- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784652203408
作品紹介・あらすじ
杉村由々は五十代の翻訳家だ。小学生の時に習ったピアノのソナチネを予期せず徹夜明けに弾き、由々は小学五年の夏休み最初の日をまるで昨日のことにように思い出してしまった……。自分が一番自分らしかったあの日を。
11歳の少女の1日が、46年後、思ってもみない魔法をかけたーー。
感想・レビュー・書評
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主人公、由々が子ども時代の"ゆゆ"を回想しながら物語が進みます。「お気に入りのお洋服を着た日にはなんだか素敵なことが待っているかもしれない...」というワクワクした気持ちは誰しも経験したことがあるかもしれません。
"ゆゆ"もその一人。11歳の夏休み最初の日に、一期一会だけれども一生のなかで印象に残る人たちと出会うことになります。50代を迎えた由々ですが、その記憶は決して色褪せることなどなく、その後の物語の潤滑油のような役割を果たします。時がたち、黄の花のワンピースを着た由々の心にはある出会いをきっかけに若い頃、懸命に蓋してきた思いが解き放たれ、やがて11歳の"ゆゆ"を受け入れるのでした。
夏×海の雰囲気が好きなので、このような世界観を味わえる本に出会えて嬉しいです。主人公の仕事が翻訳ということもあって、外国の物語が登場します。夏の空は青く澄み渡り、海の向こうから時折外国の風が混じった穏やかな風が吹いている、そんな世界へ連れていってくれたようです。物語の中にはたくさんの音楽が流れています。主人公がピアノを嗜んでいたからか、由々の心情をメロディで表している描写もありました。
作中の喫茶店で流れていた「ランパルが演奏するヘンデルのフルート・ソナタ」、「ディアベリのソナチネ」、「軽快なテレマンの協奏曲」などを流し、由々の心情に寄り添いながら読み終えました。しかし偶然が偶然を呼ぶというもので、やはりちょっと展開に現実離れがありましたが、フィクションなので仕方ないでしょう。
とても穏やかで優しい物語です。 -
児童書でよく読んでいる高楼方子さんの本。
「大人の女性たちに読んでほしい」というオビの推薦文もあり読みましたが、ちょっと期待が高すぎた印象。
黄の花のワンピース
ディアベリのソナチネ
十五少年漂流記
ジェラールフィリップ
高楼方子さんらしい、夢のあるほわっとしたお話ではありました。
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子供向けの本かと思いきやこちらは、子供向けの名作をたくさん書いてきた著者が大人のために書いたものだという。個人的にははまらない方でした。
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待て待て、11歳にしても57歳にしても、そんなに偶然ばかり起こらんて。
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高楼方子さんの作品を何作か読んでいるので、児童文学のつもりで読み進めていたが、途中で違うことに気が付いて驚いた。
翻訳の仕事を続け、五十代半ばになった由々。ふとしたきっかけで小学5年の夏休みの日のことを思い出すのだ。お気に入りの「黄の花のワンピース」、仲良くなれると思っていたのに拒絶された「れい子ちゃん」、悲しみを抱え、さまよい歩き続けた街並み、同じ本で理解しあえた大学生の「タツヒコさん」。長い間忘れていただけで、納得できず、消化しきれなかった思いがあふれ出す。
高楼方子さんの情感あふれる描写が好きだ。自分ではなかなか言い表せないが「そうそう」と理解できる細やかな心情の表現などがすごいと感じる。 -
しまじみしたよい本を読んだ。
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特に何の事件もないけれど、ああ確かに私もこんな時期があった、と親近感が沸いた一冊。地味に良い本でした。
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さいごにいいことがまっている
内側から知り合いになる
現実にはいない人物と