破滅の王

著者 :
  • 双葉社
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感想 : 74
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  • Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575240665

感想・レビュー・書評

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  • 中国発のコロナウイルスのため外出制限中に、思いがけなく細菌兵器を題材にした本書に巡り合ったのは不思議な縁を感じた。史実の流れに沿ったせいかフィクションとしてはけれん味に乏しくなってしまったのか、ちょっともの足りない印象。

  • 第二次世界大戦前夜。上海自然科学研究所勤務の細菌科学研究員・宮本敏明を武官補佐員・灰塚が訪ねてくる。折しも親友で同僚の六川が何者かに殺された。そこには「R2v」という新しい細菌が書かれた文書が関わっていた。
    「R2v」を巡って、世界が人類愛と憎しみのどちらを選ぶのかをかけた戦いが始まる。

    科学者と軍人スパイ、抗日集団、ナチスとこの時代を自分の矜恃で立ち向かう人々。善悪決められず、誰もが正しく対立するので読んでいる人は考えせられます。

    「科学者の目標は真理の探究であり、真理は国家を越えるものであるからです」
    新しい発見をするために研究をする。それが必ずしも良いことではない。人類にとって最悪と思えることが連係を生むこともある。2020年のCOVID19時代を体験している中、必要とされる本ではないでしょうか。

  • 上田早夕里はもうSFしか読むまい、と思っていたのだけれど、直木賞にノミネートされたのでついつい手に取ってしまった。あいかわらず素材をしっかりと調べていながら、エンターテイメントに昇華するにはもう一歩何かが足らない、という印象だ。当時の上海の空気や日中関係などはとてもリアルに感じられて、戦時にいるような気分で読めた。

  • 731部隊を絡めた戦時中の細菌最終兵器を巡る小説。731部隊についてあまり知識がないのでどこまでが史実でどこからがフィクションかわからないまま読んだが、まあ期待以上に面白かった。特に満州事変以後の上海租界を丁寧に描いていて、その部分は読み応えあり。科学者の矜持を主眼とするなら少し底浅めかな。

  • 2段で苦労したが知らなかったことが知れた。

  • 日中戦争を背景にした重厚なミステリ。
    毒性が強く、感染したら治療法が確立していない細菌。
    それを細菌兵器化しようとする動きと、何とかして阻止しようとする人々の息詰まる攻防が描かれる。

    上海自然科学研究所に赴任した細菌学者、宮本敏明は、同僚六川正一の失踪事件を機に、細菌兵器R2v開発計画を知ることになる。
    開発した真須木は菌と分割した論文を列強の大使館に送り付けたことから、各国の諜報機関が血眼になって菌の詳細や治療方法を探り始める。
    細菌兵器は解毒方法も確立していなければ、実用には堪えない。
    戦局の進行で、どこかが先に使うのでは、と疑心暗鬼にもなる。
    宮本の知識を利用しようと、計画をリークした陸軍少佐灰塚にも何か組織の意向とは違う目論見があるらしく…。

    と書いてみたが、まず、複雑な国際関係、組織の力関係、そのうえ人物も多く、複雑で、自分の把握した内容でいいのか心もとない。
    舞台も上海から満州へ、そして残りわずかになって何と降伏間近のベルリンにまで飛ぶ。
    筋を追いかけるだけでも大仕事だ。

    科学者や医者が、自分の持つ知識や技術をどう使うべきかという倫理の問題が一つの大きなテーマだったと思う。
    今は戦時だから、軍隊では上からの命令は絶対だから、という言い訳を自分に許すことができるか。
    刻々と変わる情勢の中、一部の人を見殺しにして、被害の拡大を食い止める判断を下すのは許されるのか。
    これはフィクションだけれど、戦時にはこういう過酷な立場に追い込まれた人も現実にいたのだろう。

    通州事変で殺された沖縄出身の外交官、田場盛義は実在の人物とのこと。
    この人についてもう少し知りたい。

  • 結構えぐかった。天子蒙塵、猫に知られるなかれとこの時代あたりのフィクション割と読んでるので何が史実で何がそうでないのかわからなくなるな……。灰塚少佐の生き様がかっこよかったです。

  • 直木賞候補作ということで、図書館で予約したもの。
    はじめての作家さんでした。
    登場人物が多く、文体が固め?で、普段読む本よりは読みにくく、
    最後まで読みましたが、ななめ読みだったかもしれません。
    生物兵器怖いなー、戦争こわいなー程度の感想しか書けないかも。
    いつかまた余裕のあるときに、読み返せたらいいなぁ…

  • どうしても本の中に入っていけず、前半で挫折しました。残念。

  • 久々の上田早夕里作品、しかも図書館での順番待ちも多かった、ってことで期待しすぎたか?少々残念な感じ。

    731部隊の話なので、細菌兵器の悲惨さとか人体実験の残酷さとか、そういう話になるのはなんとなく想像がついたものの、話が散漫になってくるし、細菌兵器の正体もあやふやなままなので、現在でもその余波が残っているってオチもしっかりオチきれておらず…。

    後半部隊がドイツに移るのもなんだか散漫さに輪をかけているし、どうした上田早夕里?って感じ。

  • 第二次大戦下の満州,まともな科学者がいかに軍部によって歪められていくか,そしてそれをまた守り抜こうとするか,軍部も一枚岩ではなく中国,ドイツと情報戦は入り乱れ,治療薬のない細菌兵器を巡っての戦い.化学兵器は本当に恐ろしい.

  • 大日本帝国軍が中国に侵略し 満州国を創る混沌とした時代
    微生物の研究者になった主人公 宮本敏明
    上海に渡り、同僚 六川と共に忙しくも充実した日々を送る。
    しかし
    世界の情勢はますます悪化し、国同士の勢力争いは激化していく。
    情勢が悪化し始めた日本が考えた作戦は
    「細菌兵器」
    現実にあった石井部隊をモデルに、治療薬の無いR2v(キング)
    様々な立場で この細菌と関わる人々の葛藤と戦い。

    はっきり言って、戦争に詳しくない私には 小難しすぎて乗らなかった。
    後半になって、やっと主人公が核心に触れだすと
    なんとか 話についていけたかなぁ。くらい。

    サバイバル系の話が好きな人は 楽しいのかも。

  • 何故か読み難い。
    設定は第二次世界大戦の直前、場所は上海。細菌兵器をめぐる争いに主人公は否応無しに巻き込まれていく。
    SF小説だと思うが、物語に引き込まれない。

  • どこまでがフィクションなのか知識不足のため不明。

  • 歴史もののSF小説は読み慣れていないので序盤は堅苦しく、次々と出てくる登場人物を頭のなかで整理するのに精一杯でなかなかページが進まなかった。
    中盤以降、主人公をはじめとする主要な人物の使命や信念に共感したり驚かされたりするうちにどんどんのめりこんでいった。

    満州帝国時代の混沌とした中国で、ある天才科学者が作った細菌兵器の菌株入手とその特効薬開発を巡って、科学者である主人公や軍人らが命懸けでそれらを探すというストーリーに見事に引き込まれた。

  • 日中戦時下のウィルス兵器を巡るSFサスペンス。

    直木賞候補作ということでの著者初読みです。
    前知識がなかったので最初の章を読んだところで、昔よく読んで「飽食」気味だった石井部隊の話かと思いましたが、完全なSFサスペンスでした。
    日中戦争末期の中国の状況やウィルスの蘊蓄など勉強になりましたし、特にベルリン陥落時の状況は初めて知りました。
    著者も相当勉強されているようで、実在の人物や架空の人物の作りこみも深く、歴史背景もしっかりしていて大変面白かったです。

  • 壮大なストーリーであった。内容は堅くて、漢字率が高くてものすごく読み進めるのに苦労した。

  • 731部隊が題材ということで、やや身構えながら読み進んだのだが、その辺はとても上手に扱われていて、一級の冒険小説として読めた。

  • 満州事変とか第二次世界大戦とかそのあたりの時代が好きなら面白いと思います。自分にとっては当時の中国の状況とか世界情勢とかトゥーマッチな情報で終盤まで読み進めるのが大変でした。もっとエンタメよりな内容を期待したこともあり、結局見どころ(読みどころ?)がないまま読み終えちゃった感じです。

  • 1943年の中国・上海。
    彼の地で、「キング」と呼ばれる治療法皆無の細菌兵器をめぐって、男たちの戦いが始まります。

    執念と絶望と狂気が全編通じて、暗い印象を与えます。おひさまのイメージが読後もない。魔都・上海というフレーズもあって、煙が揺蕩っているイメージ。
    「キング」を巡る物語は、未だに終わっていないからなんでしょうね。補記のせいです。嵯峨や宮本の行動が、一筋の光になるのかと思い、そう願っていましたが、「キング」の脅威は止めること叶わない。

    スパイアクションだったり、サイエンスミステリーだったりと、興をそそる物語なのだけど、どうにも重さ苦しさはぬぐえなかったなぁ。それでも、一気読みできたのだから、面白かったのは確か。

  • 事実と創作がまざりあい、破滅の王という存在が実在してるかもと思わせる。
    石井四郎部隊の存在を知ったのは今から40年近く前、あの頃森村清一だったかあの本の作者は命を狙われていたとか。それが今は史実として誰もが知ること。同じように誰もが知る過去の愚行だった南京大虐殺はそんな事実はなかったと歴史は変わってきている。
    治療薬がない限り兵器にならないなら、原爆や水爆に治療薬や予防薬があるとでも言うのか。今そんなものが使われたら世界各地にどんな被害が現れるかわからないのに。
    マツドサイエンティストが人を人と思わず嬉々として研究してたのか、上からの命令に従わざるを得なかったのか、良心の呵責と研究意欲に揺れ動いていたのか?せめてその部隊の研究が今の治療の進歩に貢献したと信じたい。
    免疫療法のノーベル賞おめでとうございます、その先生の先生は石井部隊とは無関係ですよね?

  • むーん・・・難しかった。。。

  • 日本軍の細菌戦については731部隊が有名だが、実在の人物も出てくるこの話はどの部分が史実でどのあたりがフィクションなのか。。。なかなか上手く描けてます!

  • 第二次世界大戦中の上海を舞台に、細菌兵器の開発をめぐる各国の研究員や特務機関の攻防を描いた作品。直木賞候補作。

    731部隊による細菌兵器の開発や人体実験という実際の出来事に基づいたストーリーは、戦時中の狂気と暴走を詳細に伝えていて、そのおぞましさには身の毛がよだつ。
    欧米の支配からアジアを解放するという名目のもと、強引に満州国をつくった日本人。国のため、人類のためと言いながら、力をもった者はすべてを手中に収めたくなり、蛮行に及んだあげく破滅に向かう。これが現実の出来事を踏まえていると思うと、重苦しくつらい読書になった。
    さらには、実験にかかわった研究者や医師たちが、責任を問われることなく医学界で権力者となり、現在に至っていることにも背筋が寒くなる。

    読んでいる最中は、戦時中の蛮行という素材ばかりにとらわれがちだったが、読後改めて全体を俯瞰してみると、小説としてのストーリー自体や主人公の魅力にはやや物足りなさも感じた。
    さらには、何年か前に観た野田秀樹の舞台「エッグ」を思い出す。音楽とスポーツという表面的には爽やかでおちゃらけた導入から、一転して満州での日本軍による残虐な人体実験にシフトしてぞっとさせる芝居は圧巻だった。DVDでもいいからまた見てみたい。

  • 直木賞候補作品。二段組でなかなか読み応えのあるボリュームでした。個人的にゆっくり読めなかったので、もうちょっと違う時期に読みたかった。

  • 第二次世界大戦時に悪名名高い731部隊の細菌兵器開発や人体実験をモチーフにした作品と思われます。エンターテイメントに針を振っているので、社会派というよりもスパイ小説の風情です。

  • 良くできてる。ぐいぐい引き込まれます。

  • 難しい。進まない。

  • 直木賞候補作。日本人が嘘つきなのは世界の常識か…。

  • 99Pまで読んだ

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著者プロフィール

兵庫県生まれ。2003年『火星ダーク・バラード』で第4回小松左京賞を受賞し、デビュー。11年『華竜の宮』で第32回日本SF大賞を受賞。18年『破滅の王』で第159回直木賞の候補となる。SF以外のジャンルも執筆し、幅広い創作活動を行っている。『魚舟・獣舟』『リリエンタールの末裔』『深紅の碑文』『薫香のカナピウム』『夢みる葦笛』『ヘーゼルの密書』『播磨国妖綺譚』など著書多数。

「2022年 『リラと戦禍の風』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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