文明崩壊 上: 滅亡と存続の命運を分けるもの (草思社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (560ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794219398

感想・レビュー・書評

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  • まず全体的な感想ですが、「文明崩壊」というタイトルを見て、文字通りマヤ文明(これは上巻に登場します)、アステカ文明、などそれらなりに知られている文明の崩壊プロセスや原因などが記述されている本なのかなと思ったのですが、そうではありませんでした。マヤ文明は触れられているものの、そのほかの題材としては(1)米国のモンタナ州、(2)イースター島、(3)ピトケアン島(バウンティ号の叛乱で有名な島ですよね)、(4)アナサジ族、(5)アイスランド、(6)グリーンランド、ということで正直「文明崩壊」か?というのは強く疑問に思いました。ただこれは翻訳者の責任であって、原題は”Collapse, How societies choose to fail or succeed”ということで、確かに文明とは言っていない。「社会」と述べているだけなので、原題を見る限り看板に偽りはありませんでした。

     中身ですが、印象に残る章と全く残らない章がありました。具体的には最後のグリーンランドにおけるヴァイキング(ノルウェー人)の物語は強く印象に残りました。なぜイヌイットはグリーンランドで生き残ったのにノルウェー人はダメだったのか、この違いに関する説明は説得力があり印象に残りました。他方、マヤ文明の崩壊などはテーマ的にはとても興味深いのですが、残念ながらダイアモンド氏の叙述内容はほとんど頭に残らなかったので、説得力が薄かったと言うことでしょうか。色々なケースを事例としてあげることで説得力を増そうとしているのはわかるのですが、正直ムダなケースもあるのではないかと感じました。もっと事例を減らして本当に説得力のあるケースだけを集めて薄い本にした方が面白い本になったと感じました。

  • 世界の様々な国の歴史を通して文明が崩壊に至るまでの要因を解説している本。
    この上巻は特にイースター島やヘンダーソン島などやマヤの都市から北欧ヴァイキングの歴史と環境、文明崩壊に至るまでなどを解説しているが、どちらかと言うと考古学的検証から解説されているので文明崩壊までの要因も政治学的、経済的観察からではなく、生物学的、生態学的、環境的、気象学的に解説されているので少し偏っている感は否めない。著者の得意とする分野から見た文明崩壊の原因を観察している感がある。
    ただ歴史をその方面から観察する上では参考になります。

  • 上巻では文明崩壊の原因を5つの枠組み、1.環境破壊、2.気候変動、3.近隣の敵対集団、4.近隣の友好集団、5.種々の問題に対する社会の対応、に分けられるとし、モンタナの現状、イースター社会の崩壊、ピトケアン島とヘンダーソン島の終焉、アナサジ族の衰退、マヤの崩壊、グリーンランドの終焉のそれぞれについて、上記の5つの枠組みで議論がなされている。 著者は、(他の著作でも同様に)圧倒的な情報量で仮説を補強していくため、読破にはかなりの労力を要するが、そのぶん強い説得力がある。次巻が楽しみである。

  • 過去の6つの社会、イースター島、ピトケアン島、ヘンダーソン島、アナサジ族、マヤ、グリーンランドが環境問題の解決に失敗し、文明が崩壊した経過が書かれている。

    グリーンランドの人たちが、慎重で変化を嫌う理由がわかって興味深い

  • 前著『銃・病原菌・鉄』のような大著を期待していただけに肩透かしを喰らう。本書も上下巻合わせて1,200ページ超の大作だがスケールダウン感は否めない。

    原題『Collapse』のとおり衰退しゆく幾つかの文明の過程と原因、成否を分けた要素を分析しているのだが、冒頭のモンタナ州しかり個別事象の集合体のような本になってしまっている。帰納的には人口密集による自然破壊・正負の内外集団影響によるものと結論付ける。イースター島やマヤ文明、ノルウェー領など著者の豊富な知見と鋭い分析力が端々に見られ、カニバリズムなど禁忌にも踏み込んでいる点は興味深いものの、各章分離した著者による考古仮説のためやや退屈感はあった。

  • イースター島、古代マヤ、ノルウェー領グリーンランドなどのかつて繁栄した社会はなぜ崩壊したのか。本書は『銃・病原菌・鉄』の著者ジャレド・ダイアモンドが『銃・病原菌・鉄』とは全く正反対のテーマについて扱ったものだ。著者は「本書の題は、厳密には″環境に関する要素を含み、ときに気候変動や近隣の敵対集団や友好的な交易相手を付随的な要因とする、また常に社会の対応という論点をはらむ崩壊″とでもするべきところだ」と記している。環境の危機に直面している現代社会は存続できるのか、崩壊への道へ進むのか。過去の失敗の原因を深く考察することが我々の道標となる。

  • 銃・病原菌・鉄と同じように、人種の身体的・知的差異ではなく、幾つかの地域で社会が途絶えてしまった原因を環境要因(5つ)であることを展開。ほぼ科学的検証に基づいた考古学的アプローチで、まるで5つパラメーターを持つ原因の方程式のように感じた。複数の事例を紹介している中で上巻が終わり、それで何が言いたいんだろう・・・と思いながら下巻へ。

  • 時間がなかったので、改めて再読したい。

  • 過去: 環境侵害、気候変動、環境問題と人口問題、武力闘争、急速に崩壊する社会。現在: 政治問題係争地=環境問題発生地。天然資源の破壊・枯渇・限界。有害物質。人口問題。

    遺跡を観光、でなくそこに人間の活動を読み取り、問題を提起、未来につなげようという壮大な構想。

著者プロフィール

1937年生まれ。カリフォルニア大学ロサンゼルス校。専門は進化生物学、生理学、生物地理学。1961年にケンブリッジ大学でPh.D.取得。著書に『銃・病原菌・鉄:一万三〇〇〇年にわたる人類史の謎』でピュリッツァー賞。『文明崩壊:滅亡と存続の命運をわけるもの』(以上、草思社)など著書多数。

「2018年 『歴史は実験できるのか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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