- Amazon.co.jp ・本 (203ページ)
- / ISBN・EAN: 9784591119112
作品紹介・あらすじ
「あたし、どうかしちゃったみたい。ゆうべはべつの男のひとに夢中だったのに、今夜はあなたに夢中みたいなんだもの-」。奔放な美しい娘と恋に落ちた男の去り行く日々の陰影(フイッツジェラルド『冬の夢』)。湖の死亡事故にかかわった弁護士が報告する忘れえぬ人物の話(木々高太郎『新月』)。いつか美しいホテルを建てることを夢見る安宿の主人とアルバイト学生のユーモラスな日々(小沼丹『白孔雀のいるホテル』)。湖を舞台に夢が舞う、ほろ苦い三篇。
感想・レビュー・書評
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パークゴルフは、プレイしたいな。
胡瓜詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
読友さんから知り得たシリーズ、百年文庫。フィッツジェラルド目当てに「湖」を図書館で借りた。3人の作家の短編集。グレートギャツビーのギャツビー氏がデイジーを選ばなかったver.的な短編。木々高太郎、小沼丹、初読み。小沼丹とてもよかった。飄々と適当な若い主人公と訳ありだったり変わっている人たちが白いホテルを空想しながら(夢見ながら)軽妙な文章で語られている。吉田篤弘さんの筆致に似ているかも。早速小沼氏の作品をお取り寄せ。テーマごとに纏められているシリーズで初読み作家さんにも出会えるから他のテーマのも楽しみ。
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フィッツジェラルド『冬の夢』
グレート・ギャツビーの人。オチに味がある
木々高太郎『新月』
昔の推理小説家。心理スリラー的な
小沼丹『白孔雀のいるホテル』
井伏鱒二に師事していたそうでオフビートなところが似ているか -
今まで読んだ百年文庫の中でも出色の一冊だ。
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湖がテーマのオムニバス3作。
フィッツジェラルド「冬の夢」
若く美しい娘に翻弄されることを楽しんで喜んでいた男。
小悪魔、性悪とも取られる振る舞いをしていた彼女が歳を重ねたことにより、可愛いよい子と呼ばれるほど衰えたことに嘆く様は愚かやら寂しいやら。とにかく読みづらかった。
木々高太郎「新月」
推理小説という言葉の生みの親らしいが、馴染みのない作家でした。
湖で亡くなった若い妻とそれをボートの上から見ていた夫。犯人当てやアリバイ崩しではなく、動機となりうる気の持ちようを示して終わる。居るから心配の種となり、居なければ気にすることもない。そのためには…。
小沼丹「白孔雀のいるホテル」
以前から気になっていた作家。とても面白い。
タイトルのような瀟洒なホテルを建てるためにまずは安宿で資金を得ようとするが、来るのは物好きでちょっと変わった客ばかり。どこか惚けた味わいで好みでした。 -
「冬の夢」
青春・本当の恋の終わりを迎えたラストが効いていました。
このラストがなかったら、ちょっとぺらぺらした小説になっていたかもしれない。
「いいひとですよ」って(笑)。
リアルだなぁ。
「新月」
愛情が極まると、こういう感覚になるのかなあ。
失くしたくないという強い思いに疲れるのかなあ。
非常にわかりやすく、読みやすい作品だった。
「白孔雀のいるホテル」
面白かった。
実に豊かな人間模様。
コンさんも愉快な人だし、お客も皆特徴的だ。
宿屋らしからぬ白樺荘だからこその面子なのだろう。
最後の、白いホテルに心をよせるシーンから、非常に人間らしい温かさを感じて、この人たちと一緒に飲みたい気分になった。
心の白いホテル。 -
今回はいずれもそれなりに「湖」つながり。
フィッツジェラルドのはあんまり好きじゃないですが(海外の青年の自己主張というか若気のいたりというかがあわないのかなぁと最近思う)
「推理小説」という言葉の生みの親・木々高太郎(慶応医学部卒の大脳生理学者で、条件反射で有名なかのパブロフ氏と一緒に研究していたとか!)の作品と、名前だけは知っていた小沼丹の作品が読めたのが良かった。
木々氏のはミステリではありますが、犯人うんぬんではなく、人の想いをすくい取る感じで上手い。
第1回探偵作家クラブ短編賞受賞作品だそうです。
受賞作品を追いかけるのも楽しいかも。
装画 / 安井 寿磨子
装幀・題字 / 緒方 修一
底本 / 『フィッツジェラルド短篇集』(岩波文庫)、『木々高田郎全集4』(朝日新聞社)、『汽船』(青蛾書房) -
・フィッツジェラルド「冬の夢」◎
「グレート・ギャツビー」の素みたいな小説だ。
フィツジェラルドの美しいものに対する並々ならぬ執着というか、美しさを手に入れたい、本当をいえば美と同化したい、でもそうはできそうにないからせめて美しさの末端にはしがみついていたい…そういう熱がかなりストレートに反映されている。んで、好きである。
絶対じぶんのものにはなりっこない美女・ジューディに青春を捧げ、それでも後悔はない。ただ過ぎ去った時の流れにある日気づく。
「もうデクスターは"ジューディ学"の権威ではなくなったのだ」
・木々高太郎「新月×
この枚数でミステリー調。なんか痛々しい。
・小沼丹「白孔雀のいるホテル」◎
いつか湖畔に真っ白いホテルを…。そう夢みるコンさんがまず第一歩として建てたのはどうしょうもない宿屋だった。大学生の「僕」は管理人としてその宿屋でひと夏を過ごす。
来る客はみな一癖あり、まともな客もまともでない客もぜんぜん来ない。
たまにビールを飲んでは、「白いホテルでは白孔雀を飼おう」なんて夢を膨らまして飽き足ることがない。
この作者はじめて読んだけれど、ユーモアの分量と濃度がちょうど自分にとっては適量で好きだ。
解説でなるほどと思ったけど、英文学者だったか。