【図解】ピケティ入門 たった21枚の図で『21世紀の資本』は読める!

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  • あさ出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (160ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784860637408

感想・レビュー・書評

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  • ピケティの『21世紀の資本』を簡潔にわかりやすく解説した入門書。
    本編に乗っている図から21枚を選び出し、ピケティの結論である「r>g」を導き出しまでの過程を鮮やかに説明している。
    なぜ「r>g」と言えるのか、それが経済学にとってどのくらいインパクトのある事なのか理解できる。なにより、高橋氏が自説を控え、解説に徹しているところに入門書としてとの価値が高い。竹信三恵子氏や池田信夫氏の本は、ピケティの名を借りて自説を展開しているだけなので、入門にはなりえなかったのはと大違いである。

  • 01「産業革命以来、欧米はアジアとアフリカに対して圧倒的に強い経済力を誇ってきた。しかし、今では、アジアとアフリカが急速に追い上げており、地域間の格差は縮まりつつある。」

    02「古代から急激な人口増だった世界は、20世紀半ばから急激な人口減少期に入った。21世紀末には、アフリカ大陸だけが微増し、全体的には増加率が0パーセント水準になると予測されている。」

    03「1人当たりGDP成長率は、人口増加を後追いする形で、19世紀半ばから上昇しはじめた。しかし、ピーク期はもう過ぎつつある。21世紀末には、1%程度まで下がると予測される。」

    04「21世紀末、世界のGDP成長率は、1.5パーセント前後になると予測される。」

    05「第一次・第二次世界大戦を機に、欧米の富裕国では、最大17パーセントの大きなインフレが起こった。1990年以降は、おおむね2パーセント前後になっている。」

    06「二つの世界大戦と世界大恐慌の影響で、ヨーロッパの民間資本は、大きく減少したが、1970年代以降は増加している。」

    07「アメリカでも、世界大恐慌と第二次世界大戦の影響で、民間資本が減少したが1970年代以降は増加している。」

    08「19世紀後半からの推移を辿ると、世界の資本/所得比率については、U字曲線が描かれる。21世紀にはそれが700パーセント近くになると予測される。」

    09「新興国の追い上げによって、21世紀末には、世界の民間資本の半分を、アジアが持つようになると予測される。」

    10「1975年以降、富裕国では国民所得に占める資本所得に比率が上昇している。」

    11「20世紀後半から21世紀初頭にかけては、特にアングロ・サクソン諸国で、所得格差が大きく拡大している。」

    12「アジアや南米、アフリカ大陸などの新興国では、アングロ・サクソン諸国と同等の所得格差の拡大が見られる。」

    13「欧米では、資本格差も少しずつ拡大している。」

    14「資本収益率は、GDP成長率より大きい。この状況は今後ずっと続き、格差は、ますます広がると考えられている。」

    15「所得税の累進課税率は、戦争や恐慌などの有事の際に引き上げられてきた。特に変動が激しいのは、アメリカとイギリスで、一時的には税率を釣り上げる一方、すぐに、大きく引き下げている。」

    16「イギリス、アメリカでは、想像税の累進課税率も、急激に釣り上げられたのち、急激に引き下げられた。」

    Part2「結局のところ、ピケティは何をいいたのか?」と題して、

    1:ピケティが重要視して取り上げたのは、人口増加率やGDP成長率の推移などのいずれも格差の状況を垣間見る事ができるデータである。また、r(資本収益率)>g(GDP成長率)は歴史的事実であり、かなりの確率で将来的にも続く傾向だと示す、いわば『補強証拠』」である。

    2:「なぜ、r>gが格差拡大なのか?」は、gを労働所得の伸び率、資本収益率rを資本所得の伸び率と見なしているからであるとしている。

    3:ピケティは累進性の強い税率こそが格差縮小の鍵とする。そのために国際協調のもと、すべての国で課税強化策を採用するべきだといっている。

    4:「21世紀の資本」が画期的なところは、より幅広く、長い時系列のデータを地道に並べてみたことで、ピケティはノーベル賞を受賞したクズネッツの理論を覆してしまったことである。

    Part3「『21世紀の資本』その先の可能性ーピケティからの返答集」と題して、「1:低賃金などの労働環境の問題について。2:都市と郊外の地域格差について。3:ジェンダー(性別)の格差について。4:累進課税の強化について。5:ピケティが読む今後の格差社会。」の5つを論じている。

    最後に、「経済の事をよくわからないと言って済ましてしまうのは安易すぎる。他人任せにしてはいけない」と主張し、「個人個人が正しい知識をもって、社会について考えていくこと」が大事であるとしている。

    そして、こうした「主体性」こそが、この格差社会を変えていく原動力になるとしている。

  • 2016年5月14日読了

  • No.752

  • 高橋洋一氏らしい、図解が多く文章も少なめで余白や行間も多いためかわかりやすい。

    ピケティの原書はあくまで専門書なので、時間がないので要点を知りたい人や原書を最初読む人にとっては最初に概略をつかむにはよいと思う。または、傍に置いて原著を読むためのガイド的な使い方もできるかもしれないが。

    しかし、これだけ端的にまとめていると、本当に曲解していないか不安になると思う。まあ、そこら辺は原著を読んでみて比較してみたいと思う。

  • わかりやす

  • ここまで簡潔すぎると、かえっていろんなものを見落としているんじゃないか、って気がしますが、参考になりました。
    『21世紀の資本』を書くにあたってのピケティの執念というか覚悟のようなものも伝わってきました。

    が、今回得たものをより確実なものにするためにも、他の解説本にもあたってみたいと思います。

  • 2年前くらいに刊行された「21世紀の資本」は、ベストセラーの様ですが、難解で大部な本のようで日本語版でも読むのが大変だというイメージを持っています。いずれ読みたいとは思っていますが、世の中にはそれを読んで解説を書いてくれている人がいて嬉しい限りです。

    この本は、私に地政学の面白さを教えてくれた、高橋氏による解説本で、21枚の図をセレクトしてくれて、それを基にあの大作のポイントが理解できるという触れ込みの本です。本当に理解している人は、分かりやすく解説できるのだなと思いました。

    どの図も素晴らしいのですが、私にとって一番印象的なのは、1700年からのデータで、世界のGDPの割合の変化を示したグラフ(p15)でした。欧米の凄さを感じました。

    以下は気になったポイントです。

    ・GDPとは、市場で取引された財・サービスの総計、言い換えれば、国民全員が仕事をして得た所得の総額である。欧州のGDPは1913年には47%だったが、2012年には25%(p15)

    ・1820年から欧米のGDPシェアは急激に上昇している、これは産業革命のお蔭である。産業テクノロジーが飛躍的に進歩して、一人当たりの生産性が高まったため(p17)

    ・欧米シェアは1950年をピークに下がっていて今後も続くだろう、産業革命以降、発展したテクノロジーはもはや欧米だけのものではないから(p18)

    ・GDP成長率=一人当たりGDP成長率+人口増加率、である(p23)

    ・人口増加率は、古代から20世紀半ばまでうなぎ上り、1950年ー90年の2%弱をピーク期として急降下している(p24)

    ・GDPシェアはいずれ、人口シェアと同程度になると予測している(p30)

    ・世界人口増加率が21世紀末に0%近くにまで減少されている一方で、一人当たりGDP成長率は1%強に留まると予測している(p33)

    ・累進課税をするにしても、しっかりとした番号制度(納税者番号)と歳入庁(社会保険料と税の一体徴収)をしないと、累進課税がうまくできない(p40)

    ・二つの世界大戦を機に、金本位制は失われた。膨大な戦費を到底賄えなかったから(p46)

    ・金融資産と実物資産を足すと二重計算になってしまう、株や預金にしても同様。預金者にとって預金は資産だが、銀行にとっては負債(p54)

    ・二度の世界大戦が、財政と政治に与えた影響は、外国資本の損失(革命による収用:ロシア革命により焦げ付いた資金)と国民の貯蓄率の低さである(p58)

    ・家賃統制政策(不動産から得られる利益の減少)や、企業の国有化(株式投資は控えめ、株価下落)、配当課税・利潤課税・累進課税により、資産家の財力は削がれていった(p63)

    ・1970年以降に、資本/所得比率が増え始めた理由として、1)民営化、2)資産価値そのものの上昇、がある(p68)

    ・日本の資本/所得比率は、700%に達した1910-30年をピークとして減少し始めて、1950-60年代には300%程度になった。しかし、1990-00年には再び700%程度に回復している(p76)

    ・世界の資本分配は、1910年頃までは欧州が50%以上であったが、2000年ころには、アジア・米大陸・欧州は同程度となり、2050年には半分を占めるだろう(p83)

    ・資本収益率=資本に占める資本所得の比率(r)が、「21世紀の資本」を理解する重大な鍵の一つとなる(p89)

    ・トップ1%の所得比率の大幅な上昇(所得格差の大幅な拡大)は、アングロサクソンに特有、非アングロサクソンでは少ない(p97)

    ・新興国では、財政金融、税に関する制度が確立されていないことがあるので、不平等が起こりやすい(p102)

    ・歴史的事実として、税引き前資本収益率(r)は、つねに成長率(g)より大きい。r>gという不等式がなりたつ(p110)

    ・21世紀後半の成長率は、19世紀とほぼ同程度となる、従って、(r)と(g)の格差は、産業革命期と同じ水準に近づく(p114)

    ・二度の世界大戦と大恐慌をまたぐ1913-50年に、資本収益率1%、成長率2%という逆転現象が起きた。1980年代以降、資産家の財力は復活し始めたが、3-4%という高成長率に支えられて、成長率が収益率に勝る状態は、2012年まで続いた。これは一時的現象である(p115、117)

    ・アングロサクソン国は、急激に税率を上げるものの、一定期間が過ぎるとすぐに税率を下げ、資本家の有利になるようにしているように見える(p123)

    ・所得税と同様、累進課税の強化は、有事の要請に応じたもの。アングロサクソン国とそうでない国は対応の違いがある(p128)

    ・r>gという不等式が成り立つ補強証拠として取り上げられたのは、1)資本(主に民間資本)/所得比率(=国民が1年間に得る所得の、何年分に換算できる資本が存在しているか)、2)所得格差(=トップ1%の所得比率)、3)資本格差(=トップ1、10%の資本比率)(p136)

    ・累進性の強い税率こそが、格差縮小の鍵であるとピケティは言っている(p142)

    ・より幅広く、長い時系列のデータを地道に並べたことで、ピケティは、ノーベル賞を受賞した、クズネッツ理論を壊してしまった(p147)

    2016年2月11日作成

  • the 21 pictures of capital in the 21 century. Thomas Piketty, he is economist, born in the french. he broke the economic nobelist, Simon Smith Kuznets. from republic to civilization. always , r(riches) > g(general person).

  • あのトマ・ピケティの「21世紀の資本」を、あの分厚い本を読むことなしに、概要を掴むことができる本です。理論は難解ではなく分かりやすいもので、ここで書かれているように図を見ながら理解することができるものです。「21世紀の資本」の概要があり、その部分部分で解説も入っていて分かりやすかったです。また世間の反応や著者が何を言いたかったのかについても書かれていて、この書に関しての話題についていくことができる位の内容になっていると思います。

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著者プロフィール

1955年東京都生まれ。数量政策学者。嘉悦大学大学院ビジネス創造研究科教授、株式会社政策工房代表取締役会長。東京大学理学部数学科・経済学部経済学科卒業。博士(政策研究)。1980年に大蔵省(現・財務省)入省。大蔵省理財局資金企画室長、プリンストン大学客員研究員、内閣府参事官(経済財政諮問会議特命室)、内閣参事官(首相官邸)などを歴任。小泉内閣・第1次安倍内閣ではブレーンとして活躍。2008年に退官。菅義偉内閣では内閣官房参与を務めた。『さらば財務省!』(講談社)で第17回山本七平賞を受賞。著書はほかに、『正しい「未来予測」のための武器になる数学アタマのつくり方』(マガジンハウス)、『高橋洋一式「デジタル仕事術」』(かや書房)、『国民のための経済と財政の基礎知識』(扶桑社)、『理系思考入門』(PHP研究所)、『国民はこうして騙される』『プーチンショック後の世界と日本』(徳間書店)など多数。YouTube「高橋洋一チャンネル」でも発信中。

「2023年 『日本の常識は、世界の非常識! これで景気回復、安全保障は取り戻せるのか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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