- Amazon.co.jp ・本 (346ページ)
- / ISBN・EAN: 9784796663526
感想・レビュー・書評
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何度も書くが、「楽園のカンヴァス」からはまった人間は原田マハのデビュー作を知らない。
もしかしたら、正確には今作がデビュー作ではないのかもしれないが、今作は第1回日本ラブストーリー大賞受賞作であり、かなりのファンがいることを最近知った。
沖縄が舞台の今作は先に読んでしまった「風のマジム」に雰囲気も作風もよく似ている。
大らかな沖縄の風土と原田作品の温かさが相まって、前評判どおりの優しい作品。
沖縄で愛犬と暮らす海人・明青が、島の再開発の視察で行った先の神社で絵馬に「嫁に来ないか」と書いたことから、本当に花嫁がやってきた、あらすじだけ読めば、何ともファンタジー。しかし、実際に描かれているのは主人公・明青の孤独な人生や、沖縄の小さな町が抱えている高年齢化や再開発問題など、かなり考えさせられる内容。
直前に別の作家さんではあるが、やはり沖縄を舞台に描かれた作品を読んでいるだけに、いろいろな内容がクロスして、ライトなタッチで描かれているのに、何だかいろいろ考えてしまう。
幸の正体は、うすうす分かってしまうが、完全なハッピーエンドで終わらないところがまたいい。
そして何より、幸せは自分から探しに行かないといけない、と言うことを優しく教えてくれる良作。
でも、ちょっと期待し過ぎていた部分があるので、星は少なめ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
久し振りに大好きな原田マハさんの小説を読みたくなって、まだ読んでないマハさんの第1作目の小説を買ってきた。マハさんの小説を読むのは12作目だが、どれも最後は幸せな気持ちになる感動の結末が待っているのは変わりない。
沖縄の小さな離島で、一人で雑貨店を営み暮らす主人公の友寄明青35歳が、幼な友達が進める島のリゾート開発の為に招待された旅行先の北陸の離島の神社の絵馬に「嫁に来ないか」と書いたことから始まる最後まで謎がわからないラブストーリー。
リゾート開発に最後まで反対の姿勢を崩さない明青の想い、幼な友達との友情と裏切り、島の人々の支えと軋轢、子供時代の苛めと友情と恋愛、子供の時に父親を亡くし、謎のまま居なくなった母親。それらが全部繋がって「嫁に来ないか」の絵馬を見て明青のところに来た美しい女性の謎が解ける。
ちょっと切ない恋愛小説だが、最後は幸せになるんだろうと余韻を残した結末に感動する。
また、「風のマジム」「太陽の棘」に続いて大好きな沖縄を舞台にしていて、その美しい情景が目に浮かぶのがうれしい。
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明るい沖縄がまぶたの裏にひろがる温かい小説。読みやすくハッピーエンドの終わり方もGOOD,着地を決めての話のまとめ方があったがご愛嬌。
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切なくて温かくて。
いつになく、ジンと深く長い余韻に浸った。
沖縄の離島に暮らす明青とそこにやってきた秘めた過去を持つ幸とのひと夏の暮らし。忍び寄る島の再開発を波形に二人の恋の行方が描かれる。
荒削りだけれど、物語の引力が強くて、読者の私の気分はすでに島人だ。一度も訪れたことのない南国だけれど、明青と幸のカップル二人と親同然のおばあや、友人たちのにぎやかな顔が浮かんできて、とても楽しくゆるやかな時間を楽しむことができた。
心の洗濯ができた。彼ら与那喜島の人々に幸せな日々が来ることを願ってやまない。 -
沖縄の小さな島に住む明青は、小さな店を営みながら犬のカフーと裏に住む巫女のおばあと静かな生活を送っていたが、島は明青の友人である俊一が進めようとしているリゾート開発の是非を巡って揺れていた。
そんな中、明青が旅先の神社で気まぐれに「嫁に来ないか」と書いた絵馬を見たという女性が、本当に明青の元にやってきた…。
「楽園のカンヴァス」が面白かったのでこちらの小説を読んでみたらビックリ、スタイリッシュでエッヂーな「楽園…」から一転、こちらは胸が締め付けられるほど穏やかで素朴で優しい小説だった。
「オリエンタリズム」ならぬ「オキナワリズム」とも呼ぶべき、誰しも多かれ少なかれ持っているであろう沖縄に対する憧憬と郷愁と先入観が少なからずこの小説の覚束ないリアリズムを助けていることは否定できない。しかしそれ以上に、登場人物たちの恋愛感情がとても活き活きと、また初々しく書かれているので、ストーリー自体はおとぎ話のようでもこの小説にリアリティを感じることができた。
沖縄の言葉や習慣を丁寧に調べ、またさりげない伏線にもキッチリと落としどころを付けてあるところもさすが原田マハという感じでぬかりない。
物語のカラクリとしてはおおむね予想していた通りだったけれど、こういうラブストーリーは、奇をてらうよりもこのくらいの予定調和感で進んだ方が最後のオープンエンディングが活きると思う。
三浦しをんの「風が強く吹いている」を読んだ時に、今年の上半期ベストは決まったと思っていたけれど、ひと月も経たないうちにこの作品が私的記録を更新してしまった。今年は良い小説に沢山巡り合えて幸せだ。 -
最後、ここで終わるのか〜。後のストーリーは読者が任されてしまった感じですね。ラブストーリー大賞に選ばれたことだけはあります。
主人公の照れ屋でぶきっちょな態度に、はっきりして〜と最後まで付き合わされましたが、その優しさが良かった。
こらえんならん時は、いっつも、いち、に、さんってね。やってみよう。 -
「本日は、お日柄もよく」に非常に感銘を受け、原田マハさんの作品の2作目としてこの本を読んでみた。
ある旅先の神社で、冗談半分で絵馬に「嫁に来ないか」と書いたことがきっかけで始まる物語。つかみとしてはおもしろいなと思ったものの、個人的にはそこまでぐっとくる作品でははなかった。「本日は、お日柄もよく」の自分の中での評価が非常に高かったこともあり、余計にそう感じてしまったのかもしれない。
登場人物の同級生との行き違いにより話は展開していくのだが、個人的にはどうもその同級生の行動、心情がわからない。そんな同級生を何だかんだ言いながら受け入れる主人公の心情も良くわからない部分もあった。
特徴的な右手の描写が度々あったが、結局その右手の特徴がどう物語に影響したのかもあまり伝わらなかった。これは私の読解力がないだけかもしれないが…
とはいえ非常に読みやすく、沖縄行きたいなぁと思わせてもらった点も踏まえ、☆3つにしたいと思います。 -
不器用にも程がある
話すべきことは話し合わないと、そりゃすれ違うでしょう
(すみません)
よかったのは、与那喜島の暮らしの描写
裏のおばあが身体を壊してからが辛かった
諸行無常
さみしい、かなしい…
島をリゾートにしたら財政的には立ち直るかもしれないけど、
南の島の素朴な暮らしはこうやって絶えていくんだなと、
街から勝手なことを思ったり -
とっても素朴で純粋なラブストーリーで、静かな沖縄のさざなみが聴こえてきそうな美しい描写が盛り込まれ、今の時代に手紙…?でもこのアナログ感が懐かしさを感じ、読んでいてとても温かみを感じる小説でした。誰かが待っていてくれる、そしてそこに幸せがある、ごく当たり前が当たり前でない世の中になりつつある。明男や幸のような親と死別しひとりぼっちになるケースもあれば、家族はいてもそこに幸せを感じない家庭だってある。自分にとってかけがえのない人とはいつもどこかでつながっている、そしてそこに幸せがあるのだと、信じたい。