哲学する赤ちゃん (亜紀書房翻訳ノンフィクション・シリーズ)

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  • Amazon.co.jp ・本 (396ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784750510118

作品紹介・あらすじ

・現実と非現実をわきまえ空想している
・ものごとの因果関係がよくわかっている
・実験し、統計的分析をしている
・ランタン型の広い意識をもっている
・記憶力がいい
・ひとの性格を読み取っている
・ひとのことを純粋に思いやる
etc...


大人より賢く、思いやりがある赤ちゃんの驚くべき能力が最新科学の知見から次々と明らかになっている。赤ちゃんの深遠な世界へと誘う全米ベストセラー!

感想・レビュー・書評

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  • 哲学的考察をめぐる長い歴史のなかで「赤ちゃん」は未完成で未成熟で未整理と考えられ、哲学界からは長く蚊帳の外に置かれていた。(ようです。)

    Alison Gopnikは認知科学者の一方、子育てに奮闘した経験から、こどもには実は大人にない高い能力があるということに気付きました。
    「幼児はある意味、大人以上に賢く、想像力に富んでいて、思いやりがあって、意識が鮮明だったのです。」

    ここで、私と自分の2才になったばかりの姪っ子とのあるエピソードをお話しします。ある日、私がCDを持ってきてプレーヤーにかけた一部始終をその子が見ていたようで、自分でもやってみたくなったようです。そして大人たちが目を離した隙に、別のCDをケースから勝手に取り出してCDをかけるまねを始めました。でも操作がうまくできず、CDの裏面にたくさんの傷をつける結果となってしまいました。傷ついたCDをかけてみると、傷のため音が飛んでうまくかかりません。

    音飛びを自分の耳で聞いて、私の表情を見たその子は、そのとき、そのCDがうまく聞けなくなったのは、自分のCDプレーヤーのかけ方に原因があるということ(学習・認識)、そして一般的にCDの裏に傷をつけると音楽が聞けなくなってしまうものだということ(反実仮想)、さらに、私が怒って悲しんでいるということの気づき(共感)、それらを、あのとても小さい頭のなかで系統立てているのでは?!と気付いたときの驚きは、おそらく著者がしたものと同じだと思います。

    著者は、赤ちゃんがそういう高い能力をもつのは、人間というものが他の動物とは異なり、世界を認識する能力が高く、その認識によって世界にはたらきかけ世界を変革しようとしてきて独自の進化を遂げてきた、という“進化論”を裏付けるものであるとしています。

    でも、「認識」「哲学」…といった用語に臆する心配は無用です。
    この本では著者の母親としての顔がしょっちゅう表れ、愛情や笑いがあふれる内容になっています。だから、子育てのさなかでで赤ちゃんの不可解な言動と格闘中(?)のお母さんが、ほんの息抜きとして読むのもお薦めします。(2014/2/15)

  • 赤ちゃんの意識はどのように発達しているのか、赤ちゃんはどのように世界を認識しているのかという疑問についての考察。

    子育てエッセイなんかでよく見る、子供のちょっとおかしな行動や言動がなぜ起こるのか少し理解できるようになった。子供は彼らなりのルールで動いていて、そのルールが大人のルールと異なっていることが大人から見ると可笑しさにつながっている。
    大人の意識はスポットライト型で一つのことに集中することができるが、子供の意識はランタン型で集中は苦手だが、複数のことを同時に見ているというのは意外であった。

    哲学する赤ちゃんというタイトルだったのでかなり難しい読み口の本かと構えていたが、語り口はかなり優しくてわかりやすく書かれていた。

  • 赤ちゃんのもつ深遠な世界、大いなる可能性を
    科学的なアプローチで説明していく。
    和訳もとてもわかりやすい。

    ただ、項目は分類されて整理されているものの
    様々な実験、立証の話がどんどん展開されていくので論旨を追っていくのが大変で
    なかなか読み進めるには時間がかかった。

  • 書店でノンフィクションのフェアをしており、吸い寄せられるように手に取った。
    本書の赤ちゃんの定義は幅が広めで、幼児あたりも入っていたりするので、そこは意識しながら読んだ。
    やはり一番印象に残ったのはランタン型意識だろうか。大人の様にスポットライト型ではなく、全てに意識を向けている。純真無垢だからこそ沢山の事を吸収していくのだろう。大人になる事はある意味視野が狭くなる事。生きる為には必要だけど、常識という檻に閉篭もる事なのかもしれない。
    今赤ちゃん育て真っ只中。この幸せを噛み締めながら関わっていきたい。

  • 赤ちゃんの持っている能力をみくびってはならない!

  • 小さい頃の人格形成に興味が湧き読んだ。(あなたの人生の科学の参考文献)

    自転車に乗れるまでは物凄い力が入っていたけど、乗れたら何にも考えなくても乗れるように、子供の頃の方が視界に入るものをはっきり意識的に捉えているのかも。

    過去も未来も考えず、今その瞬間に集中しているというのはイチローが小学生の頃のフォームが理想と言っていたり、バガボンドで宮本武蔵が剣を振り始めた頃のことを瞑想しているのと繋がっているなと思った。

  • 普通の小児科学本と違うのは、「赤ちゃん」の科学だけではなく、赤ちゃんとは何かと哲学的にも考察している点。
    赤ちゃんであるとはどのようなことか。
    赤ちゃんを愛するとはどのようなことか。
    赤ちゃんを巡る人生の意味...。

    科学と哲学が絡み合うような内容になっている。
    科学的考察では、赤ちゃんが考えていることについて、確からしいとされていることを整理する。
    哲学的考察では、赤ちゃんを考える観点から、自分たちの意識について、世界を認識することについて、考えさせる。

    私感チックな記載ぶりがいくらか気になったし、もう少し深い記載を期待していた。
    ただ、個人的な興味ジャンルの哲学と小児科学の邂逅としては、とても面白かった。

  • 読む価値あり

  • 過去への反実仮想とそれに伴う後悔は、未来に向けた反実仮想の対価かもしれない。
    実現しなかった過去を悔やむ事は、豊かな未来を思い描ける事とセットになっている。p36

    ホモサピエンスの成功に貢献したのは、道具を使い、計画を立てる能力である。これは赤ちゃんも一緒。p40

    言葉を覚える時期は、道具の使い方を思いつけれるようになる時期と一致します。
    言葉を得た幼児は、幅広い可能性を思い描けるようになる。p45

    空想の友達がいる事は、天才の証でもなければ、病気の兆候でもない。p78

  • 科学の読み物としてはなかなかおもしろい。やや文系脳かな?

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著者プロフィール

カリフォルニア大学バークレー校心理学教授・哲学客員教授。マギル大学で修士号、オックスフォード大学で博士号を取得。子どもの学習と発達に関する研究の第一人者として国際的に認められており、子どもの心が哲学上の難問を理解する手がかりになることを最初に主張した研究者である。子どもがどのようにして他者の心を理解するかに注目した「心の理論」研究の創始者の一人であり、「理論理論(thoory theory)」、つまり子どもは科学者と同じやり方で学習するという説を提唱した。著作には"Words,Thoughts and Theories"(アンドルー・メルツォフとの共著、MIT Press,1997)"The Scientist in the Crib"(アンドルー・メルツォフ、パトリシア・クールとの共著、William Morrow,1999。邦題『0歳児の「脳力」はここまで伸びる』)がある。うち"The Scientist in the Crib"は「サンフランシスコ・クロニクルス」ベストセラー、20ヶ国語に翻訳され、「サイエンス」「ニューヨーカー」「ワシントン・ポスト」「ニューヨーク・レビュー・オブ・ブックス」などで紹介された。

「2010年 『哲学する赤ちゃん』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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