- Amazon.co.jp ・本 (235ページ)
- / ISBN・EAN: 9784582768251
感想・レビュー・書評
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葉っぱが好きだ。コンクリと鉄の中から逃げ出して、緑の中でぼんやりしていると落ち着く。きっと前世はてんとう虫かなんかだったんだろう。
とはいっても、夜遅く帰ってきて真っ暗な庭でぼんやりするのは難しい。真冬だと風邪ひくし、夏は暑いし蚊に刺される。人に見られたら何か悪いことをして庭に立たされていると誤解されかねない。
いい手はないものか、と考えた末に自分の部屋に鉢植えを持ち込むことにした。その結果ぼくの部屋は数十の鉢に占領されてほぼ温室と化した。和む。
言うまでもないが植物はインテリアじゃなくて、生き物だ。状況がお気に召せばにょきにょき伸びるし花も咲く。うまくなければ枯れてしまう。部屋の中だから温度管理は楽だが、水やりは大変だ。日光を取り入れるためにカーテンは取り払った。匂いの強い肥料や農薬は使えない。湿度が必要な植物がいるけれど、部屋の湿度を上げたらぼくがカビてしまう。
というわけで簡単ではない。いろいろ本も探して読んだけれど、庭やベランダで植物を育てている人は多くても、温室に住んでいる人は珍しいらしく、参考になる本は少なかった。試行錯誤を繰り返して、なんとなく安定してきたのは最近のことだ。
カレル・チャペックは日本から遠いチェコ(当時はチェコスロバキア)で、100年近く前に活躍した作家だ。登場する植物は馴染みが少なく、庭と温室という違いもある。にもかかわらずニヤニヤしながら読んだ。気持ちがわかるのだ。園芸店で衝動買い。珍しい植物が欲しくなる。置く場所がない。元気ないんだけどどうしよう。人に見せて自慢したいが、無理やり葉っぱ見せられて喜ぶ人はまずいない。ロックガーデンってかっこよさそうだな・・・
チャペックは「ロボット」という概念の発明者?として有名だけれど、「ダーシェンカ」といいこれといい、生き物や自然に強い興味を持っていた人らしい。どこかでばったり会ったら友達になれたんじゃないかな。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
土への並々ならぬ愛
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園芸を始めてまだ1年だが、すでにこのような思考になってきている。雨が恋しい、土の改良のことばかり考える、植物の名前にうるさくなる。。100年くらい昔の園芸家も今のそれと変わりないんだな。ユーモアに溢れる本書だが、解説を見るに、とても大変な時代に書かれたものであり、挿絵を描いている著者の兄も悲惨な最後を遂げたとのこと。このユーモアがその時の体制への批判。園芸家の人間くさい感覚や喜び、振る舞いが、それを許さない全体主義的な時代背景への抵抗なのかと思うと、今純粋に園芸を楽しめている私は、とっても幸せだ。
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年年歳歳花も同じからずっていう本。
園芸を趣味とする人の日々と業の深さをおもしろおかしく綴った軽いエッセイなんだけど、いとうせいこうさんの解説を読み、書かれた時代や社会背景を知ると、受け取り手としてのこちら側の本の味わい方が良い意味で大きく変わる。
『真正の、最善のものは、わたしたちの前方、未来にある。これからの一年、また一年は、成長と美を加えていく。神様のおかげで、ありがたいことに、わたしたちはまたもう一年、未来に進むのだ!』 -
24時間365日、頭にあるのは庭のことばかり、気になって気になって来客中も旅行中もうわのそら、自慢の草木の名前を尋ねられれば聞かれてないことまで早口で語り倒し、間違えられようものなら大激怒…。弟カレルのユーモラスな筆致と兄ヨゼフの可愛らしい挿絵で活写されるアマチュア園芸家たちの生態があまりにも「オタク」そのもので腹がよじれるほど笑ったが、この牧歌的なエッセイがどのような時勢を背景に書かれたかを知って愕然とした。
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たのしい本
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原語からの訳である(ドイツ語からではない)ことと、原作の挿絵だというので、少し高いけどこちらにした。悔いなし。
確かに土づくりは大切だよなぁ。もう少し土づくりからやり直してみよう。植木鉢があるじゃないか!と喜ぶくだり、分かりみが深い。 -
たまらなく滑稽で自虐的な園芸愛溢れるエッセイ
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兄ヨゼフのイラストもそのままの新訳だっ!ベランダー、いとうせいこう氏の解説つき。
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本書をのんびりとと、時折吹き出しながら読み終えた。巻末のいとうせいこう氏の解説を読むとこのエッセイの書かれた時代背景が書かれていて、そのことを思いながらまた振り返ると文章に、それまでと異なったライトの当たり方がされてしまった。面白かった。サボテン人間。サボテンダー。