本を書く (ポケットスタンダード)

  • 田畑書店
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本棚登録 : 263
感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784803803921

作品紹介・あらすじ

本書には「『ものを書く』ことの隠喩でもあるかのように、ときにはなんでもない、あるときには非凡な人たちの話が、小さい叙事詩のように織り込まれる」(須賀敦子/朝日新聞書評より)。

『ティンカー・クリークのほとりで』でピュリッツァー賞を受賞したネイチャー・ライティングの第一人者、アメリカの女性作家が、創作生活のすべてを象徴的な文体で記した、ものを書こうとしているすべての人に贈るバイブル。

巻末には訳者による旧版のあとがきに加え、「ポケットスタンダート版 刊行に寄せて」を収録。また解説に鶴ケ谷真一氏「本を造る――解説にかえて」、早坂大輔氏(書店「BOOKNERD」店主)書下ろしエッセイ「書くことの真理」を収録する。

感想・レビュー・書評

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  • 717夜 読相篇
    アニー・ディラード「本を書く」(パピルス 1996)
    2003年2月20日 - 松岡正剛の千夜千冊
    https://1000ya.isis.ne.jp/0717.html

    本を書く | 田畑書店
    https://tabatashoten.thebase.in/items/57965174

  • 原著刊行時は既に成人していたが、「ものを書く」ことを諦めていた頃だったせいか通らなかった本。文章でプロにはなっていないが、20年近く文章を書いて発表しているので、筆者の日々の生活から見える執筆姿勢を注意深く読み取りながら追っていった。米国北西部の描写の美しさにぐっと掴まれたところで、目標は少し達成できた感もある。残りはこれから自分の書く文章に筆者の姿勢がどれだけ影響させられるかで達成できると思うが、はてさて。

  • 思考の跡を文章に残してはいけない。残していると見えるのはそれはつくられた文章。作家の裏側をかいま見る書。

  • アニーディラードの本を書くときの日記のような短編集のような作品。
    随所に見られる心構えを感じることができる作品。

  • 文士を自称する作家の手記って、まぁだいたいこういう感じ、ストイックな凄腕の職人が自分の職業について語っているような感じになる気がする。
    彼女によれば、ちょっとでも映画化権がちらつくような作品は、腐臭がするらしい。
    後半は、航空ショーでよくある曲技飛行にえらく感動した話。大学の先生でもあるその操縦士に、なにか非常に強いインスピレーションを得たという。その感動は伝わってくるのだが、この本を読んでいる我々が共有できるものなのか、いまいちよくわからなかった。

  • 多少なりとも執筆の技術的な内容を期待していたので、読み始めは「なにを呼んでいるんだ?」と困惑した(解説まで読むとこれがディラード節のようなものだとわかる)。しかし、本気で書こうとしている人には、これほどその孤独に寄り添う友はないのではないか。諦めてしまわずに一語一語読んでいくと、納得できる言葉ばかりである。

    書物への向き合い方は人それぞれなので、ディラード氏の考えが必ずしも全ての読者にとって、全ての書く人にとってふさわしい訳ではないだろうが、こんなふうに世界を感じている人がいる、ということを知れるのは貴重なことだと思う。"言葉を尽くす"とはこのことか、と思わされる文章だった。この本を読んだ後だと、迂闊にありきたりな言葉を紡ぐことを恥ずかしく感じるかもしれない。

    新しく刊行されたポケットスタンダード版で読んだが、小さな本なのにこれだけ密につまった本は悩ましい。悩ましい喜びだった。

  • ・最後の章は実践?さらっと書けている。
    ・「人は考えたとおりの人間になる」ジェームズ・アレン著 栁平彬訳

  • 先週本屋で見かけて思ってたのと違ったので買うのを躊躇したが、昨日図書館に入荷してたので読んだ。自分に足りないのは真摯な態度かなと思わせられました。てか、作家って大変だな。

  • 祝・復刊! 旧パピルス版の四隅にたっぷりと余白のある本文レイアウトも素敵だったが、ハードカバーの文庫本という田畑書店版の佇まいもとても良い。何度も読み返したくなる本書によりふさわしい姿になったと言えるのではないかと思う。
    今まで何度、図書館でこの『本を書く』を借りてきただろうか。本棚の森を何週しても気分にぴったりくる本が見つけられないとき、私はこの本を借りて帰った。なぜ本書が特別多くの再読に耐えうるのかはわからない。断章形式で小気味よくリズムを刻む文章のためでもあり、寓話やメタファーが魅力的な謎として散りばめられているせいでもあるだろう。
    本書では一見、書くことと関係のなさそうな譬え話がいくつも語られる。葉から葉へ移ろうとする青虫。ハチドリのように忙しく羽を動かすスフィンクス蛾。ワニと闘って死んだ先住民のレスラー。そして最終章のほとんどは実在のスタントパイロット、デイヴ・ラームの思い出に捧げられている。本を書く生活について語るエッセイの最後を飾るのが、飛行士のエピソードなのである。超絶技巧の曲芸飛行を描いたこの章はラームの追悼文でもあり、その美しく、けれど感傷に溺れることのない清い文章は、第六章までのディラードが厳しく自らを追い詰めた結果として出力された最高の例文を見るようである。
    執筆中に起きた嘘みたいな話も語られる。真夜中の図書館で、姿の見えない相手と毎晩一手ずつのチェスをしたこと。ヤカンを沸かしていることを忘れないように、指を洗濯ばさみで挟みながら書いたこと。第四章がそれだけで終わる火を噴くタイプライターの挿話は、まじめに取れば旧約聖書の燃える柴のようでもあるし、今もそのタイプライターを使い続けているというオチには驚かされつつ笑う。些細なことに天啓を見いだすと同時に、そんな自分の神秘主義を笑いとばす視点も手放さず、けれど体の中心軸は「世界は満ちている」という信仰のほうに少しだけ傾けておくこと。シャルダンの引用で本書を閉じたディラードの作家としての信条はそういうものだったんじゃないかと思う。
    私は作家をめざして文章を書いたことはないが、本書がそういう人たちのための〈文章読本〉では全然ないということはわかる。だいたい、執筆で引きこもるため山の上にプレハブを建てたとか、過疎の島の海岸にある小屋に移って書くとか言われても、経済的に真似ようがない(笑)。ディラードが考える〈本〉というものがあまりにも理想主義的だという意見もあるだろう。けれどこの、徹底的に無駄が削ぎ落とされ、まぎれもない美が宿った散文を読む快感に一度取り憑かれたら、もう両手を上げて降参するしかないのだ。
    本書を読むと西洋文学におけるエッセイの伝統に思いを馳せずにいられない。それは日本の随筆とは異なるように思う。その異なる何かを掴むために、私はまたいつか『本を書く』を開くだろう。

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著者プロフィール

アニー・ディラード[Annie Dillard]
1945年、アメリカ、ペンシルヴェニア州ピッツバーグに生まれる。63年、ヴァージニア州のホリンズ・コレッジ英文科に入学。大学2年のとき、教授のリチャード・ディラードと結婚。88年に、H.D.ソローの研究家であるロバート・リチャードソンと三度目の結婚。作品には本書の他に、少女時代の回想を語った[An American Childhood](1987、邦訳『アメリカン・チャイルドフッド』パピルス)、ピュリッツァー賞を受賞した[Pilgrimat Tinker Creck](1974,邦訳『ティンカー・クリークのほとりで』めるくまーる社)、[Teaching a Stone to Talk](1982年、邦訳『石に話すことを教える』めるくまーる社)、他。自然に対する深い感覚と精緻なスタイルを備えたその作品は、ヨーロッパ各国にも翻訳され、きわめて高い評価を得ている。

「2022年 『本を書く』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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