花唄の頃へ くらまし屋稼業 (ハルキ文庫 い 24-6 時代小説文庫)

著者 :
  • 角川春樹事務所
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  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784758443197

作品紹介・あらすじ

三郎太、蘭次郎、幸四郎、林右衛門の四人は大旗本の次男、いわゆる部屋住みの身分で、半分無頼の悪仲間であった。
ある晩、酒場で盛り上がった帰り道、三郎太が何者かに腹部を深々と刺され、首を掻き切られて殺された。
彼は、一刀流の皆伝で剣の達人。いったい誰が、何の目的で!? 
自らも狙われるかもしれないと怯えた蘭次郎たちは、各々身を守るために、裏の道を頼るが……。
裏稼業の必殺仕事人たちが、己の掟に従い、命を賭けて戦う。続々重版の大人気シリーズ、熱望の第六弾。

感想・レビュー・書評

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  • 今回は「炙り屋」万木迅十郎との対決なども交えながら裏稼業に生きる者たちの生き方=掟のあり方にスポットを当てる回

    表の自分が裏の自分に飲み込まれないように掟があるということのよう
    心の防波堤の役割なのでしょう

    そして掟をもたない「虚」がすでに表も裏もない狂気に飲み込まれた者たちということを浮かび上がらせ対決への機運を盛り上がらせ
    また「炙り屋」との絶対に失くならない共通点を明確にすることで今後の共闘を期待させる
    そんな回でした

    接近戦に多少難ありという弱点も解消された平九郎と迅十郎が並び立つのを夢見るいつの間にか「くらまし屋シリーズ」のファンになってる自分なのでしたw

  • 「くらまし屋稼業」の6冊目。あっという間に季節は巡る。

    旗本の次男三男の悪仲間の連中が一人二人と殺害され、自らも狙われるかもしれないと怯えた残る二人が各々身を守るために裏の道を頼るというところから始まるお話。
    平九郎vs.炙り屋vs.謎の刺客vs.かつて天才と呼ばれた人斬りの四つ巴だが、誰が誰を頼んで誰が誰を狙っているのか…。徐々に構図がはっきりし緊迫感が増す中、前にも登場したあの人が敵役として登場するのに驚き、炙り屋との斬り合いもグレードアップ。複雑な依頼の関係がうまいこと収斂する筋書きもお見事。
    加えて、自ら決めた掟に従い、依頼人がどういう輩であろうと対峙するのがどういう相手であろうと、請け負った仕事のために斬り結ぶ、裏稼業のやるせなさがにじみ出たお話になっていて、鼻歌・長兵衛に炙り屋・迅十郎、それぞれが見せた人間味にも切ないものを感じた。

    今回はあの人の動向にまったく触れられることなく、どうなっているんだとまた焦らされた。

  • 四季の題名シリーズが終了しどうなるかと思ったら、内容に即したものだった。
    今回の敵は前作に伏線があり、この作品の最初の方にもさりげなく書かれていた。今作でくらますのはどうしようも無い旗本のどら息子。厳しいくらまし屋の七箇条を守ると言いながら、嘘をついて依頼。
    やはり最後は・・・。炙り屋との闘い等もあり、剣戟のシーンは激しく面白い。

  • 花唄の頃へ ー くらまし屋稼業シリーズの6作目
    2020.02発行。字の大きさは…小。

    剣の堤平九郎、頭脳の七瀬、変装の赤也の3人が悪辣な大身旗本の次男を…。

    此度は、悪辣な大身旗本の部屋住みである桝本主計の次男・桝本三郎太が帰り道で待ち伏せされて斬り殺される。次に、旗本の次男・出田幸四郎は、桝本が殺されたので用心して家士2人を連れて、歩いている所を後ろから斬り殺される。

    次は、自分かと考える旗本の三男・国分林右衛門は、「炙(あぶ)り屋」万木(ゆるぎ)迅十郎に殺し屋の殺害を依頼するが断られる。←ここがポイント、なぜ断られたかを七瀬が解き明かす、そして殺し屋が1人でなく2人であることが分かる。
    四三(よみ)屋坊次郎の倅・利一は、「振(ふるい)」の油屋平内を林右衛門につける。

    旗本の次男・小山蘭次郎は、仲間内でも一等色好みであちらこちらに女を作っていた。
    いまは、小間物屋・お真との別れ話が縺れている。それは、蘭次郎に旗本家に婿養子に入り秋に祝言を挙げる話しが進められているためだ。
    2人が立て続けに殺された蘭次郎は、林右衛門が雇った油屋平内が殺し屋を殺すまで身を隠しているため「くらまし屋」に依頼する。
    しかし、堤平九郎の七つの掟の七番目「捨てた一生を取り戻そうとしないこと」を守る気がなく依頼する。 ←ここが最後まで引っかかていた。

    蘭次郎への殺し屋は、林右衛門の話から炙り屋・万木迅十郎と分かるが、だれの依頼で、その理由は…?
    そして炙り屋以外に、もう一人が居る殺し屋は、何のために誰を殺そうとしているのか…?
    もう一人の殺し屋の探索を御庭番頭・曽和一鉄に託し。平九郎は、蘭次郎を連れて甲州へ向かう。
    曽和一鉄は、配下を動員して4人の悪行を調べていて、その中に、4人で町中を騎馬で走っていて少女を幸四郎が跳ね飛ばし14日後に少女が死んだ事件が有ったことを突き止める。
    少女が死んだ家が御家人お徒士・黛家であった。当主である黛長介は、娘が死んでから呆けてお役目も果たせない有様である。
    しかし、祖父・黛長兵衛は、御庭番のブラックリストに載る人物であった。
    その名は「鼻唄」長兵衛。かつて暗黒街を震撼させた「振」である。
    そして第2の殺し屋は、少女・お彩の祖父・黛長兵衛であった。
    長兵衛との勝負で、お彩のこと、いまは亡き師・礒江虎市の話を聞き…(涙)

    【読後】
    今回の「くらまし」は、悪党をくらませる。
    こんな悪党の手伝いをしないでほしい。
    読んでいてこの悪党・蘭次郎は、くらまし屋の掟を破るのでないかと気になったら、最後が有った(拍手)
    掟は、厳しい。

    【豆知識】
    「振(ふるい)」とは、押し込みの下働きを行う嘗(なめ)役、錠前破り、文書や印鑑の偽造などの特殊な技を持つ者の他、護衛、暗殺、押し込みの実行役を担う者もいる。彼らは「振」と呼ばれていた。
    恐らくは――刀を振るう。
    というところが語源でないかと思うが、実際は誰も判らない。
    ※「振」は、私は初めて聞く。物語の中の話か、史実か不明。
    2020.03.06読了

  • 〈くらまし屋稼業〉シリーズ第六作。

    今回くらますのは、大身旗本の部屋住み息子・蘭次郎。同じ部屋住み仲間と散々悪事を働いては親に庇ってもらうことを繰り返していたのだが、仲間が次々と殺され恐ろしくなって平九郎ら〈くらまし屋〉に泣きつくことに。
    蘭次郎がどうしようもない男だけにモヤモヤするが、平九郎らがどうこの仕事を完遂するのかも気になる。


    今回の仕事の難しさは何と言っても蘭次郎らを狙う犯人が分からないこと。何しろ蘭次郎は詐欺や色恋絡み、暴力など、ありとあらゆる悪事を働いてきていて、身に覚えがありすぎるのだ。
    更には平九郎のライバル・炙り屋こと万木も現れる。
    犯人を探しながらのくらましの行方は…。

    赤也や七瀬の出番は少な目。ただ二人の微妙な関係が感じられて、これからの二人が気になる回でもあった。
    また万木のプロ意識と人間性も分かり、彼の魅力が増した。
    山場は何と言っても平九郎と犯人との激闘。
    タイトル、序章、平九郎の表稼業での一幕がここに繋がり、どちらも負けて欲しくない、どちらにも死んで欲しくない、そんな思いで闘いの行方を読んでいた。
    改めて平九郎の仕事の厳しさを感じる場面でもあった。

    結末も溜飲の下がる思いをさせてもらって良かった。
    次からはまた〈虚〉集団との闘いがあるのか。
    そういえば、途中で加賀の火消侍がチラッと出て来たが、ぼろ鳶シリーズとのリンクだろうか。

  • 掟。
    それは守るべきものとして定められている"とりきめ"。
    昔も今も、人の行為を前もって方向づける道標となる。
    自分なりの掟を課し、それに従う。
    元々自分で作ったものなのだから守るのも簡単…いや、人は自分に対しては甘くなりがちな生き物だ。
    「初めはこのくらい良かろうと少しの掟破りをするものさ。だが、それは確実に壁を崩していき、いつか表裏の区別が付かなくなる」
    先達の助言が胸に染み入る。
    そしてこの先達との出逢いは平九郎を心身ともに更に強くする。

    シリーズ第6弾。
    今回くらますのは、旗本の奔放な次男坊。
    叩けば埃が出るどうしようもない男で、父や兄に頼めば、金さえ積めば何とかなる、等という浅はかさに虫酸が走る。

    『花唄の頃へ』このタイトルが切ない。
    最後まで読み終えた後、再び序章を読み返すと、もう涙が止まらない。
    平九郎の宿敵・「炙り屋」万木迅十郎も己に厳しい掟を課す芯の通ったところがあり惚れ惚れした。
    敵ながら天晴れ!
    似た矜持を持つ二人は、これからも良きライバルとして互いを高め合うのだろう。

    それにしても、あくまでもプロとして勤めを遂行しなければならない辛さ。
    情を持ち込み迷ってはならない。
    下手人を手伝って依頼主をあの世へくらましてしまえればどんなにか気持ちも楽になるだろうに。
    読んでいてこんなに辛い思いをしたのは久しぶり。
    そして『くらまし屋』シリーズの中で一番感動した。

  •  裏稼業の必殺仕事人たちが命を懸けて戦う、くらまし屋シリーズ第6弾。

     今回のくらまし屋に立ちはだかる暗殺者たちは、己の掟をそれぞれ持っており、それがキャラクターの個性となって、時代小説の魅力を一層深めていると思いました。

     だれが何のために命を狙うかも物語のキーポイントになっており、最後まで目が離せませんでした。

     謎が解明されることで、人の思いの哀しさが表現され、人としての生き方も考えさせられました。

     自分の決めた掟を最後まで貫き通す生き方に憧れずにはいられませんでした。

  • ああ、良い話だった。
    切ない。。
    おじいちゃんと孫って、絶対泣ける。

    そして平九郎と老人との関わりにも
    深みがあり、良かった。

    ただ、くらましとは別の、
    平九郎やくらまし屋たちの物語に関しては
    ほぼ進展がなく、そこが少し物足りなかった。

    それと、今回の裏の主役は迅十郎。
    なんかめちゃくちゃかっこいいではないですか。
    彼の過去も気になる。
    どんどん広がる、くらまし屋ワールド。

  • シリーズ第六弾。

    今回の依頼人は、普段から仲間と悪行三昧、ゲスの極み大身旗本の次男です。
    悪行仲間が殺されたことから、自分も命を狙われているかも、との事で晦ましてほしいと。
    正直、自業自得ですし、しかも“くらまし屋”の「掟」を無視してほとぼりが冷めたら帰ってこようと目論む始末。もう完全にナメてます。
    一方、彼を狙う下手人の方は、ごもっともな理由があって、平九郎もクズな依頼人を守るために、共感できる下手人を斬らなければならないという、何ともやるせない展開でした。
    今回は、赤也と七瀬の出番は少なめで、代わりといっては何ですが、“炙り屋”の万木迅十郎が多めです。彼にも“炙り屋”としての矜持があるようで、芯のようなものを感じました。しかも“苦み走ったよい男”らしいです。迅十郎の背景にも興味ありますね。
    そして、最近の巻の「終章」でちょい出しされていた“夢の国”の状況が今回はなかったので、いったいどうなっているのか、気になるところです。

  • くらまし屋第6弾。
    これはあかん!辛すぎる。

    世の中を舐め切った放蕩息子などどうなったっていいじゃん!
    と思いつつ読み進めたけれど、
    もう切ないし悲しいし、辛かったぁ。

    そして冷静さの中に熱さが感じられて、
    この後どうなっていくのだろうかと思わずにはいられない

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著者プロフィール

1984年京都府生まれ。2017年『火喰鳥 羽州ぼろ鳶組』でデビュー。’18年『童の神』が第160回直木賞候補に。’20年『八本目の槍』で第41回吉川英治文学新人賞を受賞。同年『じんかん』が第163回直木賞候補に。’21年「羽州ぼろ鳶組」シリーズで第六回吉川英治文庫賞を受賞。22年『塞王の楯』で第166回直木賞を受賞。他の著書に、「イクサガミ」シリーズ、「くらまし屋稼業」シリーズ、『ひゃっか! 全国高校生花いけバトル』『てらこや青義堂 師匠、走る』『幸村を討て』『蹴れ、彦五郎』『湖上の空』『茜唄』(上・下)などがある。

「2023年 『イクサガミ 地』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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