建築の東京

著者 :
  • みすず書房
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本棚登録 : 125
感想 : 12
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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784622088950

作品紹介・あらすじ

2013年9月、東京オリンピック開催が決まるや前年のコンペで選出されていた新国立競技場ザハ・ハディド案がメディアで騒がれるようになり、解体工事の進む2015年7月、安倍首相により「白紙撤回」され、設計・施工一括のデザインビルド方式で同年末の再コンペで隈研吾+大成建設案が採用されるにいたった。2016年8月、就任直後の小池都知事は目前に迫っていた中央卸売市場の移転延期を決定するも、その後は迷走を重ね、豊洲「安全宣言」を経て築地は五輪期間限定の輸送拠点と定められた。メインか副次的かの違いはあれ、いずれも来るべきものの具体的青写真が不明瞭なまま、はじめにスクラップ&ビルドありきで既存施設がさっさと解体されたという印象は拭えない。
はたしてオリンピックを前に東京はどのような変化をとげてきたのか。一貫して都市のメタボリズムを重視し、「すぐれた建築が壊されるとしても、その後に志のある建築がつくられるなら必ずしも反対しない立場」をとる著者が近過去および現に生成しつつある東京の潜在的建築=景観遺産、丹下健三・岡本太郎以来の建築家・アーティスト双方による東京計画の系譜、各種メディアのなかの東京を検証する。

感想・レビュー・書評

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  • 東京の建築ではなく建築の東京。様々な意見はあろうと思うが、専門家の視点として興味深かった。

  • 東京論は著者、書かれた時代、立場が変わると多様な見方があるので大変面白い。本書からは改めて、都市を読み解くには多様な視点が必要であることを気づかされた。
    本書は主に発注者側へ向けて強いメッセージを発するために書かれた内容と理解した。特に都政に対してかなり厳しい意見が多かったように思う。
    一方で、仮に設計者が今の東京を論じたら、現状をどのようにとらえるだろうか。私はというと、本書の内容とは対照的にかなり楽観的にとらえていた節がある。

    個人的には”東京の”都市論というジャンルをさらに開拓してみたくなった。

  • 建築の東京(五十嵐太郎)

    ■建築マップ東京
    ・現代建築に絞りバブル期の建築が数多く紹介されている。
    ・実際に地図としても使える。

    ・東京では若い建築家にチャンスが少ない。
    ・2000年の建築は安藤忠雄、2010年は隈研吾の時代
    ・バブル期に日本は欧米を超えたと酔い、経済一辺倒になり社会が文化の事を忘れた。

  • わりと面白かった。
    前半は震災やリーマンショック、同時多発テロ以降の東京の都市景観が保守的になり建築家の活躍の場も減り、ゼネコンや組織設計事務所による存在感を消すような腰巻ビルが増え、ランドマークが作られなくなっているという話。納得感はあるが、であれば、建築家の言説よりも企業の意思決定や経済の原理を掘り下げてくれた方が面白かったと思う。
    文中にちらっと出てくるが、IT成金が普請道楽だったらと考えると面白い。
    後半はザハ・ハディドの新国立競技場の話がメイン。発注者側の責任というか覚悟の足りなさはどの業界でも変わらんなあ。ザハ・ハディドが亡くなったのは残念。
    あと、やっぱりこの人は丹下vs隈みたいに話が東大から広がっていかないところがある。鈴木博之もそんなところがあったように思う。

  • 【図書館の電子書籍はこちらから→】  https://elib.maruzen.co.jp/elib/html/BookDetail/Id/3000092864

  • 東京建築についての現状を概観できる本。スクラップ&ビルドで変化する東京の建物について東京オリンピックの競技場などを題材に論じている。表参道や銀座などの有名建築や隈研吾氏の一人勝ち状況をカバーしていて通訳ガイドとして東京の街を説明するのに参考にできる。
    経済効率優先のビルが乱立すれば、東京という都市の魅力がどんどん薄れていくのではないかと憂慮させられる。
    全般を通して一般人にも読みやすく良い内容だが、少し価格が高いところが残念

  • ★建築への期待が消えている?★前回の東京五輪とは異なり、今回の五輪では東京にはメルクマールとなる建築物が生まれない。ザハ・ハディドの案が消された国立競技場が最たるもの。というか、東京というフラットな都市では建築にそこまでのパワーが求められなくなったのか。

    著者は、最近の東京の建物は、ブランドの拠点を除けばスーツのような面白みのないものばかりだったと指摘する。建築家が活躍できる場は地方になっていた、と。確かに、建築志望の学生も減っていると聞く。街が発展する勢いが失せると、建築に魅力が感じられなくなるのか。欧米の先進国ではどうなのだろう。

    ただ、地方にしても、大阪万博で太陽の塔を超えるような造形の力が生まれる気はしない。デジタルやバーチャルに対応できる物理的な空間のイメージはなかなか生まれない。愛知万博も何か残っているのだろうか。太陽の塔を許せた時代の迫力は何だったのだろう。

    また、赤レンガの建物は文化財とみなされやすいという皮肉は笑った。

  • 建築史家の著者が、令和の現在の視点で、主に平成の東京の建築や都市について語った一冊だ。

    日本の都市や建築は保守に向かっている、というのが著者の論理の真ん中にあって、近年話題になったザハ・ハディドの競技場を日本が白紙撤回にしたことについて、その経緯や問題を丁寧に語っている。

    テレビなどのメディアで騒がれた表層的な部分しか知らなかったけれど、そもそも東京がオリンピックを招致するときの目玉の一つとしてザハの競技場プランがあったこと、さんざん言われた『アンビルドの女王』という二つ名も実は若い頃のものであったこと、ザハ案が白紙された後で新たに行われたコンペは条件が非常に条件が厳しく、隈研吾と伊東豊雄の二案しか出なかったこと、など、そうだったの、と改めて知ることが多々あった。

    都市を更新するためにザハの競技場は建てられるべきだった、東京の建築は、世界の都市や日本の地方に比べて停滞して後ろ向きになっている、というのが著者の結論で、それは非常にわかりやすい、と思う反面で、現代の東京はもはや更新されることを望んでいないのじゃないだろうか、とふと思う。

    厭世観、というといい過ぎだけれど、そういうどこか倦怠感のある空気が現代の東京には漂っているのじゃないか、ということを、本書を読んでいて改めて思った。

  • 建築のカタログとして面白かった

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著者プロフィール

1967年パリ生まれ。東北大学大学院工学研究科教授。博士(工学)。建築史・建築批評。1992年東京大学大学院修了。ヴェネツィア・ビエンナーレ国際建築展2008日本館コミッショナー、あいちトリエンナーレ2013芸術監督。
主な著作に『過防備都市』(中公新書ラクレ、2004年)、『建築の東京』(みすず書房、2020年)、『様式とかたちから建築を考える』(菅野裕子との共著、平凡社、2022年)がある。

「2022年 『増補版 戦争と建築』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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