ら抜きの殺意

著者 :
  • 而立書房
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本棚登録 : 98
感想 : 16
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  • Amazon.co.jp ・本 (152ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784880592497

作品紹介・あらすじ

抱腹絶倒の悲哀。第1回「鶴屋南北戯曲賞」受賞。

感想・レビュー・書評

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  • ら抜きが許せない人、ら抜きを使ってしまう人、コギャル語を使う人、敬語が使えない人、方言をひたすら隠す人、女言葉を放棄した人。
    などなど、
    個性的な登場人物たちで、日本語の乱れを面白おかしく描いている。

    1998年に書かれた戯曲。12年たち、ら抜きはその当時よりもより市民権を得、逆にコギャル語は死語になってしまっている。
    今だと、ら抜きはNHKでも使っているし、許せないと思う人もあんまりいないだろう。

    本当に言葉は生き物のようだ。
    ぐんぐん形を変えていく。

  • 私が学生だった頃、大学の先生がこの戯曲のことを講義の中で触れていらっしゃった。
    少なくとも2名以上の方から聞いた記憶がある。
    よほど興味深い作品なのかな~と思っていたが、実際に目にする、手に取る機会がなかった。
    今回古書店で見かけて、ここで会ったが百年目!の勢いで読んでみた。

    胡散臭い通販会社「ウェルネス堀田」が舞台。
    そこに折り目正しい敬語を使う海老名という中年男性が夜間限定のバイトとして入ってくる。
    ことばや敬語をめぐって若手社員伴との間に緊張感が高まっていく。

    始め、チャラい若手社員の伴、過剰に敬語を使う遠部、万事ガサツな宇藤らの言葉とキャラの重ね方があまりにべたなので驚いたが…。
    社長の妻、堀田八重子の登場で、遠部の言葉が変わっていくところになるほど、と納得。

    なるほど~。
    単なるら抜き、さ入れの問題じゃない。
    人間関係が言葉の選択につながるのか、言葉で人間関係をコントロールしているのか。
    いろいろ考えてしまった。

  • 言葉って面白いなと思わせる作品。
    いやいやいや、と思っているうちに世界に入り込んでしまう感覚。
    実際の舞台で観たいなと思いました。

  • 確か米原万里さんの書評で知った一冊。
    戯曲を読むのは久しぶりでした。
    文字を追うよりも演劇を見た方が楽しめるのかもしれません。

    「ら」抜き言葉をはじめ、とても正しいとは言えない日本語を使う登場人物達のコミカルな会話が続きます。
    巧みではあると思うのですが、私には良さが分かりませんでした…

    ただ1点、とある登場人物の
    「日本語の女言葉には命令形がない。女はいつもお願いするしかない」といった内容の台詞にははっとしました。
    日本語は女言葉がある数少ない言語なのは知っていましたが、なるほど、いろいろな事に通ずる事実ですね。

    そろそろ満足できる本が読みたい。

    2021年10冊目。

  • 「ら」抜きは犯罪か?言葉とは何か?日本語をめぐるささやかで過激な冒険譚。

  • ことば

  • 1997年12月に上演された舞台の脚本。
    通販会社の電話番のバイトに採用された中年男の海老名は、言葉遣いに五月蝿い人間である。上司の伴に「ら抜き」言葉を使うなと対立する。あるきっかけで、お互い相手の弱みを握った二人。海老名は「ら抜き」言葉を、伴は「ら」を入れた言葉を話すことを強要される。二人の対立がどのように収束するのかは、読んでのお楽しみ。
    「正しい日本語」といったときの「正しい」とは何?と問いかける作品。

  • ら抜きのバンバンと、ら抜きが許せないエビセン……
    お互いがお互いを憎みあい、弱味を握り合い、バンバンは「らを抜かない」言葉を、エビセンは「ら抜き」言葉を余儀なく使用させられ……

    奇抜な構想の喜劇だと思っていたが読みす進めるうちに、ことわざ、敬語、女言葉、果ては山形弁など、ことばづかいの玉手箱のような様相を呈してき……

    文字通り言葉の掛け合いから登場人物の性格的弱さが浮かび上がる。結局は自分の想いを伝えるために、どんな言葉づかいを選びとるのか、それが一番大事なんじゃないかねっていう熱いメッセージ。

  •  タイトルを見て「ら抜き言葉に殺意を覚える人の話」かなと思いつつ手に取ったのですが大違い、むしろそういう人にこそ読んでほしくなるような本でした。

     「正しい日本語」を強要する人びとの傲慢さを描き、他方でその「正しい日本語」に対するコンプレックスから必死になって身につけようする人であったり、「女言葉」に縛られない自分らしい表現をしようと奇妙な言い回しを開発する人もいる。それらが混ざり合って混沌とした日常生活が進んでゆく面白さ。この物語は、日本語の正しい―間違いという対立すらも手玉に取って笑いにしてしまう。

     この本が出た1998年と比べると、「ら抜き言葉」はますます広まっていると考えて間違いないと思う。コギャル言葉は明らかに死語になっているけれど、「ら抜き」をめぐるこのこっけいな闘争が、ますます今の時代に問題を投げかけているような気がします。

  • 登場人物と一緒にどの言葉遣いが正しいのか、混乱した。
    はやりの言葉を文章にして本にすると、痛いな…。

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著者プロフィール

1951年 東京生まれ。桐朋学園大学短期大学部演劇専攻科卒。
1981年 大石静と劇団二兎社を旗揚げ。1991年より二兎社主宰。
第31回紀伊國屋演劇賞個人賞、第1回鶴屋南北戯曲賞、第44回岸田國士戯曲賞、第52回読売文学賞、第1回朝日舞台芸術賞「秋元松代賞」、第65回芸術選奨文部科学大臣賞、第60回毎日芸術賞などを受賞。
主な作品
「時の物置」「パパのデモクラシー」「僕の東京日記」「見よ、飛行機の高く飛べるを」「ら抜きの殺意」「兄帰る」「萩家の三姉妹」「こんにちは、母さん」「日暮町風土記」「新・明暗」「歌わせたい男たち」「片づけたい女たち」「鷗外の怪談」「書く女」「ザ・空気」「ザ・空気 ver.2 誰も書いてはならぬ」「ザ・空気 ver.3 そして彼は去った…」「私たちは何も知らない」

「2021年 『鷗外の怪談』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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