アメリカンドリームの終わり あるいは、富と権力を集中させる10の原理

  • ディスカヴァー・トゥエンティワン
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  • Amazon.co.jp ・本 (302ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784799321836

作品紹介・あらすじ

今日のアメリカの真実を記す、建国以来の下劣で恥ずべき行動原理。ニューヨークタイムズベストセラー、米国アマゾン#1 Best Seller in Macroeconomics。

感想・レビュー・書評

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  •  卓越した言語学者であると同時に、米国を代表する左派論客としても活躍してきたチョムスキーの、語り下ろしによる新著。

     タイトルのとおり、“アメリカにはもはやアメリカンドリームはない”という苦い真実を伝える書。何年か前に出たヘドリック・スミスの『誰がアメリカンドリームを奪ったのか?』の類書といえる。

     スミスもチョムスキーも、上位1%の富裕層が国の富をほぼ独占する米国の超・格差社会化を、諸悪の根源と見ている。
     ただ、チョムスキーの批判のほうが、より激越で徹底している。
     というのも、チョムスキーは建国以来の米国の歴史を振り返り、“この国のエリート層は元々、民衆を隷属させ、富と権力を独占しようとし続けてきた”と断じているからだ。
     つまり、“アメリカンドリームの終わりは、建国以来進められてきた民衆支配のプロセスが、いま完成に近づいた結果にすぎない”との見立てである。

     チョムスキーは、米国の支配層が民衆を操り、「富と権力を集中させる」ために続けてきたやり口を、10の行動原理に集約する。そして、それぞれをくわしく説明し、米国の歴史からその例証を引いてみせる。
     一つの「原理」ごとに、それを証し立てる資料も付されており、資料的価値も高い。

     ただ、チョムスキーの言葉遣いは随所であまりにもエキセントリックで、ついていけない気分になった。たとえば――。

    《共和党はいまや、世界史上、もっとも危険な組織になってしまっています。(中略)
     共和党は、ここのところ、全速力で人類を破滅の途へと促してきているからです。それは、かつてないほどの勢いです。》

    《(米国の)軍事費は、国民の安全保障とは、ほとんどなんの関わりもありません。(中略)それはただ、世界の支配者だけを守るものなのです。》

     こういうアジビラまがいの言葉は、著者と立場を同じくする人は快哉を叫ぶだろうが、中立的読者にとってはドン引きだ。

     若者たちがiPhoneなどを買ったりすることまで、“権力者が民衆を支配するために積み重ねてきた情報操作の結果だ”とか言ってみたり、チョムスキーの見方は極端すぎ。

     とはいえ、そのようなアジテーションを差し引いて読めば、米国政治に対する根源的批判として、傾聴に値する内容ではある。

  • アメリカの特異性や独善的なところがよくわかる。神の手とか市場原理主義の、個人個人が個別の利益を求めていれば全体最適になる的な思想がいけないと思うんだけど、これを覆すには対立の予感がある程度低くいけないという気がして、それがもうだいぶ大きくなって負のサイクルに入ってしまっている感じがする。どこも対立ばかり。グローバリゼーションとか情報化が背景にある。大事なのはローカルの公共性なのかな。

  • (82ページ)「国際的な「自由貿易協定」と呼ばれているものの実態は、「自由」貿易どころではありません。そのような経済体制は、明らかな意図をもってつくりあげられたもので、狙いは、世界中の労働者をお互いに競争させて、賃金をさげなければならないように追い込むことにありました。その結果、働く人たちの収入は大きく落ち込むことになりました」
    大いなる不都合は、こちらの味方のような顔をして近付いてくるということか。

  • ノーム・チョムスキーによる現代の米国の危機的状況に関する告発書。
    著者の主張に沿った資料を集めているため、まるで謀略史観のような議論が展開されているが、全体として富の偏在が加速して悪い方向に向かっているのは間違いないのだろう。そして、その動きはトランプ大統領になって、怒涛のように加速している。
    草の根の民主主義が米国で盛り返し、まずは妥当トランプを果たして欲しい。

  • 【由来】


    【期待したもの】

    ※「それは何か」を意識する、つまり、とりあえずの速読用か、テーマに関連していて、何を掴みたいのか、などを明確にする習慣を身につける訓練。

    【要約】


    【ノート】


    【目次】

  •  アメリカの金融業や製造業などの大企業と、その会社が雇ったロビイスト達によっていかにアメリカの政治が操られて腐敗させられているかを鋭く指摘した本。
     チョムスキーによれば、自己の利益のみを追求するエリートたちによって、アメリカの政治は大きくゆがめられ、貧困層などの社会的な弱者に対する救済措置などが不当に減らされているような状況らしい。自由や民主主義というイデオロギーを掲げる米国だが、その実態は多額の政治献金とその見返りとしてのロビイストを通した大企業の要求のせいで、民主主義からはかけ離れてしまっているらしい。
     マーティン・ギレンズとベンジャミン・ページによる研究によると、個々の有権者は経済エリートたちと政治に対して比べてはるかに少ない影響力しか持ってないとのことらしい。日本ではアメリカほど大企業が政治に対して影響力を行使していないイメージだけど、実態はどうなんだろうか…
     まぁ、今のところはトリクルダウンを進める金持ちになりたいと思う。

  • かつてアメリカンドリーム期待した自分と決別しきれないのでいるので、タイトルに惹かれて手に取ってしまった。
    通販じゃ買わないけれど、本屋で見かけると手にしてしまうっていう例だな。

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著者プロフィール

ノーム・チョムスキー(著) 1928年生。言語学者、批評家、活動家。アリゾナ大学言語学栄誉教授。『統辞構造論』(1957年)において言語学に「チョムスキー革命」をもたらし、その後も生成文法研究の発展を牽引し続けた。エドワード・ハーマンとの共著『マニュファクチャリング・コンセント』(1988年)では自由民主主義社会における思想統制のメカニズムを分析した。またベトナム反戦運動では中心的な役割を担い、それ以降も各地の独立メディアと協力して様々な草の根運動に協力し続けてきた。主に自国アメリカの国内外での強権主義に対して、アナーキズム思想と大量の歴史的資料に基づいて重厚な批判を展開している。存命中の学者としては世界で最も多く引用されている。ウェブサイト:https://chomsky.info/

「2021年 『気候危機とグローバル・グリーンニューディール』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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