シガレット (エクス・リブリス)

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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (370ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784560090282

感想・レビュー・書評

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  • ロバートアルトマンの「ショートカッツ」みたいな構成。長編だが、章ごとに描かれる人物が入れ換わる。それが四人とかならまだしも、色々な組み合わせ、家族、浮気相手、仕事仲間だったり11人。そうして描かれた先に何があるのかはよくわからなかった。実験的組織メンバーの実験的作品とのことですが、それはー、意味はー、あるのかー。作者はニューヨーク生まれで、何かニューヨークってある種の鈍さと図々しさがないと自分ー見失う場所なのかなー、と思った。

  • 13人もの登場人物のそれぞれの視点の物語がいくつもあるのに複雑にならず読みやすく、たまに流し読みしても話を見失わなかった。
    非常に丁寧に作られていると、読んでいて感じました。
    ラストがとても美しいです。もう少し経ったら、今度は相関図を作りながらゆっくり読もうと思います。

  • まさしくTVの連続ドラマのようでおもしろかった。背後の小説の骨格のような物を想像しながら読むとさらに楽しい。章題の人物によって視点が変わっていくけれど、最終章を除いて各章の基本的な構造は同じような感じだから、登場人物 x 出来事 x モノの組み合わせなのかなーとか。でも、どうしてタイトルがCigarettesなんだろう...

  • 登場人物の関係が複雑だったので図にまとめて読みました.まとめながら読むと閉じている(すべてに辻褄が合う)ことがわかります.文章も美しいし,描かれている人間関係も美しいし(どろどろはしているけど),構造も美しい.もっと広く読まれるべき作品だと思います.

  • 1936〜38年と1962〜63年とを行き来しながらの、N.Y近郊に暮らす上流階級の人々が各章ふたりずつペアで登場する小説。ナボコフのような精緻な構成、ジェイン・オースティンばりの皮肉な心理描写とある。
    一つの出来事を違う角度、ちがう視点からみると、なんとも複雑な様相を呈してくるのだけど、人と人とが関わるとこうなってしかるべきという気もする。含蓄や示唆に富んだ文章や思索のなかで迷子になったことも多々あるものの、パズルのピースがはまっていく手触り、かちっとした作りには「小説を読んだー」って感覚を味わった。今はまだそんな気になれないけれど、本当は二度読むべき小説かも。

  • 話の特徴的な運び具合からエンタメ性を期待しすぎた感が途中からあり、あれ?っと思いながら最後付近読んでたけど、シメがそのあれ?を全てを吹っ飛ばして、とても好きな話となった。
    各章前後(いや常に前のみだけど)確認しながら読んでったけど、二周目読めば、最も色々わかってニヤニヤでしょうなぁ。

  • 「感情移入ができず玉砕」

    ニューヨーク周辺の上流階級に生きる13人におよぶ人々を、妻と愛人、父と娘、姉と弟など二人ずつ取り上げ次々と語り継ぎながら、パズルを埋め合わせていくようにその人間関係を描く。

     なんらかの繋がりのある人々を関係別に語り継ぎながらその人間関係の全体像をみせていくという凝ったつくりの小説で、技巧的にうまくできているなあと思う。にもかかわらず、ここからは個人的な問題なのだが、自分はどうしても本書の登場人物に感情移入ができなかった。ニューヨークの上流社会に生きる人々のメンタリティーがあまりにかけ離れたものなのか、あるいはアメリカ社会についての自分の先入観が無意識のうちに壁を作るのか。

     チャールズ・ダンブロジオ 『岬 The Point』を読んだときのことを思い出す。『岬』は70年代アメリカを舞台に、親子や夫婦、友人といった人の関係の中で何かを失った主人公たちのその一瞬を詩情豊かに描く短編集だったが、感情移入ができず苦しかった。アメリカの作家の作品を読むとどうも拒否反応が起こってしまう。

     どこかに自分の心に響いてくるものがないか、彼らの気持ちをわかろうわかろうと探りあぐねているうちに終わってしまったという感じ。本書のウリは「ナボコフのような緻密な構成、ジェイン・オースティンばりの皮肉な心理描写」とのことで、自分は力及ばずだったが、あるいはこの二人の作家を読み込んでいる方になら、非常に面白く読めるのではないかと思う。

  • 本作とは直接の関係は無さそうだが、
    潜在的文学工房「ウリポ」を初めて知った。
    かなり考え込まれたプロットに困惑させられるも、
    ランダムに配置されたスライドパズルを完成出来たかのような読後感。
    2 回読み、3 回読みが出来るというか、
    複数回読むほどに深みの真実に近づけるような気がする。
    冒頭と結末のメタ的なつながりは潜考を要する。

  • 初めのうちは、男女の軽い話のようですが、徐々にいろいろな関係が錯綜してきて、テーマも重くなってきます。が、決してドロドロとしたものではなくカラッとした、そして淡々とした流れのままに進みます。結局、天才画家が描いた一枚の肖像画とそれを取り巻く人々の長い年月にわたる因縁譚。そして奔放に見えながらも、深い悲しみを抱えた、その肖像画のモデルも憐れな気がします。これから本書を読むのであれば、登場人物の関係図を作りながら読むことをお薦めします。

  • 実験的文学者集団「ウリポ」のメンバーの書籍は必読!

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    http://www.hakusuisha.co.jp/exlibris/

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著者プロフィール

1930 年ニューヨーク生まれの米国人作家。1960年代結成の実験的文学者集団「ウリポ」(メンバーにはレーモン・クノー、ジョルジュ・ペレック、マルセル・デュシャン、イタロ・カルヴィーノ、渡辺一夫ら)に属し、短篇、長篇、詩、エッセイなどを多数発表。

「2013年 『シガレット』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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