雪姫: 遠野おしらさま迷宮

著者 :
  • 兼六館出版
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本棚登録 : 57
感想 : 17
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  • Amazon.co.jp ・本 (285ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784874620670

感想・レビュー・書評

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  • 遠野物語でもあるように、遠野には古くからのふしぎな話が残っていて、何だかファンタジーな世界をイメージしてしまいます。
    この物語は、身内がいなく施設に預けられておとなになった雪姫(ゆき)という女性に、実は遠い身内が遠野にいて、その屋敷を相続することになったことに始まります。
    列車から降りて、歩いていくうちに、不思議な遠野の世界に迷い込んだ雪姫がそこで暮らすうちに、不思議な出来事が次々と起こり、自分のルーツを知って自分を受け留めていく、ファンタジーと現実とが混じり合った物語でした。

  • 遠野物語的なお話は好きなので読んでみた。
    引き寄せられるように遠野に導かれ、不思議な人々に出会うことで、自分の出生の秘密が紐解かれていく…。
    オシラ様や座敷童、覗いてはいけない奥座敷から聞こえてくる、時に懐かしく時に恐ろしい不思議な声。
    じんわりとした丁度いい怖さで、グイグイと引き込まれた。ここまでは。
    前世がなんちゃら辺りから雲行きが怪しくなり、ラストのこじつけたような恋愛ファンタジー化で、全て台無しになってしまった。
    そんなのは求めてない。

  • たまたま見つけたので久しぶりに寮美千子さんの本を。今でもこのひとのパロル舎からでた初期の3作(小惑星美術館、ラジオスターレストラン、ノスタルギガンテス)は傑作だと思いますが、正直これはちょっとイマイチだった。

    遠野の伝承を物語に絡めてあるのは面白かったです。オシラサマはもとより、河童や山男、座敷童、そしてイタコの紅絵さんが語る物語など。序盤、主人公が遠野にむかって旅立つ列車の中でエスペラント語の話を聞くのも、本筋とは関係ないながら興味深く読めたし(山高帽にコートの紳士は宮澤賢治のイメージなのかな?)

    オシラサマに呼ばれるように遠野に迷い込み、閉ざされた世界から出られなくなった主人公がそこから開けてはいけない座敷を開くあたりまでは、面白かったのだけれど、最後の最後でやや唐突に、主人公の前世の話になり、輪廻転生して何度めぐりあっても結ばれない恋人が現れ(海のオーロラか!)、それまでの母と娘の因縁話や遠野の伝承などとの関連が全部ふっとんで、単にやっと運命の恋人と結ばれましためでたしめでたし・・・な終わり方は納得いかず。急に人魚の肉だの輪廻だの盛り込まず、遠野の伝承、母と娘の物語として決着をつけてほしかったです。

    もとが児童文学の人だけに、語り口は子供向け風なところもあるのですが、後半明かされる主人公の祖母の凄惨なエピソードなどは子供には読ませられない内容で、そんな凄惨な事件を経て生まれた母、その母から連なる娘、という血の物語をあれだけ紡ぎあげておきながら、最後のオチは輪廻転生=血縁関係なし、というのもあんまりだったと思う。どうしても恋愛ものとしてオチをつけなくてはならない理由でもあったのでしょうか?結果、誰にむけて(どういう読者層にむけて)書かれたものなのか、しっくりこない部分が多かった。

    あと、突然主人公を解雇した「所長さん」がくれた「ソウルメイトとめぐりあえるパワーストーン」的なものを、主人公が後生大事にお守りとしているのも、全体のトーンと食い違っていて若干違和感を覚えました。物語の展開上、お守りアイテムとしては母の形見のお手玉というものがあるのに、遠野という神秘の場で、さして親しくもなかった職場の上司がくれただけのハート型のピンクのパワーストーンが自分を守ってくれる?というのは非常に不自然。オシラサマや河童、座敷童という言葉と「ソウルメイト」という言葉が並んだときのこの違和感・・・。

    総じて、せっかくの魅力的な題材を、オチのつけかたで台無しにしてしまった勿体ない印象が残ってしまいました。細部は魅力的だっただけに残念。

  • この物語全体に漂っている雰囲気ー湿度や暗さーが日本的でいい。遠野市に行ってみたくなった。

    これって、不思議な話なのかな・・・と思っていたが、愛の話だった。雪姫と冬馬の長い長い話。

    また時間をおいて再読したい。

  • キャラメルを一箱握らされ母に捨てられた雪姫は、教会の施設に預けられ、そこで育った。施設を出て一人暮らしを始めて五年目、突然、弁護士から遠野の五百坪余の古民家の相続権者である旨の手紙が届く。ここから雪姫のルーツを探る旅が始まる。遠野の民話などをうまく取り込んだ幻想的で少し哀しい作品に仕上がっている。

  • 【ネタばれします:注意!】

    ちょっと前に読みおわった。

    寮 美千子さんの小説。
    手に取るまでは、「ゆきひめ」って読んでました、実は。

    【ここから話の内容の記述あり】
    民間伝承のメッカである、遠野を舞台にしているだけあって、主人公が昔話を聞いたり、昔ながらの暮らしをするところから、グイグイ引っ込まれた。
    登場してくる異界の人たちが、あったかみがあっていいなぁ。

  • マヨヒガにひたるようなお話。

    はじめはホラーかな、と読んでいたものの、読みおわったあとは帯にあるように『怪談』と区分するのが良さそうだ。

    オシラサマ、血筋、マヨヒガ、因縁、妖怪、フォルクローロ、捉え方を変えるとかなり陰欝なホラーにもなりかねないのだが不思議とふんわりと新雪のような読語感、遠野に旅にでたくなってしまった。

    ……もしかしたら呼ばれているのかもしれないなぁ。


    遠野の地に震災の影響が少ないことを祈る。

  • 一人遠野の夕暮れに山の中自転車を走らせた時、まるで彼岸と此岸の淡いに迷い込んだようで、肌が泡立つあの感じを思い出しました。

  • 遠野物語に出てくるお話を紡ぎ合わせたような、幻想的な昔話を読んでいる雰囲気。先に遠野物語を読んでいるとなお楽しめる。
    2011/4/29

  • 遠野のさまざまな伝承をまじえた幻想小説。ホラーっぽい雰囲気もときどきあるけれど、怖いよりも物悲しさを感じさせられる物語です。そしてロマンチックな要素もちょっとあるかな。
    その都度歌詞の変わる数え歌が秀逸。巧いなあ。それぞれの状況に合っていて、怖かったり哀しかったりほんわかしたり。雰囲気に浸れました。出来れば冬の静かな夜に、ひっそりと読みたい一冊です。

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著者プロフィール

東京生まれ。
2005年、泉鏡花文学賞受賞を機に、翌年奈良に転居。
2007年より、奈良少年刑務所で「物語の教室」を担当。その成果を『空が青いから白をえらんだのです』(新潮文庫)と、続編『世界はもっと美しくなる 奈良少年刑務所詩集』(ロクリン社)として上梓。
『あふれでたのはやさしさだった 奈良少年刑務所 絵本と詩の教室』(小社刊)ほか著書多数。

「2021年 『なっちゃんの花園』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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