慨世の遠吠え

  • 鹿砦社
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  • Amazon.co.jp ・本 (277ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784846310387

作品紹介・あらすじ

憲法改正、集団的自衛権、従軍慰安婦問題、排外主義、立法府としての機能を失う国会と議員の劣化、貧困、ジャーナリズムの退廃━主権国家とはいえないままに戦後七十年を迎えた日本のあらゆる問題を、ともに思想家で武道家でもある内田樹と鈴木邦男が頭脳と身体で語り尽くした超「対談」!本に囲まれた書斎で、任侠映画が流れる映画館で、合気道の道場で…語る、観る、技をかけるの10時間!失われつつある民主主義を日本に取り戻す「慨世の遠吠え」を聞け!

感想・レビュー・書評

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  • 慨世の遠吠え | ダ・ヴィンチWeb
    https://ddnavi.com/book/4846310388/

    既刊情報 鹿砦社
    https://www.rokusaisha.com/kikan.php?bookid=000398

  • 橋下徹の失墜が、慰安婦問題でアメリカを本気で怒らせたことだというのが、なるほど!と肘を打った。アメリカって日本を支配し尽くしているのだなと改めて思う。

  • 師と弟子の必要性。
    守るもの、伝達の必要性をもつものほど強くなる。

  • 鈴木邦男氏が聞き手にまわっているページがほとんど。
    もう少し鈴木氏の話も聞きたいような気もする。
    でも、内田氏の話はやっぱりおもしろいので、トータルすると良い本でした。

  • 内田樹の本はどれも新しい視座を与えてくれる。特に前半がよかった。
    今の日本は「アメリカの国益を最大化すること」を最優先にする人間が出世するしくみになっている。もとは「日本の国益を最大化するための迂回路」として対米従属があったのだけれど、「アメリカの国益を最大化しようとすると、個人的利益が増大する」人間たちが、日本の支配層のほとんどを占めてしまった。対米自立路線の政治家は集中攻撃される。そうすることで、ドメスティックな格付けが上がるという仕組みになっているから。ほとんどの日本人は対米従属をアピールする手立てがないので、対米自立の人物を潰そうとする。アメリカもさすがにこいつを外してあいつを首相にしろとはいえない。でもホワイトハウスで誰かが「あいつはもう使えないね」とつぶやけば、日本のアメリカ通に伝わって、政治家や官僚やメディアが群れを成して引き摺り下ろしにかかる。
    国民国家を解体しようという勢力(グローバリスト)と、ナショナリストが結託するなんてありえないこと。これはグローバル資本主義そのものが末期症状だから。資本主義は自然や未開社会や後進国を収奪することで延命する仕組みだが、もう収奪する余地がなくなってしまった。グローバル資本主義が最後に食らいついたのが、国民国家の国民資源である。例えば、治安の良さは国民資源である。日本では銃での殺人は2014年では4件だが、アメリカでは年間3万件もある。日本のような治安をアメリカで実現しようとするならば、何百兆円という予算が必要になるだろう。自然やインフラのよさを合わせれば、何千兆円というレベルになる。
    だから、グローバル資本主義者たちは、日本の政情が不安定になり、治安が悪くなり、人びとが互いに不信感を抱くような世の中になることを願っている。彼らがナショナリストに親和的なのは、一つにはそのせいである。在特会のような極右は、「非国民」「売国奴」「在日」などのレッテルを貼りまくって、日本人ではない人間の頭数を増やし、日本人どうしを分断しようとしている。相互支援、相互扶助的な共同体が整っていれば、お金がなくても融通しあい、助け合って乗り切ることが出来る。しかし不信感が蔓延した社会では、要るものは全て市場で到達しなければならない。極右の排外主義者たちは市民間の信頼と共生の作法を破壊することによってGDPの増大に貢献してくれる。もう一つは、グローバル企業は無国籍であるにもかかわらず、日本の企業をなのっているから。日本の企業として、中国や韓国の企業と経済戦争を闘っているというお話を官僚やメディアは垂れ流している。これは中韓との戦争なんだから、日本国民は全力で日本の企業を支えなければならない。そのためには、税金を上げる、賃金を下げる、雇用条件を切り下げる、原発を再稼動する。「欲しがりません、勝つまでは」の精神で、経済戦争に協力しなければならないというお話ができ上がっている。
    アメリカは高い予算で傭兵を雇っているが、それを自衛隊に任せればタダで、しかも思いやり予算までつくかもしれない。集団的自衛権はそのためにある。TPPも流れは同じで、アメリカの民間企業の利益のために、日本の国益をさし出すことにある。そうするとアメリカから高く評価され、日米同盟がさらに恭子になると思っている。アメリカに頼りになる同盟国だと思われて、日本の平和と安定に繋がると。自衛隊員の死傷者や、テロのリスクや、農林水産業の壊滅といった短期的な国益を犠牲にしても、長期的には日本の国益は増大すると信じている。
    国民国家は無限責任体であるので、前の世代で起こした罪をずっと引き受けていかなければならないのに、政治家は次の選挙で受かれば全ての責任はチャラになると思っている。まるでサラリーマンのようにふるまっている。安倍や橋本は集団の中では生き残り競争に勝ち抜けるだろうけれど、集団をどうすべきかという考えはまるで無い。ビジネスの世界では経営判断はマーケットが決める。それを政治家に当てはめると選挙がそれに近いということで、政策は商品で、選挙は市場で、支持率は株価であるという類推で思考することになった。人びとも悲しいほどにサラリーマン化している。政治家がサラリーマンのようになっているので、共感してしまっている。政治家のあり方にCEOのような考え方を持ち込んだのはブッシュである。ブッシュはエンロンの対CEOケネス・レイをモデルとしたが、その後エンロンは粉飾決算がばれて倒産した。ケネス・レイは倒産寸前にインサイダー取引で株を高値で売り逃げして、自分の資産だけは守って逃げた男だ。ケネス・レイはその後裁判中に病没。
    日本の新聞の1000万部は世界的に見ても異常な部数。フランスの「ル・モンド」が30万部、イギリスの「ガーディアン」が25万部、「ニューヨーク・タイムズ」がかろうじて100万部である。三島由紀夫が自殺するとき、世間では石原慎太郎の方が人気があった。三島は石原のように政治家に転身することもできず、石原の後塵を拝したくないというプレッシャーがあった。
    日露戦争ではアメリカのユダヤ金融機関の総帥だったジェイコブ・シフが、ロシアのユダヤ人への迫害(ポグロム)に怒って、日本の戦費を調達したと同時に、世界中のユダヤ金融関係者にロシアの国際は買うなと支持を出したので勝てた。日露戦争に勝てたのはユダヤ人のおかげだったが、その事実は隠された。
    愛国党という右翼団体の赤尾敏は、日の丸や君が代を子どもたちに強制するのに反対で、「そんな必要があるなら、まず国会でやれ。国会議員が、毎朝起立して君が代を歌え」と言った。
    ヘイトスピーチは法で規制すべきではない。必ず悪用されるから。ヘイトに対しては市民的常識で対抗すべし。
    野間宏の「真空地帯」を映画化したものに、昭和19年の大阪が舞台だが、兵たちが前線に行くのをとても嫌がるシーンが出てくる。その映画には実際に戦地から帰ったばかりの兵たちが出演していたので、本当にそうだったはずである。
    ベルリン歓楽の頃のドイツはひどくて、ソ連兵によるベルリン女性のレイプは史上最悪だといわれている。でもその歴史的事実は東西ドイツが統一されるまで抑圧されていた。21世紀に入って、ようやく被害者たちがカミングアウトできるようになった。ドイツもスターリングラードなどでひどいことをしたので報復と言う意味もあっただろうが、それにしてもやりすぎだった。ドイツのロシアに対する恨みは大きい。
    植民地統治は失敗例と成功例があることを認識しないと比較研究ができない。台湾は比較的成功したので今でも親日的である。韓国は失敗だったが、植民地統治は全て悪だと決め付けてしまうとそこで思考停止になる。
    「はじめに」での鈴木の言葉。「自由の無い自主憲法よりは、自由のある押し付け憲法を」

  • 対米という観点からは、右も左も利害が一致するはず。しかし現状はエセ右翼がアメリカに擦り寄ってばかり。
    私もそんな状況に慨世の感を禁じ得ない一人なので、この対談には期待して読みました。

    が、鈴木さんが「ワッハハハ」とか言うばっかりで、あんまり突っ込んだ話をしないので拍子抜け。
    内田センセイの喋る内容はいつも通りなので、鈴木ファンで内田センセイのことをあまり知らない人にはお勧めできます。

    鈴木さんが聴き上手の論客だということは良く分かりました。

  • 鈴木邦男さんの「はじめに」から衝撃を受ける。
    内田先生は「合気道の人」で内田先生の思想を学ぶためには、合気道を体験しないとダメだというようなことを書かれている。
    私も同じことを思い、入門したというのに、早々に挫折。いまだに立ち直れていない!?そのことをしみじみと感じる。また、この「はじめに」で鈴木さんは、ご自分のことは控えて下げて、内田先生を大絶賛されている。
    ここまで、賞賛されている文章を読んだことがなかったので、私までうれしくなるし、鈴木さんは余裕のある方なんだなあと、鈴木さんもすごい人なんだなあと思う。
    「はじめに」だけでいろいろ思うことがあり、なかなか先に進めない。
    「おわりに」で内田先生も鈴木さんのことを絶賛されている。昔のこと(学生運動)はあまり知らないが、こんなに仲良く対談するはずもないお二人だったはずである。
    鈴木さんは昔はものすごく恐ろしい人だったとよく聞くが、今は表面的には全く柔和な感じだ。「おわりに」にも内田先生がお書きになっているが、鈴木さんの著書にご自宅の住所が書かれていて、私も驚いたことがある。
    穏やかさに隠された強さは本物なのだろう。

  • 鈴木邦男さんって、本当に礼儀正しいひとですね。

  • 左右の話を皮肉まじりにかわす会話。石原さんと三島さんが嫉妬関係にあったとは。

  • 面白い。対談本としてはなかなかの内容だと思います。
    私の大好きな内田樹氏と一水会の鈴木邦男氏との対談。
    左右の代表的な印象を受けますが。鈴木氏は最近
    右翼というよりどちらかというと左系ととらえられる
    感じになってきているようです。
    とはいえ、なかなか交じりのなさそうな二人の対談は
    それなりに面白いと思います。
    内田氏の論もいつもの通り鋭く面白いのですが。
    鈴木氏の人柄や大きさが際立った感じがします。

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著者プロフィール

1950年東京生まれ。東京大学文学部仏文科卒業。神戸女学院大学を2011年3月に退官、同大学名誉教授。専門はフランス現代思想、武道論、教育論、映画論など。著書に、『街場の教育論』『増補版 街場の中国論』『街場の文体論』『街場の戦争論』『日本習合論』(以上、ミシマ社)、『私家版・ユダヤ文化論』『日本辺境論』など多数。現在、神戸市で武道と哲学のための学塾「凱風館」を主宰している。

「2023年 『日本宗教のクセ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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