木村政彦 外伝

著者 :
  • イースト・プレス
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  • Amazon.co.jp ・本 (720ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784781617015

作品紹介・あらすじ

「木村政彦 生誕百周年記念」刊行。連載時に反響を呼びながら、ベストセラー『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』には収録されなかった幻の原稿「最強柔道家論争」を含む、『ゴング格闘技』連載時の珠玉の原稿や論評、さまざまな作家・格闘家・アーティストたちとの対談、さらに書き下ろし原稿、連載時の秘蔵写真&全キャプション等を収録。大宅賞&新潮ドキュメント賞W受賞作は、本書によって“完全版”となる。

感想・レビュー・書評

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  • 外伝というよりは副読本。それに尽きる。

  • この本を読んで胸が熱くなりました。しかし一方でこうした過去の日本人の偉大な営み、業績がいまとこれからの日本人に伝わらずに失われてしまったのではないのかとも悲しい思いにもなってしまいました。
    昔の日本は柔道人口が多くて、日本中でまちぐるみで大きな盛り上がりがあり柔道人気もとても高かった日本なのに。
    日本人にとって大切なものが失われていってしまった。

    増田さんが胸が詰まった山下泰裕の言葉
    木村政彦・山下泰裕対談:オランダでは、会場にヘーシンクやルスカが来ていまして、すごいんです。人気が。外国の人達は、自分の国の生んだ英雄をとても大切にしますね。現在、彼らがどんな職業についているとか、関係なしで、本当はそれが自然なんだろうけども、ああいう光景は日本では見られんですが
    山下は、この一言を言いたくて、この一言をかけたくて、それだけが言いたくて、この対談を頼んだのではないか。山下の優しさと偉大さがにじみ出る言葉だ。
    木村:山下くんなんか、これまでせっかくなったんだから、今度はね、高い観点から日本柔道を指導する。それとともに国家を動かすというような役割になってもらいたいな。学校の先生で終わるというくらいの程度じゃ、僕みたいな程度でおしまいじゃダメだよ。柔道とは何かというものから、これをいかに日本のために有益に用いるのかと、そういうところまで発展させるのがあなたの今後の使命じゃないかと思うんだ。ほんとだよ。あいつもとうとう柔道の先生で終わったのかと、僕を失望させるなよ。落胆させるなよ。

    武徳会高専柔道
    昔の木村政彦さんとか柔道関係の動画が日本に残っていない。アメリカとNHKによって日本人の偉大な営み・業績・財産が消されてしまった。

    昔の柔道家の柔道衣のズボンはタックル対策で短かった。


    大正末期から昭和の初期にかけては高専柔道大会を中心に寝技が盛んに行われていた。
    金光弥一兵衛、野上智賀雄、阿部謙四郎等々の人たちのことを初めて知ることができました。

    井上靖さんが、四高柔道部員の多くが第二次世界大戦で亡くなられた。壁にかけられた亡くなられたOBの名札を見て絶句したまま涙を流されていた。
    七帝戦は明治31年(1898)の一高対二高の旧制高校の対抗試合から始まった。
    高専柔道の始まりは第1回大会の大正3年(1914)になり、大会が戦争で中断されるまで27回開かれわずか27年の間に現在にも連なる世界の格闘技の寝技の原型を作った。
    前三角絞めや膝十字固めなどの技を開発した。
    後の日本を代表する人物たちも輩出した。
    これらの日本人の先人たちの業績をなんとか引き継いでいかなくてはいけない。

    この本を執筆してくださった増田俊也さんに大変感謝いたします。

  • 著者の長編ノンフィクション「木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか」(新潮社)を読んで、魂が打ち震えるほどの衝撃を受けました。
    「魂が打ち震える」というのは、決して誇張ではありません。
    力道山とのあの歴史的な一戦が、木村を終生苦しめることになります。
    その木村の悔しさに、読者は共鳴せずにはいられません。
    それだけ著者の取材力と筆力が優れているということなのでしょう。
    ぼくが過去10年に読んだ400冊ほどのノンフィクションの中では、群を抜いて素晴らしかったです。
    本書は、その衝撃作のスピンオフ。
    これまた分厚い本で、単行本719ページですから、ほぼお弁当箱です。
    読みごたえも十分。
    第1章「史上『最強』は誰だ?」では、木村と山下泰裕がもし戦ったらどちらが強いかを、柔道関係者の証言を丹念に拾い集めることで考察しており、興奮しました。
    柔道ファンならずとも心躍ること請け合いです。
    力道山との一戦についても、あらためて振り返っています。
    ミスター高橋にもインタビューし、プロレス側からもあの一戦を評価しているのは公平と思いました。
    本書の大半は、格闘ファンの有名人に対するインタビューで構成されていますが、意外だったのは作家の平野啓一郎さんや歌手の綾小路翔さん。
    特に平野さんは純文学のイメージが強いので、こんなに格闘技に詳しいとは思いませんでした。
    本書の「あとがき」には、こんな言葉が。
    「この『木村政彦外伝』を読み返して思ったのは、みんな木村政彦が大好きだということである。なぜ好きなのか。それは完璧ではないからだ。」
    完璧ではない男が、もがき苦しむだけに、完璧ではない(というか程遠い)自分もシンクロしてしまうのでしょう。
    前作に続いて本作も、汗臭い人間賛歌の書です。

  • 「枯れない殺意」(猪瀬)で殺の念で力動を呪い殺した木村。
    「この本は救いである。そしてリベンジは果たされた。」
     勝ったのは木村だ。死後20年も経ってこんな熱烈なラブレターを送ってもらえたのだから。

  • プロ柔道からプロレスラーに転向した木村政彦が力道山にノックアウトされた動画を見た後のヒクソン・グレイシーの言葉である。父親のエリオ・グレイシーはグレイシー柔術の創始者で木村に敗れている。この時決めた腕緘(うでがらみ)をグレイシー柔術では木村に敬意を表して「キムラ・ロック」と呼んだ。
    https://sessendo.blogspot.com/2021/12/blog-post_19.html

  • 事実上未了だが、試験勉強の合間に読むには重すぎた。

    お腹いっぱい。

    4月になったらまた借りて読もう。

  • 木村政彦をめぐる対談集。

  • 『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』は、本書で完結という感じです。
    前著には収録されなかった「最強柔道家論争」や、作家・漫画家・格闘家・アーティストたちとの対談など、読みごたえがあります。
    柔道の成り立ち、柔道とは何か、木村政彦VS山下泰裕もし戦わばなど、どれもワクワクしながら読みました。

  • 前作は、尋常じゃないほどの熱量が込められ、ジャンルのくくりを超越し、内にも外にも響いた名作だった。
    今作は、音楽だと、良く言えば未発表曲集。悪く言えば寄せ集め集。
    それゆえか内容も、世間には届きづらい身内向けのきらいを感じた。
    だからなのか、タイトルを前作とは違い、なんの捻りも無いストレートな「外伝」にしたのは、作者なりのこれから読もうとする人への誠意なのかも。

  • 「木村政彦外伝」というより「木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか外伝」です。大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した、かの本は二段組700頁超の大著ですが、そこに収まりきれなかった内容を収めた本で、この本とセットになって「木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか」は富士山として屹立するとの噂で慌てて手に取りました。どんだけ書けば著者は満足するのか、いや、まだこれでも足りんだろ…と思わせる熱量です。そう、「なぜ殺さなかったのか」に書ききれなかったこと、取材したけど収録出来なかったインタビューだけではなく、出版され受賞したことで生まれた出会いや対談も含まれて、このテーマは連山化の予感がします。考えてみれば、「七帝柔道記」も「北海道タイムス物語」も違う山じゃなくて、増田俊也アルプス化です。そもそもの書名の由来が、週刊文春の猪瀬直樹の「ニュースの考現学」での木村政彦への取材からの「枯れない殺意」から来ていて、それが大宅賞の選考委員としての猪瀬直樹に繋がり、そして猪瀬・増田対談になってまた繋がっていく…木村政彦が作る連鎖が大きな連なりになっていくのに圧倒されます。菊池成功や平野啓一郎とか柔道と無関係に見える人との対談も面白く、その中で、増田俊也の前年の大宅壮一ノンフィクション賞の受賞者、今年「極夜行」で大佛次郎賞を受賞した角幡雄介との対談で気づいたのは、どんどんデジタル化していく社会の中で、彼らのストイックなまでのフィジカルに対するこだわりが必要とされているのではないか?ということ。木村政彦という特異点に執着する増田俊也の特異性は狭く深いものだけではなく大きな豊穣な分野を切り開いているのだと感じました。

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著者プロフィール

1965年生まれ。小説家。北海道大学中退後、新聞記者になり、 第5回『このミステリーがすごい!』大賞優秀賞を受賞して2007 年『シャトゥーン ヒグマの森』(宝島社)でデビュー。2012年、『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』(新潮社)で第43回 大宅壮一ノンフィクション賞と第11回新潮ドキュメント賞をダブル 受賞。他の著書に『七帝柔道記』(KADOKAWA)、『木村政彦 外伝』(イースト・プレス)、『北海タイムス物語』(新潮社) などがある。

「2022年 『猿と人間』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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