経済政策で人は死ぬか?: 公衆衛生学から見た不況対策

  • 草思社
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感想 : 50
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794220868

感想・レビュー・書評

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  • p39あたりでの疑問
    ・日本人が長寿なのは長引く不況と関係がある?
    ・コロナ禍では死亡率は低下した?

  • 経済政策が、人々の健康にどのような影響を及ぼすのかというのを、大恐慌やリーマンショックなどの不況時の各国の経済政策をもとに分析したもの。

    Kindleだと本の半分くらいが参考文献という、かなり学術書よりな本。

    内容としては、福祉への出費を抑制した国は経済の回復も国民の健康も悪影響がある、という主張を繰り返し行うもの。
    主張としては上記を色々なケースで挙げていく感じなので、エンタメとしてはそこまで面白くなかった。

    というか、凄いIMFアンチ。
    ここまで主張が真逆だと、逆にIMF側に立つ研究者の主張も見てみたい。
    ここまで参考文献もデータもミッチリなので、嘘な主張ではないと思うが…

  •  公衆衛生学の観点から、死亡率などの多種多様なデータに基づいて不況時の政策を評価した本。
     「国民の命は経済政策に左右される」という論調のもと、ソ連崩壊後のロシアやアジア通貨危機におけるタイ、金融恐慌におけるギリシャなどが緊縮政策で社会保障を削ったことで死亡率が増加したことを統計的に示している。一方、世界恐慌時のアメリカ、金融恐慌時のスウェーデンなどでは、不況に際して緊縮政策ではなく社会保護に予算を注ぎ込み、国民の健康状態を悪化させることを回避した。不況時には、ALMP(積極的労働市場政策)などの失業者を職に戻すことと公衆衛生に投資するべきである。
     制作の決定は経済学だけでなく様々な観点が必要である一方で、社会保護に重点を置く政策が一定の成果を出していることは説得力のある説明だった。政策は経済的な価値だけでなく、国民の健康状態も含めて評価すべきである、という主張のとおりの内容だったと思う。

  • 非常に恐ろしい話。
    不況のとき、人々の健康や生死を左右するのは経済危機そのものではなく、政府がどう対応するかによるとのこと。
    アメリカの大恐慌や、東アジア通貨危機、ソビエト崩壊、ギリシャの騒動など豊富な例をもとに、公衆衛生学や統計学から緊縮政策でどれほど人が死んでいくか語られる。

    これまで死は非常に個人的なものだという漠然としたイメージがあったけど、政府の政策次第でこれほど明暗がわかれるとはおそろしい。
    もし自分が不況時にギリシャに住んでたら、死ぬか高い確率で健康を損なっていたと思う。

    また緊縮政策を行った国の対照群として、不況時に逆に公衆衛生への支出を増やしたマレーシアやアイスランドなどの例も載っており、これまた非常に対照的な結果だった。
    支出を増やすとさらに経済が悪化するような感じもあるが、それとは逆で短期間のうちに成長へ転じ税収は増加する。豊富なデータをもとに一般の人へ伝わりやすい書き方になっており、どんどん読めていった。

    今総裁選で経済政策も一つの論点になっているが、緊縮政策を掲げている人は、この本を読んだうえで言ってほしい。
    「人命にかかわる問題をイデオロギーで考えてはいけない。」
    まさにこれだけデータが蓄積されているにも関わらず緊縮政策を推進するのは、イデオロギー以外の理由があるのだろうか。

    とくかくわかったのは、「経済政策で人は死ぬ」しかもその影響は甚大であること。
    自分が生まれてからずっと不況だといわれているためか不況というのにピンとこない部分があったが、健康に影響があるというのはとてもわかりやすく、その分怖くもなる。
    これを出発点に政治と経済、健康のことを考えていきたい。

  • 開発目標3:すべての人に健康と福祉を
    摂南大学図書館OPACへ⇒
    https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/BB99724815

  • 当たり前のようにも感じますが、どれも説得的な具体的事例が紹介されています。
    政治は大規模な医療であるという格言は、まさにそうだなまあと感じました。
    スウェーデンの取組など、真似したいものもいくつか気付けて有益でした。

  • 4.0

  • 実例がわかりやすい。
    福祉に関する政策は人の健康に直結する

  • 結果論かもしれないが、経済政策と衛生の関連性が示されており分かりやすい!
    とともに、政治家として政策を実行していく際はデータを示しても無視されたりと難しいのだなと暗くなる面も。定期的にアップデートして刊行して欲しい本です

  • 各国の経済政策が異なるので比較することで政策による結果の差を量的に検証することができる、というはなし。これを著者は「自然実験」と呼んでいる。指標の基本は死者数。
    この実験から、不況が人を殺すのではなく、不況期の緊縮政策が人を殺している、と結論付けている。
    共産圏の資本主義化は、ショック療法を行ったロシアより漸進的なベラルーシの方がはるかに死亡率が低い。
    経済危機の時にIMFに従った国、タイ、インドネシアは貧困率があがり自殺率も急上昇、従わなかったマレーシアではさほど苦しまずにすんだ。
    アイスランドは国民の団結によりセーフティネットを維持してサブプライム問題を乗り越えた。
    銀行の債務を納税者に負担させることを拒否!
    ギリシャはIMFのいうとおりの緊縮策で医療費支出削減、健康悪化、失業率上昇、GD低下と悲惨な目に。IMFは貸し手を守るのであって、国民を守るのではない。
    皆保険にしないとかえって医療費総額があがる、ヘルスケアへの投資の乗数効果が高い、
    経済危機下でも住宅、医療など社会保護への支出を維持・拡大した国は、経済を刺激して不況からの脱却が早まり、結局は債務返済まで可能になる。
    不況下での政策決定
    1.有害な方法は決して取らない 
       政策の効果と副作用をしっかりわかったうえで決定)
    2。人々を職場に戻す
       不況時の最良の薬は仕事、保険医療と教育の政治支出乗数が高いことがカギ
    3。公衆衛生に投資する
       疾病予防対策に資金をだし、ニーズに基づく医療を提供するほうが結果として経費節約になる
    べきか

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著者プロフィール

デヴィッド・スタックラー(David Stuckler)
公衆衛生学修士、政治社会学博士。イェール大学、ケンブリッジ大学、オックスフォード大学などで研究を重ねる。オックスフォード大学教授を経て、現在イタリアのボッコーニ大学教授。著書にSick Societies: Responding to the Global Challenge of Chronic Diseaseがある。

「2022年 『文庫 経済政策で人は死ぬか?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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