピア(現代のオリンピック)の一日。まあ言ってしまえば夢オチなのだけど、古代ギリシャというのがなんかいい。
※収録
逆さまゲーム/カサブランカからの手紙/芝居小屋/土曜日の午後/小さなギャツビイ/ドローレス・イバルーリは苦い涙を流して/空色の楽園/声たち/いくつかの短篇(1981~1985年)(チェシャ猫/行き先のない旅/オリュンピアの一日) -
ラストで話しがひっくり返るような短編を集めた本、なのだが、どんでん返しへの期待はすっかり忘れ、唯々タブッキの文章に溺れそうになりながら読んだ。静かな文章は焦らすように私の中に入り込んで、いつの間にか心臓をぎゅっと掴まれている。
美しい思い出、起きてしまったこと、会えない人、いつか歩いた街。あるいは切望しながら遠くにあるもの。そういう事柄を想うときの心を灼くような、悲しいのか愛しいのかも判らずに涙が零れ落ちるような、心の奥にあって激しい昂ぶりをサウダージと言うのだろうか。 -
現代イタリアの作家。雰囲気は良いけど、状況がつかみきれない話もあったり。
須賀敦子って翻訳もしてたんですね。 -
インド夜想曲の流れで読んでみる。
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期待して読み出したが、どの短編も面白くなかった。
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タブッキの中ではわりと好きな作品。
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表題作、行ったこともないポルトガルに居るような気分にさせられる。太陽の下の、目を焼くような白さと、それを避ける全てが佇んでいるような影の濃さ。亡くなったマリアの姿を「ぼく」の思い出の中に、その足跡を影の中に辿ってゆくような感覚。
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「カサブランカからの手紙」がまったく感動的で、耳の奥でとびきり甘いヴォラーレが流れているくらいだ。