1冊で知る 虐殺 (「1冊で知る」シリーズ)

  • 原書房
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感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784562045235

作品紹介・あらすじ

虐殺(ジェノサイド)は遠い過去の特別な事件ではない。なぜ・どこで・誰が虐殺をするのか。そして、虐殺を防ぐために何をすればよいのか。世界の「リアル」を知る、ワン・テーマ・ブック。

感想・レビュー・書評

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  •  集団虐殺のことを「ジェノサイド」と呼ぶが、この言葉はいつからこう呼ばれるようになったのか。またジェノサイドは人類史上いつ頃から起きたものなのか。あるいは古代から常に起き続けているものなのか。現代でもなお旧ユーゴスラヴィアやルワンダでジェノサイドが起きる中、今後ジェノサイドを起こさないために人類は何をすべきか。
     ジェノサイドのことを考えるのは決して愉快なことではない。むしろその実態を知れば知るほど辛くなるし心が痛む。しかし人類はこの問題から目をつぶる訳にはいかない。ジェノサイドを二度と繰り返さないためにも、過去のジェノサイドを知り、これからの社会をどう構築していくべきか、人類全体が考えなければならない。この問題に無関係な人間なんていないのだ。
     ジェノサイドについて考える上で、理解しておかなければならないことは多い。歴史や政治、倫理、心理学、社会学まで、ジェノサイドが関わる分野は多岐に渡る。1人の人間がすべてを専門的に理解することは不可能に近いが、それらを包括的に理解する必要はある。ジェノサイドという難解な問題について平易な言葉で書かれたこの本はその入門書となるだろう。

  • 3.6/52
    内容(「BOOK」データベースより)
    『虐殺(ジェノサイド)は遠い過去の特別な事件ではない。なぜ・どこで・誰が虐殺をするのか。そして、虐殺を防ぐために何をすればよいのか。世界の「リアル」を知る、ワン・テーマ・ブック。』

    原書名:『Genocide』
    著者:ジェーン・スプリンガー (Jane Springer)
    訳者:築地 誠子
    出版社 ‏: ‎原書房
    単行本‏ : ‎176ページ
    発売日 ‏: ‎2010/2/24

  • "ジェノサイドという言葉をご存じだろうか?
    映画では、「ホテルルワンダ」「ランボー最後の戦い」などで、知ることができる。
    民族浄化、虐殺を人類は繰り返してきており、いまだに過去から学び正しているとは言えない。
    有名なものは、ナチスドイツのユダヤ人虐殺
    フツ族がツチ族を虐殺したルワンダの出来事
    虐殺は
    1.分類 彼らと私たちに分けられ
    2.シンボル化 彼らに名前を付ける
    3.非人間化 彼らを「動物、害獣、虫、病気」とみなす
    4.組織化 特殊部隊、民兵での殺害計画をたてる
    5.過激派による分離 集団を分離隔離する
    6.絶滅 集団を虐殺
    7.隠ぺい 加害者は虐殺を否定
    というプロセスをたどる。
    国際社会が気がついたときに、阻止する行動を起こすことを期待するが、今の社会ではできていない。

    深く考えさせられる本だった。"

  • ふむふむ、と勉強になることは多かったし、共感するところも多いけれど、どうも著者がヒステリックで教条的な思想を持ってそうな予感がして、そのへんはちょっと警戒せねばなと思う。

  • 【書誌情報】
    原題:Genocide
    著者:Jane Springer
    訳者:築地誠子
    解説:石田勇治
    カバー写真:頭蓋骨を突き刺している異物(撮影地:ルワンダ。1999年撮影。(C)corbis/amanaimages)
    出版社:原書房
    版型:四六判・184頁
    定価:1620円(本体価格1500円)

    「ほんとうのこと」を知ろう。世界の「リアル」を知るワン・テーマ・ブック。
     人が人を大量に殺す「虐殺」。それはアウシュヴィッツだけではないし、遠い過去の出来事でもない。人間はずっと虐殺をしてきたし、いまも虐殺は起きている。
     誰が・なぜ・どこで・誰を殺すのか。殺さないため・殺されないために何をすべきか。歴史の真実と人が生きる権利を知る。
    http://www.harashobo.co.jp/search/cgi-bin/how2buy.cgi?isbn=04523-5&qt=1

    【目次】
    目次 ([iii-vii])
    謝辞 ([viii])

    第1章 今日のジェノサイド 001
    どのようにジェノサイドは始まったのか?
    なぜジェノサイドは起こるのか
    二度と繰り返さない?

    第2章 人道に対する究極の罪 011
    人権の進化
    人道に対する罪
    人権協定
    ジェノサイド条約

    第3章 集団暴力の歴史 027
    勝者の歴史
    アメリカ先住民へのジェノサイド
    見て見ぬふり
    否定は続く

    第4章 ジェノサイドの論理 045
    なぜジェノサイドは起こるのか?
    どこでジェノサイドは起こるのか?
    いつジェノサイドは起こるのか?
    どのようにジェノサイドは起こるのか?
    ヒトラーのホロコースト

    第5章 ジェノサイドの分析 065
    誰が被害者になるのか?
    被害者を孤立させる
    誰が加害者になるのか?
    人に殺害させる
    罰せられる可能性
    誰が傍観者になるのか?
    ジェノサイドとジェンダー
    レイプと性的暴行
    レイプはジェノサイド的行為である

    第6章 ジェノサイドへの反応 091
    「われわれはジェノサイドを告発する」
    民衆法廷
    ジェノサイドに関わらない
    新しい権利の提案
    ユーゴスラビア法廷
    ルワンダ法廷
    国際刑事裁判所
    国際法廷の影響力
    記憶と忘却
    生存者の救済
    謝罪と賠償
    真実和解委員会

    第7章 ジェノサイドの防止 123
    防止への第一歩
    各国政府の役割
    人道機関の役割
    メディアの役割
    国際連合の役割
    個人の役割
    早く警告を出す
    被害者への支援に天災と人災の区別はいらない

    解説 ジェノサイドへのアプローチ(石田勇治) 147
    はじめに
    人間の性か
    「名称なき犯罪」から独立犯罪へ
    集団抹殺
    広義のジェノサイド
    ジェノサイドの目的と類型
    非対等戦争下の大量殺戮
    関東大震災直後の朝鮮人虐殺
    参考文献

    人権とジェノサイドの年表 [159-161]
    歴史上のジェノサイド [162-167]
    注 [168-175]

    〇コラム
    詩歌に讃えられなかった英雄 016
    わたしたちにはどんな権利があるのか? 020
    アルメニア人虐殺 036
    奴隷貿易はジェノサイドか? 039
    ウクライナ大飢饉 042
    人種主義とジェノサイド 051
    流れ作業のジェノサイド 060
    言葉で人を殺す 068
    ジェノサイドの8段階 071
    カンボジアのジェノサイド 078
    トゥールスレン刑務所 081
    ボスニア・ヘルツェゴヴィナのジェノサイド 086
    慰安婦問題 089
    ルワンダのジェノサイド 101
    ガチャチャ裁判 111
    加害者の反応 115
    グアテマラ真実和解委員会 120
    抵抗者と救済者 130
    良い警官? 悪い警官? 132
    身分証明書 143



    【抜き書き】
    □□第5章 ジェノサイドの分析 
    □p. 73 
    戦場で人を殺すように訓練された兵士でさえ、他国の兵士を殺すのは気が進まないという。第二次大戦中のアメリカのライフル銃兵を意識調査したところ、「訓練されたライフル銃兵のうち、実際に戦場で発泡したのは15パーセントだけだった」ことがわかった。[注4]アメリカ軍はこの結果を踏まえて、兵士が何も考えずに的確に撃つことを徹底的に訓練させた。

    [注4]グウィン・ダイアーの著書『War』(Crown Publishers, 1985)p. 118



    □□第7章 ジェノサイドの防止
    □pp. 141ー142
     ジェノサイド問題の活動家はさまざまなジェノサイドの共通点を分析して、いつ、どこでジェノサイドが起こりそうかを予想できる「早期警告リスト」を作成した。そのリストにはジェノサイドの初期の兆候が載っている。
    ・身分証明書を利用して特定集団を識別する。
    ・特定集団への差別を防止したり、罰したりする法律がない。
    ・権力の座から特定集団を排除する。
    ・メディアを利用して特定集団を悪魔や非人間のように言う。
    ・特定集団を差別する。
    ・特定集団を土地や所有地から強制的に移動させたり、追い立てたりする。
    ・特定集団が必要不可欠なサービスや援助を受けられないようにする。
    ・民兵組織や自警団組織が存在する。[注12]
     このうちひとつかふたつは特定集団への迫害状況を示しているが、必ずしもジェノサイドに至るとは限らない。だがいくつかの項目は、深刻な人権侵害であることを警告している。

    ▲[注12]NGOのMinority Rights Group International と あらゆる形態の差別及び人種差別に反対する国際運動(International Movement Against All Forms of Discrimination and Racism)の共同声明。国連人種差別撤廃委員会(2005年2月28日から3月1日にかけて、ジェノサイド防止に関するテーマ別の議論が行われた)に向けての共同声明。ファン・E・メンデスの演説“Ultimate Crime”

  • ジェノサイドは「ひとりの邪悪な人間」のせいで起こったとする理論がある。その最たる例がナチスドイツによるユダヤ人とロマの大虐殺で、ヒトラーのせいで起こったと考える。確かにヒトラーもジェノサイドを決定したキーパーソンであることは間違いないが、彼だけではやり遂げられなかったはずだ。つまり多くの人がジェノサイドを支持して手を貸したことになる。

  • ものすごく面白い!
    2ちゃんねる上の朝鮮人差別を経由した間接的な殺害などと関連するようなところもあったので、すごく共感する記述が多かった。

  • 国名をタグでつけようと思ったけどつけきれなかった。
    まさに古今東西、どこでも起こり続けているできごと。

    しかし現在のジェノサイドは新しいボス猿が古い血を根絶やしにする単純な形ではない。
    大国の思惑に左右され、「どうでもいい場所」だから見過ごされ(それどころか加速され)、「どうでもいい国」だけが裁かれる。

    被害者を貶め、切り離し、殺してもいい他愛ない(あるいは有害な)存在にしてから実際の行為に移るという王道展開の前半が、あまりに身近にありふれた景色でぞっとする。

  • 今も世界のどこかで行われているジェノサイド。ジェノサイド条約があるもの、どの国も自国に都合の悪い条件を抱えている。世界から本当にジェノサイドがなくなる日は来るのだろうか。

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