蜂と蟻に刺されてみた―「痛さ」からわかった毒針昆虫のヒミツ

  • 白揚社
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  • Amazon.co.jp ・本 (366ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784826902021

感想・レビュー・書評

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  • サシハリアリにスズメバチ、アシナガバチにヒアリ。
    刺すアリやハチは数々あるが、できたら刺されたくないと思うのが普通の反応だろう。
    ところが著者、ジャスティン・シュミットは違う。
    昆虫毒を専門とする生物学者である彼は、さまざまな毒針昆虫に自ら刺され、痛みを数値化したシュミット指数なるものを作り上げた。その功績で2015年にイグ・ノーベル賞を受賞している。

    その「成果」は、巻末付録としてついている、毒針昆虫に刺されたときの痛さ一覧表にまとめられている。
    数値スケールで1~4まで。種の名称と分布域、刺されたときの感じも記載される。
    「目がくらむほどの強烈な痛み。かかとに三寸釘が刺さったまま、燃え盛る炭の上を歩いているような。」(サシハリアリ、痛みレベル4)「ハッと目が覚める感じ。強烈に苦いコーヒーを飲んだときのような。」(インディアン・ジャンピングアント、痛みレベル1)といったストレートなものもあれば「ピュアな痛みに、やがて雑味がまじり、ついには肉をむしばむような痛みに代わる。まるで恋愛、結婚につづく泥沼離婚劇みたいだ。」(アーティスティック・ワスプ、痛みレベル3)「神々が地上に放った稲妻の矢・海神ポセイドンの三叉槍が胸に打ち込まれたような。」(ジャイアント・ペーパーワスプ、痛みレベル3)といった、わかったようなわからないような譬えもある。
    さながら痛みのソムリエ的だが、果たして彼の評価が正しいかどうか、検証する気も失せるような、「痛い」表現のオンパレードである。

    これだけだと、ちょっと変わった人というところだが、本文のおもしろさはオタク的物珍しさに留まらない。
    なるほど科学者、考察も深い。
    刺すアリ・ハチには毒があるわけだが、痛みの毒と致死性の毒は違うものであったりする。天敵に痛さを思い知らせて、次に狙われないようにするのが目的である場合もあれば、実際に殺してしまうことが目的であることもある。獲物として、幼虫に与えることが目的であれば、麻痺させる(しかし、「餌」の鮮度を保つために殺さない)ことに特化した毒もある。
    昆虫の毒は、それぞれのニーズに合わせて進化してきた経緯を持ち、なかなかに複雑な歴史を背負っている。成分も単純なものではなく、さまざまな種の毒が「ブレンド」されている。
    毒成分の細かな研究も興味深いところだ。
    今までに最も詳しく研究されているのはミツバチの毒である。ミツバチ毒に含まれるメリチンというペプチドは、赤血球を破棄する能力を持つとともに、発痛作用や心筋を直接攻撃する作用を持つ。やはりミツバチ毒に含まれるホスホリパーゼA2は細胞膜を構成するリン脂質を破壊し、これが二次的にさまざまな反応を引き起こして弱い痛みを生じる。
    ミツバチ毒には、ヘビ毒などと異なり、有効な抗毒素がないが、これはおそらく主成分であるメリチンが抗体のできにくい小分子ペプチドであることが理由であると考えられる。
    驚くことに、ヒトがハチなどに刺されて死ぬ場合、その原因は毒素の毒性というよりも、アレルギーによることが多いのだという。ヒトの大きさだと、昆虫毒だけで死に至るには相当の量が必要であるようだ。

    口絵写真にはさまざまな毒針昆虫の写真も収められている。著者が途方もない数のミツバチに囲まれている写真も必見。
    読みながら「いたたたたた(><)」となりつつも、なかなかに奥深い昆虫毒の世界を垣間見られて楽しい。

  • 国立科学博物館の「毒展」から辿りついた一冊。
    自分で痛みを検証した、イグノーベル賞を受賞した著者はなんとも強者。
    虫の毒や針についてだけでなく、第4章ではオーストラリアのカンガルー島を学会で研究仲間と訪れた著者は、
    「何気なく誘って、みんなにも刺されてもらおう。ここに集っているのは、 社会性昆虫に造詣の深い研究者ばかり。格好の標的になってもらえる。」
    などの研究の過程も垣間見え、読み物としても楽しませてくれる。
    極めつけは、付録の「毒針をもつ昆虫に刺されたときの痛さ一覧」
    ・ウォーリアーワスプについてにて、
     「拷問以外の何物でもない。 (中略)それにしてもなぜ私はこんな一覧を作り始 めてしまったのだろう?」と記載されているところ。要所要所、笑いがあって楽しい知識本。

  • イグ・ノーベル賞を受賞した作者の、研究対象に対するアプローチは少し変わっている。

    蜂に刺され、噛まれ、蟻に噛まれ、刺される。
    そして、その噛むメカニズム、刺す習性、巣作り、狩の姿など研究対象に迫っていく。

    蜂や蟻の最大の武器を忌避せずに受け入れるレポートは、詳細でリアル。

    世の中には変わった学者がいるものだ。
    彼が、毒物のアレルギーでなくてよかった。

  • 長かったけどおもしろかった。
    体のどこを刺されたら痛いかの実験で、腕だったり、舌だったり、局部だったり想像するだけで痛い。
    ハチやアリの種類で刺された時にどのくらい痛いかの番付表が最後についている。ワインやウイスキーのような評価(コメント)でユーモアが効いてて良き。

  • 虫刺されの痛みの数値化でイグノーベル賞を受賞した、シュミット氏の著書。
    様々な種についての記述が専門的だけれど、著書の変態的とも思える昆虫愛が伝わり、初心者でも興味をもって読み進められる良書。

  • ふむ

  • ☆信州大学附属図書館の所蔵はこちらです☆
    http://www-lib.shinshu-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BB26302141

  • とにかく痛そう、痒そう。うひーな一冊。
    さすがイグノーベル賞を取った人なだけある。着眼点が違う。

  • ↓利用状況はこちらから↓
    https://mlib3.nit.ac.jp/webopac/BB00545624

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