- Amazon.co.jp ・本 (344ページ)
- / ISBN・EAN: 9784861825002
感想・レビュー・書評
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なぜこんなにも感動するのか。ただただ地味な、世に名を残さなかった英文学者の一生を描いた作品。文章の力をとても感じた。衰えを感じるたびに、繰り返し読み返したい、忘れられない傑作。2018マイベスト候補。
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最初の数ページを読んだだけで、これは大切に読み進める価値があると確信した。そんな本にはそうそう出会えない。読み進めるうち惹き込まれることはあるが。
1人の平凡と言っていいだろう男の半生が描かれているだけなのに、静かに静かに心の奥に浸み込んでくる。読書以外では味わえない素晴らしい時間になった。 -
素晴らしい本でした。
ストーナーというある1人の教師の生涯を書き綴った物語。読むほどにストーナーのことがもっともっと知りたくなって引き込まれ、まるでストーナーのすぐ側でその人生を見守っているかのような錯覚に陥りました。誰もが経験したことのある感情に既視感を覚え、歓びや哀しみ、期待や憤り、とにかく色々な感情の波に何度も襲われました。結末は悲しかったけれど、それでもどこか穏やかで静かに心切なく、温もりを感じる物語だったと最後にそう感じたのは、ストーナーの人柄からだと思います。
翻訳で使われる言葉がとても美しく、海外作品を訳してこんなに美しい日本の言葉、語彙が使われていることに感嘆せずにはいられませんでした。なんて自然で物語に正確な翻訳なんだろう。知らなかった語彙があれば意味を調べながら読み、一層深くこの物語の世界に浸ることができました。素晴らしいストーリーを生み出したジョン・ウィリアムズと、東江一紀さんが翻訳するこの本にもっともっと早く出会いたかったです。
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あるきっかけで学問の道に進んだ男の一生。
まず、東江一紀氏の日本語訳が本当に本当に素晴らしい。
多彩な表現力と比喩力で、情景が浮かび上がってくるし、儚い、切ない。
全てのできごと、そこから主人公が感じた感情が痛切に読者に伝わってくる。こんなに素晴らしい表現力はどうやったら身につくのだろうか…
ストーリーもまた、切ない。
決して不器用すぎるわけでもなく、他人に興味がないわけでもなく、人を愛せないわけでもなく
真面目に自分に正直に生きた結果が大いに切ない。
しかし多彩な表現力で、最後の最後はとても美しい終わり方だと思った。
小説の終わり1,2ページの、きれいな情景で締めにかかるパターンはどれも好きだが、この本は別格だと感じる。
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2022/12/18
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workmaさん
コメント頂きありがとうございます。感性が磨かれる感じがして、また手に取りたくなるような本でした。とてもおススメです。workmaさん
コメント頂きありがとうございます。感性が磨かれる感じがして、また手に取りたくなるような本でした。とてもおススメです。2022/12/24
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ストーナー 作品社
ジョン・ウィリアムズ 東江一紀 翻訳
ジョン・ウィリアムスという検索しにくい作家名で、寡作だが、著作3冊はストーナーの高評価もあって邦訳済み。
読書メーター繋がりの方に紹介してもらって読んだのが8年前、それ以来、この本は最高に大好きな海外文学の1冊になってます。
今回久しぶりの再読だったのですが、前と変わらぬ印象、歳を重ねた分、より寄り添える小説になったかも。これからもずっとおすすめの1冊にできるのは良かった!!
ある男の一生が著されており、彼の人生はさざ波のように揺れ動いている。そんな人生にもいくつかの煌めく光の瞬間が生じる。
自分の人生、良いこと全然ねえよってという愚痴はよく言ったり聞いたりするとおり、ストーナーの人生は鈍い色の悲しみに綴られている。その上に小さな喜びが控えめにぱらっと舞い落ちる。
それなりの人生という思いが浮かぶなか、彼にとっての刹那的な最高の幸せが訪れた瞬間、開けたページはダリアのように花開き、読む者の気分を高揚させる。夏が訪れた!
それを経験する瞬間の鮮やかな憧憬は、私の読書人生の最高の悦びと絶えまぬ読書への糧になっています。
兎にも角にもとても良い小説です。
以下は、読書メーターへの投稿(2014年)から移記。
悲しみがさざ波の様に寄せてくる、と解説にあったけど、読書の間、あまり悲しみは感じず、どちらかというと幸せな感情を随所に感じた。やりたい仕事がそれなりにできたこと、恋愛の素晴らしさを経験できたこと、子を持つ喜びがあったことなど、人生とは平凡ながら数奇であり、ストーナーだけの特別なドラマにのめり込んだ。
「恋は終着点でなく、ひとりの人間が別の人間を知ろうとするその道筋」
という文は忘れられない。絶筆となった訳者のご冥福を祈ります。とても良い本を訳してくださりありがとうございました。 -
読後ジーンときます。翻訳大賞に相応しい名訳ですね。
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そんなに平凡でも不遇でもないと思うが、私はストーナーと近い仕事で、その仕事に彼の感じた歓びも苛立ちも、共感するところばかりだった。時間割の割り当てで、担当の授業が週に満遍なく置かれていると、研究や執筆に没頭できる日がつくれないのでツラいのだとか、同僚にいじわるされるとか、くだらないパーティーがあるとか、大学教師あるあるの話としては、切実なものでもある。
執務環境についての記述が繰り返しあることもおもしろい。それと、モチベーションの波とは深く関わってもいるのだ。
キャサリンに会えてよかった。
悲しい別れではあったとしても。
静かで淡々とした訳文もすばらしい。
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貧しい農夫の息子が与えられた環境に粛々と身を置き日々を過ごす。学業に目覚め弛まぬ努力と教師への静かな熱情を死ぬまで貫く。得難い友人、心から愛する人もいたが、彼の人となりへの無理解が妻を始めとしてストーナーの人生に陰を落とす。
不幸だったとも言える。だがストーナーのゆるぎなき教えることへの熱意は彼の核となってその存在を際立たせている。不本意なことでも信念を曲げず不利な状況を受け入れて、耐えながらも全てを許す大いなる愛の物語だ。
心が洗われるような訳文にも感謝します。 -
生を全うする事の悲しみと喜び。
相反する感情でありながら、常に表裏一体のこの二つに振り回される人間の愚かさと美しさ。その人間の生に詰まった魅力を感じさせてくれる一冊。
主人公のストーナーに起こる種々雑多な出来事。それらは概して良いことばかりではなく、むしろ辛く悲しい出来事に見てている。ただ読了後に残る密かな心の暖かさ、温もりを感じられるのは、きっとストーナーにとっての一生が「自分にとって良いもの」に包まれていたからだろう。
決して派手な物語ではない。ドラマチックな物語でもない。ただ一人の男の一生を切り取った作品だからこそ、胸にスッと入り込んでくる。淡々と、粛々とした語り口から描かれるストーナーの物語こそ、人間の一生をリアルに切り取った作品なのだと感じた。