資本主義の終焉、その先の世界 (詩想社新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784908170065

感想・レビュー・書評

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  • 過去の歴史の振り返りは細かいので良く理解できなかった。
    現在の日本は、明らかに豊かで暮らしやすく、これ以上の経済成長はいらない国。だから、「より近く、よりゆっくり、より寛容に」を重視するべき。経済成長を目指すのではなく、この成熟期をエンジョイするべきだという大筋の考えは、とても共感した。私は国内観光、特に地方の観光推奨というのは一つの可能性ではないかと思う。

    私の理解不足もあると思うが、以下の点について疑問が残った。
    ・格差拡大を食い止めるために「消費税20%」という提言もあったが、生活必需品のみ上昇させないとかえって貧しい人の生活が苦しくなるのではないか。大企業の法人税を上げるのではダメなのか。
    ・国債が増えると危ない理由が理解できなかった。
    ・非正規雇用を減らすためには具体的にどうするべきなのか。
    ・ゼロ成長といっても、今後人口減社会になると労働力が足りなくなるのでは。その意味でAIによる労働生産性の向上を図らないと、ゼロ成長すらできないのでは。

  • 1部2部の内容は難しく細かいところは理解できなかったが、総じて世界の経済の今後の予想について学べる本だった。

    規模が拡大していく中で成長するのが資本主義だったが、多くの国が成熟しつつある現代でこれ以上の拡大が見込めない。
    拡大が見込めない中、無理やり成長しようとすればバブルを招き経済が崩壊するとのこと。
    経済が拡大しない状況は、江戸時代中期〜後期にかけての日本と近く、このような世界では経済成長ではなく、文化芸能が花開くという話だった。

  • 私が子供のころ「ノストラダムスの大予言」という本が大ヒットしました。少ないお小遣いをはたいて本屋さんで買ったのを覚えています、シリーズも読んだので、お年玉も使ったかもしれません。色々な衝撃なことが書かれていましたが、その中で今でも覚えている内容は「共産主義はなくなるだろう、そして資本主義もなくならなければならない」というものです。

    ポイントは、先に共産主義がなくなる、その当時の共産主義の象徴は「ソ連」でしたから、資本主義の象徴である「アメリカ」に負けるのだろう、という点で、これは現実となっていますね。

    次のポイントは、使われていた、助動詞=mustでした。本では、この部分は始めわからないことになっていて、最後の最後の章で「must」というオチだったのですが、当時の私は背筋が凍った覚えがあります。資本主義がなくならなければならない、ってどのようなことかイメージできなかったからです。

    あれから40年程たちました、5年程前くらいからでしょうか、それをイメージさせてくれる本がポツポツとでてきました、この本のその一つで、共著のお二人は今までも何冊もお世話になっています。

    資本主義の次の世界で、私の娘達は社会人として生きていくことになると思います。これから10年で、よりハッキリとすると思いますが、悔いのない人生を過ごしていきたいと思いました。

    以下は気になったポイントです。

    ・フェリペ二世の時代は、イギリスではエリザベス一世の時代である、イングランド女王メアリー一世が1558年に死ぬまではイングランドの共同王であった。カトリック教徒であったフェリペ二世にとって、プロテスタントのエリザベス一世は異端者なので、前スコットランド女王のメアリーを王位に就けようとするが1587年にエリザベスはメアリーを処刑してフェリペと対立。1588年にアルマダの戦いで勝った(p4)

    ・近代資本主義は、より遠くへ、より速く進展することで展開してきたが、フロンティアは消滅し、それが不可能となった。そして利潤率は低下、利子率を大きく減少することになった。16世紀の低利子率が中世を終わらせたように、長い21世紀の低利子率は近代資本主義を終わらせようとしている(p5)

    ・西欧史とは突き詰めて言えば「蒐集」の歴史である、蒐集の対象は、物質的なものと霊魂である。前者を蒐集するのが「資本主義」、後者は「キリスト教」である、蒐集ができなくなれば、西欧中心の世界秩序は揺らぐ、ゼロ金利は蒐集の終わりを意味している(p18)

    ・911テロは、1527年のローマ劫略事件以来と言われている(p20)

    ・歴史の危機としてあげられるは、1)ローマ帝国の崩壊からカール大帝の戴冠式(476-1800)、2)ビザンチン帝国崩壊=中世の終わりから、ウェストファリア条約=近代誕生(1453-1648)、3)フランス革命から普仏戦争=絶対王政打倒され市民社会到来(1789-1871)、以上の3つがある(p22)

    ・複数年にわたって長期国債利回りが2.0%を切ったのは、5000年の金利史上、1611-1621まで11年間つづいたイタリア・ジェノバしかない、いまはそれをはるかに凌駕する「21世紀の利子率革命」が起きている(p38)

    21世紀のIT革命は、1543年のコペルニクス革命は、1630年代の科学革命が天と地をひっくり返したようなものではなく、蒸気がもたらす結合の到達点である(p42)

    ・325年の二ケア公会議で、聖職者に対してウスラ(利子の徴収)を禁じていたが、626年のクリシー公会議では一般教徒にまで拡張した。これは1215年の第4回ラテラノ公会議で公認されるまで続いた(p55、60)

    ・1215年が資本主義の始まりだとすれば、1971年はゼロ金利(=過剰生産力へたどり着き、ゼロ金利となる)への始まりであった、これ以降、資本主義システムが利潤を生みだす土台が崩壊し始めた(p66、70)

    ・1990年代の株式市場において、株式は貨幣そのものになった、ダイムラーとクライスラーの合併、エクソンによるモービルの合併(p81)

    ・企業のROEに相当するのが、家計では、純貯蓄額を純個人金融資産で割った比率(=貯蓄蓄積率)というが、2003年からは企業と家計において乖離が見られる(p86)

    ・株式と債券の区別があいまいになるというのは、1602年のオランダ東インド会社以前の世界に現在、回帰しつつあることを意味する(p111)

    ・株式会社は、地球が無限空間であることを前提とした制度の上に成り立っている(p115)

    ・新中世主義の趨勢が生じているかの確認は、1)国家の地域統合(ドイツ、ユーロ統合など)、2)国家の分裂(ソビエトの解体)、3)私的な国際的暴力(911テロ)、4)国家横断的な経済(IS)、5)世界的な技術の統一(インターネット革命)で見ることができる(p119)

    ・過去数千年の歴史を見ると、中国とインドは世界の1、2位の経済大国であった、中国GDPが西欧の合計を下回ったのは、1820-70年のみ(p188)

    ・ゼロ成長は、一攫千金を狙っている人にとっては退屈な時代だが、精神的豊かさを求めようとすれば、エキサイティングである(p255)

    2019年9月8日作成

  • 少々難しい内容もありましたが、なんとなく世界の経済がどのように始まり、どこへ向かっているのかが分かりました。
    世界のほとんどの国において、成熟期に入っていて、今後は拡大思考は通じないということ。
    しかし、そういった時代において、芸術などの分野が発展しやすいというのは希望の持てる話でした。どうなるのかわからないのはエキサイティングだという主張にも共感します。
    1部、2部がチンプンカンプンという方でも、著者二人による対談形式をとった3部は読みやすいはずです。

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著者プロフィール

1953年愛媛県生まれ。埼玉大学大学院経済科学研究科博士課程修了。博士(経済学)。三菱UFJモルガン・スタンレー証券チーフエコノミストを経て、内閣府大臣官房審議官(経済財政分析担当)、内閣官房内閣審議官(国家戦略室)を歴任。現在、法政大学法学部教授。専門は、現代日本経済論。著書に『正義の政治経済学』古川元久との共著(朝日新書 2021)、『閉じてゆく帝国と逆説の21世紀経済』(集英社新書 2017)、『資本主義の終焉と歴史の危機』(集英社新書 2014)他

「2021年 『談 no.121』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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