ワーク・シフト ― 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図〈2025〉
- プレジデント社 (2012年7月28日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (402ページ)
- / ISBN・EAN: 9784833420167
感想・レビュー・書評
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3つのシフトで自分の価値観に合った働き方を実現する。
世の中は大きく変化しており過去の常識、固定観念は全く通用しなくなっている。
昔は新卒で入社し、60歳までがむしゃらに働き、社内での昇進、昇給を横一線で目指すのが当たり前でそれで幸せな人も多かった。これからは、100歳まで生きる人が増え、70、80歳まで働く人も増える中で、多様な働き方が受け入れられるのはごく自然なこと、60歳からのセカンドライフを目標にするのではなく、仕事で心が満たされて、人それぞれのライフスタイルに合わせて働けるようにしていく。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
多くの人に勧めたい良著。非常に面白かった。
グローバル化、技術革新、環境問題、高齢化、等々の急速な変化により、仕事・働き方がどのように変わるのか、分析した本。
これら変化のメリット、デメリットが色濃く反映された、具体的な未来のシナリオ(仮想)がいくつか描かれている。そして、これから変化に対応するため、変化をチャンスに変えるため、どう行動すべきか、述べられている。
未来のシナリオは、ある意味、かなり恐ろしいけど、避けては通れない。「それなら、精一杯、楽しもう。変化をアドバンテージにしよう。」という著者のメッセージ。
考えさせられる。自分としっかり向き合ってみようと思える。 -
これからのキャリアを考えるにあたって、どのような潮流があるかを知ろうと思い拝読。本書では大きく3つの”シフト”をしていかなければならないと述べられている。
1.ゼネラリスト的な技能を尊ぶ常識を問い直すべきである。
2.職業生活とキャリアを成功させる土台が個人主義と競争原理であるという常識を問い直すべきである。
3.どういう職業人生が幸せかという常識を問い直すべきである。
なぜ、このような”シフト”が求められるかは、未来を形づくる以下の要因によるものである。
1.テクノロジーの進化(主にインターネット・デジタルの進化)
2.グローバル化の進展(人口バランス、貧富格差の問題)
3.人口構成の変化と長寿化(労働人口構成の変化)
4.社会の変化(ワークライブバランス意識の向上)
5.エネルギー・環境問題の深刻化(エネルギーの枯渇と持続可能性)
本書では、こういった変化に伴う世界の未来がストーリー仕立てで描かれている。
2部・3部ではそれぞれ最悪の未来と望ましい未来の予測が述べられた後で、4部にて働き方のシフトが述べられている。
特に考えさせられたのが、この4部の内容である。
仕事の世界で求められる3つの資本がある。知的資本(=知識と知的思考力)・人間関係資本(=人的ネットワークの強さと幅広さ)・情緒的資本(=自分自身について理解し、自分の子なう選択について深く考える能力・勇気ある行動をとるために欠かせない強靭な精神をはぐくむ能力)である。これらの資本に関連して、冒頭で書いた3つのシフトが対応する。
<知的資本>
グローバル化が起こると、相当熟達した人材を適時に登用することも不可能ではなくなるため、たとえ幅広いものであったとしてもある程度の知識・経験では、歯が立たない時代がやってくる。そうなったとき、いくつかの専門技能を連続的に習得していく能力が求められてくる。合わせて、この能力を外部に押し出していくためにセルフマーケティングの能力も求められるである。
また、漫然と専門性を身に着けようとするのではなく、未来においてどういったスキルのニーズが高まるかも想像したうえで、その技能型の技能より高い価値を持つというのはどういう場合かを考えることが大切である。要は、①その技能が価値を生み出すことが広く理解されているか、②その技能の持ち主が少なく技能に対する需要が供給を上回っているか、③その技能が他の人に模倣されにくく機械によっても代用されにくいかを考えることが重要である。なお、そのうえで自分の好きなこと(仕事と遊びの境界線をあいまいにしても苦でないこと)を選ぶことも欠かせない(得意×好き=本当にやりたいこと、というのは『世界一やさしい「やりたいこと」の見つけ方』を参照)。
このシフトで特に気になったポイントは、「カリヨンツリー型のキャリア」というものである。これは、仕事に打ち込む期間と余暇や専門性向上のための期間を明確に区切りながら、キャリアを形成していく方法である。上記のように際立った専門性が求められる時代においては、まとまった時間が必要であるため、このような働き方が主流になってくれると自分としてもうれしい。
<人間関係資本>
日本でいえば、高度経済成長期のように孤独に競争しあうことで自然にパイが拡大していったような時代もあったが、今後はこのような状況を前提にするとうまくいかないことが増えてくると予想される。では、今後はどのようにすればいいかというと、ほかの人たちとつながりあってイノベーションを成し遂げることを目指す姿勢にしていくべきということになる。このことはある意味で、『人口減少社会のデザイン』で述べられていたことと通底するところがある。
そのために必要なコミュニティとして、①ポッセ(=声をかければすぐ力になってくれる面々の集まりで、比較的少人数のグループ)、②ビッグアイデア・クラウド(=自分の人的ネットワークの外延部にいる人たちで構成されており、比較的大規模なグループ)、③自己再生のコミュニティ(=現実の世界で頻繁に会い、プライベートでくつろげる時間を過ごせるメンバーで構成されているグループ)があげられる。
<情緒的資本>
エネルギー問題が深刻化してくる今後においては、モノの消費から精神的豊かさを追い求める時代に変化していく(していかざるを得ない)。そうなると、際限ない消費に終始する生活を脱却し、情熱をもって何かを生み出す生活に転換していく必要がある。
漫然と生きていくだけでは、冒頭に記載したテクノロジーの進歩により、いつでもどこでも無理矢理に社会と繋げられ、気の休まらない時代が到来する。
自分の価値観をきちんと理解し、何を優先すべきかを明確にし、それに沿った人生設計をすることが重要である。このプロセスでは選択が求められるため、ジレンマが生じることも往々にしてあるが、それを乗り越えて納得のいく選択を行うことが必要となる。
なお、これは人生全般レベルに限らず、仕事においても同様であり、自分の価値観を確立(もしくは明確に認識)し、情熱を注げる仕事に打ち込むことが人生を充実させるうえで不可欠である。 -
ロンドンビジネススクールの教授を務め、英タイムズ紙が選ぶ「世界のトップビジネス思想家15人」のひとりに選ばれた著者が、2025年の世界の様相を予測し、そこに向けた働き方の転換を提案した一冊。
未来予測本は最近のトレンドだが、本書はその予測から未来の働き方を提案しているところが他とは一線を画すところ。
2025年には、テクノロジーの進化とグローバル化の進展により途上国と先進国の差は相対的に小さくなり、特にイノベーションを担うような職種では増々競争が激しくなる。
そんな社会で必要なのは以下の3つの働き方を「シフト」すること。
・第一のシフト:ゼネラリストから「連続スペシャリスト」へ
・第二のシフト:孤独な競争から「協力して起こすイノベーション」へ
・第三のシフト:大量消費から「情熱を傾けられる経験」へ
第一のシフトは、テクノロジーの進化が増々早くなる未来では、異なる専門的な技能を連続的に習得する必要があるということ。
第2のシフトは、能力に秀でた個人がイノベーションを起こすのではなく、専門技能が異なる人達がチームを組んでイノベーションを起こす必要があるということ。
第三のシフトは、エネルギー問題が深刻化する未来では従来型の大量消費社会は無理があり、またよりイノベーティブな仕事をするためには自分がその仕事を心底好きで情熱を傾けられる対象であることが必要であるということ。
また、著者は、自分が本当に望む働き方を深く内省し、意図をもって職業生活を送り、自分がした選択に責任をもつことが重要だと説く。
正直いって、本書に書かれた未来の働き方を実践するのは、非常にハードルが高い。
しかし、自分がどういう生活(仕事にしろプライベートにしろ)を送りたいか、人生に何を求めるかは、しっかりと考えたい。
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・ピラミッド型の組織と交換可能なゼネラリスト的技能に代わって、水平型のコラボレーションと磨き上げられたスペシャリスト的技能が復活しようとしている。
・あまりに多忙な日々を送るようになると、一つのものごとに集中して取り組むことが難しくなり、じっくり観察して学習する能力がそこなわれる。また、仕事の世界に気まぐれや遊びの要素が入り込む余地も奪われてしまう。
・イノベーションは、特定のグループなり、企業なり、政府なりが単独でおこなうものえではなく、コラボレーション的・ソーシャル(社交)的性格が強くなり、多くの人の努力が積み重なって実現するものになる。
・未来の世界でニーズが高まりそうなジャンルと職種を選び、浅い知識や技能ではなく、高度な専門知識と技能を身につける。その後も必要に応じて、ほかの分野の専門知識と技能の習得を続ける。
・要するに、未来の正解で成功を納めたければ、高度な専門知技能と知識を身につけるべきなのだ。そのためには、まず未来にどういう技能と知識が価値をもつかを見極める必要がある。そのうえ、リスクを回避するために、複数の専門分野に習熟しなくてはならない。ひとことで言えば、連続スペシャリストになることが不可欠なのである。
・働き方の未来を形づくる五つの要因の影響が本格化するにつれてとくに重要性を増す専門技能としては、生命科学・健康関連、再生エネルギー関連、創造性・イノベーション関連、コーチング・ケア関連の四つが挙げられる。
・どこで生活し、どういうコミュニティの一員になるかが、これまで以上に大きな意味をもつようになるのである。
・自分のやっていることに胸躍らせ、学習と訓練につきものの苦労を楽しみ、手ごわい課題に挑むことにやりがいを感じてはじめて、私たちは本当に高度な専門技能を習得できる。
・世界中の人々が能力を築くチャンスを手にする結果、労働市場の競争が激しくなるので、自分の能力を証明する必要性が高まるのだ。
・しかしこれからは、高度な専門技能を習得し、そのうえで多くの人と結びつかなければ成功できない。知的資本と人間関係資本を組み合わせ必要があるのだ。
・友人関係は自然に生まれるものではなく、エネルギーと時間を意識的につぎ込まなければ成り立たないこと。活力源となる友人関係の核をなすのが関心と価値観の共有であること。
・私が働くのは、充実した経験をするため。それが私の幸せの土台だ。
・主体的な選択をおこなうためには、これまでより深く内省し、自分の選択がもたらす結果を受け入れる覚悟が必要だ。
・私たち一人ひとりにとっての課題は、明確な意図をもって職業生活を送ることが。自分がどういう人間なのか、人生でなにを大切にしたいのかをはっきり意識し、自分の前にある選択肢と、それぞれの道を選んだ場合に持っている結果について、深く理解しなくてはならない。
・「普通」でありたいと思うのではなく、ほかの人とは違う一人の個人として自分の生き方に責任をもち、自分を確立していく覚悟が必要だ。 -
2025年、私たちの働き方はどうなっているか。
ただ食えるだけの仕事か、それとも自由で創造的な仕事か。
本書は、これから起こるであろう環境変化とそれが働き方にもたらす影響を整理整頓し、有望なビジネスや今後の生き方のヒントを示してくれる。
読んでいて、こういう変化が起こったらこういう仕事が発生するとか、今の時点で考えているキャリアプランの詰めが甘いところや起こりうる変化などが予測でき、楽しくもあり、不安にもなる。
未来を予測することは難しいが、それを踏まえたうえで行動を起こすのとそうでないのでは数年後に大きな差が出ている。
■参考になった点
・働き方の未来にとりわけ大きな影響を及ぼす要因
1.テクノロジーの進化
2.グローバル化の進展
3.人口構成の変化と長寿化
4.社会の変化
5.エネルギー・環境問題の深刻化
・ワークシフトの方向性
1.ゼネラリスト的な技能から専門技能の連続的習得へのシフト
2.個人主義・競争原理から人間同士の結びつき、コラボレー
ション、人的ネットワークへのシフト
3.貪欲に大量のモノを消費し続けるライフスタイルから質の高
い経験と人生のバランスを重んじる姿勢へのシフト
・連続スペシャリストへの道
1.ある技能が他の技能より高い価値を持つ場合を考える。
2.未来の世界で具体的にどういう技能が価値を持つか予測を立てる。
3.未来に価値のありそうな技能を念頭に置きつつ、自分の好きなことを 職業に選ぶ
4.その分野で専門技能に徹底的に磨きをかける
5.ある分野に習熟したあとも、移行と脱皮を繰り返して他の分野に転進 する覚悟を持ち続ける
・今後とくに重要性を増す4つの専門技能
1.生命科学・健康関連
2.再生可能エネルギー関連
3.創造性・イノベーション関連
4.コーチング・ケア関連 -
書店で立ち読みしたら、目が離せなくなり、購入!
未来の働き方のSHIFTが描写されているけど、
その現状とのGAPは、まるでSFを読んでいるかのよう。
とはいえ、それがただの空想物語で終わってしまうのでなく、
現実味という重力を持ってこちらに来るのは、
膨大なリサーチと、そこからの正確なロジックの組み立てがあってだと思う。
だからといって堅苦しいのでなく、短いストーリーを用いて書いているので、
個人的にビジネス小説にありがちな無駄に長いことや、
専門書にありがちな、理論ばかりで頭が混乱するのを避け、
非常に読みやすかったし、理解しやすかった。
更に、諸々の同じテーマに扱った本の中でも、
一番、説得力と具体性があった。
とはいえ、もっと深読みして自分にひきつけないといけないから、10回ぐらい読み返すだろうな~。
そして2025年ごろに再読して、どこまで予言が当たるか確認したい。
今後も、自分の想いをかたちにしながら働き続けたいあなたには、
是非、読んで将来に備えていただきたい、そんな一冊。 -
経営組織論の第一人者で、「世界のトップビジネス思想家15人」にも選ばれているリンダ・グラットンのはじめての日本における翻訳本。未来の働き方を予測する、2025年という具体的な設定での物語や豊富なデーターから読み解いた分析は大きな道筋を示している。あらゆる人に必読の書と感じた。
未来を形づくる五つの要因
1.テクノロジーの進化
2.グローバル化の進展
3.人口構成の変化と長寿化
4.社会の変化
5.エネルギー・環境問題の深刻化
細部の予測は不可能でも大きな流れ、方向を見渡すことは出来る。これは田坂広志の論文で何ども書かれてきたことであり、田坂広志自身もその大きな流れを的中させている。
産業革命や戦後と同等の大きな変化の真っただ中にあると言われている、しかし、人は日々に流されてしまう。上記5つの要因は誰もが感じている、現在の我々の技能がテクノロジーに奪われる、日本においては新興国のマンパワーがとって変わる、70,80歳でも働き続けなければいけない時代が来る、ネット社会が生みだす問題、エネルギー問題がもたらす様々な状況など、全てを結びつけることで具体的な物語が見えてきた。
時代は変わったのだ、真摯に受け止めたときに、すべきことが見えてくる。やはりテクノロジーだけでは生きてゆけない、人間が持つ最強の力、つながり思いやれるという特性が未来を救うだろうという確信。やはり時代は「競争」から「協力」へシフトしたんだと思う。
久しぶりの万人にオススメの書。更に深く。 -
2012年に書かれた本だけれど、2025年の未来についてかなり的確に予想されていた。
32の未来を形作る要因がどれも現実味を帯びてきており、そういった状況での我々の働き方について本当にそれでいいのか、どうすれば幸せな働き方ができるのかについて刺激をたくさんいただいた。
特に印象深かったのは、テクノロジーが発展し便利になっていく中で、業務が効率化して、じっくりの一つのことに向き合う時間がなくなっているという指摘だった。
コロナ禍で一気に加速したテレワークによって、著者の予想通りの現代になっている。
実際仕事をToDo的にこなすだけで、人と会話したりじっくりと集中して向き合う時間がかなり減ってきている。
これからの時代は浅く広くのジェネラリストはAIやテクノロジーに置き換わられやすく、より高度な専門技術が必要になってくる。
それを身につけるためには、いろんなことを浅くするのではなく、深く追及することが大切なのだ。
そして、この高度な専門的技術以外にも、人間関係や内省する力が必要で、特に内省して自分はどうありたいのか?どう社会に貢献したいのか?どう生きたいのか?をじっくり考え向き合うことの大切さを再認識した。