街場の教育論

著者 :
  • ミシマ社
4.03
  • (145)
  • (156)
  • (107)
  • (7)
  • (4)
本棚登録 : 1318
レビュー : 151
  • Amazon.co.jp ・本 (298ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784903908106

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • ・義務教育は児童労働の禁止とセットで生まれた理念。子どもは義務教育を受ける権利があり、親は義務教育を受けさせる義務がある。
    ・「学び」とは自分には理解できない「高み」にいる人に呼び寄せられてゲームに巻き込まれることで進行する。自分を越えた視座から自分を見下ろし、新たな言語を習得すること。→学びとは予想してその通りのものを習得できることではない
    ・孔子の六芸(人間が学ぶべき六芸)…礼・楽・射・御・書・数
     礼…死者の弔い。「存在しない者」とも人間はコミュニケーションができる。
     楽…音楽。今ここには存在していないものとの関係の維持。時間意識の涵養。
     射…武術。弓道は敵がいない→己の心と体のコントロール。
     御…馬道。馬とのコミュニケーションにより、自分の力の何倍もの力を発揮できる。
     書・数…読み書きそろばん

  • フランス文学者・内田樹氏による教育論。教育体制論から中身まで論じる切れ味の良い1冊。キャリア教育論の箇所は子どもを抱える家庭に限らずとも興味深い。…ミスはジョブの外にある。僅かに余計な仕事を忌避するか受け容れるかが暫々共同体の存亡を決定する。…実は組織にとっては死活的に重要。(cf.社保庁の解体)には同意。
    メモ。(1)全国民を巻き込んだ国策的な自分らしく生きる個性的に生きるキャンペーンの過程で、消費行動に際して同意が必要な他者との共生は良くないことであるということについての国民的合意がいつの間にか成立した。非婚化晩婚化少子化は合意に基づく論理的な帰結である。
    (2)社会制度の欠陥を補正するのは私たちです。財源在民の民主国家では社会制度の欠陥の責任者は国民自身なのです。

  • 私は教育や学校に対して、多くの疑問や葛藤、反感を持っていますが、なぜそう感じてしまうのか、その一部を解析して貰い答えを貰った想いです。

    内田さんの凄い所は、常識では得られない見解だけど、きっとその通りだと思わされる洞察力を持っている事だと思います。普通に疑問を持たずに生きる事は、幸せそうで不幸な事かもしれませんね。

    そして教育環境に対する違和感をそのままにせず、変えて行こうと行動してはじめて、改善されていくのだと思います。そうしたらPTAもなくなるかもしれませんね。

    共感する文章がとても多かったので、かなり引用文が多くなりました。

  • 教育現場の先生を励ますという点で書かれていてるらしい。教育がダメだからって現場で奮闘している先生に怒っても仕方がないと。好きな考え方だと思いました。現実的で。


    いじめは様々な要因が複雑に絡み合っているため、即効性のあるソリューションなどない。それぞれが地道に自分の問題を解決していくしかない。と。なるほど。頑張りましょう。


    現代の子供達には、自分の利益は自分で独占するという考え方が深くあるが、これはグローバル資本主義から来たルールだと。
    一方で欧米には、オープンソースみたいに他人と利益をシェアするという考えが日本よりも強くて、面白いというか不思議。

  • なるほどねー!そういう考え方もあるか!
    といつも内田さんの本を読むと感じる。

    賛否というか、多角的にものを見る・理解するのにとてもよい。

    昔は、
    先生は、先生になりたくてなっている人もいたし、そうでない先生もいた。
    そうすると、学校にはいろいろなタイプの先生がいることになる。
    それはそれで良いんだとわかった。
    親の価値観とは違う価値観を経験し、先生によっても言うことや考え方が違う。
    だからこそ、自分で考えて、物事を判断する力がつく。

  • 斬新な目線で書かれているちょっとおかしな教育論。

    「そう考えるか」とうならせられることばかり。
    多くの名言や格言がちりばめられています。
    あ、でもこれは内田さんの言葉ではないですよ。
    メンター(先人)によって伝えられたものです。

    本著は、大学院での授業の講義を書き起こしたもの。
    でも、どこか講義というよりは、一緒に対談しているよう。
    ぜひ、日本の先生方、手に取ってみてください。

  • 過去に何回か読んだ持論の使い回しもあるけど、時間をおいてまた再読してもいい良さがある。
    著者が子ども向けでなく、先生向けと語ったように、これは子どもの扱い方をめぐっての大人に対する注文書である。

    第一講ですでに、教育改革の根本的に内在する問題点が示されている。
    ・教育は惰性の強い制度、簡単に変えられない
    ・教育に対する言説は、断定的すぎて寛容さに欠けがち
    ・教育制度を一時停止して、最初から作り直すことはできない
    ・教育改革の主体はあくまで教師。先生を批判するのでなく応援しよう

    第四の指摘は、いささか教育者としての自己弁護がまじっていると思う。その誹りをおそらく知りながら。

    とくに仕事と受験勉強の違いについて説いた第九講、集団の共感よりも個人主義に、いじめの構造の原因を求めた第八講の分析が秀逸。

    「やりがいのある仕事」「クリエイティヴな仕事」の正体について、自己責任自己利益にもとづくが、それは誰でもできるマニュアルの非正規雇用だといいきったあたりは爽快。

  • 子供に本当に教えたいことはなんだろうか。今、自分に足りないものを教えてあげたいと思う。でも、それだけじゃ全然ダメで、自分に足りないかどうかもわからないようなこと(まったく知らないこと)も教えてあげたい。そのためには、そういうことを手に入れることができる場所を教えてあげなくちゃならない。自分と25年、29年違う世界を生きる彼らに教えてあげられることはなんだろう。向き合っていかなければならない。。

    「今ここにあるもの」とは違うものに繋がること。それが教育というものの一番重要な機能。

    「どうしていいかわからないとき」に適切にふるまうことができるかどうか、それがその人の本源的な力がいちばんはっきり現れる瞬間。

    学ぶものに「ブレークスルー」をもたらすのがメンターの役割。「ブレークスルー」というのは、教育的な意味においては、「自分の限界を超えること」。ただし、「改善前」に頭の中で考想しうるようなものは「限界」とは言わない。

  • 教育は工場のような品質管理システムになじまない長期的な営みである。
    多くの学生が大学に行く理由として社会への入り口となる就職のためと答えるだろう。就職のために専門性を高めるとともに社会人として(日本社会,国際社会の構成員)の付加価値を見つけ身につける必要性を論じる。分からない対象との対話(やりとり)は教育に必要な要素のようだ。世の中,分かっていることは少ない。その世の中を渡っていく基本姿勢を身につける社会装置が教育制度なんだろうな。
    要再読。

  • 内田先生の本は最近とっても人気があるようで、少し大きな書店ならたくさん平積みにされている。私は熱心な読者ではないのだけれど、この本は新聞広告でタイトルを見てすぐ購入しようと思った。帯には「間違いなく今年、一番面白かった本です。」とある。「全国の先生方必読です。」ともある。しかし、残念ながら私には、それほど面白いとは思えなかったし、先生たちにもぜひ読んでほしいとは思えなかった。本書を読んで先生たちが元気になれるとはとても思えない。それでも、内容はずしりと重いのです。その重さを抱えて、日々の仕事に取り組まなければいけない。教育にあたらなければいけない。じっくりと時間をかけて考えなければならない問題が山積しています。教育問題には一朝一夕に解決できるようなものはないのです。「家族の解体」から「バブルの崩壊」へ至る話とか、「相互模倣を忌避する仕方を相互模倣している」とか、村上春樹に登場する羊男とメンターの話とか。その中で、私が今まで漠然と考えてきたことが、見事に文章で言い表されている個所に出合いました。宗教性について書かれたくだり。「自分を無限に拡がる時間と空間の中のわずか一点に過ぎないという、自分自身の「小ささ」の自覚、そして、それにもかかわらず宇宙開闢以来営々と続いてきたある連鎖の中の一つの環として自分がここにいるという「宿命性」の自覚。」読み方が浅いかもしれませんが、少し考えただけでも、自分の前には父母と、父の父母、母の父母、さらにそれぞれの父母という具合に次々に鼠算的に拡がっていく祖先がいます。逆に自分の後には、2人の子どものそれぞれの子ども、またその子どもと拡がっていく子孫たちがいる。自分は宇宙の中のほんのちっぽけな存在に過ぎないのだけれど、同時にたくさんの人々を過去から未来へつなぐ架け橋にもなっている。その偶然性と必然性。なんとも不思議な感じがするのです。この一文を読んだだけでも本書を読んだ値打ちはありました。

全151件中 31 - 40件を表示

著者プロフィール

うちだ・たつる 1950年東京生まれ。武道家(合気道7段)。道場兼能舞台兼私塾「凱風館」館長。神戸女学院大学名誉教授。翻訳家。専門はフランス現代思想史。東京大学文学部卒業。東京都立大学大学院人文科学研究科修士課程修了。ブログ『内田樹の研究室』。



「2019年 『そのうちなんとかなるだろう』 で使われていた紹介文から引用しています。」

内田樹の作品

ツイートする