- Amazon.co.jp ・本 (120ページ)
- / ISBN・EAN: 9784867320143
作品紹介・あらすじ
西崎憲の短編小説集
感想・レビュー・書評
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装丁が本当に素敵。寓話的であるようで淡々とだが具体的に日常を描いてるような短編集。幕切れがあっけなくその分気になってしまう。『ふゆのほん』作中作の寸劇観たい。不思議な『本の幽霊』私も妄想『縦むすびのほどきかた』も好み。
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お勧めされて読みました。
表紙をパッと見た感じは、欧米で数十年前に刊行された本という印象です。新書サイズで、表紙には数十年前の欧米の新聞に載っていそうな絵、本の色自体が時代を感じさせるセピア色。
しかし実際の刊行は2022年であり、中身も現代日本で本にまつわる仕事をする主人公たちの短編集です。
全体的に、仕事も趣味も(家族友人も)あるけれど、どことなく漂うような感覚で生きる現代社会の人々の感性を綴ったようなおはなし。
幽霊はいないと思っている。自分が人間の幽霊を見たことがないからだ。
しかし自分は「本の幽霊」とでも言うものには出会っている。そう、表紙を覚えていて、この手に取り、最初のページの言葉を読んだ本が、あとかたもなく消え去ったのだ…。
==本の幽霊なら会ってみたい、いや会ったことあるのかな?「買ったはずなのにない!!」
/『本の幽霊』
冬の日だった。スターバックスの窓際の席でふと顔をあげるとヨーロッパの街の風景が見えたんだ。
きっと同じ条件で同じ場所に座ればまた見られるだろうと思った。しかしその機会はなかなか訪れない。
/『あかるい冬の窓』
「執筆中の作品を作者と一緒に街を歩きながら鑑賞します」
「参加型読書」というイベントに出てみたんだ。歩きながら?鑑賞?
集まった我々に作者である詩人は台本を渡した。そして街を歩き、適した場所で留まって自分の役を読む。初めての読書体験だった。人はいくつかの役を持って生きているのだろう。自分は人とは距離を置いて、しかしそれで自分は本当に生きているかと思っていた。自分が演じた世界は自分の頭にまだ残っている。
==彼らが実際に街を歩いて参加したその読書会に、私達読者はそれをさらに読むことによって参加している。
/『ふゆのほん』
洪水で「流されてきた」図書館を訪れた男に司書の少年は一冊の本を手渡す。
図書館はまた流れていったけれど、本は手に残った。読んでみよう、読み終わったらまた図書館が流れてくるかな。そう思ったらなんだか世界が新しく感じた。
==幻想的な情景だ。自分のための一冊を持ってきてくれた、放浪する図書館。
/『砂嘴の上の図書館』
東京から日帰りで京都の読書会に出てみようと思った。観光はせずただカフェで本を読んで読書会に出よう。
通り過ぎるだけの京都の町で、自分がここで生まれ暮らしていたらと考える。ただ同じ時間空間をともにした相手になんとも言えない親近感を覚えたんだ。
==この話に出て来る「赤坂の本屋さん」の読書会には私も参加してます、思わぬ出会い 笑
/『縦むすびのほどきかた』
三田さんは病気で十年ほど療養していたんだそうだ。外に出られるようになった時「ああ、歌を習ってみよう」と思ったんだそうだ。十年間。外に出たらまるで外国のようだっただろう、夢のようだっただろう。三田さんの爽やかさに応えるために、自分は彼女の夢の人物のように振る舞いたかったんだ。
/『三田さん』-
2023/01/23
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マヤさんコメントありがとうございます!
『本の幽霊』『砂嘴の上の図書館』は、ぜひ遭遇したいと思いました。
『冬の本』『縦むすび』...マヤさんコメントありがとうございます!
『本の幽霊』『砂嘴の上の図書館』は、ぜひ遭遇したいと思いました。
『冬の本』『縦むすび』は、なんとも贅沢だなあと思いますよね。登場人物が参加している読書会を私たち読者は読むことにより参加しています。
『三田さん』の「彼女が夢見たように振る舞いたい」の感覚も良いです。
マヤさんは何がお好みでしたか?2023/01/24 -
『砂嘴の上の図書館』のおすすめサービス(?)はぜひ遭ってみたいですよね!
わたしは『ふゆのほん』の詩人の作品を面白く読みました。街を歩きなが...『砂嘴の上の図書館』のおすすめサービス(?)はぜひ遭ってみたいですよね!
わたしは『ふゆのほん』の詩人の作品を面白く読みました。街を歩きながら作品を鑑賞するっていいなあ、と思いました。実際にやったら、頭の中が作品でいっぱいになって危なそうだけど。
『あかるい冬の窓』の紡木くんが伝えたかった情景が彼女に伝わらなかったところも、切ないけどわかる〜、と思って好きでした。
この本自体で読書会をしたいくらい好きです!2023/01/26
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本のデザインと題名に惹かれて読んでみました。
本に関する小説短編集。
自分が普段経験している日常の小さなことに気づかされたりと、心がほっこりする内容でした。
不思議な魅力がつまった小説です!
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2023年1冊目『本の幽霊』(西崎憲 著、2022年9月、ナナロク社)
全6篇からなる短編集。本や歌、グラフィックデザインなど、すべて「表現」に関する物語で構成されており、連作集のような趣きがある。
著者の日記を盗み見ているかのようなささやかで軽味のある文章で物語は綴られており、爽やかさはあるのだがどこか物足りなさも感じてしまう。
「ぼくは三田さんが横になって過ごした十年のかわりにとても貴重ななにかを手にしてもらいたいといつも願っている」 -
装丁は素敵だが、ストーリーは思い返すことはないかな、という感じ。本が出てくる不思議体験を綴った6つの短編集。
表紙や裏表紙にフランス語でなにやら物語が書かれているが、こちらもGoogle翻訳で読んでみた。が、そんなにたいした話でもなかった。
Google翻訳のすごさを体験できたが。 -
幽霊のように消えたかと思うと、薄暗がりのなかに現れる本の記憶を語る表題作ほか、6篇を収録した短篇集。
詩人が主催するワークショップに参加し、東京の街を歩きながら役に分かれて朗読をした体験によってフィクションを現実として記憶することになった一日を語る「ふゆのほん」、東京からわざわざ読書会のためだけに京都へ日帰り旅行に行き、”もう一つの世界”をひととき垣間見る「縦むすびのほどきかた」の2篇が印象深かった。
どの話も書きだしはエッセイかと思うようにさりげなく、中心になるエピソードもよくある「虚構が現実を侵食してくる」という言い方があまりにも大げさに感じるくらい、ささやかな一瞬の景色だったり掴みきれないぼんやりした感触のようなものだったりする。舞台もスタバの窓際の席だったり、京都の定食屋だったり銭湯だったり。ただ、その日の何かが啓示だったのであり、彼らはそれにほんの少しでも変えられてしまったのだということだけがわかる。このささやかで掴めないけれど何かを変えてしまうものこそが「本の幽霊」なのかもしれない。 -
読書会友達のおすすめで読んでみたらとてもよかったので、他の本好きさんたちにもぜひおすすめしたい。
読む人によって、何か起こっているように見える人もいれば、なにも起こっていないように見える人もいる、そんなお話たち。
たとえば本を読んだり、何かを見たり聞いたりして心が動かされたとき、その感覚を誰かと共有したいと思うこともあれば、いや共有なんてしたくない、むしろできないと思うこともある。
「あかるい冬の窓」や「ふゆのほん」はまさにそういう自分と他人で感覚はどのくらい共有できるのか、みたいなお話かなと思った。
6編それぞれが本や人との出会いをふんわり、やさしく描いていて、読んでいてとてもよい気持ちになる。
読書会に参加したことがある人や本が好きな人にぜひ読んでもらいたい、"本にかんする本"。 -
6作収録された短編集。表題作以外も、本に関する話が多い。
読み心地が最高でした。人の話を聞いていたら、いつの間にか違うところにいた…という感じ。とにかく、なめらかに空間や時間を移動した感覚が体験できた。
「ふゆのほん」がとても好き。 -
本にまつわる短編集。エッセイのようで幻想譚でもあって不思議で温かい読後感でした。海外古書のような美しい装丁が特徴。旅先の読書に関する一節が強く印象に残りました。ボリュームは少なめながら短編としての面白さがきちんと収められています。
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文学、詩、本をモチーフにした短編が並ぶ。
どれも少し不思議な読後感。
本好きなら出会ってみたい出来事。
装丁も美しい。