武器としての理系思考

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  • ビジネス社
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784828422596

作品紹介・あらすじ

新型コロナウイルスに対するマスコミ報道に限らず、巷には科学の装いをしたフェイク・ニュースが蔓延している。環境問題、健康情報、日本の歴史など長年にわたってウソがまかり通ってきた結果、それが世間の常識として定着してしまったものもある。しかし、そうしたウソは多くの場合、誰かがそのウソによって「得をしよう」として流布されたもの。そして、市井の人々が健康面や金銭面で少なくない被害を受けている。このような状況を打破するためには、一人ひとりが〝ウソを見抜く力〞を養う必要がある! 世の中の欺瞞と戦う科学者が、武器としての「理系思考」を伝授する一冊。

感想・レビュー・書評

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  • おカネや権威欲に縛られていない武田先生のような学者は少なく貴重である。なぜならウソを言ったり誤魔化したりする必要がないから。
    データを出さない、あるいは一部しか示さないなど、不誠実な情報が巷には溢れています。武漢ウイルスにしても、データを分析せずただ煽られて怖がっている人がなんと多いことか。これらを解決するには、武田先生が「おわりに」で書かれていることが全てではないかと思う。

  • この本の著者、武田氏の本は今まで20冊以上読んできましたが、最近本屋さんを通りかかって見つけたので手に取った最新本です。

    この本には、単に受け身で聞いていると真実とは異なることを信じてしまうようになる例を、過去に起きた報道や現在も行われているものについて具体的に解説しています。

    単に数字だけ見せられるよりも、その数字が何を意味するのか、さらには自分が何をすべきか、何に気を付けなければならないかを自分で考える代わりに、テレビ等から伝えてもらった方が楽だとは思います。しかしその状況に慣れ切っていると、自分で考えることを止めてしまうことになり、これは大変危険なことであると思いました。

    以下は気になったポイントです。

    ・科学というものは「わからない事がある」という事が基本になっている、私たちは森羅万象のうちのほんの一部しか知らず、ほとんどのことがわかっていない、このような認識を持っているのが、本物の科学者である。これは哲学の世界でも言われていることである(p19)物事を整理し、数式などを使って解析し「これはこういうことだった」と分析するのが化学であって、未来を予測するのは科学ではない(p21)データをみて判断するということ(p32)科学者は自分が信じていることが「ない」科学における結論はデータによって変わるので、対象物に対して個人的な信念はない(p43)

    ・日本でインフルエンザや通常の風邪に罹る人は、1年に2000万人いる。病気や事故を含めた全ての死亡者は、2019年度の統計によると138万人でこの数字は大きく変わらない。そして12−13万人が肺炎で亡くなる、ウィルス・肺炎による死亡者は9万人程度(p41)


    ・東日本大震災の地震は非常に特殊で、プレート型という一番起こりやすい東北沿岸の少し沖合いで起こったが、現在の研究では「3箇所くらいのズレが同時、もしくは逐次的に起こって大きなエネルギーを持った地震に発展した」とされる(p71)

    ・地震予知は絶対に当たらない、しかし必ず地震は起こる。この二点を調和させて、自分の生活に生かすというのが大事である(p78)

    かつて人間が火を使わなかった時代には、人間がダイオキシンに対して弱かった可能性があるが、火を使うようになってからは常にダイオキシンに晒されるので、それに対する受容体が体内にあって、体内に入ってくるダイオキシンとそれをカバーする作用を備えている。なので動物に有害だから人間に有害ということはない(p82)

    ・血圧も問題について考えるとき、まず知っておかなければならないのは、血圧は年齢とともに少しずつ上がっていくのであり、人間というものの年齢の変化に基づく合理的な変化である。歳をとると血管が硬くなってきて、心臓が血液を送ろうと思っても血管が膨らまなくなり、血圧が120位だった人が50歳ぐらいになると130とかに上がっていく(p98)心臓が血圧を上げてでも血液を全身に送ろうとしているのは「血圧が上がって血管が破れる危険性」と「血の流れが悪くなって癌にになったり風邪をひいたり、肺炎になったり、ボケること」と見比べてリスクを比較した中でベストの選択している(p100)

    ・食塩とは、ナトリウム塩といい、これは人間の身体に必要なもの、極端に減らせば神経的な障害が起きたり、血圧が下がり過ぎて脳障害や認知症などになる人も出てくる。近年、熱中症などが増えているのも食塩不足が原因だとする疑いもある(p108)

    ・男性の喫煙率は1995年から2020年までに85%から30%になったが数千人だった肺がんによる死亡者が現在では6−7万人に増えている。喫煙率が下がると肺がんは急増すると言えることになる(p124)

    ・身体の中の制ガン物質は日々の太陽から受ける紫外線から発生する皮膚癌の倍くらいは必要と思われるが、そのくらいの発がん物質があったほうが人間の癌は起こらない。だから、タバコの煙とかご飯のお焦げとか魚を焼いた焦げのわずかな発癌性を持っているものをむしろ日常的に摂っている方が癌になりにくいことになる(p129)

    ・人間の身体には、自分の親から引き継いだ遺伝子は半分程度、残りの半分の遺伝子は、腸内細菌とか皮膚にいるダニとか神経に巣食っているペルペスウィルスとかの遺伝子である。生物というのは純粋であれば生きていけるのではなくて、生活の中の汚いものを全て含めて防御系を形成している(p130)

    ・2015年に厚生労働省は、食事におけるコレステロールの規制は撤廃する、という声明を出している(p131)コレステロールは人間に必要なものであり、食品から摂取できるのは必要分の20%程度、残りは体内で合成される。主に肝臓で作られるが複雑な化合物なので作るのが大変である。食品でコレステロールが入ってくると肝臓が働かなくて済む。(p133)1950年頃に入ってきた欧州のデータを見ると、コレステロール値が300までは特に人体への影響はない。400位になってくると色々な疾患が出てくる(p134)

    ・血管の壁についているコレステロールを引き剥がす回収用のコレステロールに「善玉コレステロール」、本当に必要なコレステロールを「悪玉コレステロール」と呼び始めた。悪玉コレステロールが少ないとは、必要なコレステロールが少ないということになる(p137)

    ・日本は、国民全体では1350腸炎の貯金を持っていて、そのうち350兆円を海外に、1000兆円を政府に貸している形になってる。(p152)1000兆円を全部使い果たしているので、これを返すために消費税を上げている(p153)政府は決まった予算内でやっていたが、1988年頃から国債発行をしてきた(p155)

    ・人間の場合、どういう形で残しているかというと、死体から記憶を持った気体状の物質を出して、それをとりあえず仮のことろに貯蔵し、別の人間が生まれた時にはその体内に入っていくようになっている。その気体上のものを私たちは「魂」と呼んでいる。だから魂は死後も残るのである(p167)

    ・今の日本は地球が温暖化しているから暖かいのではなく、太平洋の海水の回り方によってちょうど日本近海が暖かい状態になっていることが原因である(p180)

    ・江戸時代の出島は、1636-39年までがポルトガル、1641-1859年までが対オランダ貿易が行われた(p189)スペイン、ポルトガル、フランス、イギリスは世界のほとんどを植民地にしたが、白人支配地域である東ヨーロッパ、ロシアは植民地にしなかった。人種差別が基本にあったので、黄色人種や黒人人種は奴隷にしていいということで植民地にしたのだろう(p192)

    ・19世紀の半ば、有色人種の国で独立していたのは、エチオピア・現在のタイであるシャム、それから中国と日本の4カ国のみ。エチオピアはその頃すごく疾病が流行していたので怖がってエチオピアに入らなかった(p193)

    ・1943年に東京で「大東亜会議」が行われた、有色人種による世界で初めての国際会議である。その二回目に当たるバンドン国際会議は、1955ねんにインドネシアのバンドンにアジアとアフリカの代表が集まって行われた有色人種による会議である(p208)

    ・江戸時代には士農工商というものがあって、以前はこれを「身分制度」と言っていたが、今では単なる「職業分類」であったと考えられている。日本の職業分類において優れた人であれば職業を変えることができたので、お百姓さんが侍になったり、逆もあった(p214)士農工商の考え方は、お金のない武士が権力を持ち、お金のある商人は権力を持たないという「権力とお金の分離」という意味があった。年貢が米であったのは、権力者は税をとるが、それは蓄積できない米でなければならないという思想がある(’p215)

    ・日本文化をまとめると、1)支配層が非支配層を所有するという文化がない、2)男が女を所有するという考えがない、男女の役割分担があるのみ、3)宗教の概念が他国と全く異なる、自然とご先祖さまという抽象概念を神様とする(p225)

    2021年3月13日作成

  • 理系思考を知りたくて読書。

    おわりに本書から学びたいエッセンスが凝縮されている。

    なぜ、著者がNHKを批判するのか、国民を騙す嘘の情報を流すだけではない理由がわかる。

    ド文系である僕は、経営上の数字の読み取りにも苦戦して理数系のスキル不足を日々実感している。

    会社員の頃から自覚はあり、理数系的な訓練、資格取得などにも取り組んできたが、まだまだ修行不足。

    理系思考とは、冒頭で紹介する6つの原則を幹に複数のデータやソースを自分で調べ、徹底比較してから判断すること。

    世の中に絶対は存在しない。

    自分の考え方は常に間違っていると認識する。

    間違っていたとわかったら即修正する。

    無知な人は、非科学的な情報をかたくなに信じ込み変えない。まるでカルトを信じ込む狂信の信者のようだ。

    信頼する人が話したことをそのまま疑わずに信じるも人も同様だろう。

    これは素直さとは違うと思う。僕に周りにも複数いる。

    今回の新型コロナウイルス騒動でも嘘やフェイクニュースを平気で流す人や団体の背景には利権や金があること。

    中には正しいと信じ込んでいる人もいるかもしれないが、多くは利己的な利権や一方的な欺瞞、思い込み、正義心などが絡んでいるということ。

    自分の頭で考えて、疑い、背景を探ったり、調べたりすることを心がけることが、自分自身がハンドルを握って操作する人生を生きるということだろうか。

    社会は自分ではないの一言に尽きると思う。

    読書時間:約50分

  • 何でも情報を信じてしまう人や巷の情報を正しく見抜きたい人におすすめ。

    【概要】
    ●科学に関し偽情報に惑わされないための原則
    ●メディアが発するウソの例

    【感想】
    ●この世の中は情報を操作して利益を得た者が勝つ、ということが理解できる。
     例えば、ダイオキシン騒動、高血圧改善、喫煙と肺がん、コレステロールなど。
    ●取り上げているテーマによって読み手が理解することの難易度が変わると思うが、総じて著者が言いたいことは伝わってくる。
    ●著者がメディア等によって雑に扱われてきたことが所々に書かれている。これは著者の不満であろう。メディアが、ウソを言わないがすべての情報を流すこともしないのは、視聴率をはじめとする利益重視であるからであろう。

  • テレビや新聞にいかに自分たちがだまされてきたのか。

  • 極端な考え方ですが、一理あります。

  • 見返し
    工学博士が教える“理系アタマ”のつくり方

    はじめに~なぜ「理系思考」が必要なのか?
    序章 基礎編
    フェイクニュースに惑わされないための「科学」の基本のキ
    第1章 検証編①
    主要メディアに多数登場する、平気でウソをつく人々・・・
    ー地震予知とダイオキシン問題
    第2章 検証編②
    「健康」を害する、新聞・テレビの脅迫的なニセ情報
    ー血圧、タバコ、コレステロールについて
    第3章 検証編③
    「理系アタマ」の考え方で、巷のウソを見抜け!
    ー日本経済から死後の魂まで
    第4章 検証編④
    日本全体を覆う「錯覚」の正体とは?
    ー先の大戦と日本文化を考察
    おわりに~フェイクニュースで損をするのは民である

  • 理系人間が特別な存在ではなく、いい意味で批評的な思考を取り行動すれば良い。著書曰くの貴族と大衆のうち、貴族の行動方法。

    自分の頭で思考することのできない人間が増えた現代、スマホ社会。

    読了50分

  • 武器としての理系思考
    武田邦彦

    ∞----------------------∞

    武田先生のYouTubeを見てるので。内容ほぼほぼ知ってた。

    「科学者ならこう考えるはずなのに、こういってるのはお金儲けのためだ」というカラクリは何人かの科学者の意見で知り、その他大勢の科学者を見てなるほどと思う。

    自分の意見を持つことも重要だし、新しいデータを見て自分の判断を変えることも重要。

    地震予知は政治的理由であって、地震の予知は出来ない。
    ダイオキシンは微毒であり、他のものと同様に摂りすぎれば毒になるということ。
    高血圧は歳をとれば血管が硬くなるから当たり前のことで、低くしてしまうと他の病気のリスクとなりやすい。
    タバコの害は息切れ程度。むしろ発癌性があるものが他の癌になりにくくさせる。
    コレステロールは身体になくてはならないもの。善悪は無い。

    日本の借金問題は難しいけど理解はしてる。
    UFOの話は好き。今の科学の常識の範囲外にいないとは言えないという考え方。霊魂がいるという可能性もある。

    大東亜戦争(第二次世界大戦)やその後の世界について、この本で詳しく知れて良かった。植民地化、鎖国など。江戸時代が一番いい時代だったのかも。

    宗教や男女平等についての考え方も、ずっとモヤモヤしてたけど、武田先生のおかげでスッキリした。

    普通に日本で生活してる1人の人間として、世の中のまやかしをちゃんと見極めていこう。

    2023/01/03 読了 (図書館)

  • 武田先生と池田先生ってほとんど同じこと言ってるね。

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著者プロフィール

1943年東京都生まれ。工学博士。専攻は資源材料工学。
東京大学教養学部基礎科学科卒業後、旭化成工業に入社。
同社ウラン濃縮研究所所長、芝浦工業大学教授、名古屋大学大学院教授を経て、2007年より中部大学教授。
テレビ番組「ホンマでっか!?TV」(フジテレビ)、「ビートたけしのTVタックル」(テレビ朝日)などに出演。
著書『ナポレオンと東條英機』(KKベストセラーズ)、『環境問題はなぜウソがまかり通るのか』3部作(洋泉社)他ベストセラー多数。

「2017年 『武田邦彦の科学的人生論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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