兄妹パズル

著者 :
  • ポプラ社
3.13
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感想 : 31
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  • Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591118221

作品紹介・あらすじ

県立高校2年、テニス部所属。ボーイフレンド、なし。兄ふたりの五人家族、末っ子。そんな松本亜実の平穏な日常に、ある日事件が起こる。仲の良い下の兄貴「ジュン兄」が、突然いなくなってしまったのだ。四日目、はがきが届いた。「思うところあってしばらく家を出ます潤一」。

感想・レビュー・書評

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  • “「えっ?」
    「よそのお家の玄関のなか」
    と、ユッコは繰り返した。
    「玄関を開けると、よその家にはよその家の匂いがして、その家だけに通じる言葉やルールがあるじゃない?」
    「うん、まあ」
    そう言われると、そんな気がしてきた。わたしが両親のことをひとに話すとき父親母親と言うのは、わたしの母もまたそう言っていたからで、じゃあ父親は父親の両親をなんて言うかというと親父とお袋で、そっちのほうはふたりの兄が踏襲している。
    だからわたしはなんとなく、男の子である兄貴たちは父親の物言いに倣い、女の子のわたしは母親のほうに倣って、そしてそういうことはどこの家も同じだと思っていた。どこの家も同じにそうしていて、どこの家も男の子は外に対して――ある時期からは内に対しても――親父とお袋と言い、女の子は父親母親というものだと。”

    家族って、何?
    家族であること家族であろうとすること。
    家族だからこその秘密。

    “「このことも、ママたちに言ったほうがいいかな?」
    「亜実と話したってこと?」
    「うん」
    「そうだね」
    「そうだよね」
    気まずいけど、そのほうがいい。そのほうがずっといい。強くそう思った。そしてもう誰もが逃げたり隠したりもなしだ。それでもわたしたち三人は断然兄弟なんだから。わたしたちは家族なんだから。
    「あっ」
    わたしは小さく叫び声をあげた。
    「まだあるの?」
    上の兄貴がすこしあきれたように訊いた。
    「そうじゃなくて、ほら、外」
    そう言って、わたしは窓を指差した。上の兄貴の勉強机の先にある小さな窓を。
    「あっ」
    わたしと同じような声を上の兄貴も出す。
    朝焼けだった。兄貴が網戸を開けて、からだを乗り出すようにして朝焼けを見た。兄貴の机にからだごと乗って、兄貴にくっつくようにしてわたしも見た。朝焼けを。それから徐々に朝焼けが薄れ、空が白っぽくなっていくのを、見た。
    朝が来たんだ。”

  • 兄ふたりの末っ子、5人家族の亜実は高校2年生。
    しあわせな家族と信じきっていたのに、ある日とつぜん次兄が家出してしまう。

    こんなことでいいはずがない。
    みんながみんなやさしいふりをし続けていていいはずがない。
    ほんとうのことを隠し合っているところに、信頼とか愛情とか生まれるもんか、と思った。p.179

    同じテニス部の親友、サッカー部のあこがれの男子がからみ、欠けたピースが戻ってくればパズルは完成する...か。

    「Webマガジン ブンゲイ・ピュアフル」の連載6回に同量の書き下ろしをくわえて単行本化。

  • 初めは女子高生の明るいお話かな思ったんですが、ジュン兄が家出してから家族の姿が色々見えてきて、急に涙がこぼれてしまうシーン等は分かる気がする。それでも重い感じではなく爽やかに読めるのは家族みんなが自分の家族が好きだからなのだろう。

  • 最後なんだか駆け足気味に収束したけれど、ティーン向けの読み物としてはこんな感じでいいのかなぁ。きょうだいの秘密をあっさりしゃべってしまう同級生はいかがなものかとも思うけれども。2013/136

  • じわっときた……
    きょうだいっていいなーー

  • 石井さんのYA作品が好きだったので、久しぶりに手に取ってみた。
    ライトな語り口と引き込まれる設定でさくさく読めた。

    何で次男は家出したのか、家族に隠された秘密は何か。
    あっ、と驚くという訳ではないけれどあたたかさに溢れていて、自然と笑みがこぼれる作品だった。

    主人公亜実とユッコとの友情が良かったなぁ。

  • 表紙がかわいいですね。主人公の語りがつかみにくくて「うん?」となったものの、慣れてからはさくさく読み進めることができました。家出の謎だけを引っ張り続けたにしては長かったことにびっくりです。これも希望をもてるラストで好きですー!

  • 次男くんの家出というちょっとしたスパイスが、幸福に過ごしてきた平和的日常に揺さぶりを与えるという。
    文面は、おだやかであたたかな、雰囲気ただようお話です。後味もスッキリ。

    話の流れの起伏がわりと小さくしかも少ないので、アクションやサスペンスを好む方や、展開の大胆さを求める方にはちょっと楽しみにくいかも?

  • 予想通りの内容、軽く読めるお話。
    表紙買いしそうな感じ。

  • 後半からじわじわと涙が滲むようなお話でした。
    ところどころ文章が回りくどくて読み辛かったのが残念ですが、こんなに素直で優しい青春小説を読むのは久しぶりなので読んでよかったです。
    こういう小説、もっと読みたいなぁ。

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著者プロフィール

作家、翻訳家。子どものための読み物に「すみれちゃん」シリーズ(偕成社)、創作絵本に『100年たったら』(アリス館)、翻訳絵本に『せかいでさいしょに ズボンをはいた 女の子』『おばけのキルト』(小社)など。

「2022年 『色とりどりの ぼくの つめ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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