レヴィ=ストロースの庭

著者 :
  • NTT出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (128ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784757142022

感想・レビュー・書評

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  • 森は地上の無秩序としてではなく、わたしたちの世界と同じくらい豊かでその代わりにさえなるような、惑星の新世界としてたち現れるのだ。

  • あいちトリエンナーレ2016の営業で福岡にいらっしゃった港千尋さんのお話しをうかがって、ぜひ何か著作を読みたいと思っていたのだけれど、その前に図書館に予約していた関係のない別の本が届いたという知らせがあって、とりあえずその本を取りに行かなければと西部図書館に行った。

    予約していた本を受け取り、ついでにと思い図書館の端末で「港千尋」と検索してみた。本命の2冊はやはり人気があるようで返却待ちで、早速ウェブで予約。端末のディスプレイに映し出された著書リストを観ていると、先日、港さんに質問をされていた大学生が読んだという「レヴィストロースの庭」が西部図書館の蔵書ではないか!これは、今すぐにも借りて読める。

    早速、資料情報をプリントアウトしてカウンターへ。そして、それは奥のほう「評伝」の棚に。手に取ると100ページ余りの殆どが写真の本だった。借りるつもりでしたが、すぐに読めてしまいそうだったんで、その場で読むことにした。

    主にモノクロームの写真で時々カラー。本文中にもあるように、確かに白黒写真は悲しみや怒りを強調するかもしれないなぁ。港さんの理知的で熱を感じる文章と知の巨人レヴィストロースさんのインタビューや著作の引用が混ざり合って、まるで、自分がレヴィストロースさんのお宅にうかがってお話しを聞いているかのような錯覚。

    人類学の調査のためにアマゾンのジャングルを踏破しためっちゃ頭まが良くてタフな精神力があるレヴィストロースさんをかっこいいなぁ~と尊敬もし、妬ましくも思っていたわたしは、レヴィストロースさんとお近づきななれたような、何だかとても得した気分になった。

    Mahalo

  • ブルゴーニュの森のレヴィ=ストロース邸を訪れた写真家・港千尋が、その知の巨人の静謐にて深遠且つやさしさに満ちた神話世界に誘う。僅か120Pほどの薄く端整な写真集から、ふくよかでしなやかな思想が溢れ出る。大きな力に包まれ守られ溶けゆく安寧を感じる。写真の狭間の港千尋の文章がイメージの喚起を静かに促す。流れる時間、自然との関係、生命の痕跡。『悲しき熱帯』の一読では定着しきれなかった、けれど無意識の脳裏に刻まれ隠された風景を呼び覚ます。レヴィ=ストロースの思想にもっと触れたい。理解への端緒が少し開けた。

  • 写真も文章も散文詩のようでうつくしい。

    文化人類学に惹かれるのは、それが自己省察の学だからなのだとおもいます。

  • 卒論の為に興味を持ったフランスの神話学者は100歳ながらご存命だった。深い森の中で生命の根源に出会うような本。

  • 初読。
    「知の巨人」レヴィ=ストロースに関わりの深い
    ブルゴーニュ、オーストラリア、アマゾン、沖縄等のモノクローム、一部カラーの写真とともに
    港千尋の3編の文章。

    やっぱりブルゴーニュのレヴィ=ストロース邸の写真と
    「庭の神話」-庭は家と森のあいだ、が印象的。

    アトリエとかね、家の写真はたまんないよね。

  • 1999年夏、フランス・ブルゴーニュ地方の小村へとクロード・レヴィ=ストロース教授を訪ね、2日間のインタビューを行った著者。
    構造主義の祖と仰がれる文化人類学者は、当時91歳となっていた。しかし、彼はどんな話題についても鋭い答えを返していた。 
    日本とヨーロッパの自然について、世界が抱える人口問題について。
    教授が座る机の向こうには、窓を通して広大な庭が広がっているのが見えた……。

    ブルゴーニュの森のレヴィ=ストロース邸から、オーストラリア、南米へから沖縄へと、3篇のエッセイとともに神話世界にゆかりのある大地をめぐる夢想が広がる。

    写真家で、評論でも知られる著者の文と写真で織りなされる美しい一冊。

    モノクロームの、静謐に満ちた写真を追うことで神話をめぐる旅の追体験ができるような気がします。
    表紙(カバー)の写真は鬱蒼と茂る植物を一面に使っていますが、表紙を開くと見返しにクロード・レヴィ=ストロース教授が。
    ブルゴーニュの森の一部になっているかのような百年の知性・知の巨人の静かな佇まいは『前庭』というタイトルで本文の方にも掲載されています。

  • レヴィ=ストロースがなくなる前に書かれたというかインタビューされた本。悲しき熱帯を読んだときと、南米の印象が結びつかず、そういえば南米だったのか、と妙な感心をしながら読んだ。緑がきれい。

  • 庭に迷い込む。神話の話、文化の話。この対話の中に入りたかった。

  • 100歳の誕生日を迎えた後、2009年10月に他界したクロード・レヴィ=ストロース。「構造主義の祖」として知られる、フランスの文化人類学者・思想家の別荘は、ブルゴーニュの森の中にある。
     パリを拠点に活動する写真家・批評家の著者が、2008年、その別荘を訪れて行ったインタビューを写真記録集にまとめた。
     生前にレヴィ=ストロースが発表した「野生の思考」(パンセ・ソバージュ)はセンセーショナルだった。「未開社会」に秩序と構造を見出し、それまでの「秩序は『野蛮』が洗練されることにより作られていった」とする西洋中心主義に対して一石を投じたからだ。1955年に刊行された記念碑的記録文学「悲しき熱帯」は、文化人類学・構造主義のバイブルとなっているが、本書の著者は、巻頭でその翻訳・引用をしている。
     森は地上の無秩序としてではなく、
     わたしたちの世界と同じくらい豊かで    
     その代わりにさえなるような、
     惑星の新世界としてたち現れるのだ。
     フランスの田園ブルゴーニュの別邸で、レヴィ=ストロース教授に行われたインタビュー。窓の外には川が流れ、池には水鳥の姿が映っている。広がる庭と同じ緑色の書斎から、神話と記憶のプロムナードを辿り、さながら、大きな知性の森を歩くような思考の旅が始まる。(S)

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著者プロフィール

写真家、映像人類学者。多摩美術大学教授。1960年神奈川県生まれ。南米滞在後、パリを拠点に写真家として活躍。1995年より多摩美術大学美術学部で教鞭をとり、現在は同大学情報デザイン学科教授。2006年〈市民の色〉で伊奈信男賞受賞。2007年第52回ヴェネチア・ビエンナーレ美術展における日本館の展示企画コミッショナーをつとめる。

「2019年 『現代写真アート原論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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