痴女の誕生 アダルトメディアは女性をどう描いてきたのか

著者 :
  • 太田出版
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感想 : 18
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784778315139

感想・レビュー・書評

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  • 「美少女・熟女・素人・痴女・男の娘」をどのようにジャンルとして確立したのか、まとめられた歴史の教科書みたいな本。マニアックな分野をどう売れ線に持ってくかは普通にマーケティングだし、ギャルの話でもあったようにいかに求められているニーズに近づけるか、といった視点は商業作品なんだなあと。他ジャンルは幻想に近いが、痴女だけ現実を侵食していったのは面白いなと。

  • AVを中心に、アダルトメディアで作られてきた像を歴史的に?整理。マジメに?まとめています。知っている女優名や雑誌名もあったが、わからないやつの方が大半、でも雰囲気は大体わかる。ちょうど自分もその世代を生きてきた、と思う。

  • 人類の性癖の移動速度が早すぎてついていけない

  • AVにおける「美少女」「熟女・人妻」「素人」「痴女」「ニューハーフ・女の娘」という五つのジャンルをとりあげ、それぞれのジャンルにおける流行の変遷をたどっている本です。

    著者は「はじめに」で、「アダルトメディアでえがかれた女性像の移り変わりは、男性の欲望の変遷そのものである」と述べ、その変化を明らかにすることで男性の欲望のありようを明らかにすることを本書のねらいとしています。なお著者は、AVをはじめとするアダルト・メディアを題材にライターとして活動をしており、本書の叙述も基本的にはジャーナリスティックなものとなっています。そのため、「男性の欲望」そのものについて社会学的な考察が展開されているわけではありません。もちろん、業界の内側を知る著者だからこそ書くことのできた内容は興味深いのですが、二村ヒトシなどのクリエイターによって領導された性意識の開拓に好意的で、「S1的」と形容されているような緊張感をうしなったAVのありかたに対しては、著者はあまり関心がないようです。

    このジャンルにかんする事実をていねいに追っているので、そうした関心のある読者にはおもしろく読めるのではないかと思います。

  • 筆者はこう書いている。
    「男性の妄想の産物と思われがちな「痴女」像を作り出したのは、女性たちだったからだ。そして、それを男性たちは受け入れたのだ。」つまり、「痴女」は男と女の共同幻想の産物である。
    筆者が後書きで書いているように、「アダルトメディアで描かれてきた女性像は、男たちの見果てぬ夢の象徴である」とするなら、女性が作り出した「痴女」は、これからも夢の象徴で存在するのだろうか?

  • ピンク映画、ロマンポルノが終焉し、家庭用ビデオが普及しAVの時代が始まってから今日、その時代時代で男たちが性欲の赴くままに、次々とその嗜好や女たちの属性(「タイプ」と違うのはルックスや性格よりも性的な役割やジョブなのが重要というのが面白い)を表明し、それに忠実にダイレクトに反応する作り手たちが、どんなジャンルやどんな女性の属性を開発・発見してきたのかをまとめたクロニクル。それは、とにかく欲望に対し忠実なので、流行ったり廃れたりまた流行ったり、あっちにいったりこっちにいったり、マーケティング「論理」など歯が立たない、川の蛇行のようにその向かう先がわからない、まさに欲望の赴くままという面白さがある。清純派、人妻、ロリ、素人、熟女、そして痴女に男の娘。新しい性感帯を開発するように、欲望を顕在化しては消費してきたが、次なる未開拓のジャンルや属性はまだあるだろうか? それが見いだせなくなった時、AVというサービスがその役目を終えるのだろう。

  • 「抑え気味の喘ぎ声に合わせて、街角での静止画がところどころにインサートされるのは、セックスシーンを3分以上続けてはいけないという当時のビデ倫の基準への対策だろう」(p.33)。「主演の朝河蘭は、エキゾチックな美貌の女優で2002年に212作、そして翌2003年には304タイトルもの作品に出演するなど、00年代初頭の企画単体女優ブームを盛り上げた一人だ」(p.166)。

  • 2018/3/11読了。

  • 期待していたほど面白くはなかったが、しかし 2000年代、2010年代と華々しく展開するアダルトメディアの歴史を 1980年代からの一貫した流れの中で把えたという意味では第一級の史料だろう。「美少女」の登場から「熟女」「素人」「痴女」を経て「男の娘」に至るまで各年代でブームとなったトピックを歴史の流れの中に置いて整理した。

    もともと一次史料が散逸しやすいアンダーグランド、サブカル領域の中にあって、ことAVだけは DMM-R18 などのインターネット・アーカイブが史料保管庫としても機能しているという事実も面白い。

  • 大分前に図書館にリクエストした本が
    入荷したらしい。
    新刊広告を見て知った本だから
    はや1年位経つのか?

    AVや風俗にそれほど興味がなくなって
    しまったのでそれほど
    熱心に読む気持ちにならない。
    AVや風俗が何か意味あるものと
    思えた時期もあったが
    それほど重要なものに思えなくなった。
    俗世間の上っ面なものに思えるのだ。
    真実とか人間の深い処とか
    男性の否定できない欲望とか…
    ちょっとそれほどのことでは無い気がする

    煩悩の一つ。
    あえて見つめるべき対象とは思えないのだ。
    男性側の論理だから?
    女性を深く知るための素材にはなりえない。
    だから興味がわかないのだろうと思う

    著者が女性というのは良いね。
    そういえば以前愛染恭子のセックス指南書は
    女性視点でとても参考になったなあ。
    既婚男性との恋の感想が
    「愛し方がうまい」とか
    --------------
    P11
    セーラー服姿の「女子高生」と、
    ブレザーの制服のJKでは
    正反対と言ってもいいほどに
    描かれ方は違う。
    それは少女が清楚であるという幻想が
    ブルセラやコギャル世代の登場によって
    打ち砕かれたという現実の影響が大きい。
    ある時期から「女子高生」は
    性に奔放だという記号に変化してしまったのだ

    P10
    女性の属性に興奮する男性は多い。
    単に顔とスタイルの好みの女性と
    いうだけでなく、
    「女子高生」「人妻」という
    属性があった方が、より興奮する

    ↑岸田秀の性的唯幻論じゃないが
    脳はバカなんだと思う。
    つまり妄想、それは煩悩。
    語るに足るか?と思うのだ
    -----------------
    「『痴女』は男の妄想が作り上げた幻想」
    そういう話だろう、とたかをくくってたが
    そう上を行ってた。
    「痴女は女が作った」というのだ。
    さらに男の気弱なM欲求が指摘されてる。
    そういった指摘は興味深いものがあった
    ----------------
    (タイトルが)「若妻」より「人妻」の方が
    受けがいいとか面白い話だ。
    やっぱり「イメージ」「属性」なのだろう。
    男は、というか脳ってほんと。
    「熟女に癒やしを求める男たち」とか
    同性として情けなくなる
    -----------------
    P104
    (なぜ熟女・人妻はドラマ物が強いのか)
    現実世界では、あまりユーザーにとって
    縁のない「美少女」に比べて、
    身近な存在である熟女・人妻だからこそ
    幻想のキャラクターへと昇華させるために
    ドラマが必要とされるのではないだろうか
    ---------
    ※AVってプロレスと同じだね

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著者プロフィール

1967年埼玉県生まれ。ライター、アダルトメディア研究家。
美学校考現学研究室卒。主にアダルト産業関連をテーマに執筆。特にエロとデジタルメディアの関わりや、アダルトメディアの歴史の研究をライフワークとしている。AV監督やカメラマン、漫画原作者、トークイベントの司会者などとしても活動。
主な著書として『痴女の誕生――アダルトメディアは女性をどう描いてきたのか』(2016年)、『巨乳の誕生――大きなおっぱいはどう呼ばれてきたのか』(2017年)、『日本エロ本全史』(2019年、いずれも太田出版)、『AV女優、のち』(角川新書、2018年)、『ヘアヌードの誕生――芸術と猥褻のはざまで陰毛は揺れる』(イースト・プレス、2021年)などがある。

「2023年 『日本AV全史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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