北の御番所 反骨日録(1)-春の雪 (双葉文庫)

著者 :
  • 双葉社
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本棚登録 : 95
感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575670509

作品紹介・あらすじ

深川櫓下の女郎屋で金貸しの男が何者かに刺し殺され、白糸という女郎が捕縛された。北町奉行所定廻り同心・来合轟次郎から、経緯を聞いた用部屋手附同心の裄沢広二郎は、現場の状況と白糸の自白に不審を抱く。幼馴染みから屁理屈屋と揶揄され、上役には臆せず物申す広二郎と北町奉行所の面々の日常と活躍を描く新シリーズ。

感想・レビュー・書評

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  • 真っ直ぐで、人情味もある用部屋手附同心の新シリーズが始まりました……。

    春の雪 ー 北の御番所 反骨目録シリーズの1作目
    2021.04発行。字の大きさは…中。
    意休殺し、深夜行、やさぐれ鉄斎の短編3話と、春の雪の中編。

    北町奉行所の用部屋手附同心・裄沢(ゆきさわ)広二郎は、頑固ではあるが、真っ直ぐな気性が爽快な物語です。なお、用部屋手附同心という初めて聞く奉行所の仕事に興味があります。

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

    【意休殺し】
    北町奉行所の定町廻り同心・来合轟次郎(らいごう ごうじろう)は、深川の岡場所・櫓下「喜の字屋」で客の三哲の死体を発見した遊女・白糸を召し捕ってくるが。幼馴染の裄沢広二郎に三哲が殺された顚末を話す。
    ————— 裄沢の助言で白糸が想い人を庇って身代わりになったことに気が付いた来合は、真犯人を見つけるが。その犯人は、白糸の想い人でなく未通女の幼い遊女であった(涙) そこには悲しい物語があった(涙)

    【深夜行】
    裄沢が宿直の時に、日本橋の瀬戸物屋から賊が入ったとの知らせがあり駆け付けたら。主人に話を聞きたいというと、主人が外へ出て来て大声で家の内を気にしながら話す。次にかみさんに話を聞きたいというと、主人が中に入りかみさん1人だけが出て来て家の内を気にしながら大声で喋る。裄沢は、これは、中に居る子供と亭主が人質になっているなと思い……。
    ————— 裄沢が一か八かで裏で大声を出させて屋内に飛び込むと、賊と向かい合う事となり、賊に斬られる所を、たまたま通りかかった来合に助けられる。ひゃーとした。私は、この2人は腐れ縁だと思った(笑)

    【やさぐれ鉄斎】
    裄沢は、真っ直ぐな己の気持をそのまま表して妥協しないから、奉行所同心の仕事を次々に代って行きます。ひとは、やさぐれと呼びます。
    ————— 裄沢の正論が通らない世の中が私は嫌いだ。

    【春の雪】
    裄沢家の菩提寺から墓の前で行き倒れて亡くなっていると知らせが来る。駆けつけてみると、物乞いのような白髪に皺ばんだ顔をした50はとうに過ぎているかと思われる女は、着物というより擦り切れた襤褸切れを寄せ集めたような物を身に纒っていた。
    ————— 妻の面影はないが裄沢は、10年前に駆落ちした不貞の妻が、娘の墓前に寄りかかっているように見えた。裄沢の「やさぐれ鉄斎」と言われる過酷な過去が語られる物語です。127ページの中編です。

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

    【読後】
    若かりし頃の裄沢の真っすぐで妥協しない姿が、歳と共に少し角が取れてきています。そして頭脳明晰で、判断力があり、行動力がありと捕物に向いている同心ですが。人と相いれない性格が、用部屋手附同心という内勤になっているように思われます。今後、どのような展開になるのか関心があります。

    【豆知識】
    「用部屋手附同心」御用部屋は、現代的な言い方をすれば町奉行所の執務室です。その御用部屋では、奉行の秘書官である内与力とその下僚である用部屋手附同心、合わせて10人以上が同じ部屋で仕事をしています。用部屋手附同心の主な仕事は、町奉行の仕事ほぼすべてに関わる内与力の補佐として、各種文書の草案作成や案件の下調べを行うことなどです。
    2021.06.28読了

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    【令和3年(2021年)6月に読んだ本】

    6月に読んだ本は、20冊です。
    夏川草介さんの「臨床の砦」は、ふつふつと怒りが湧き、その後、恐ろしさに身震いする。コロナの治療に身を挺した医師、看護師をはじめ医療関係者に謝意を。皆様の応援で6月も楽しく読書が出来ました。ありがとうございます(笑顔)。

    なお、昨年(2020年)8月から5月まで毎月31冊以上の本を読んで感想を書いてきました。その疲れが出たのか、6月に入ってすぐやる気がなくなって、ペースが崩れて、読むスピードが落ちました。6月は、なんとか20冊を読み感想を書きました。
    今月に入り、少し回復してきたので、5月、6月のまとめを書く気になりました。
    ご心配をおかけして申し訳ありません。

    今月のベスト本は、下記の6冊です。
    ★★★★★5つは、ありません。

    ★★★★☆4つは、下記の6冊です。
    臨床の砦 ――――――――――――――――――――― 著者/夏川草介
    まぼろし色のモンシロチョウ 翅にかくされた進化のなぞ
    ――――――――――――――― 月刊たくさんのふしぎ2020年06月号
    シニア世代の食材冷凍術 楽らく、ムダなく、健康に ―― 著者/本多京子
    運命の人シリーズの2作目 ―――――――――――――― 著者/山崎豊子
    運命の人シリーズの3作目 ―――――――――――――― 著者/山崎豊子
    初詣で ー 照降町四季シリーズの1作目 ――――――― 著者/佐伯泰英

    ※令和2年(2020年)1月から、その月の最後に読んだ本に、その月のベスト本をのせています。
    2021.07.17記入

    • shifu0523さん
      こんにちは。「やまさん」さんの感想を読んで、興味を持ち、読んでみました。主人公の姿勢が好もしいので、シリーズを続けて読んでみようと思います。...
      こんにちは。「やまさん」さんの感想を読んで、興味を持ち、読んでみました。主人公の姿勢が好もしいので、シリーズを続けて読んでみようと思います。ご紹介、ありがとうございます。
      2023/11/09
    • やまさん
      shifu0523さん♪こんにちは(^-^)
      コメント♪ありがとうございます。
      そうですね、最初の頃の裄沢の真っすぐで妥協しない姿が、少...
      shifu0523さん♪こんにちは(^-^)
      コメント♪ありがとうございます。
      そうですね、最初の頃の裄沢の真っすぐで妥協しない姿が、少しずつ角が取れてきていますね。今後が楽しみなシリーズです。
      なお、このシリーズは、2023年8月に八巻目が発行されいます。
      レビューを楽しみにしています。
      2023/11/11
  • 【収録作品】序/意休殺し/深夜行/やさぐれ鉄斎/春の雪

    ある意味「無敵」な広二郎の理を通す姿勢が面白い。融通が利かないわけでもないところも含めて。

  • L 北の御番所反骨日録1

    反骨日録って「屁理屈屋」「道理に合わなければ上役にも臆せず物申す」から来ていると思われるが、もっといいタイトルなかったんかな。ただ実直なだけなような。
    物語に目標がないので、だらだら続く系シリーズ。
    妻子を亡くしてから従者も数人で質素な暮らしからみても豪快とは対局にある感じの主人公がこれはこれで好感をもてる。お奉行の覚えが目出度いのは今後の話の筋になるのかなぁと言う感じ。
    妻子を亡くすことになった理由がまさかの展開でぶっこんでるなぁと。この作家さん、文章が硬いけど描写も丁寧で好き。
    現在を形成させるバックグラウンドの話が半分だけれど、一作目だからなのか。おいおい明かされるんでもよかったよーな?

  • 確か新聞評で見掛けたシリーズ。1巻目なんで紹介的なんだけど、いきなり4話目にそんな話を持って来るとは驚いた。でも、評通り、面白いので、継続決定

  • 裄沢広二郎が主人公。
    生まれつきの「反骨」ではない。
    痛ましい経験を重ねての「やさぐれ」なのだ。
    誹諧好きの祖父の遺言で「鉄斎」という呼び名をもらった。

    亡くなった父の後を受けての出仕は16歳。
    2歳上の妻は結婚前から他の男とできており、その娘と共に水死。

    頭もよく仕事の覚えが良い裄沢広二郎だが、仕事ばかりにかまけて夫婦仲を重んじてこなかった経緯が妻と子の死につながっていると時間が経った今は思う。

    てんがいこどくとn天涯孤独となった今では、何も怖くはない。持論を通して辞めるとこも厭わない男になった。
    扱いづらいと思われている反面、仕事ができると信頼もされている。

    180センチを超す大男の幼馴染、来合轟次郎は親友。

    1巻目から魅力的な登場人物で面白かった。

  • 好ましい

  • 56

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著者プロフィール

1961年、宮城県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。学生時代は映画サークルでシナリオ作成に熱中、二十数年のサラリーマン生活を経験した後、2011年『返り忠兵衛 江戸見聞 春嵐立つ』(双葉社)でデビュー。「半四郎百鬼夜行」シリーズが「この時代小説がすごい!」(宝島社)文庫書き下ろし部門二年連続ランクイン! 新シリーズ「御家人無頼」も好評。確かな筆力と個性的な人物造形で目利き絶賛の時代小説作家。

「2017年 『素浪人半四郎百鬼夜行(拾遺) 追憶の翰』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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