わかりあえない他者と生きる 差異と分断を乗り越える哲学(「世界の知性」シリーズ) (PHP新書)

制作 : 大野 和基 
  • PHP研究所
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569851570

感想・レビュー・書評

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  • ガブリエルの新実存主義の具体例がよく分かる一冊。読む順番としては未来への大分岐→本書が良いかも。

  • 「新しい実在論」、「新しい実存主義」を提唱するマルクス・ガブリエルのインタビューをもとにした本。

    哲学者としては、若いし、かっこいいし、現実的な提言もおこなうしということで、最近、人気の様子。

    あれもこれも実は存在するが、「世界」つまり、唯一の意味をもつ総体のようなものは存在しない、という主張は、彼に期待されているように思える「相対主義の乗り越え」というより、「相対主義の徹底」のように私には思える。

    この哲学的なポジションは興味あるところで、彼の本はわりと読んでいます。

    で、最近は日本でも人気で、インタビューをベースとした日本企画ものの本も多くなっている。

    なるほどと思うところも多いのだが、政策提言的なところについては、よく言えば現実的、悪く言えば、わりと常識的かな?

    彼の哲学的な主張と政策提言がどうつながっているのかはよくわからないでいるのだが、そんなに単純に良い悪いを言うことができるのかな?と思ってしまう。

    この本の「他者論」もそんなに新しいものに思えないし、コピーにあるように「差異と分断を乗り越える」ような思想ではない気がする。

    う〜ん、なんでもかんでも「哲学者」に聞いてみるというのも、そろそろやめた方がいいのかも。

    わたしも、ガブリエルのこの手のインタビュー本を読むのは、この辺までとして、「なぜ世界は存在しないのか」3部作の最終作が翻訳されるのを待とう。

  • 第1章 私にとって「他者」とは何か
    1.他者と生きるとはどういうことか
    新実存主義における他者性
    従来の哲学における他者認識は、何が問題だったか
    アイデンテイティは人間の出発点ではない
    他者と折り重なって生きる、ということ
    2.他者と折り重なって生きる、ということ
    SNSは「アイデンテイティ」を押し付けてくる
    ソーシャルメディアと承認欲求
    我々はソーシャルメディアといかに付き合うべきか
    3.他者と分断
    分断の克服において大切なこと
    他者への偏見の解消のために何ができるか?
    資本主義が生み出す「内なる他者」
    4.近代の発展と他者の在り方
    非人間化とは「他者を動物として捉えること」
    「機械化」は人間に何をもたらすか
    なぜ他者との関係において「尊厳」が必要なのか
    5.我々は他者とどう向き合うべきかー実践論
    日本的同調圧力をどう見るか
    他者を、そして自分を「許す」ー今、必要なこと
    自分と異なる視点に気づくたった―つの方法
    「寛容な気持ち」を持っために必要なこと
    第2章 我々はいかに「他者」とわかりあうべきか
    1.お互いがわかりあえる社会をどう作るか
    話し合いは万能の解決策である
    哲学者は民主主義役務に服するべき
    「対話できない相手」と話し合う方法とは?
    2.対話と民主主義、政治
    ガプリエルが語る「民主主義」の意味
    フェイクニュース、教育、倫理学
    「違いにこだわらない政治」の実現に向けて
    他者の身になって「迎い」を具体的に捉えよ
    違いにこだわらない政治へと、どう移行するか
    3.科学、テクノロジーの発展と他者性
    自然主義は「私と他者」の関係に何をもたらしたか
    テクノロジーは人間から何を奪うか
    科学とテクノロジーを「倫理で動かす」社会をどう作るか
    第3章 家族とは何か、愛とは何か
    1.家族と他者、その関係性について
    家族とは「親密さ」を基盤とした結ぴつきである
    毒親とどう接するべきか
    人生は有限だと自覚することのメリット
    問題のある家族とどう付き合うか
    「私なんて、生まれない方がよかった」は真実か
    2.自由、愛、死とは何か
    自由と束縛のはざまで
    「正しい束縛」を社会の中でいかに形成するか
    愛し方を学ぶー現代における恋愛の意味
    恋と愛と嫉妬の本質とは何か
    家族を健全に保つのは「正しい喧嘩」である
    無目的、非効率にこそ意味がある
    第4章 自己の感情とどう向き合うか
    1.他者が生み出す「幸せ」の形
    「今、ここ」にある幸せの感じ方
    テクノロジーの発展は幸せを生み出しているのか
    社会的孤立と身体性、パンデミック
    孤立と幸せは両立するのか?
    2.負の感情から抜け出す処方箋
    他者に対する怒りは、自分に対するもの
    「抱くべき怒り」とはどんなものか
    怒り、悲しみとどう付き合うか
    第5章 宗教や倫理と他者の関係
    1.宗教は「救いと対立」のいずれをもたらすか
    宗教と道徳、倫理学の関係性
    私が「現在主義」に注目する理由
    倫理学を次枇代に伝えていくために必要なこと
    道徳が「普遥的価値」を生む契機となる
    普遍的価値は存在するーその哲学的証明
    2.利他主義、格率ーなぜこれらは間違いなのか
    なぜ利他主義は道徳と言えないのか
    カントの犯した過ちとは何だったのか
    2.人間が人間たりえる条件とはー他者論の文脈から
    集団であることの意味
    タリバンとの話し合い
    「無知の知」を乗り越えるために必要なこと

  • 対話形式の書き方になっていなかったので、話題のバラツキや主張・主観が多く、読みづらかった。時には、著者の既刊を読まないとわかりにくい単語もあった。
    しばらく読むと、インタビューだと分かり、そのつもりで読んだことで、ある程度理解できるようになった。
    改めて表紙を見たら、インタビュー◯◯と名前が書かれていた。まず、インタビューと書いた帯をつけるか、表紙にもっと大きな字でインタビューと書いて欲しかった。しかも、これこれに続く第三弾だと。前2作を読まないと読みにくい本なら、買わなかったかもしれない。

    内容としては、私自身の感覚と一定のズレはあるが、まぁ参考になるという程度か。大きな感覚の変化は感じなかった。対話できない相手と話し合う方法は、参考になる。星二つはこの一点かな。

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著者プロフィール

【著者】マルクス・ガブリエル
Markus Gabriel/1980年生まれ。後期シェリングの研究によりハイデルベルク大学から博士号を取得。現在、ボン大学教授。日本語訳に、『神話・狂気・哄笑:ドイツ観念論における主体性』(ジジェクとの共著、大河内泰樹/斎藤幸平監訳、堀之内出版、2015年)、『なぜ世界は存在しないのか』(清水一浩訳、講談社選書メチエ、2018年)、『「私」は脳ではない:21世紀のための精神の哲学』(姫田多佳子訳、講談社選書メチエ、2019年)、『新実存主義』(廣瀬覚訳、岩波新書、2020年)、『アートの力』(大池惣太郎訳、堀之内出版、2023年)など。

「2023年 『超越論的存在論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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