- Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
- / ISBN・EAN: 9784865281644
感想・レビュー・書評
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「〆切守り率100%のメソッド大公開」という帯の惹句のとおり、著者は23年間フリーライターをやってきて一度も〆切に遅れたことがないそうだ。
しかも、コラムとかならともかく、著者のおもな仕事はブックライター、つまり書籍の聞き書き構成で、これまでに100冊近くを手がけてきたという。
著者の3年前の本『職業、ブックライター。』を当ブログで取り上げたとき、私は次のように書いた。
《副題の「毎月1冊10万字書く」は、私もクリアしている。
てゆーか、丸1ヶ月あれば1冊の本が書けるのは、ライターとしては平均的能力で、とくにすごいというわけではない。ま、質が問題なわけだから、書く速さだけ比べても意味がないけれど……。
著者のすごさはむしろ、20年間にわたってブックライターをつづけながら、一度も〆切に遅れたことがない、という点にある。この点は素直に脱帽》
100冊近く本を書いて一度も〆切に遅れたことがないというのは、ライターとしては奇跡に近いが、出版業界外の人にはすごさがわかりにくいかもしれない。
「〆切に遅れないなんて、社会人としてあたりまえのことじゃん」と思う向きもあろう。
たとえば製造業の場合、納期に遅れるのは許されないことで、やらかしてしまったらヘタすりゃ損害賠償ものなわけだし……。
しかし、物書き稼業だけはそうではないのだ。少なくとも、これまでの時代は。
だが、本も雑誌も売れなくなり、物書き業界が「椅子取りゲーム」的状況になっているいまは、〆切を守れないルーズなライターから先に切り捨てられていく時代なのである(他人事ではない)。
本書は、著者がどのようにして「〆切守り率100%」を死守してきたかを明かしたもの。私も、「ぜひとも学ばせていただきたい!」との思いで拝読した。
物書きにしか参考にならない本ではなく、〆切のあるすべての仕事に役立つ内容だが、第一義的には「ライターのための〆切仕事術」の本なのである。
面白いのは、昨年来ベストセラーになっている『〆切本』と、本書が同じ版元から出ていること。著者もそのことに言及しているが、2つの企画が重なったのは「本当に偶然」だとか。
後半の第3章と終章は凡庸な内容で、「前半で書きたいことは書き尽くしちゃったのかな」という印象だ。
ただ、前半には傾聴すべきアドバイスが多い。
ほんとうにそのとおりだと思ったのは、次の言葉。
《若い書き手の方などに講演するときによくする話があります。原稿を書く仕事というのは、200点満点である、と。
何かといえば、原稿のクオリティ100点、〆切を守ること100点です。
先にも書いたように、〆切を守らない人も多い業界ですから、〆切を守るだけで、これだけの価値があるぞ、ということをまず伝えたいわけですが、それだけではありません。
(中略)
200点のうち、原稿のクオリティ100点を取るのは、極めて難しいのです。ところが、もう100点の〆切はどうか。
ただ期日通りにきっちり仕上げるだけ、なのです。それだけで100点が取れてしまう。とても簡単ではないか、ということです》
巻末に掲げられた「〆切を守るための10箇条」(本書の要点を箇条書きにしたもの)を、拡大コピーしてデスクの前に貼っておくことにする。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
文章の〆切を例にした仕事術の本。「俺は出版業界ではないので関係ない」と思ってしまう人には役に立たないが、自分の仕事にひきつけられる人にはとても参考になる。〆切がない仕事はないからだ。
多くのノウハウも載っているが、それ以上に、〆切をポジティブなものととらえて味方につけていく考え方がこの本の真髄だと思う。
私は改心してからのここ10年、〆切に遅れて大きな迷惑をかけたことはないはずだ。しかし特に最近は〆切に追い立てられているように感じることが多かった。もっとプラスにとらえて、〆切を仕事に活かしていきたい。 -
理念的で、具体的でなかった。