ストーナー

  • 作品社
4.42
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本棚登録 : 2637
感想 : 208
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  • Amazon.co.jp ・本 (344ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784861825002

感想・レビュー・書評

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  • なぜこんなにも感動するのか。ただただ地味な、世に名を残さなかった英文学者の一生を描いた作品。文章の力をとても感じた。衰えを感じるたびに、繰り返し読み返したい、忘れられない傑作。2018マイベスト候補。

  • 最初の数ページを読んだだけで、これは大切に読み進める価値があると確信した。そんな本にはそうそう出会えない。読み進めるうち惹き込まれることはあるが。

    1人の平凡と言っていいだろう男の半生が描かれているだけなのに、静かに静かに心の奥に浸み込んでくる。読書以外では味わえない素晴らしい時間になった。

  • 素晴らしい本でした。
    ストーナーというある1人の教師の生涯を書き綴った物語。読むほどにストーナーのことがもっともっと知りたくなって引き込まれ、まるでストーナーのすぐ側でその人生を見守っているかのような錯覚に陥りました。誰もが経験したことのある感情に既視感を覚え、歓びや哀しみ、期待や憤り、とにかく色々な感情の波に何度も襲われました。結末は悲しかったけれど、それでもどこか穏やかで静かに心切なく、温もりを感じる物語だったと最後にそう感じたのは、ストーナーの人柄からだと思います。
    翻訳で使われる言葉がとても美しく、海外作品を訳してこんなに美しい日本の言葉、語彙が使われていることに感嘆せずにはいられませんでした。なんて自然で物語に正確な翻訳なんだろう。知らなかった語彙があれば意味を調べながら読み、一層深くこの物語の世界に浸ることができました。素晴らしいストーリーを生み出したジョン・ウィリアムズと、東江一紀さんが翻訳するこの本にもっともっと早く出会いたかったです。

  • あるきっかけで学問の道に進んだ男の一生。

    まず、東江一紀氏の日本語訳が本当に本当に素晴らしい。
    多彩な表現力と比喩力で、情景が浮かび上がってくるし、儚い、切ない。
    全てのできごと、そこから主人公が感じた感情が痛切に読者に伝わってくる。こんなに素晴らしい表現力はどうやったら身につくのだろうか…

    ストーリーもまた、切ない。

    決して不器用すぎるわけでもなく、他人に興味がないわけでもなく、人を愛せないわけでもなく
    真面目に自分に正直に生きた結果が大いに切ない。

    しかし多彩な表現力で、最後の最後はとても美しい終わり方だと思った。

    小説の終わり1,2ページの、きれいな情景で締めにかかるパターンはどれも好きだが、この本は別格だと感じる。

    • workmaさん
      にーやんさんの感想を見て、読みたくなりました
      にーやんさんの感想を見て、読みたくなりました
      2022/12/18
    • にーやんさん
      workmaさん
      コメント頂きありがとうございます。感性が磨かれる感じがして、また手に取りたくなるような本でした。とてもおススメです。
      workmaさん
      コメント頂きありがとうございます。感性が磨かれる感じがして、また手に取りたくなるような本でした。とてもおススメです。
      2022/12/24
  • ストーナー 作品社
    ジョン・ウィリアムズ 東江一紀 翻訳

    ジョン・ウィリアムスという検索しにくい作家名で、寡作だが、著作3冊はストーナーの高評価もあって邦訳済み。
    読書メーター繋がりの方に紹介してもらって読んだのが8年前、それ以来、この本は最高に大好きな海外文学の1冊になってます。
    今回久しぶりの再読だったのですが、前と変わらぬ印象、歳を重ねた分、より寄り添える小説になったかも。これからもずっとおすすめの1冊にできるのは良かった!!
    ある男の一生が著されており、彼の人生はさざ波のように揺れ動いている。そんな人生にもいくつかの煌めく光の瞬間が生じる。
    自分の人生、良いこと全然ねえよってという愚痴はよく言ったり聞いたりするとおり、ストーナーの人生は鈍い色の悲しみに綴られている。その上に小さな喜びが控えめにぱらっと舞い落ちる。
    それなりの人生という思いが浮かぶなか、彼にとっての刹那的な最高の幸せが訪れた瞬間、開けたページはダリアのように花開き、読む者の気分を高揚させる。夏が訪れた!
    それを経験する瞬間の鮮やかな憧憬は、私の読書人生の最高の悦びと絶えまぬ読書への糧になっています。
    兎にも角にもとても良い小説です。

    以下は、読書メーターへの投稿(2014年)から移記。
    悲しみがさざ波の様に寄せてくる、と解説にあったけど、読書の間、あまり悲しみは感じず、どちらかというと幸せな感情を随所に感じた。やりたい仕事がそれなりにできたこと、恋愛の素晴らしさを経験できたこと、子を持つ喜びがあったことなど、人生とは平凡ながら数奇であり、ストーナーだけの特別なドラマにのめり込んだ。
    「恋は終着点でなく、ひとりの人間が別の人間を知ろうとするその道筋」
    という文は忘れられない。絶筆となった訳者のご冥福を祈ります。とても良い本を訳してくださりありがとうございました。

  • 読後ジーンときます。翻訳大賞に相応しい名訳ですね。

  • そんなに平凡でも不遇でもないと思うが、私はストーナーと近い仕事で、その仕事に彼の感じた歓びも苛立ちも、共感するところばかりだった。時間割の割り当てで、担当の授業が週に満遍なく置かれていると、研究や執筆に没頭できる日がつくれないのでツラいのだとか、同僚にいじわるされるとか、くだらないパーティーがあるとか、大学教師あるあるの話としては、切実なものでもある。

    執務環境についての記述が繰り返しあることもおもしろい。それと、モチベーションの波とは深く関わってもいるのだ。

    キャサリンに会えてよかった。
    悲しい別れではあったとしても。

    静かで淡々とした訳文もすばらしい。

  • 読書日記「ストーナー」

    米国中西部のミズーリ大学の助教授の物語。20世紀初頭、農学を学ばせて家を再興させようと貧しい農家から大学へ送り込まれた息子は、英文学に魅かれ大学に残ることを決める。両親は黙って息子の選択を受け入れる。

    彼は銀行家の娘に一目惚れして結婚するが、妻は自分の殻に閉じこもり、心を開かない。やがて生まれた娘は少女になる。妻にはなつかず、書斎で仕事をする父親のそばで静かに本を読みながら過ごす。時折父と娘の視線が合うと、どちらからともなく微笑みを交わす。二人とも静かな満足を味わっていた。
    二人の静かな交流はやがて妻に引き裂かれる。彼女は自分がそうであったように、娘を自分の作った鋳型にはめようとする。反発が新たな不幸を生む。優等生だった娘は、意図して堕落していく。酒に溺れながら自分を悔いている娘のありのままを、彼は受け入れる。

    学内の権謀術数に巻き込まれながらも、自分の価値観に忠実であろうとする彼は、不遇のままキャリアを終える。

    幸福な人生とは何だろうか。
    主人公は社会的には成功したとは言えず、家庭も温かいものではなかった。恵まれない一生だった、と整理するのは容易いかもしれない。
    いやいや、一人一人の人生は本人にとっては素晴らしいものなのだ。自ら感じ、考え、行動し、それに満足できたのだから。
    娘との心の交流。美しい自然の中で育んだ新たな愛。知的好奇心にみちた学術的な冒険。それらの宝物がそれぞれの引出しに一つずつ入っている。そんな引出しをたくさん持つことができれば、人は幸福な人生だった、と言えるのかもしれない。

    なお、この作品が発刊された半世紀前の米国では、当時サクセスストーリーが文壇の主流で、あまり評価されなかったのが、近年になって英国で注目されてから、米国でも評判になったとか。時代によって人々が求めるものが変わる、というのも面白い。

  • 貧しい農夫の息子が与えられた環境に粛々と身を置き日々を過ごす。学業に目覚め弛まぬ努力と教師への静かな熱情を死ぬまで貫く。得難い友人、心から愛する人もいたが、彼の人となりへの無理解が妻を始めとしてストーナーの人生に陰を落とす。
    不幸だったとも言える。だがストーナーのゆるぎなき教えることへの熱意は彼の核となってその存在を際立たせている。不本意なことでも信念を曲げず不利な状況を受け入れて、耐えながらも全てを許す大いなる愛の物語だ。
    心が洗われるような訳文にも感謝します。

  • 生を全うする事の悲しみと喜び。
    相反する感情でありながら、常に表裏一体のこの二つに振り回される人間の愚かさと美しさ。その人間の生に詰まった魅力を感じさせてくれる一冊。
    主人公のストーナーに起こる種々雑多な出来事。それらは概して良いことばかりではなく、むしろ辛く悲しい出来事に見てている。ただ読了後に残る密かな心の暖かさ、温もりを感じられるのは、きっとストーナーにとっての一生が「自分にとって良いもの」に包まれていたからだろう。
    決して派手な物語ではない。ドラマチックな物語でもない。ただ一人の男の一生を切り取った作品だからこそ、胸にスッと入り込んでくる。淡々と、粛々とした語り口から描かれるストーナーの物語こそ、人間の一生をリアルに切り取った作品なのだと感じた。

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著者プロフィール

ジョン・ウィリアムズ(John Edward Williams)
1922年8月29日、テキサス州生まれ。第二次世界大戦中の42年に米国陸軍航空軍(のちの空軍)に入隊し、45年まで中国、ビルマ、インドで任務につく。48年に初の小説、Nothing But the Nightが刊行された。60年には第2作目の小説、Butcher's Crossingを出版。また、デンヴァー大学で文学を専攻し、学士課程と修士課程を修めたのち、ミズーリ大学で博士号を取得した。54年にデンヴァー大学へ戻り、以降同大学で30年にわたって文学と文章技法の指導にあたる。63年には特別研究奨学金を受けてオックスフォード大学に留学し、さらにそこでロックフェラー財団の奨学金を得て、イタリアへ研究調査旅行に出かけた。65年、第3作目となる小説Stonerを上梓。本書は21世紀に入り“再発見”されて、世界的な大ヒット作となる。72年に出版された最後の小説、Augustus(本作)は、イタリア旅行のときの取材をもとに書かれた作品で、翌年に全米図書賞を受賞した。94年3月4日、アーカンソー州で逝去。

「2020年 『アウグストゥス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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