みんなの宗教2世問題

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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794973535

作品紹介・あらすじ

私たち2世の声を聞いてください!
虐待、金銭的搾取、家庭崩壊、性暴力、PTSD…。過酷な境遇を生きのびた当事者たちの証言と、識者たちの考察で、2世問題の解決に挑む。

安倍晋三銃撃事件で浮上した「宗教2世問題」。当事者たちの苦しみをどう伝え、どう救済するか? 統一教会、エホバの証人、オウム真理教など当事者たちの証言、さらに学術、ジャーナリズム、精神医療などの専門家による論考、海外の研究状況紹介、日本の創作物における宗教2世の描かれ方の総覧などから、2世問題の深層にせまり支援のあり方について考える一冊。「宗教2世問題」を一時の消費で終わらせないために。

〈宗教2世とは何か。本書では「宗教2世問題」を親が特定の宗教を信奉しており、その宗教儀式や宗教活動の影響によって、子どもの養育、発育、発達、成長に著しい障害が発生する問題と定義したい。(…)「宗教2世」は必ずしも「カルト」として非難される宗教団体の2世ばかりではない。一般的にカルト宗教と見なされない新宗教や、場合によっては伝統宗教の内部でも、「2世問題」は存在する。〉(「はじめに」より)

【目次】
■1章 当事者たちのさまざまな声
被害者をもう出さないために反セクト法を 小川さゆり
スクールカウンセラーとして、いまは2世たちの苦しみに寄りそいたい マリコ
マインドコントロールは残っていて、いまでも人が怖い もふもふうさぎ
「正統派」と呼ばれるところでも、カルト化することは普通にある あやめ
家族を大事にするための組織が、家族を犠牲にしている サキ
教義や信仰心を利用した性暴力にも焦点があたってほしい 朱莉
宗教2世とマルチ商法2世の類似する苦悩 ライオ
安住の地で暗部を見ても、外の世界の生き方がわからなかった 大沢
信仰優先で家族が崩壊するのは、オウムも他のカルトも同じ 中山尚
たまたま人を殺さなかった、とある宗教2世の話 紫藤春香

■2章 宗教2世・海外での最新研究状況 横道誠
──宗教的虐待、毒宗教、健全な宗教団体、宗教的トラウマ症候群、宗教的児童マルトリートメント

■3章 識者たちによる宗教2世論
宗教2世問題の歴史的宗教文化的展望 島薗進
宗教2世とカウンセラーの責任 信田さよ子
宗教・社会・家族のダイナミズム 釈徹宗
普遍的問題としての宗教2世問題 中田考
目の前で苦しむ他者に耳を傾ける 沼田和也
社会全体で2世の生きづらさを軽減する努力を 江川紹子

■4章 精神医療/カルト問題報道の観点から
信仰の自由はR20にしたほうが良い? 斎藤環×横道誠
宗教2世問題をコンテンツ消費で終わらせないために 鈴木エイトインタビュー

■5章 宗教2世はいかに描かれてきたか 横道誠
──関連する日本の創作物について思うこと

■6章 改めて宗教2世問題を展望する 横道誠

感想・レビュー・書評

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  • 宗教者、精神科医、ジャーナリストなどこの問題に向き合っている様々な専門家との対談や取材と2世当事者の声を集めた章が秀逸。
    むしろそこだけでも良かったのでは、と思うくらい。
    最後の方の章は著者自身の著作や宗教関連の文学や映像作品の紹介と見解が多く、興味を惹かれるものもあったが映像に関してはほとんど見ることのできないものが多いこともありちょっとうるさく感じてしまった。蛇足感がある、と言ったら言い過ぎだろうか。

    p253で著者が創価学会について、エホバの証人のように2世問題を唱えてる人や宗教被害を受けたと言っている人が実数からすると多いと思えない、ゆえにエホバが2世問題を生み出しやすい宗教と言えるかも、という趣旨のことを言ってます。2世問題というくくりの中で共通する困難さや生き難さなどもあるでしょうが、宗教の中身によって確かに問題の深刻さや複雑さはかなり違うだろうと思います。
    一括りでは解決できないところにどう対処していくかというところにまだまだ全然現状はたどり着いてないと思います。
    鈴木エイトさんが懸念するようにこの問題がコンテンツとして消費されてもやもやと終わらされないことを願っています。

    斎藤環さんが言うように、宗教をR20にするというのはかなり名案だと思います。私自身も子供のころから親の入信した宗教に結婚後も振り回され(本書に出てくる当事者の方々とは困難さは比較になりませんが)「何故自分に意志で入信したものでない宗教にこれほど神経をすり減らされなければならないのか」とその理不尽さに怒りをずっと抱いていたので、本当にそのような法律ができてくれたらどんなにいいだろうと思いました。
    …まぁ現実にはほとんど無理だとは思いますけども。

  • エホバの証人の2世の方で、臨床心理士の資格を取り、スクールカウンセラーをされている方の言葉が、とても強く切実に響きました。
    ぜひ多くの人に読んでもらいたい本です。

  • 東2法経図・6F開架:160.4A/Y77m//K

  • 安倍元総理大臣襲撃事件の容疑者山上氏の行動からクローズアップされた宗教2世 さまざまな宗教2世の生の声がつづられている。一時はマスコミも騒ぎ立てたが今では、冷めてしまったようだ。この本を読みもう一度宗教2世について考えることとなった。

  • ●教会では「霊的になる」ことをよく言うんです。一般的に言うなら憑かれている、言動がおかしくなると言う意味だと思うんです。なぜか、私自身、悪霊がついてるから、男性からは誘惑が起こるんだって言われ、韓国の修練会に行き、除霊をするようにと指示されました。
    ●死んでも都合が良いように解釈されてしまう。「霊界で活躍している」「神様の試練を超えられなかった」とか、好き勝手言われるんだろうなと。
    ●眞光では「神の御名を穢す」と言う教えがあり、組み手なのに、自分が不幸だと言うことを一般の人に知られてはいけないというのがあります。手かざしがあるのに、なんで幸せじゃないのか、手かざしとかインチキじゃないかって一般の人に思われただけで「罪を積む」と言う教えです
    ●眞光では、下痢、嘔吐、アトピー、鼻血など、体内から出る汚いものは「清浄化」と言う体の毒素が出ている、体をきれいにする現象だと教えているんです。神様の光で、体の毒が溶けて出てきたんだ、良いことなんだと思っていました。

  • 「カルトの子」に衝撃を受け、何度も読んでいる身としては読まずにいられないテーマ。宗教と発達障害の関係については考えたこともなかったけど、人生がうまくいかずに宗教に助けを求めることを思えば、生きづらさを感じやすい人たちがはまってしまうのはなるほどと思う。当事者のインタビューは読みやすかったけど、専門家のところはちょっと読み飛ばすところも。信田さよ子さん、久しぶりに読んだけど、やっぱ分かりやすかった。斎藤環さんとの対談のとこも。こういう本を読むと、あの高校時代のエホバの子を思い出す。今どうしてるんだろうなぁ。エホバの個別訪問が辛い思いをさせて、コミュニティへの帰依を高めるためだという意見にはなるほどーと思った。しかし、こういうのって誰が仕組んでいくんだろうな。金なのか権力なのか性的なものなのか、絶対どこかの少数がうまい汁を吸ってると思うんだよな。

  • 1章は聞書のためか整っていない文章に読み取りにくさを感じると共にとてもリアルに訴えかけてくるものがあった。3章の識者による宗教2世論はとても興味深く、宗教、特にカルトの問題をどう捉えるかの指針となる。特に釈撤宗氏の項で述べられているように宗教教団側の取組むべき課題を明確にし、2世問題を家族の問題だけに留まらせないように社会はしっかりと向き合っていかなくてはならないと感じた。
    宗教問題を取り扱った本や映画の紹介もあり、続けて手にしていきたい。

  • 多角的な視点からの信教の自由の侵害されているケース

  • 【書誌情報】
    横道誠 編著
    四六判並製 368頁
    定価:1,980円(本体1,800円)
    978-4-7949-7353-5 C0095
    〔2023年2月〕

    ◆虐待、金銭的搾取、家庭崩壊、性暴力、PTSD……。過酷な境遇を生きのびた当事者たちの証言と、識者たちの考察で、2世問題の解決に挑む。
     安倍晋三銃撃事件で浮上した「宗教2世問題」。当事者たちの苦しみをどう伝え、どう救済するか? さまざまな2世当事者たちの証言、学術、ジャーナリズム、精神医療などの専門家による論考、海外の研究状況紹介、日本の創作物における宗教2世の描かれ方の総覧などから、2世問題の深層にせまり支援のあり方について考える一冊。「宗教2世問題」を一時の消費で終わらせないために。
    https://www.shobunsha.co.jp/?p=7438

    【目次】
    ■1章 当事者たちのさまざまな声
    被害者をもう出さないために反セクト法を 小川さゆり
    スクールカウンセラーとして、いまは2世たちの苦しみに寄りそいたい マリコ
    マインドコントロールは残っていて、いまでも人が怖い もふもふうさぎ
    「正統派」と呼ばれるところでも、カルト化することは普通にある あやめ
    家族を大事にするための組織が、家族を犠牲にしている サキ
    教義や信仰心を利用した性暴力にも焦点があたってほしい 朱莉
    宗教2世とマルチ商法2世の類似する苦悩 ライオ
    安住の地で暗部を見ても、外の世界の生き方がわからなかった 大沢
    信仰優先で家族が崩壊するのは、オウムも他のカルトも同じ 中山尚
    たまたま人を殺さなかった、とある宗教2世の話 紫藤春香

    ■2章 宗教2世・海外での最新研究状況 横道誠──宗教的虐待、毒宗教、健全な宗教団体、宗教的トラウマ症候群、宗教的児童マルトリートメント

    ■3章 識者たちによる宗教2世論
    宗教2世問題の歴史的宗教文化的展望 島薗進 宗教2世とカウンセラーの責任 信田さよ子
    宗教・社会・家族のダイナミズム 釈徹宗
    普遍的問題としての宗教2世問題 中田考
    目の前で苦しむ他者に耳を傾ける 沼田和也
    社会全体で2世の生きづらさを軽減する努力を 江川紹子

    ■4章 精神医療/カルト問題報道の観点から
    信仰の自由はR20にしたほうが良い? 斎藤環×横道誠
    宗教2世問題をコンテンツ消費で終わらせないために 鈴木エイトインタビュー

    ■5章 宗教2世はいかに描かれてきたか 横道誠──関連する日本の創作物について思うこと

    ■6章 改めて宗教2世問題を展望する 横道誠

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著者プロフィール

京都府立大学文学部准教授。1979年生まれ。大阪市出身。文学博士(京都大学)。専門は文学・当事者研究。単著に『みんな水の中――「発達障害」自助グループの文学研究者はどんな世界に棲んでいるか』(医学書院)、『唯が行く!――当事者研究とオープンダイアローグ奮闘記』(金剛出版)、『イスタンブールで青に溺れる――発達障害者の世界周遊記』(文藝春秋)、『発達界隈通信――ぼくたちは障害と脳の多様性を生きてます』(教育評論社)、『ある大学教員の日常と非日常――障害者モード、コロナ禍、ウクライナ侵攻』(晶文社)、『ひとつにならない――発達障害者がセックスについて語ること』(イースト・プレス)、『解離と嗜癖――孤独な発達障害者の日本紀行』(教育評論社)、『グリム兄弟とその学問的後継者たち――神話に魂を奪われて』(ミネルヴァ書房)、『村上春樹研究――サンプリング、翻訳、アダプテーション、批評、研究の世界文学』(文学通信)が、共著に『当事者対決! 心と体でケンカする』(世界思想社)、『海球小説――次世代の発達障害論』(ミネルヴァ書房)、編著に『みんなの宗教2世問題』(晶文社)、『信仰から解放されない子どもたち――#宗教2世に信教の自由を』(明石書店)がある。

「2024年 『発達障害者は〈擬態〉する』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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