アフリカの印象 (平凡社ライブラリー る 3-2)

  • 平凡社
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本棚登録 : 196
感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (410ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582766134

作品紹介・あらすじ

ブルトンが熱讃し、レリスが愛し、フーコーがその謎に魅せられた、言葉の錬金術師レーモン・ルーセル。言語遊戯に基づく独自の創作方法が生み出す驚異のイメージ群は、ひとの想像力を超える。-仔牛の肺臓製レールを辷る奴隷の彫像、大みみずがチターで奏でるハンガリー舞曲、一つの口で同時に四つの歌をうたう歌手、人取り遊びをする猫等々、熱帯アフリカを舞台に繰りひろげられる奇想の一大スペクタクル-。

感想・レビュー・書評

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  • かなり長期間、枕元に置きっぱなしになってました(苦笑)。寝る前にちょっとづつ読んでたんだけど、眠くなるとすぐ中断しちゃうから。

    前半は、アフリカのある国に滞在している主人公が、祝典で繰り広げられる見世物(プロの芸人の芸もあれば、見世物としての公開処刑もある)をただただ見てるだけで、次々と奇想天外な出し物が繰り広げられます。文字を追いつつ脳内で映像化するのも一苦労(笑)。それらの出し物は、純粋な歌や芝居もあれば、科学的なものもあり、ほとんど魔術かという類いのものもあり、ジャンルはさまざま。とにかく、これでもかこれでもかと変な人が出てきて奇抜な発明品や人間業とは思えない芸を披露する(笑)。

    後半になってようやく、どうして主人公がその国に来たかという話になり(乗っていた船が嵐で遭難、流れ着いた)、船に同乗しいていた人々の紹介(前半で見世物を披露していたひとたちのほとんどがこの船の乗客)、漂着した王国で聞かされたこの国の歴史なんかが明かされ、わけもわからず見せられた前半の出し物の由来や経緯が、やっと読者にもわかるという仕組み。王女が盲目になった理由や、国王が女装で登場した理由、さらに公開処刑された人々の罪状(中には王妃も含まれていた)等、先に教えといてよ~な真相続出。おかげで、全部読み終えた後もう1回前半を読み直すはめに(苦笑)。それでようやく、この場面はそういう意味だったのか~、と色々納得。

    総じて面白かったです。各種変な機械とかみみずが演奏するチターとか、自分で想像しても限界があるので、誰か映像化してくれないかなと真剣に思います。

  •  著者は20世紀初頭に多くの著作を発表したフランスの詩人/小説家。奇想天外で難解なこの作品は、言葉遊びにも似たルセール独自の創作法により紡ぎ出された文章なのです。チターを奏でる大みみず、同時に4つの歌を歌う歌手などが登場する摩訶不思議な出来事が、熱帯アフリカを舞台に繰り広げられます。ストーリーを楽しむ小説を読むつもりで手に取るとびっくりするかもしれませんが、詩を読むように、アートを楽しむように、何かを「感じる」ことができるでしょう。多くのダダイストやシュールレアリストたちに注目されたというのもうなずけます。

  • アフリカのポニュケレ国に漂着した欧米人が、国王の聖別式で催す演芸大会。前半はその様の描写、後半はそれぞれの出し物の背景や仕組みの説明が、ルーセル独特の緩急のない文体で綴られる。正直よく眠れる本なのだけれど、姉妹作の『ロクス・ソルス』や岡谷さんの解説本を読んだあとなので楽しく読めた。なんと言っても出し物の話なので、意味がわからなくてもそれなりに楽しい。特に、猫がらみの出し物や、動物や奇妙な楽器を使っての演奏の章がよかった。

    ストーリーより喚起されるイメージに魅力があるという点で、いわゆる小説ではないかもしれないけれど、よくこんなことを思いつくなあと驚かされるのは確実。画集をめくるような気持ちで読んで、ちょうどいいかもしれない。

    • だいさん
      書名から、冒険記かと思って読むと、びっくりしますよね。
      書名から、冒険記かと思って読むと、びっくりしますよね。
      2013/02/11
    • なつめさん
      ああ確かに! 土地の人が黒人ということくらいしかアフリカの要素がないですよね。何でこの題名なんでしょうね
      ああ確かに! 土地の人が黒人ということくらいしかアフリカの要素がないですよね。何でこの題名なんでしょうね
      2013/02/11
    • だいさん
      >イメージに魅力がある
      これが(著者の)impressionなのではないですか?
      超現実の作品は、好き嫌いがハッキリ分かれると思います。...
      >イメージに魅力がある
      これが(著者の)impressionなのではないですか?
      超現実の作品は、好き嫌いがハッキリ分かれると思います。受けた印象が良かったなら、それでいいのかも?
      2013/02/11
  • ルーセルは20世紀初頭のフランスの作家さんで、本人は大衆に愛される作家になりたかったのに、一部の芸術家(シュールレアリストとか)以外には全く認められず、最期は失意のうちに自殺してしまったのだそうです。でもその後ミシェル・フーコーはじめ、そうそうたる面々に影響を与えたとか。

    この小説、前半は、架空のアフリカの王国を舞台に、ある式典の様子が、170数ページに渡って一切の感情を交えずに、ひたすら描写されます。王国の歴史も、出し物の背景にある物語も、最初は全くわからないまま、見たことも聞いたこともない出し物について延々と読まされます。

    正直最初はちょっとつらいのですが、情景を頭の中で映像化する作業が波に乗ってきて、目の前に珍妙な発明品や不思議な動物、美女達が立ち上がるようになると、珍奇な出し物を見物客の一人になって楽しむ境地になってきます。

    後半には、前半で見たものの背景になる物語が、アラビアンナイトのような豊かさで語られて、これはもう一気読みの面白さ。初版のとき作者は「私の芸術に不慣れな読者は後半を先に読むように」と言う注をつけたそうです。

    でも、後半を先に読んじゃうと、出し物に対する驚きが薄れるし、前半(ちょっと我慢して)色々見ておいたからこそ後半の物語が「そうだったのか!」的に面白いので、やっぱり頭から読むのが正解でしょう。

    奇天烈な出し物の数々をどうやって思いついたのかについて本人が書き遺していて、その一部が巻末の解説に紹介されているのも興味深かったです。

    作者は自分の天才を信じていたそうですが、天才って言うか奇才?
    変な人なのは間違いない(笑)のですが、そういう芸術家にありがちな暗くどろどろしたものは感じられず、そこがまた独特の魅力。

    奇人の想像力が爆発の一冊。
    大丈夫、21世紀には遠く日本でも読まれてるよ!と今は亡き作者に伝えてあげたい気持ちをこめて☆5つ。

  • 今までになかった不思議な読書体験ができました。

  • とりとめなく去来する膨大なイメージ群。半ばくらいまで全く筋がわからなくてなかなか読み進められなかったけれど、友人に「イメージの上を滑るように読んでいけばいいんだよ」と言われなんとか読了。
    私には大変辛い読書でございました...

    しかし、そもそも大いなる言葉遊び(!)であって翻訳不可能なのでは、と思われるこの作品が日本語に訳されているのはほんとにすごい。言語の解体と再構築、言語そのものの不思議さが詰め込まれている。
    フーコーが彼の作品について書いているのでそちらを合わせて読むともう少し面白さが理解できるのかも知れない。

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