人類の起源、宗教の誕生: ホモ・サピエンスの「信じる心」が生まれたとき (平凡社新書 913)

  • 平凡社
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感想 : 19
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  • Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582859133

作品紹介・あらすじ

霊長類学の重鎮と宗教学・キリスト教学の一流研究者による、人類の誕生・発展と宗教との係わりを巨視的なスケールで語った対談の記録。白熱した議論に加え、書き下ろし解説2本も収録する。

感想・レビュー・書評

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  • 「サル学」からみた文明論の本質のトーク本である。やはりゴリラ先生面白い。
    「宗教」が発生した(発明かも知れないが)理由を実に合理的に語っている。
    また現在の私たちがもっている「経済成長への無条件の信頼」の根源を遡って分析する会話には実に知的刺激をうけた。
    しかし「宗教」をここまで客観的に見ることができ、しかも読者が共感を覚えると言う事は私たちが同じ日本人であるからとしか思えない。「メタ認知」と言う言葉があるがまるで人類文化を上空から見下ろすような2人の対談は、読者を知的高みに押し上げてくれるように感じた。
    本書の前半は興味深く読み進めたが、後段の哲学的論考については、小生に基本的素養がないせいかちょっと馴染めなく残念。

  •  対談の中で、山極先生が、グローバルな人材としての重要な指標として、自己判断ができること、アイデンティティを持つこと、危機判断ができること、他者を感動させること、を挙げている。それに続いて、「これらはまさに、生の身体行動をしないと、できないことだと思います。」と発言している。読んでいて、なるほどそうだと感じた。
     本屋で「山極寿一」と書いてあったら、手に取ってしまう。今回も、大当たりの本でした。

  • 山極先生と小原先生の対談がメイン。
    狩の現場で獲物をそのまま食べずに仲間が持ち帰った食物を分けて食べるのはホモ・サピエンスだけらしい。仲間を信頼するという能力があるからこそできる行為なんだという山極先生の主張。
    それと、長期間グループを離脱していた仲間が帰ってきて受け入れることができるのもホモ・サピエンスだけなのだが、そこには不在者に対する倫理が存在する。現在の不在者、過去の不在者、未来の不在者の倫理という小原先生の考え方も大変示唆に富んでいて面白かった。
    宗教に対してステレオタイプな見方をするだけではなく、その意味を考える機会にもなるかと思う。


  • 直感で了解し、不在者を受け入れる。

  • ↓貸出状況確認はこちら↓
    https://opac2.lib.nara-wu.ac.jp/webopac/BB00265765

  • 山極先生4冊目。
    山極先生サイドからは人類の起源、小原先生サイドからは宗教の誕生をめぐるエピソードや考察が提示されて、現代社会が抱える諸問題を分析していくという構成。
    山極先生が豊富なフィールドワークをもとにお話されるエピソードは、ホント、毎回毎回面白い。けど、本書はこれまでに読んだ山極先生の本よりはエピソード少な目なので星は4つ。でも、自分の考察は多方面で深められた気がする。ハラリさんの著書にも触れた部分があって、専門家の先生方の受け止め方を知ることができたのも面白かった。
    まずは、山極先生の発言から。
    ①一度グループを離れたメンバーがまた同じグループに戻れるのは人間だけだけど、それがなぜなのかは山極先生にもまだ分かってない。不在の者への思いやりは人間に特有の心情ってこれ、内田樹先生の『死と身体』にも重なる内容で、すごく興味深い。
    ②宗教は個人の命の救済のために出てきたけれど、それが集団の共通幻想になってしまうと力を必要とし始め、逆に個人の犠牲を求めだす、という山極先生の指摘は、「倫理は常に少数派のものでしかありえない」という内田樹先生の指摘と重なり合う。
    次に、小原先生の発言から。
    ③共同体の秩序維持、あるいは不安一掃のためにスケープゴートを捧げる儀式は世界各地にある、とのこと。コロナがもたらす不安は何を供物に求めているのだろう?と思わされる。とりあえず組織的スケープゴートってことで陶片追放について書かれた本でも読んでみるか。
    ④アメリカのキリスト教は成功哲学と結びついて資本主義化したキリスト教だということ。とするなら、日本が戦後、近代化への過剰適応ともいえる反応を見せてあらゆる分野に合理主義を持ち込んだのは、アメリカをスタンダードだと勘違いしたからか?丸山眞男氏はそこを指摘した?
    ⑤クエーカーは非暴力を重視する一派らしい。なるほど、だから『侍女の物語』の中でクエーカー教徒はギレアデにおいては異教徒扱いだったわけか!!
    などなど。
    こっからまた色んな方面に広げて読書を進めてみよう!という気持ちにさせられた。

  • 人類が他の動物と異なる特質を得たのは、共感能力を獲得したとの由だが、その共感が暴発するところに暴力の根源があると述べている.共感と宗教の関連も詳しく解説してあり、非常に参考になった.スマホ中毒になっている人々に 、ラマダーンを真似てe安息日を提案していたが、面白い発想だ.人類に近いゴリラやオラウータンは群れから離れた存在は元に戻れないが、人類は不在だったものを受け入れることができる.これは人間の性質として重要だと解説してあったが、その通りだと思う.この不在に関して、過去と現在での考察だけでなく未来について考えるべきだとの論考があったが、素晴らしい視点だと感じた.

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著者プロフィール

第26代京都大学総長。専門は人類学、霊長類学。研究テーマはゴリラの社会生態学、家族の起源と進化、人間社会の未来像。

「2020年 『人のつながりと世界の行方』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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