ワーク・シフト ― 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図〈2025〉
- プレジデント社 (2012年7月28日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (402ページ)
- / ISBN・EAN: 9784833420167
感想・レビュー・書評
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ロンドンビジネススクールの教授を務め、英タイムズ紙が選ぶ「世界のトップビジネス思想家15人」のひとりに選ばれた著者が、2025年の世界の様相を予測し、そこに向けた働き方の転換を提案した一冊。
未来予測本は最近のトレンドだが、本書はその予測から未来の働き方を提案しているところが他とは一線を画すところ。
2025年には、テクノロジーの進化とグローバル化の進展により途上国と先進国の差は相対的に小さくなり、特にイノベーションを担うような職種では増々競争が激しくなる。
そんな社会で必要なのは以下の3つの働き方を「シフト」すること。
・第一のシフト:ゼネラリストから「連続スペシャリスト」へ
・第二のシフト:孤独な競争から「協力して起こすイノベーション」へ
・第三のシフト:大量消費から「情熱を傾けられる経験」へ
第一のシフトは、テクノロジーの進化が増々早くなる未来では、異なる専門的な技能を連続的に習得する必要があるということ。
第2のシフトは、能力に秀でた個人がイノベーションを起こすのではなく、専門技能が異なる人達がチームを組んでイノベーションを起こす必要があるということ。
第三のシフトは、エネルギー問題が深刻化する未来では従来型の大量消費社会は無理があり、またよりイノベーティブな仕事をするためには自分がその仕事を心底好きで情熱を傾けられる対象であることが必要であるということ。
また、著者は、自分が本当に望む働き方を深く内省し、意図をもって職業生活を送り、自分がした選択に責任をもつことが重要だと説く。
正直いって、本書に書かれた未来の働き方を実践するのは、非常にハードルが高い。
しかし、自分がどういう生活(仕事にしろプライベートにしろ)を送りたいか、人生に何を求めるかは、しっかりと考えたい。
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・ピラミッド型の組織と交換可能なゼネラリスト的技能に代わって、水平型のコラボレーションと磨き上げられたスペシャリスト的技能が復活しようとしている。
・あまりに多忙な日々を送るようになると、一つのものごとに集中して取り組むことが難しくなり、じっくり観察して学習する能力がそこなわれる。また、仕事の世界に気まぐれや遊びの要素が入り込む余地も奪われてしまう。
・イノベーションは、特定のグループなり、企業なり、政府なりが単独でおこなうものえではなく、コラボレーション的・ソーシャル(社交)的性格が強くなり、多くの人の努力が積み重なって実現するものになる。
・未来の世界でニーズが高まりそうなジャンルと職種を選び、浅い知識や技能ではなく、高度な専門知識と技能を身につける。その後も必要に応じて、ほかの分野の専門知識と技能の習得を続ける。
・要するに、未来の正解で成功を納めたければ、高度な専門知技能と知識を身につけるべきなのだ。そのためには、まず未来にどういう技能と知識が価値をもつかを見極める必要がある。そのうえ、リスクを回避するために、複数の専門分野に習熟しなくてはならない。ひとことで言えば、連続スペシャリストになることが不可欠なのである。
・働き方の未来を形づくる五つの要因の影響が本格化するにつれてとくに重要性を増す専門技能としては、生命科学・健康関連、再生エネルギー関連、創造性・イノベーション関連、コーチング・ケア関連の四つが挙げられる。
・どこで生活し、どういうコミュニティの一員になるかが、これまで以上に大きな意味をもつようになるのである。
・自分のやっていることに胸躍らせ、学習と訓練につきものの苦労を楽しみ、手ごわい課題に挑むことにやりがいを感じてはじめて、私たちは本当に高度な専門技能を習得できる。
・世界中の人々が能力を築くチャンスを手にする結果、労働市場の競争が激しくなるので、自分の能力を証明する必要性が高まるのだ。
・しかしこれからは、高度な専門技能を習得し、そのうえで多くの人と結びつかなければ成功できない。知的資本と人間関係資本を組み合わせ必要があるのだ。
・友人関係は自然に生まれるものではなく、エネルギーと時間を意識的につぎ込まなければ成り立たないこと。活力源となる友人関係の核をなすのが関心と価値観の共有であること。
・私が働くのは、充実した経験をするため。それが私の幸せの土台だ。
・主体的な選択をおこなうためには、これまでより深く内省し、自分の選択がもたらす結果を受け入れる覚悟が必要だ。
・私たち一人ひとりにとっての課題は、明確な意図をもって職業生活を送ることが。自分がどういう人間なのか、人生でなにを大切にしたいのかをはっきり意識し、自分の前にある選択肢と、それぞれの道を選んだ場合に持っている結果について、深く理解しなくてはならない。
・「普通」でありたいと思うのではなく、ほかの人とは違う一人の個人として自分の生き方に責任をもち、自分を確立していく覚悟が必要だ。 -
んー今のお話としては面白いけど
昔話題になったアルビン・トフラーのパワーシフトが今となってはつまならいものなのと同じように、2025年には、この本もつまらない本になっていそう。
普遍的なものではなく、流行り物のような印象。 -
2025年、今から13年後に働き方がどう変わるかを想定して、どうすべきか提案まで踏み込んだ、ありそうでない本。逆に13年前に新入社員だったときのことを思うと、まさかここまでソーシャルな時代が来て、インターネットが生活に浸透しているとは思わなんだ。。だから13年後も想像を絶する時代が来ているに違いない。人間って変動の中に居ることを感じにくい性質があるから意識的に自分の仕事、生活がこのままでいいかを問い続けないとね。まぁその変化を楽しむくらいに思っておけばOK。
この本だけで判断はもちろんするつもりもないけど、自分の考えは大体間違いではなさそうなのでちょっと安心。退職したこのタイミングで読むことができて本当に良かった。
ブレた時のためにバイブルとして置いておこうっと。
今の働き方に疑問のある人にオススメ。いや、疑問も持たない大企業の人にこそオススメかな。 -
2025年、私たちの働き方はどうなっているか。
ただ食えるだけの仕事か、それとも自由で創造的な仕事か。
本書は、これから起こるであろう環境変化とそれが働き方にもたらす影響を整理整頓し、有望なビジネスや今後の生き方のヒントを示してくれる。
読んでいて、こういう変化が起こったらこういう仕事が発生するとか、今の時点で考えているキャリアプランの詰めが甘いところや起こりうる変化などが予測でき、楽しくもあり、不安にもなる。
未来を予測することは難しいが、それを踏まえたうえで行動を起こすのとそうでないのでは数年後に大きな差が出ている。
■参考になった点
・働き方の未来にとりわけ大きな影響を及ぼす要因
1.テクノロジーの進化
2.グローバル化の進展
3.人口構成の変化と長寿化
4.社会の変化
5.エネルギー・環境問題の深刻化
・ワークシフトの方向性
1.ゼネラリスト的な技能から専門技能の連続的習得へのシフト
2.個人主義・競争原理から人間同士の結びつき、コラボレー
ション、人的ネットワークへのシフト
3.貪欲に大量のモノを消費し続けるライフスタイルから質の高
い経験と人生のバランスを重んじる姿勢へのシフト
・連続スペシャリストへの道
1.ある技能が他の技能より高い価値を持つ場合を考える。
2.未来の世界で具体的にどういう技能が価値を持つか予測を立てる。
3.未来に価値のありそうな技能を念頭に置きつつ、自分の好きなことを 職業に選ぶ
4.その分野で専門技能に徹底的に磨きをかける
5.ある分野に習熟したあとも、移行と脱皮を繰り返して他の分野に転進 する覚悟を持ち続ける
・今後とくに重要性を増す4つの専門技能
1.生命科学・健康関連
2.再生可能エネルギー関連
3.創造性・イノベーション関連
4.コーチング・ケア関連 -
書店で立ち読みしたら、目が離せなくなり、購入!
未来の働き方のSHIFTが描写されているけど、
その現状とのGAPは、まるでSFを読んでいるかのよう。
とはいえ、それがただの空想物語で終わってしまうのでなく、
現実味という重力を持ってこちらに来るのは、
膨大なリサーチと、そこからの正確なロジックの組み立てがあってだと思う。
だからといって堅苦しいのでなく、短いストーリーを用いて書いているので、
個人的にビジネス小説にありがちな無駄に長いことや、
専門書にありがちな、理論ばかりで頭が混乱するのを避け、
非常に読みやすかったし、理解しやすかった。
更に、諸々の同じテーマに扱った本の中でも、
一番、説得力と具体性があった。
とはいえ、もっと深読みして自分にひきつけないといけないから、10回ぐらい読み返すだろうな~。
そして2025年ごろに再読して、どこまで予言が当たるか確認したい。
今後も、自分の想いをかたちにしながら働き続けたいあなたには、
是非、読んで将来に備えていただきたい、そんな一冊。 -
経営組織論の第一人者で、「世界のトップビジネス思想家15人」にも選ばれているリンダ・グラットンのはじめての日本における翻訳本。未来の働き方を予測する、2025年という具体的な設定での物語や豊富なデーターから読み解いた分析は大きな道筋を示している。あらゆる人に必読の書と感じた。
未来を形づくる五つの要因
1.テクノロジーの進化
2.グローバル化の進展
3.人口構成の変化と長寿化
4.社会の変化
5.エネルギー・環境問題の深刻化
細部の予測は不可能でも大きな流れ、方向を見渡すことは出来る。これは田坂広志の論文で何ども書かれてきたことであり、田坂広志自身もその大きな流れを的中させている。
産業革命や戦後と同等の大きな変化の真っただ中にあると言われている、しかし、人は日々に流されてしまう。上記5つの要因は誰もが感じている、現在の我々の技能がテクノロジーに奪われる、日本においては新興国のマンパワーがとって変わる、70,80歳でも働き続けなければいけない時代が来る、ネット社会が生みだす問題、エネルギー問題がもたらす様々な状況など、全てを結びつけることで具体的な物語が見えてきた。
時代は変わったのだ、真摯に受け止めたときに、すべきことが見えてくる。やはりテクノロジーだけでは生きてゆけない、人間が持つ最強の力、つながり思いやれるという特性が未来を救うだろうという確信。やはり時代は「競争」から「協力」へシフトしたんだと思う。
久しぶりの万人にオススメの書。更に深く。 -
未来の人間社会で起こり得る変化と現象を分析し、それをベースにこれからの「働き方」について見解を述べる本著。
10年前の本だが、ここで述べられている現象に向かいつつあるものもあれば、全く発展速度が足りていないものも両方あるかと思う。これからの社会がシンギュラリティを越えていくことで、われわれの働き方も変化することは間違いなく、その意味では視野を広げてくれる一冊。
ただ、過去に同著者の『LIFE SHIFT』を読んでいたこともあり、新しい示唆はあまりなかった。「みんななんとなく思っているけど、実際どうかは知らない」ことを再認識する文脈で有益かと思う。 -
2012年に書かれた本だけれど、2025年の未来についてかなり的確に予想されていた。
32の未来を形作る要因がどれも現実味を帯びてきており、そういった状況での我々の働き方について本当にそれでいいのか、どうすれば幸せな働き方ができるのかについて刺激をたくさんいただいた。
特に印象深かったのは、テクノロジーが発展し便利になっていく中で、業務が効率化して、じっくりの一つのことに向き合う時間がなくなっているという指摘だった。
コロナ禍で一気に加速したテレワークによって、著者の予想通りの現代になっている。
実際仕事をToDo的にこなすだけで、人と会話したりじっくりと集中して向き合う時間がかなり減ってきている。
これからの時代は浅く広くのジェネラリストはAIやテクノロジーに置き換わられやすく、より高度な専門技術が必要になってくる。
それを身につけるためには、いろんなことを浅くするのではなく、深く追及することが大切なのだ。
そして、この高度な専門的技術以外にも、人間関係や内省する力が必要で、特に内省して自分はどうありたいのか?どう社会に貢献したいのか?どう生きたいのか?をじっくり考え向き合うことの大切さを再認識した。 -
10年以上前の本だけど、今も勉強になることがたくさん書いてあった。特に環境問題、孤独、インターネット、グローバル化、職業選択など一昔前前とは全く異なる状況になることがわかった。この本に書いてあった未来は2021年現在ではまだ実現されていないけど、今後こんな世界になることを考慮して生きていきたい。親しく狭いコミュニティと多様で広いコミュニティの両方を育てるのは今の自分にはなかなか難しいと感じた。