帝国の崩壊 上: 歴史上の超大国はなぜ滅びたのか

  • 山川出版社
3.12
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感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784634152120

作品紹介・あらすじ

軍事大国の経済破綻、改革の挫折、政治的緊張感の喪失…。アメリカ覇権の揺らぎ、ロシアの動き、米中「新冷戦」。激動の国際秩序を見通すために知りたい、歴代14帝国「崩壊」の道程を第一線の歴史学・考古学者陣が読み解く。

感想・レビュー・書評

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  • この本は何が面白いかといえば、それぞれの章の筆者が己の研究や体験から帝国の崩壊を通り一辺倒でない語りをしていること。海の民からアッシリアにかけては発掘の苦労話や自らの考察が入りワクワクした。
    各章の深掘りを読んでみたいところだが、まずはビザンツ帝国など中世以降の帝国の崩壊の下巻へ進みたい。

  • メモ
    まえがき
    「帝国」とは何か
    この本では、皇帝の存在の有無にかかわらず、広大な版図と多様な地域を包摂し、一般的な国に比べて巨大かつ多様な人間集団を有してきた超大国や覇権国家、いわば巨大政治体というものを、「帝国」と暫定的に定義する。

    帝国は、西洋ではエンペラーが支配する国がエンパイアとされていて、その言葉が日本に入ってきた時、エンパイアを「帝国」、エンペラーを「皇帝」と訳した。「皇帝がいる国」=帝国、の定義で考えると、現在の世界でエンペラーを頂いているのはおそらく日本だけ。日本の天皇については、外国文書上でもエンペラーと呼称される。

    エンペラーはラテン語のインペラトル(ローマ帝国の特任の総司令官)に由来し、西欧人にとってのエンペラー、エンパイアはローマ帝国にその範があったと考えがちだが、当のローマ帝国はエンペラーがいたからエンパイアになったわけではない。ローマ帝国(インペリウム・ロマノム)とは、正確には「ローマ人の命令の及ぶところ」という意味で、インペリウムは本来「命令権」の意味。

    古代ローマは元来共和制で、後にカエサルが事実上の皇帝に近い存在となった後、アクタウィアヌスが前28年にプリンケプス(元老院の第一人者)、前27年にアウグストゥス(尊厳者)の称号を得て以降、このアウグストゥスを初代皇帝とし、帝政ローマに入った。

    つまり「インペイウム・ロマノム」の中身が共和制→君主制→皇帝が支配する国、へと変わった。そしていつの間にか西欧でもエンペラーが支配するのがエンパイアであるということになった。なので帝国とは必ずしも「皇帝のいる国」とは限らない。

    そもそも「皇帝」という漢語は秦の始皇帝がそう称して以来、中国では正当な支配者が皇帝とされてきたもので、英語のエンペラーに相当するものとして日本人が中国の皇帝の語をあてはめただけのこと。エンパイアの意味で「帝国」の語を最初に使ったのは日本人であったようだ。

    そういう経緯で、日本人が「帝国」「皇帝」というと、中国の歴史的な政治体制が念頭に置かれる傾向。一方、西欧人はローマ帝国を「帝国」「皇帝」を念頭に置く。

    上巻は
    「エジプト新王国」統一王朝:BC3000頃~アレクサンドロスにより滅ぶBC332まで31の王朝が続く。

    「エーゲ文明(ミケーネ帝国)」BC4000-2000の間。

    「ヒッタイト帝国(アナトリア高原・・トルコ共和国の93%を占める)」BC2000頃から BC1595頃バビロン第一王朝を滅亡させ BC2000年紀後半に帝国時代を迎える 南東にアッシリア、さらにバビロニアがいる。ラムセス2世と和平条約を結んだハットゥリシ3世(BC1275-1250在位)が全盛期 シュッピルリウマ2世(BC1190~?在位)の時に突然終焉する。

    「アッシリア帝国(メソポタミア)」BC8世紀頃、帝国と呼ばれ、BC7世紀の終わり頃、5~6年の間に滅ぶ。

    「アカイメネス朝ペルシア」BC550-330頃興る。アレクサンドロスに滅ぼされる。

    「アレクサンドロス帝国」BC334遠征開始、BC323死亡

    「ローマ帝国」伝説上の建国はBC8世紀、BC27元首制開始でローマ帝国と呼ばれる。395東西に分裂、476西ローマ帝国滅亡、1453東ローマ帝国(ビザンチン帝国)滅亡。

    2020.7から2021.6にかけて朝日カルチャーセンター新宿教室で開催された連続講座「帝国はなぜ崩壊したか」(鈴木董・大村幸弘監)の講義内容をもとに各筆者が加筆修正したもの。

    20212.5.2第1版第1刷 図書館

  • 国が興り統治され滅びる変化する
    そんな歴史を伝えている本

    少し変わった角度から歴史を垣間見られて
    以前には感じなかった感覚を持てた。

    テーマごとに著者が違うから好みもあるかもしれない。
    歴史的にも有名なローマ帝国とエジプトはとても良い。

  • 帝国=「皇帝のいる国」と定義した場合、世界の中では唯一日本だけということになるらしい。この事実にも驚くのだが、本書では幅広く「巨大かつ多様な人間集団を有してきた超大国や覇権国家、いわば巨大政治体」と暫定的に定義し、現代のアメリカや中国・ロシアも「帝国」に含まれるとしている。
    帝国が崩壊するパターンは様々ではあるが、版図が維持できるか否かは地理的環境のみならず、構成する人々が同質的か否かが大きいというのがひとつの結論となっている。ちなみに直近の「帝国」の崩壊はソ連だが、国土は1/3、人口は4割減しており、プーチンがそれを取り戻そうとしている。という意味では現在進行形の問題でもある。
    また、近年日本では多文化共生が唱えられているが、閉鎖的な幸福な空間で同質的な人間が暮らしてきたレアケースな日本では統合のコストがイメージできずに、のん気なことを言ってられると編者は述べている。ここは歴史学者ならではの冷徹な見解であり興味深い指摘である。
    尚、上巻はローマ帝国崩壊までなので、下巻の方がより現代に引き付けて考えることができるように思える。カルチャーセンターの書籍化であるが、各ケース毎に専門家が論述しており、世界史に詳しい人でなければかなり読み応えのある一冊である。

  • エジプト諸王朝 ミケーネ ヒッタイト アッシリア アケメネス朝ペルシア アレクサンドロス大王のマケドニア ローマ帝国の興亡がよくわかった

  • 東2法経図・6F開架:209A/Su96t/1/K

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著者プロフィール

1947年生
1982年 東京大学大学院法学政治学研究科博士課程修了、法学博士
東京大学東洋文化研究所教授などを経て、
現 在 東京大学名誉教授

著書:
『オスマン帝国――イスラム世界の「柔らかい専制」』(講談社現代新書、1992年)
『オスマン帝国の権力とエリート』(東京大学出版会、1993年)
『オスマン帝国とイスラム世界』(東京大学出版会、1997年)
『世界の食文化(9) トルコ』(農村漁村文化協会、2003年)
『ナショナリズムとイスラム的共存』(千倉書房、2007年)
『文字と組織の世界史』(山川出版社、2018年)
『オスマン帝国の解体――文化世界と国民国家』(講談社学術文庫、2018年)
『文字世界で読む文明論――比較人類史七つの視点』(講談社現代新書、2020年)
『食はイスタンブルにあり――君府名物考』(講談社学術文庫、2020年)
『帝国の崩壊――歴史上の超大国はなぜ滅びたか』(編著、山川出版社、2022年)他

「2023年 『オスマン帝国の世界秩序と外交』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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